シーブリーズに乗り伝わるメッセージ──もうハッピー・グルーヴだけじゃない! いまがTENDOUJIの変革期!
まるでカンフー映画のオープニングを思わせるようなイントロから、甘くキャッチーなギター・ソロで幕を開けるTENDOUJIの1stシングル「COCO」。サーフ・ポップ・パンク調の“COCO”は、いままで以上にモリタのエモーショナルな歌声が聴ける楽曲であり、TENDOUJI史上もっともメッセージ性の強い楽曲だ。フジロックをはじめとした夏フェスに多く出演し、さらには憧れのティーンエイジ・ファンクラブの来日公演にサポート・アクトとして参加するなど、2019年は、TENDOUJIの音楽がこれまで以上に急速に聴かれる年になった。その期間を想像するに、戸惑いも迷いもあっただろうが、1年ぶりのリリースとなる今作でここまでの進歩を見せるとは! とにかく最高! とにかく聴いてくれ!!!
間違いなくいま、TENDOUJIは変革期を迎えている! この変化の根っこを掘り下げるべく、あえて彼らの過去を掘り下げることに。そこで、今回は彼らの地元である千葉県の新松戸に向かった。彼らはどのような学生生活を過ごして、バンドを結成することになったのか。“COCO”で歌われている10代の彼らの記憶をたどることで、TENDOUJIのスタンスが見えてきた。
新たな要素を取り込んだ初シングル
まとめ購入特典
「COCO」デジタル・ブックレットPDF
INTERVIEW : TENDOUJI
きました! TENDOUJIから約1年ぶりのリリース! 彼らにとっては初のシングルとなった「COCO」です! 苦く甘い過去をエモーショナルなパンク・サウンドで歌った“COCO”。軽妙なリズムが刻まれるメロディックなガレージ・サウンドが展開される“Magic Hour”。そしてまさかのシンディ・ローパー“TIME AFTER TIME”のカヴァーといった3曲が収録。28歳でバンドを結成し、今年で結成5周年を迎える彼らが着実に階段を上っている姿は実に痛快ですね。今作は、より聴き手を意識した歌詞にも注目! 早くも、次のアルバムではどんなTENDOUJIが見れるんだろう、と期待しちゃうほどの快作、まずは聴いてみてくれ!
インタヴュー&文 : 鈴木雄希
写真 : 大橋祐希
取材協力 : ちゅうかはうすエッセン
TENDOUJIの青春の場所はどんなところ?
──前回はヨッシーさんが以前住んでいた浅草に行きましたけど、今回はみなさんの地元、新松戸に来ました! いろいろと回りながら当時の思い出を聞かせてください。
一同 : おす!
新松戸駅
──高校時代とかはこの駅を使っていたんですか?
アサノ : そうっす。俺は東京の高校に行っていたから、7時半くらいには駅に行かないといけなくて。でも俺は学校に行かずに駅前に張って、駅に来たやつを捕まえてどこか遠くに遊びに行っていましたね。
モリタ : 俺はよくケンジに狩られてた。俺も都内の学校だったんだけど、たぶん俺とケンジがいちばん学校に行っていなかったんだよね。真面目に高校に行きたいやつはケンジに捕まりたくないから「今日駅にケンジいるぞ」っていう情報が回ってましたよ(笑)。後輩とかは特にケンジに捕まりたくなかったと思う(笑)。
アサノ : 捕まえたやつの学校に行くとかしてたね。
イオンフードスタイル新松戸店
──続いてイオンフードスタイル新松戸店にやってきました。
モリタ : 昔はダイエーだったんですよ。ダイエーはめっちゃ思い出あるな〜。塾終わりにダイエーのゲーセンに集まってて、20時、21時くらいになるとめちゃくちゃ友達が集まってくるんですよ。塾の月謝を全部ゲーセンに使っちゃって、まじで親にキレられた(笑)。
アサノ : いまはなくなっちゃったけどスケートリンクがあって、ゲーセンからそれが見えたんですよ。
オオイ : 見てたな〜!
モリタ : あのゲーセンに自分の中学時代の思い出が詰まってるかもな〜。
ヨシダ : ゲーセンに行ったら誰かしら友達がいるみたいな感じでしたね。
カラオケうた王
モリタ : ここも昔はうた王ではなかったんですよ。
アサノ : 昔は「カミパレス・ドレミファクラブ」だった(笑)。カラオケはめっちゃ行ってたよね。
ヨシダ : 中学の卒業式の晩は、みんな中学のジャージ姿でそのカラオケに繰り出すんですよ。そういうカルチャーがありました。
アサノ : そうだった(笑)。卒業式の日にクラスでカミパレス行ったもんな。あとでっかい部屋は、ワールドカップとかがあると試合を観れるようになって。代表戦はみんな集まって観てたな。
新松戸中央公園
モリタ : ここは割と広くていろいろある公園なんですよ。告白をするならここだし、花火をしたり、悪いヤツらがたまるのもここ。
アサノ : 土管の中にめっちゃ落書きがあって、めっちゃ悪口とか書かれてた。あと友達は夜中にここの土管に入ってオナニーしてた(笑)。
一同 : 爆笑。
アサノ : あれは本当にドン引きした(笑)。
モリタ : 「俺はこんなにすごいことをしている」みたいなのを自慢したかったんでしょうね(笑)。なにでやったのか聞いたら「ヤンジャン」って(笑)。いまだにそれをいじられてますからね。最悪ですよ。
ヨシダ : いま思い出したんですけど、高校生くらいのときにインターネットで「今夜中央公園で露出します」みたいな書き込みがあって。その日はそれを見るためにチャリで公園の周りをひとりでぐるぐるしてました(笑)。
オオイ : 最近は結構イベントもやってて、今年はビールフェスとかやってたんですよ。
松戸市市民交流会館 すまいる
──この「すまいる」というのは……?
アサノ : 僕らの中学校がまさか「すまいる」になってるとは……。
モリタ : 4人が出会った中学校がここにあったんです。いまは「すまいる」になっているけど(笑)。
アサノ : さすがに「すまいる」って名前はないよ……(笑)。
時計台
ヨシダ : 時計台は小学校中学年のときにできたんだよね。
アサノ : それ以降遊ぶときは全部時計台集合。
モリタ : 俺はケンジとヨッシーとは違う小学校に通っていたから、中学に入ってはじめて時計台を教えられたんですよ。「時計台」って言うくらいだから目印になるものなのかと思っていたのに、めちゃめちゃしょぼいな! って思ったのを覚えてますね。でも時計台は自分たちが一番時間をすごした場所かも。とにかく集合場所だし、たまる場所でしたね。
──じゃあ結構ここがTENDOUJIの青春の場所みたいな感じなんですね。
アサノ : そうっすね。とりあえず暇なやつはそこに集まってましたね。
──そういう場所があるのはいいですね。
モリタ : まぁでもそれが地獄につながってくるんですけどね(笑)。
アサノとヨシダが通っていた小学校へ
モリタ : ヨッシーとケンジの小学校ですね。
アサノ : 周りに田んぼばっかりで、外から全く影響を受けない場所にあったから、独特な文化が育っていた感じはありましたね。
モリタ : 他の小学校がやっていなかったことをいっぱいやっていたと思う。
ヨシダ : 1年に1回「すごいやつ集会」というのがあって。
アサノ : まず教室でビデオ撮影をしてオーディションをするんだけど、それに通ったやつが「すごいやつ集会」の本戦で、体育館でみんなの前で披露するんですよ。
ヨシダ : 二重飛びがめっちゃできますとか、普通にすごい人もいるんですけど、だんだんおかしくなってきて、カマキリの真似をするやつとかも出てきて。
モリタ : だんだん大喜利みたいになってくるんだ(笑)。誰が一番おもしろいかみたいなところを競ってる小学校だったから、中学で一緒になったときに笑いにすごい厳しくてびっくりした。
アサノ : あと地元のサッカー・チームがこの小学校で活動をしていて。
モリタ : 俺とケンジとナオユキはそのチームで一緒だったんですけど、ヨッシーは「きぼう」ってチームに入っていて、そこがめちゃめちゃ弱かった(笑)。
ヨシダ : ナオたちがいた「新松戸」っていうチームは全国大会に出場するレベルで強かったですね。
モリタ : 俺とケンジは同じチームだったんだけど、その当時はデブのキック力あるやつっていう印象しかなかったもん。
アサノ : キック力は千葉で1番あったからね。
モリタ : うそつくな(笑)!
アサノ : でも「新松戸」はほんとに厳しくて。
モリタ : 俺らの合宿は本当に地獄だったよね。
ヨシダ : 「きぼう」の合宿は、冬に高原に行って、雪が降っちゃったから1回もボールを触らずに帰ってきたんですよ(笑)。朝散歩して、雪を見ながら温泉に入って帰るっていう。
一同 : (笑)。
──そんなに違かったんだ(笑)。オオイさんも「新松戸」に入っていたんですよね?
オオイ : 俺は試合の日だけ行っていたんですよ。それでもレギュラーとして出してくれていたんですけど、突然「オオイに厳しくしよう」みたいな日が来て。「練習に来ないと試合に出してあげないよ」って言われてやめました(笑)。
モリタ : 出た。そういうところあったよね。
ちゅうかはうすエッセン
──ということでいろいろと思い出の地を回ってきましたが最後にちゅうかはうすエッセンに来ました。
アサノ : 高校の時にエッセンの前のグラウンドで毎週月曜日にフットサルをしていて。そのあととかによく来ていましたね。
オオイ : ここは俺の叔父がやっている店なんですよ。
まぁ本気にはならないだろうなとも思っていたし
──ここまで振り返ってみて、改めて松戸ってどんな街だと思います?
アサノ : いまは東京に住んでるので、すごい久しぶりに歩いたんですけど、いい意味でも悪い意味でもほんとに変わらない。
モリタ : 自分たちにも言えるんですけど、怠惰に慣れちゃう街だと思っていて。東京にもすぐ行けちゃうし、上京する必要もないから、実家に住みながらも働きに行けるし、気合が入れづらい街だなとはずっと思ってましたね。それが好きな人もいるし、嫌な人もいるんじゃないかな。
アサノ : 今日来てみて、地域性って人間性にめっちゃ影響するなってすげー思って。街を歩いていたらドアだけ緑の家とかあって。目立ちたいんだけど、浮きたくはないみたいな感じがあって。そういう平均値の中で目立とうとする感じは、俺らにもすげー通じるところがあって。俺らも目立ってメッセージをいうことも苦手だし、いまの人間性にすごい繋がっているなって思いました。
ヨシダ : 僕らっぽいっちゃ僕らっぽいですね。
──学生時代からいまにつながる音楽を聴きはじめていたんですか?
モリタ : 個人差はあるけど俺は中3で。GOING STEADYを知って、ダイエーのCD屋に行ったんです。でも取り扱ってなかったからはじめて柏のディスクユニオンに行ったんですね。そこからユニオンとかタワレコとかに行くようになって、だんだん広がっていった感じです。みんなはどうかわからないけど。
アサノ : 俺は洋楽をちゃんと聴きはじめたのは20歳を超えてからとかですね。
──じゃあ学生時代にはみんなで音楽の話をするとかはなかったんですね。
アサノ : 俺が洋楽を聴きはじめるのが遅れたのも友達に原因があって。シュウちゃんっていうゴリラみたいな友達がカラオケに行ったときにニルヴァーナを歌っていて。俺はシュウちゃんが歌うニルヴァーナではじめて、ニルヴァーナの曲を聴いたんですよ。それがめっちゃ良くなくて(笑)。
モリタ : そりゃそうだよね(笑)。
アサノ : そうそう。だから余計興味がわかなくなっちゃったんだよ(笑)。
──そんなにいっぱい会っていたのに音楽の話をしていないってのは意外ですね。
アサノ : たぶんみんな、人が熱中しているものを聞いたら、それを使ってどうやっていじるかっていう頭になっちゃうから(笑)。だからそういう自分にとっての大事なものは口外していなかったんだと思う。
モリタ : そうそう、まじでそうだった。一緒にCD屋に行きたいって言ってくるやつが現れることも嫌なんですよ。ひとりで行きたいし、そのときはその方が楽しかった。
──なるほど。
モリタ : でも大学生になってから、ヨッシーとは音楽の話もしていましたね。ケンジにもニルヴァーナとかオアシスのCDを改めて貸したりして、それでハマったし。だから大学時代がひとつの転換期だったかな。すごい暇だったから、みんなとりあえず聴いておきたいとか、新しいものをなにか入れておきたい、みたいなのは感覚的にあったから。
アサノ : そのときの感覚は忘れたけど、なんとなくバンドを組んでいる気でいた感じもする。スタジオに入って遊んだりしてMONGOL800とかDragon Ashをコピーしていたし。でもそこでどうやってオリジナル曲を作ってバンドを進めていくかというのは全く考えてなかったし、いつかやるんだろうなっていう感じはあったかな。ただバンドをやろうって言い出したやつが負けゲームみたいな感じもあってね。
ヨシダ : 当時はスタジオに入って遊ぶっていう選択肢はよくあったよね。
──そのときオオイさんは一緒にやっているわけではないですよね?
オオイ : うん。1個下にもケンちゃんみたいなやつがいたんですけど、そこでバンドを組もうみたいな話もあったんですよ。結局やらないで終わりました。
モリタ : 結局なんにもやらないみたいなことはめっちゃありましたね。
アサノ : そこでも言い出したら負けゲームが(笑)。
モリタ : クズだよね(笑)。
アサノ : うん(笑)。ヨッシーとかそういうときどう思っていたの?
ヨシダ : いや、ほんとに何にも考えてなかった(笑)。
アサノ : あははは! そうだよね。こういうやつが結構多かったんですよ。それでみんなが本気になったらおもしろいなっていう気持ちもあったけど、まぁ本気にはならないだろうなとも思っていたし。
──そのまま本気になることなくそれぞれが働きはじめたりして。
モリタ : まぁとにかく俺はこの街も嫌だし、この集団にいるのも嫌だったから、働くという選択肢を取った感じですね。
これなら一生できるって思った
──それからなんで本気でバンドをやろうと思ったんですか?
モリタ : 楽しめると思っていた仕事がつまらなかったことにすごくびっくりして。それが結構辛くて。このままだとやばいなと思ったし、正直バンドをやりたい気持ちもあったから。それで28歳の時に、本気で言ってみようと思って。
──ナオさんからみんなを誘ったんですね。
モリタ : そう。当時のケンジはいま思うとほんとにやばい生活をしていたし、たぶんやるだろうなって。それで最初にケンジに話したら「やる」と。ヨッシーが当時働いていたところも本物のブラック企業で、精神的にちょっとイっちゃってるくらいだったから、誘ったんですよ。そうしたら次の日に本当に仕事をやめてきて(笑)。それで3人でバンドをはじめて。だけどぜんぜんうまくいかなかったからドラマーを入れなきゃってなって。なんとなく頭の中にはナオユキを入れようってあったから、地元のお祭りでナオユキをハントして。
オオイ : 緊迫している感じはぜんぜんしてなかったっすよ。「うん、やる〜」くらいの感じ(笑)。
モリタ : みんな誘ってからの反応が早かったっすね。
アサノ : 友達がみんな仕事でバラバラになってきていて、楽しく生活して行くのが無理だと思っていたし、この人たちの誰かとなにか一緒にやりたいという気持ちはあって。それがバンドじゃなくても、誰かが本気になってやろうっていうのであればそれに乗っかって頑張れたらいいなと思ってた。でもナオが「バンドをやろう」って言ってきた時は内心で「一番おもしろくなかったこいつかぁ……」とは思いましたけどね(笑)。
一同 : 爆笑。
モリタ : ひどいよ! 俺しかいなかっただろ(笑)!
──あははは! いざバンドをはじめてみてどうでした?
モリタ : はじめた時は、とんでもなく楽しくてびっくりしたんですよ。はじめて4人でレコーディングをしたのが“GROUPEEEEE”で。その時のことはすごい覚えていて。これなら一生できるって思ったんですよ。脳内麻薬じゃないけど、快感がすごすぎて、めっちゃ楽しかった。
アサノ : 楽しかったね。
──「これならやっていける」って、自分たちの作った曲に自信を持てたタイミングってどんなときでした?
モリタ : 俺は自分たちの曲で喜んでくれる人がなんでこんなにいるのか、正直いまも全くわからないです。バンドをはじめた時からやっていることもなんにも変わっていないし。「なんでこの曲で盛り上がってくれるんだろう」ってずっと不思議でしたね。でも自分がいいと思ったことって、意外とみんなもいいって思ってくれるんだという感覚はすごいうれしかった。
アサノ : 俺はバンド友達ができて、同じ目線でバンドをやっているやつが「TENDOUJIの曲、いいね」って言ってくれた時になんとなく自信が出てきたかな。それまではいろんなバンドがごちゃまぜになっているライヴばっかり出ていたから、そんな評価すらされないところでやっていたし。そうやって言ってもらえた時に、俺らのやっていることは間違っていなかったんだなって思えたっすね。
──それはいつごろ?
アサノ : 2015年くらいじゃないかな。バンドをはじめて1年ちょっとのとき。
モリタ : 下北沢ではじめてライヴをしたときじゃないかな。そこからライヴで騒ぎ出す人が増えたり、ダイブする人が増えたりして。そういう景色が見たかったから、なんかうれしかったよね。
──そこからもう3年くらい経つんですもんね。
モリタ : そう。バンドをはじめてもう5年経ってるんですよ。
自然と生まれて来るメッセージみたいなものはやっぱりあって
──今日取材をするにあたって、『breakfast』とか『MAD CITY』を聴き直していたんですけど、やっぱりサウンド的な進化はすごく感じて。でもそれは変に意識して変化をしているわけじゃなくて、すごく自然に進化している感じがあったんですよ。
モリタ : 好きなことを詰め込もうという気持ちは変わらないんですけど、やっぱりこの1、2年でいろんな人にライヴを観てもらえるようになってきていて。もっと伝えたいとかもっと知ってほしいという欲はすごく強くなっているかもしれない。
──「COCO」の歌詞を見て、バンドのメッセージとして届けていく使命感みたいなものが出てきたのかなとも感じて。
アサノ : スタンスが固まってきた感じはありますね。
モリタ : まさにそうですね。バンドに使命があるとは思わないけど、自然と生まれて来るメッセージみたいなものはやっぱりあって。自分たちがそれを伝えることは、もしかしたらすごくナチュラルだし、いいことなんじゃないかなって思います。
アサノ : それこそ、自分らは28歳でバンドを組んだことも、流れとしてはすごくナチュラルで。結果として、お客さんたちが「28歳からバンドをはじめていることって夢があるな」って言っているのを見て、逆にこっちが気づかされることもあって。ナチュラルなものがそういう風に見られるのであれば、それはメッセージとして受け取ってくれる人も絶対にいるだろうし。そこは自分たちのスタンスとしておいた方がいいなって。それは他のバンドにはできないことだと思うから。
──TENDOUJIはそこに対する劣等感みたいなものも見えてこないし、そここそが魅力なのかなって思うんですよね。
モリタ : これまで劣等感を感じてきた人生だったんだけど、バンドがはじまった瞬間にその劣等感をすべて強みに変えないといけないから。そんなことを感じている時間がもったいない。若いっていいなとは思うけど、あんまり気にしていないかな。やっぱり曲が良くなかったら終わりだと思うし。
──劣等感を狙って出しているとか、「これをやったらおもしろいでしょ?」っていう感じが見え透いたバンドっていっぱいいるじゃないですか。
モリタ : いる! めっちゃ嫌い(笑)。
──僕もそれが見えちゃうとすごく嫌なんです。やっぱり「いまからおもしろい話をします」ってはじまる話って、だいたいおもしろくないじゃないですか。でもTENDOUJIはさらっとナチュラルにおもしろいことをやっているし、作品を重ねるごとにそこに説得力が出てきているなって。
モリタ : それはバンド歴が短いからっていうのもあるかもしれない。バンド歴が長くて、俺らの年齢だったら、そうやって劣等感を感じることもあったかも。
アサノ : 逆に年を取っていてよかったなって思います。
オオイ : それは絶対あります。20代前半でバンドをはじめても絶対無理だった。
アサノ : 邪魔な感情がないからやっていけるよね。20代前半でいまの状況になっていたら、絶対に調子に乗っていると思うし。
モリタ : あとそこまでのエネルギーもなかったと思う。自分たちは普通の家庭で恵まれて育ってきたし、この街も何不自由ない街だし、特にコンプレックスもなかったんですよ。でも28歳になるまでに不遇な時代を過ごしてきた分、ものすごくエネルギーが溜まっていたんです。それをアウトプットするパワーが強いからこそ、いまバンドができていると思うし。
願っていたものが叶うという経験をしてしまったんですよね
──バンドをやるモチベーションも徐々に変わってきている?
モリタ : 変わってきているというか、見えてきているという感じかな。バンドをはじめたばかりの時は下北沢でライヴをするということでさえイメージになかったし、もちろん何万人、何千人の前でライヴをすることもイメージできていなかった。当時は現実味がなさすぎたし。でもいまなら「フジロックの一番大きいステージに立ちたい」って堂々と言えるようになってきた。やりたいことは変わらないけど、経験とか歩んできた道でやっと見えるようになったのかもしれないね。
──そういったイメージを着実に実現させることがモチベーションになってるんですね。
モリタ : うん。そうだし、やっぱりそれが楽しいかな。いまの目標が叶う頃にはまた次のイメージも自然と出てきているだろうし。
アサノ : 基本的に願い事は叶わないものだと思って生きてきたんだけど、願っていたものが叶うという経験をしてしまったんですよね。フジロックに出れちゃうんだ、ティーンエイジ・ファンクラブとライヴできちゃうんだ、って。今年はその経験ができたのはめっちゃデカかったですね。そういうものが叶わない人生だったから自然と自分の中で制限をかけていたけど、そこの制限はもういらないのかなと。
──去年『FABBY CLUB』を出したことによって、アレンジとかサウンド的にも変化してきてますよね。そういう部分でもおもしろさを感じてきている?
モリタ : うん、どんどん楽しくなっていますね。音楽をやっている中での発見がおもしろくて。あれはね、一生できますね。飽きない、とにかく飽きない。もっといろいろ知りたいし、俺はプライベートもいらないなと思ってしまうときもある。みんなはわからないけど(笑)。
──“COCO”って、激しい感じだけではなくて、すごく聴かせる部分もあるし、これまでのTENDOUJIになかった曲ですよね。
モリタ : やりたいことと、認められたい欲が重なったときに、作品としてこういう感じになったのかなって。
──ライヴでも騒ぐお客さんもいるだろうし、じっと聴いている人もいるだろうし、いままでナオさんが求めていた“お客さんが各々自由にライヴを楽しむ”ことができる曲なのかなって。
モリタ : それはうれしい。
アサノ : いままでで一番お客さんがどういう反応をするのかが見えづらい曲ですよね。いままでのナオの曲だったら、印象的なビートが引っ張って、客がこうやって聞くんだろうなってイメージがパッと浮かんでいた。“COCO”はTENDOUJI節はあるけど、あんまりそういう部分がなかったというか。ライヴで聴いてはしゃぐのか、揺れるのか、みたいなことはめっちゃ楽しみっすね。
──ケンジさんは曲作りの部分で変化はありました?
アサノ : 俺はあんまり変わらないですね。やっぱりTENDOUJIのリードとなる曲はナオの曲だから、そういうことも考えるべきだし、考えることもかなり増えてきていると思うんです。だからこそ、俺はあんまり考えない方がいいんじゃないかなって。楽曲の幅もあるのがいいと思うし、おれまで考え出しちゃうと、逆に幅が狭くなっちゃうと思う。一番最初に曲を作った時と同じイメージで曲を作ろうとしています。
──“Magic Hour”はどんなイメージで作ったんですか?
アサノ : 俺の曲は基本的にお客さんに求めることもなくて。シングルのカップリングになる曲だから、ちょっと明るい方に寄せてはいますね。バンドをはじめたときは、2000年代のガレージ・ロック・リバイバルの感じとか、オアシスの“Don't Look Back In Anger”の感じとか、ビートルズの初期のスタンダードっぽいメロディーのものをやりたかった。でもこれまではどうしても技術的に追いつかなかったんですよ。だからこういうタイミングで“Magic Hour”みたいな曲ができてよかったですね。割と満足ですね。
──“TIME AFTER TIME”のカヴァーもめちゃくちゃいいし、シングルとしていい作品になりましたね。
モリタ : いまはもうシングルってもはや求められてないじゃん。だけどこうやって作ってみると、昔あったようなシングルらしいシングルになったのかなって思うかな。
取材協力
ちゅうかはうすエッセン
住所 : 〒270-0034 千葉県松戸市新松戸7丁目184-2
TEL : 047-341-9976
営業時間 : 11:30〜15:00 / 17:00〜22:00
定休日 : 水曜(祝日の場合は翌日)
企画、編集 : 鈴木雄希
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新→古
過去の特集ページ
LIVE SCHEDULE
TENDOUJI TOUR PINEAPPLE 2019-2020
《TAIBAN 2019》
2019年11月08日(金)@千葉 LOOK
出演 : TENDOUJI / スカート
2019年11月09日(土)@埼玉 北浦和 Livehouse KYARA
出演 : TENDOUJI / スカート
2019年11月17日(日)@栃木 宇都宮 HELLO DOLLY
出演 : TENDOUJI / tricot
2019年11月21日(木)@新潟 CLUB RIVERST
出演 : TENDOUJI / ズーカラデル / ザ・ジュアンズ
2019年11月22日(金)@石川 金沢 vanvanV4
出演 : TENDOUJI / ズーカラデル / Helsinki Lambda Club
2019年11月26日(火)@香川 高松 TOONICE
出演 : TENDOUJI / ドミコ
2019年11月28日(木)@京都 磔磔
出演 : TENDOUJI / ドミコ
2019年11月29日(金)@兵庫 神戸 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
出演 : TENDOUJI / ドミコ
《ONEMAN 2020》
2020年01月11日(土)@北海道 札幌 BESSIE HALL
2020年01月13日(月祝)@宮城 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
2020年01月16日(木)@岡山 PEPPERLAND
2020年01月17日(金)@福岡 the Voodoo Lounge
2020年01月24日(金)@大阪 心斎橋 Music Club JANUS
2020年01月25日(土)@愛知 名古屋 CLUB UPSET
2020年02月14日(金)@東京 恵比寿 LIQUIDROOM
TENDOUJI Presents “HUNG!GET!TAG!NIGHT!!! vol.4″〜リベンジ編〜
2019年12月27日(金)@大阪 心斎橋 Live House Anima
時間 : OPEN & START 23:00
出演 : TENDOUJI / バレーボウイズ / DENIMS / Helsinki Lambda Club / DJ DAWA (FLAKE RECORDS) / DJ SHOTA-LOW (ABOUT MUSIC) / DJ yup
【詳しいライヴ情報はこちら】
https://thetendouji.com/live/
PROFILE
TENDOUJI
2014年、中学の同級生であったモリタナオヒコ(Vo / Gt)、アサノケンジ(Vo / Gt)、ヨシダタカマサ(Ba)、オオイナオユキ(Dr)により結成。
自主レーベル〈浅野企画〉を設立して、これまで3枚のEPと1枚のフル・アルバムをリリース。類まれなメロディー・センスと1990年代のオルタナ・シーンに影響をうけた爆発力のあるサウンドを武器に、全ての会場をハッピーなグルーヴに包みこむ4人組バンド。
2018年には〈RUSHBALL〉〈BAYCAMP〉などの国内フェス、そしてアメリカ最大級のフェス〈SXSW〉にも出演を果たす。
2019年2月には、グラスゴーの至宝バンド、TEENAGEFANCLUBの来日公演のサポート・アクトを務める。また〈ARABAKIROCKFEST.19〉〈VIVALAROCK2019〉〈百万石音楽祭2019〉〈FUJIROCKFESTIVAL'19〉〈WILDBUNCHFEST.2019〉など大型フェスに続々と出演し、シーンを席巻。
2019年11月6日に初のシングル「COCO」の発売が決定。11月8日(金)からは、ツアー〈TENDOUJITOURPINEAPPLE2019-2020〉も開催。
東京インディ / オルタナ・シーン屈指の愛されバンド、TENDOUJI。
【公式HP】
https://thetendouji.com
【公式ツイッター】
https://twitter.com/tendoujitw