図解
※記事などの内容は2019年6月3日掲載時のものです
フランス自動車大手ルノーが、欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合を決断すれば、ルノーと日産自動車の企業連合に大きな影響が及ぶのは必至だ。日産は統合自体に反対するのは難しいとみて、連合内での発言力を確保するための「条件闘争」に乗りだす構え。西川広人社長はルノーとの提携関係の見直しに言及し、ルノー・FCA側に揺さぶりをかけ始めた。
西川社長は3日夜、「統合が実現すればルノーの会社形態が大きく変わり、関係の在り方を基本的に見直していく必要がある」との談話を発表。資本関係や、提携協定の見直しにも含みを持たせた。ルノー・FCAの統合後も日産が独立性を確保できる方法を模索しているとみられる。
日産とルノーは連合によって部品調達を一体化したり、生産・物流設備を共同で利用したりして、コスト削減につなげている。ルノーとFCAが統合し、日産や三菱自動車も含めて「1500万台クラブ」を形成すれば、圧倒的な規模を生かした一段の効率化が期待できる利点は大きい。
だが、日産はこれまで、企業規模で上回る優位性を背景に、筆頭株主のルノーに対する発言力を保ってきた。ルノーとFCAが統合すれば、日産の存在感は低下し「強気に出るのが難しくなる」(アナリスト)との見方がある。ルノーは欧州、日産は北米が主力市場だが、米クライスラーが前身のFCAが加わればすみ分けも崩れかねない。
日産はルノーとの間で、経営の独立を侵害されたと判断すれば、事前の同意なくルノー株を買い増すことができる提携協定を結んでいる。日産はルノー株の15%を保有しており、さらに10%分を取得すれば、日本の会社法の規定でルノーの日産に対する議決権(約43%)が消滅する。日産にとって協定は「伝家の宝刀」だが、ルノーとFCAの統合後はその効力が不透明になる。西川社長は統合後の影響を見極めながら、連合内の話し合いを進めていく見通しだ。
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