図解
※記事などの内容は2019年1月11日掲載時のものです
会社法違反(特別背任)罪で起訴された日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)。日産に損害を与えておらず、知人への送金も「正当な業務の対価」と主張し、日産を私物化したとみる東京地検特捜部と全面対決の姿勢を鮮明にする。
関係者によると、ゴーン容疑者は調べに対し、日産からの報酬をドルに換えるため、新生銀行とデリバティブ(金融派生商品)の為替スワップ取引を契約したと説明。2008年、約18億5000万円の評価損が発生したが、銀行から要求された追加担保を用意できず、「日産の信用力を借り、契約を一時的に日産に移転した」と供述している。
事実関係を大筋で認める同容疑者側だが、「犯罪は成立しない」と強く反発する。根拠は日産取締役会の議事録だ。
多額の評価損を抱えた取引の契約主体を日産に変更する際、新生銀行は日産取締役会の承認決議を求めた。弁護側は決議の際の議事録に「no cost to the company(会社負担なし)」との記載があり、「日産に損害を与える意図がないことは明白だ」と断言する。
不可解さは残る。取締役と会社間で、会社に損害が生じ得る取引は「利益相反取引」と呼ばれ、会社法で取締役会などの承認が必要とされる。新生銀行が決議を求めたのも、日産への契約移転が利益相反取引に該当すると考えたためとみられるが、決議にその旨の明示はなく、ゴーン容疑者の名前も出ていない。
内容も「秘書室長に為替スワップ取引を契約する権限を与える」とするもので、特捜部は契約移転を承認したとは言えず、「事実を意図的に隠して決議した」とみている。
知人への送金では、資金の趣旨の評価で対立する。関係者によると、知人はサウジアラビアの大富豪ハリド・ジュファリ氏で、09~12年に計1470万ドル(約12億8400万円)が子会社「中東日産」から同氏側に振り込まれた。最高経営責任者(CEO)の裁量で支出できる予備費「CEOリザーブ」から送金され、ゴーン容疑者も決裁したことを認めている。
特捜部は担保不足解消に協力したジュファリ氏への謝礼とみるが、同容疑者は「中東でのトラブル解決の対価や、王族などに対するロビー活動費だ」と主張。同氏を知る日産関係者の名前も挙げ、「正当な支出だ」と反論する。
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