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2024-10-27

投票時間繰上に文句言う奴へ

Xで話題になっている読売新聞記事。それとX上の反応を見て暗澹たる気持ちになったので記す。

投票所「夜8時まで」は立会人負担…きょう4割で早じまい、経費節減も」

引用元読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241026-OYT1T50085/

なお、これは今年基礎自治体から広域自治体転職した1人の地方公務員の考え方だし、サンプルもn=1なのでそこは差し引いて読んでくれ。

しかも、選挙管理委員会に配属になったことはないので、ちょっとズレたこと書いてるかもしれん。

Xで主に言われている感想

・こんなに大急ぎで違憲解散選挙やって、自分達の旗色が悪いから「投票所早く閉めちまえ」って圧力かけた

政党が全国の市区町村に直接「投票時間を短くしろ」なんて圧力かけるわけないだろ。

・まっとう感覚なら「急いだ日程で申し訳ありません」と言って投票所やすとこでしょ。よりによって『経費削減』だよ。庶民に関わることは全部経費削減なんですよね。

→さんざん行政効率化を、費用対効果を、民間意識を、って言ってきたのに、選挙だけそれの範疇外になる理由は何?投票所は日頃から市区町村選挙管理委員会選挙人名簿に基づいて偏りが起きないように場所を決めてるんだぞ。選挙人の人数が変わらないのに増やす必要ないだろ。

民主主義の根幹を揺るがす

投票時間を1~2時間早めたところで民主主義の根幹は揺るぎません。平成9年頃までは期日前投票もなかったし投票時間も18時までだったけど、民主主義崩壊なんてしてなかったぞ。

投票されると困る人がいる。投票率が上がると困る人がいる。

根拠不明です。妄言と変わりありません。

・「法定」の投票時間だろ

→「法律」に基づいて繰上は可能です。

公職選挙法抜粋

今回のことで話題になっていることに関連しそうな条文をピックアップするぞ。

全文読みたい人は e-GOV検索してくれ。

投票管理者

第三十七条 各選挙ごとに、投票管理者を置く。

2 投票管理者は、選挙権を有する者の中から市町村選挙管理委員会の選任した者をもつて、これに充てる。

(~略~)

5 投票管理者は、投票に関する事務担任する。

6 投票管理者は、選挙権を有しなくなつたときは、その職を失う。

(~略~)

投票立会人

第三十八条 市町村選挙管理委員会は、各選挙ごとに、選挙権を有する者の中から、本人の承諾を得て、二人以上五人以下の投票立会人を選任し、その選挙の期日前三日までに、本人に通知しなければならない。

2 投票立会人で参会する者が投票所を開くべき時刻になつても二人に達しないとき又はその後二人に達しなくなつたときは、投票管理者は、選挙権を有する者の中から二人に達するまでの投票立会人を選任し、直ちにこれを本人に通知し、投票に立ち会わせなければならない。

(~略~)

4 同一の政党その他の政治団体に属する者は、一の投票区において、二人以上を投票立会人に選任することができない。

(~略~)

投票所

第三十九条 投票所は、市役所町村役場又は市町村選挙管理委員会指定した場所に設ける。

投票所の開閉時間

第四十条 投票所は、午前七時に開き、午後八時に閉じる。ただし、市町村選挙管理委員会は、選挙人の投票の便宜のため必要があると認められる特別事情のある場合又は選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別事情のある場合に限り、投票所を開く時刻を二時間以内の範囲内において繰り上げ若しくは繰り下げ、又は投票所を閉じる時刻を四時間以内の範囲内において繰り上げることができる。

2 市町村選挙管理委員会は、前項ただし書の場合においては、直ちにその旨を告示するとともに、これをその投票所投票管理者に通知し、かつ、市町村議会議員又は長の選挙以外の選挙にあつては、直ちにその旨を都道府県選挙管理委員会に届け出なければならない。

※ちなみに東京特別区は第二百六十六条において市の規定を準用することになっている。

そもそも選挙時間は誰が決めているのか

公職選挙法記載のとおり、投票時間市区町村選挙管理委員会が「選挙人の投票の便宜のため必要があると認められる特別事情のある場合又は選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別事情のある場合」に、法律規定範囲内で時間を変更することができる。

分かりやすいのは離島の例だろう。

例えば、開票時間に間に合わせるためには18時に出発する船に投票箱を乗せなければならない。そのためには16時に投票を締め切らなければならない。

という理由であれば理解されるだろう。

では、今回の経費節減のための投票時間の繰上は「投票に支障を来さない」自由なのか。

個人的見解だが、この程度も認められないのであれば、選挙制度は近い将来音を立てて崩壊するだろう。

このように法律で「市区町村選挙管理委員会」が投票時間の決定権を持っており、そこには国の役人政治家意見を挟む余地はない。

政府圧力投票時間が短くなったと声高に意見をする人がいたら、それはただの「陰謀論に騙されやすい人」である。付き合い方を見直すことをおすすめする。

時間帯別の投票

件の記事で取り上げられていた宇都宮市の例を見てみようと思う。

過去時間帯別の投票状況はHP掲載されている。

https://www.city.utsunomiya.lg.jp/shisei/senkyo/1027895/1027904.html

グラフだけなので細かい数字は分からないが、令和3年度の衆議院小選挙区時間帯別投票数を見ると、ピークの1011時では20,000を超える投票がある一方、19時~20時は5,000を切っている。4分の1以下である。18~19時と比較しても半分程度の投票である

単純に考えて、時間帯によって投票所運営コストが4倍以上かかっているということである

自分従事していた投票所もだいたい同じような状況だった。酷いときは1時間あたりの投票者数がピーク時の10分の1程度のときもあった。

事務効率化、行財政改革が叫ばれている中、選挙けが改革から外れる合理的理由があったら教えてほしい。

事務従事者の負担

また、記事においては立会人負担についても言及があった。

ここでは立会人だけでなく事務従事者全体のことを考慮して記載する。

投票所における事務従事者は最低でも次に挙げる程度は必要である

投票所によるが、だいたいこれらの人員が、準備片付けも込みで午前6時から午後9時まで15時間拘束される。

以前の勤務先では、選挙管理委員会職員と、選管応援の総務系職員を除いて、投票従事者と開票従事者は分けられていたので、これまたXで話題となっている「6時~27時勤務ののち、翌8時半から常勤務」といったことは経験がない。

ただ、小規模自治体の話を聞いていると、投票事務開票事務兼務があるようなので、マンパワーが少ない自治体ほど厳しい状況に置かれてるのかもしれない。

以前の勤務先では15時間投票所勤務をして、主事級の日当が3万弱~3.5万弱だ。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは自由だが、「この金をもらえなくていいから、許されるのであれば選挙従事したくない」というのが市区町村職員の主流意見じゃないだろうか。同業者意見ヲ求ム。

自治体によっては日当じゃなくて時間対応という神みたいなところもあれば、週休振替という地獄煮凝りみたいなところもあると聞いた。

主な負担

選挙事務は、市区町村職員のほぼすべてが何かしらの形で関わる上に、派遣アルバイト)も入れている。

このうち投票管理者は、投票事務をよく分かっている人でないといけないため、大抵は市区町村職員が割り当てられる。立会人職員でもいいし、民生委員保護司スポーツ推進委員自治会役員など、専門知識がない人でも構わない。まあ打診したところで断られるケースも多いんだけどね。

余談になるが、令和元年に専任要件が緩和され上記2つの職の要件が「選挙権を有する者」になった。それまでは選挙区内から投票管理者立会人を見つけなければならず、勤務先市区町村居住する者が割を食っていたが、この改正は大きかったなと思う。

地方公務員数の減少と期日前投票所の充実

令和5年度と、期日前投票が始まった平成15年度と比較すると、全国の地方公共団体職員数は約30万人減少している。

一方で期日前投票制度は年々充実してきており、事務負担は増える一方である

投票所運営なんてほぼ全てアルバイトだけでいいだろという意見もあるかもしれないが、ただでさえ人不足の中アルバイトだけでどれだけの人が集まるだろうか。

そもそも投票数と投票用紙の数が1枚でも合わなかっただけで記者発表沙汰になるというのに、アルバイトに票数管理をさせるなど正気の沙汰ではない。

銀行毎日の帳簿と現金のチェックを日雇い派遣に任せるか?飲食店シフトに初めて入るアルバイトレジの締めを任せるか?

当たり前だけど、市区町村正規職員が担うべき領域外注できない。

費用節減を目的とした投票時間の短縮は悪なのか

これまで書いたとおり、現行の選挙制度は、市区町村職員の多大なる負担犠牲と言ってもいい)によって成り立っている。

期日前投票所は年々充実しており、鉄道が通っている市区町村であれば、主要駅には期日前投票所が設置されているだろう。

期間も2週間設けているところが多いため、調整のしようはいくらでもあるだろう。

単純に投票時間を短くするのではなく、期日前投票所の拡大や移動式投票所の導入、その他さまざまな取組を行った上での投票時間短縮なのだ

人口減少の局面において、今後市区町村職員は減少することはあっても増えることはないだろう。

市区町村職員団体交渉権争議権制限されているからこその犠牲によって成り立っているだけであって、団体交渉や争議に発展してもおかしくないレベルのことを要求されている。しか選挙のたびに、だ。

抜本的な改革をしなければ現行の選挙制度2050年くらいには崩壊しているんじゃないだろうか。知らんけど。

まとめ

投票時間の短縮について言及する前にもっと制度勉強しろ

市区町村負担限界突破している

日当もらえなくてもいいか選挙従事は断りたいレベルの最悪業

2023-08-01

anond:20230801120229

トライキ(英語: strike)は、労働者による争議行為一種で、労働法争議権行使として雇用側(使用者)の行動などに反対して被雇用側(労働者特に労働組合)が労働を行わないで抗議することである日本語では「同盟罷業」(どうめいひぎょう)あるいは「同盟罷工」と呼ばれ、一般には「スト」と略される。

2022-11-20

なんだっけ。忘れないうちにメモ


最近ゴッホ絵画など芸術作品トマトスープをかけたり、ウォーホルアートカーに小麦粉をかけたりする気候変動対策を訴えながら過激抗議活動が耳目を集めている。

ブクマもよくされているが、ほとんどが環境テロ、という認識で眉をひそめたコメントにあふれている。

もちろん許されない犯罪として国内外報道されているわけだが、しかし、海外メディアでは、テロという表現ラベリング)は少なく、抗議団体自称するCivil resistance市民抵抗)という表現を紹介していることが多い。正直、この種の活動で昔から有名なグリーンピースもそうだが、テロ呼ばわりされてもおかしくない運動ではあることは確かだが、報道ニュートラルに構えているのだろう。

そんなおり、斎藤幸平が、「ゴッホ名画にスープ投げ」を理解しないのは、日本人想像力の欠如だ、と述べてブコメから総すかんを食らっていたのをみかけた。

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/toyokeizai.net/articles/-/631285

しかそもそもテロという認識日本では強いのはわかるけれど、実は欧米での反応というのはそれほど強くなく、むしろ彼らが自称するCivil resistanceへの一定の理解の上に立った報道も多く見受けられるように思える。

https://time.com/6234840/art-climate-protests-margaret-klein-salamon/

そして、よく考えると、そもそもテロまがいのデモというのは、現代人権歴史を振り返ると、一定程度、社会変革の不可避な副産物として、憲法などのシステムビルトインしてきた経緯がある。典型的かつ最初の事例は、20世紀初頭の資本主義社会における労働環境を前提とした社会権。

この問題は二つの視点から興味深く、注視している。

ひとつは、抗議のコンセプトの抽象性。

もうひとつは、抗議運動市民社会的な価値

抗議運動抽象性について。

https://artnewsjapan.com/news_criticism/article/508によると、世界的な環境活動グループ「Extinction Rebellion」の共同創設者であり、ジャストストップ・オイル活動に加わっているサイモン・ブラムウェルは、アートニュースインタビューで、若い活動家がこの抗議行動のスタイル選択した理由を次のように説明する。

「これはアートの美しさを否定するのではなく、今の私たち優先順位絶対的おかしいということを言いたいのです。アートに美を見出しギャラリーを訪れる人たちがいる。にもかかわらず、消えつつある太古の森の美しさや、日々絶滅していく何百もの生物たちには目を向けないのです」

アートの美しさを否定しないといいつつ、美の概念の相対化というか、再構築といった意味では、形而上学的な禅問答である

この説明を聞いて、素直に納得できる人の割合が多いか少ないか、という視点でみると、ヨーロッパに比べると恐らく日本人は少ないだろう。

アリストテレス時代から愛だの美だの徳だのといったことをテーマに発展した形而上学から学問が枝分かれしてきた欧米と、近代以降のすでにたこつぼ化した個々のジャンルとして完成形をみた成果を受け取ってそれを解読して発展してきた日本では、こういう抽象的なテーマの抗議の趣旨理解できるのは圧倒的に少ないだろうと想像できる。

これは、作品の美の価値が分かればわかるほど、スープをかける行動の意図もわかる、という構図でもあり、実際、被害を受けた美術館環境問題の意義に言及するなどしている。作品に接したこともなく、それこそ「ウォーホル」だ、「ゴッホ」だと資産的な記号程度にしか理解していない人ほど抗議行動の意図自体を測りかね、なんじゃこの奇行は?という反応になっているようにみえる。

そういう意味では、当然、環境急進派の行動は、そもそも抗議の意図が分からない地域では成功しない(日本ではテロ以外の認識は生まれないだろうし、絶望的に無理だろう)。

しかし、欧米では、意外と功を奏しているのかもしれないと思える。感心はしないが、ああ、なるほどね、くらいの素養のある人は日本よりは多いだろう。

おおざっぱにいうと、日本人経験から教訓を得て社会設計をしていくのが得意。いわば帰納法的な解決が染みついている。一方、欧米、ひろくラテン系言語圏含めて、日本人とは比べ物にならないほど、なにかにつけ演繹的な入り方をする。言葉定義からまり指導原理を引き、タスクを明示する、という物事の進め方へのこだわりが強い(日本人自分からみると)。

組織でも、経験常識が共有できていないと不安なのが日本人

一方、構造化された概念ルール化された行動原理(法)にのっとって行動する、という相互の信頼がないと不安なのが欧米社会。そこに、デモ過激運動の機会に、自分たちが共有していない別の概念オルタナティブとして提示されたときにみせる反応というのは、おのずと異なる。


そのもうひとつ理由が、市民不服従という考え方や人々の認識の違い。

日本人社会迷惑をかけるのがとにかく大嫌いなのだ

欧米では、恐らく日本人想像している以上に、Civil resistanceというアプローチ自体価値社会変革のダイナミズムとして認めている。

それが今回の場合、限度を超えたものであり、法的に違法である、というときに、運動趣旨理解はするが違法である、という具合に飲み込みながら。

この違法性というのは、実は重要視点。それを理解するには、市民社会根本から支える憲法など、法について考えないとわからない。

近代から現代20世紀に法の考え方が近代法が大きくバージョンアップした際に、社会権が組み込まれたのは、中学生で習う話。

日本学校では昔から社会権を生活保護など、上から目線な形で教えてきた傾向があった。

しかし、社会権のうち、争議権を思い出してみればわかるように、実際はボトムアップな契機をはらんでいる。

他者危害禁止近代法の原則をはみ出した形で、ストやピケなど市民的な抵抗暴力性を認める市民権が存在する。

考えてみれば、他者に損害を与え暴力的な行動をとっていい、というのが「労働」に関してのみ例外的憲法に組み込まれている、というのは、よくよくなぜなのか歴史を知っておく必要がある。一歩間違えれば、革命トリガーになりかねないボトムアップ暴力。これをあえて憲法に明記するのは、明記することでコントロールしたいという、上と下のせめぎ合いのようなものも感じる。しかし、なんだったらいつでも政府おかしければ転覆して革命をおこせるんだぜ、と市民に思わせておく、オーナーシップ感覚絶妙バランスで持たせる機能果たしているともいえる。

マルクス時代、そしてワイマール憲法時代社会権を育んできた思想運動社会歴史のなかで、当時「労働」が最重要課題で、社会権の大きな柱として考えられたのは自然な流れだっただろう。抵抗暴力は、労働問題を争うツールであるというのが20世紀だった。しかし、抵抗暴力資本主義社会のなかで、たまたま労働キーワードになっただけであって市民社会としては、労働である必然性はない。20世紀には「環境」といったテーマシステムビルトインされなかったわけだけど、80年代後半にブルントラント委員会が「我ら共有の未来」といって今日SDGの原型となるコンセプトを立ち上げたときに、労使間に代わる、世代間の闘争といったことがテーマになりうることはうすうす予測がついていたように思う。

なので、抵抗暴力労働問題ではなく、環境をめぐる世代問題だとしても、その新たなムーブメント市民社会における意義が注目されるのも自然な流れだ。

ここで、はい違法です、はいテロです、といってしまうのは簡単だが、思考は停止する。


一方日本では。

労働」というキーワード戦後日本ははじめて市民不服従権利を手にした。市民社会における抵抗という考え方に「労働」というコンセプトが、時代要請でむすびついていた、というのは押さえておくべき文脈

GHQの五大改革から。勤労者から労働者への主体認識の転換。

しかし、その権利過激行使は、1950年代から60年代大衆の心を猛烈にイラつかせた。

日本高度経済成長を支えた大手企業は、大規模な争議に悩まされた。

民間では、1960年三井三池炭鉱紛争など半年を超える争議も珍しくなかった。しかし、ほぼ100%ユニオンショップで、従業員全員が労働組合員という会社組織風土のなかでは、会社家族みたいなものであり、労使一体みたいなのが当たり前であり、60年をピークに民間の争議はピークアウトする。そのなかにあって、国鉄だけは年中行事のように、順法闘争ストライキを繰り返して市民生活に甚大な影響を及ぼし、会社のみならず社会的に損害を与えた。さらベトナム戦争反対や成田闘争など、新左翼政治闘争が加わっていくなかで、日本人のいら立ちは頂点に達していく。

国鉄やら共産党やら新左翼にひどい目にあわされた、という日本社会のこの経験というのは、争議だなんだといっても社会迷惑をかけてはいけない、という教訓を強く残し、憲法に組み込まれ暴力的な契機をできるだけ抑制的にするべきだ、という認識支配的になるきっかけだったんだろう。1973年最高裁は、それまでリベラル保守裁判官の間で揺れ動いていた官公労組の争議権の是非について、完全に保守化の方向に舵をきり、封殺する結論に至る。公労協のスト権奪還スト(1975年)を時代の潮目に、公社民営化路線が進められていく。争議権だかなんだが知らないが、憲法に書いてあったとしても、市民としては正直、うんざりしてしまったというところだろう。戦後、長い間、政治闘争旗手として大きな存在だった総評、そしてその大半を国労が占めていた時代は終わる。

ということで「労働」をキーワードにせっかく手に入れた不服従暴力は、迷惑をかけんじゃねーという市民社会常識を繰り返し強化する経験を重ねることにより、空洞化した。

その後の日本社会では、エスタブリッシュメントと化して長い間、社会運動の先頭に走っていた労組が今度は勢いを失うと、どういうことになるか。

例えば、正規雇用非正規雇用ギャップみたいに新たな問題が浮上してきたとしても、ユニオンショップ非正規も入れてあげたほうがいいんじゃない?、という手続き的な、上から目線的な議論の仕方に収れんしてしまう。日本社会があまりにも保守化してしまって、そもそも争議という暴力的な手法は何のために憲法というシステムに組み込まれたのか、根本的な思想がわからなくなってしまっているようにも思える。言い換えると、憲法さらメタ視点からとらえる思想的な背景がさらに弱くなっている。

歴史を振り返ると、20世紀初頭、メタ視点があったからこそ、資本主義社会の現状と課題に即して、社会権という新しい権利が組み込まれたのだが、現行憲法を頂点とし、人権普遍性憲法の最高規範性を強調してしまうと、憲法思想根拠はと問われたときフリーズしてしまう。日本では制憲者の意思議論は起こらず、代わりに基本書読め、といってなぜか憲法学者に振られるのが定番。(制憲者があいまいなのも諸悪の根源かもしれないし、ステートに対するネイションオーナーシップの違いとも思える。)

欧米環境運動というのは、あるいはLGBTも同様だけど、恐らくそうじゃないんだと思う。

既存規範に書いてないものであっても、新たなムーブメント意味真剣に見極めようとする思想文化があるんじゃないと思える。

そのムーブメント暴力性を違法認識しつつも、時代ダイナミズムとしてとらえようとする、というか。

繰り返すと、

・美の概念など、概念の構想力、概念について深く考えたがる文化の違い。

憲法など国の根本的なシステムアップデートするのに必要社会ダイナミズムへの関心の低さ。

この二つをひとまとめにして、斎藤平氏のように想像力の欠如といってしまえるのかもしれないが、因数分解すると、社会設計をするのに基本的重要な2つの能力、この二つには欧米社会と大きく差があるように思える。

2022-02-02

anond:20220202030521

日教組みたいな大きな集団なら意味あると思う

あれくらい大きくないとダメだろうな

あとは素人ながら公立先生争議権がないから、定時に帰ったり部活拒否する事ががストライキと見做されたらアウトじゃないかなという疑問もちょっとある

2020-08-05

anond:20200805193502

あるよ。

法的な位置づけは職員組合争議権はないとされているけど、政治活動バリバリやってる。

2020-07-11

anond:20200711062613

給料分の働きをしない労働者も多数いるかお互い様

サビ残って言っても、中間管理職と部下とのコミュニケーション不全による労働生産性絶望的な低さが原因のものが大半だと思う。

要は、部下が上司の想定するように動いてくれないからなんだな。(部下が悪いとは言ってない。念のため。教育研修まで含めて会社責任

会社組織は多かれ少なかれ軍隊組織モデルに作られているから、上意下達報連相機能しないと身動きが取れない。

労働者には争議権があるとか言っても、会社が回って利益が上がっているのが大前提

やりたいことと違うとか、上司と合わないとか、やめたくても次がないとか、なりたい自分が見えないとか、そういうのは全部たわごとと言わざるをえない。

2015-06-16

(三) そこでまず、学説を通覧するに、

(1) 正田彬著官公労法二〇頁によれば、「官公庁建物を作つたり、官公庁

器物を買入れたりする時は、やはり官公庁は一応対等な立場商人と取引する。と

ころが官公庁労働者を買入れる時だけは任命とか任用とかいつて一方的行為

あつて、売り手は承諾するだけ-それも承諾しなかつたら失業から事実上強制

ということになる-というような考え方がそもそもおかしいのではないだろうか。

やはり官公庁労働関係労使関係契約関係だという原則すなわち労働力の売買

取引だという原則にしたがつて考えられることが必要であろう。」というのであ

り、

(2) 労働法一一号一六七頁林氏論稿「公労法上の団結権団体交渉権について」

によれば、「郵政林野等の五現業政府機関でも同様であつて、経済的活動を行

うにとどまりその事業性格公共的なものとは認められないからその労働関係

ついてもたかだか強化された私法関係のものと解される。」というのであり、

(3) 松岡三郎・大野正雄・内藤功共著条解公労法・地公労法(三八八頁~三九

〇頁)によれば「公労法は争議権制限をしているが、労組法・労調法と同じく労

使対等の原則、私的自治の原則によつて貫らぬかれているのであつて、その間これ

公法権力関係とみる何らの規定もない」とされている。

 右論稿部分は、公共企業体従業員労働関係が私法関係であることを強調する

諭調となつており、その公労法の対等原則、私的自治を根拠とする理論を貫らぬけ

ば、公労法の適用をうける現業公務員もまた公共企業体従業員と同じ結論に達す

る筋合である

 また、地方公営企業労働関係適用下の地方公務員に関する昭和四〇年一二月二

日東地方裁判所判決めぐり労働法律旬報社が実施した各学者に対するアンケ

ートは、回答者一一名中一〇名までが右公務員労働関係は私法関係と解すべきで

ある旨回答しており(疎甲第一四号証)、明治大学教授松岡三郎氏も同旨の見解

ある(疎甲第一五号証)。

 なお地方公務員法で「免職」と規定している(同法第二八条、第二九条等)に対

地方公営企業労働関係法で争議行為違反に対して「解雇」と規定している(同法

一二条)点を指摘している学者があるが、このことは国家公務員場合も全く同

現象がみられるのであつて、一般の国家公務員場合は「免職」と規定している

国家公務員法第七五条、第七八条、第八二条等)に対し、公労法適用下の国家

務員が争議行為をした場合については同法第一八条で「解雇」と規定している(国

公務員法第一八条)のである

(四) 次に我が国裁判例をみるに、次に挙げるものはいずれも、労使対等原理

私的自治の原理に立つて立論している。

(1) 国鉄職員に関するものとして、東京地方裁判所昭和三八年一一月二九日判

決(判例時報三六四号一四頁)

(2) 専売職員に関するものとして、広島地方裁判所昭和三八年五月七曰判決

(別冊労働法律旬報四九〇号一四頁)

(3) 公立学校教諭退職処分無効を前提とする公法上の給与支払請求を本案

とする仮処分を認めたものとして、松山地方裁判所昭和三四年一一月二〇日判決

判例タイムズ九九号一〇〇頁)

(4) 国鉄職員に関するものとして、

(イ) 東京地方裁判所昭和二四年八月八日判決

労働関係民事々件裁判例集七号八六頁)

(ロ) 東京地方裁判所昭和二四年一〇月一〇日決定

労働関係民事々件裁判例集七号一〇九頁)

(ハ) 福岡地方裁判所昭和二五年三月一七日決定

労働関係民事々件裁判例集七号一二二頁)

(ニ) 東京地方裁判所昭和二五年二月二五日判決

労働関係民事々件裁判例集七号一六〇頁)

(ホ) 大阪地方裁判所昭和二五年五月一一日判決

労働関係民事々件裁判例集七号一四一頁)大阪高等裁判所同年八月一二判決

労働関係民事判例集一巻五号九三二頁)

(ヘ) 大阪地方裁判所昭和二六年一〇月一〇日判決

労働関係民事判例集二巻四号五一八頁)大阪高等裁判所昭和二八年一月一三曰判

決(労働関係民事判例集四巻一号四〇頁)

 ことに、前記アンケート対象となつた東京地方裁判所昭和四〇年一二日二七日

判決は、「地方公営企業の職員の勤務関係は私法的規律に服する契約関係とみるの

が相当であり、本件解雇行政処分であるとすることはできない。」と判示してい

るのであつて、地方公営企業体労慟関係適用下の地方公務員と公労法適用下の国

公務員とは、地方公務員法国家公務員法関係において、理論上および実定法

体系上全く相照応するものであり、右東京地方裁判所判決論理は、そのまゝ本件

にあてはまるものである

(五) 立法経過の概観

(1) 昭和二二年の国家公務員法制定により、従前官吏の勤務について認められ

ていた無定量の勤務の観念否定され、公務員の勤務関係契約関係とみるのが適

当とされるようになつた。

 そして公務員にも団体交渉権、協約締結権が認められ、当時現業公務員特別職

とされていた。

 ところが昭和二三年の法改正により一般職に移され団体協約の締結が禁止される

に至り、一方国鉄、専売事業公職から除外し公共企業体労働関係法の適用をうけ

ることとなつた。

 その後昭和二七年八月一日公共企業体労働関係法として改正施行され、いわゆ

る五現業もまた、この法律適用をうけることとなり、再び団体交渉権、協約締結

権を取得した。

 右法改正労働関係調整法等の一部を改正する法律案)の提案理由中で政府

公務員のうちでも郵政その他の現業公務員につきましてはその業務の性格実態

が一般行政事務とは著るしく相違し、むしろ国鉄等の公共企業体に近い点もありま

すので云々」と説明しているのである

 昭和二九年には五現業公務員につき給与に関する国家公務員法規定適用除外

を認めた「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法(昭和二九年

法律一四一号)」の制定により国家公務員法第一八条、第二八条、第二九条ないし

第三二条、第六二条ないし第七〇条、第七五条二項、第一〇六条一般職の職員の

給与に関する法律国家公務員職階制に関する法律昭和二五年法律一八〇号)

規定は除外されるに至つている。

(2) 右の立法経過からも明らかなように、五現業公務員は全くぬえ的な立場

立たされており、ここから幾多の混乱が生じている。

 その顕著な例は公労法第一七条違反による同法第一八条解雇問題である

 公労法第一八条解雇は同法第一七条違反理由として労働契約を解除するいわ

ば通常の解雇であり懲戒解雇ではないといわれる。

 ところが国家公務員法第八二条による懲戒処分としての解雇もまたなし得るとし

て五現業庁は公労法第一七条違反国家公務員法における懲戒処分をもつて対処

ようとする。

 従つて、この点についてはあたかも公労法第一八条国家公務員法第八二条が選

択的に適用し得るような不合理な結果を生じている。このような混乱はいわゆるI

LOのドライヤー報告の表現を借りれば日本においては「政府としての政府」と

使用者としての政府」とを区別しないところから生ずるものであり国際的批判

受けざるを得ない。

(六) ひるがえつて公労法における五現業職員と使用者との関係規律する実定

法が特別権力関係的なものであるかどうかを検討してみるに、

(イ) 公労法第八条労働協約締結権の規定は、明らかに労使対等当事者自治の

原則に立つている。

(ロ) 不当労働行為救済等について、労働組合法上の労働委員会対応する公共

企業体労働委員会が設置され、人事院提訴することができない。

(ハ) 右公共企業体労働委員会がした処分について行政不服審査法による不服

申立が許されない。(公労法第二五条の七)

(ニ) とりわけ本件にとつて重要なことは五現業公務員に対する処分であつて労

組合法第七条各号に該当するものは、行政不服審査法による不服申立が許されな

いことである。(公労法第四〇条第四項)

 右条項の解釈はいろいろ考えられるけれども、少なくとも不当労働行為に該当す

処分に関する限り、当事者対等私的自治の原則に立つ公労法により処理すること

規定したものであることは疑問の余地がない。

(ホ) その他給与に関しても前記国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関

する特例法により、一般職公務員に関する諸法規規定排除されている。

2010-09-16

知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識

※ このテキスト厚生労働省ホームページでも公開されており、ご自由にご使用頂くことができます。

目次

第1章 労働法について

・ 1 労働法とはなんだろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

・ 2 労働法の役割とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

・ 3 労働組合とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

コラム仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス)・・・・・・・・・4

第2章 働き始める前に

・ 1 労働契約を結ぶとき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

・ 2 就業規則を知っていますか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

・ 3 安心して働くための各種保険年金制度・・・・・・・・・・・・・・・7

コラムハローワークではどのようなサービスが受けられるか・・・・・10

コラム新卒者の採用内定の取消しについて・・・・・・・・・・・・・11

コラム障害者雇用について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

第3章 働くときのルール

・ 1 労働条件が違っていたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

・ 2 賃金についてのきまり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

・ 3 労働時間と休憩・休日についてのきまり・・・・・・・・・・・・・・16

・ 4 安全で快適な職場環境のために・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

・ 5 男女がいきいきと働くために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

コラムポジティブ・アクション・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

コラム6 働くみなさんが守るべきルール・・・・・・・・・・・・・・・24

第4章 仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき

・ 1 会社を辞めるには(退職)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

・ 2 会社を辞めさせられるとは(解雇)・・・・・・・・・・・・・・・・・25

・ 3 会社倒産したら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

・ 4 失業給付・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

・ 5 職業訓練、訓練期間中の生活保障・・・・・・・・・・・・・・・・・28

第5章 多様な働き方

・ 1 派遣労働者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

・ 2 契約社員(有期労働契約)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

・ 3 パートタイム労働者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

・ 4 業務委託(請負契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

働く人のための相談窓口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

総合労働相談コーナー

公共職業安定所ハローワーク

労働基準監督署

日本司法支援センター法テラス

※このテキストでは、一部名称の長い法律については、略称で記載しています。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

→(男女雇用機会均等法

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

→(育児介護休業法)

時間労働者雇用管理の改善等に関する法律

→(パートタイム労働法

知って役立つ労働法

働くときに必要な基礎知識

はじめに

このテキストは、みなさんがこれから就職をし、働く際に知っておきたい労働法に関する基本的な知識について、わかりやすくまとめています。ここに書かれていることは全てではありませんが、働いていく上でいざというときに役立つ知識ですので、困ったときはぜひ読み返してみて下さい。また、テキストの最後の部分では、困った際の相談先を紹介していますので、ご利用下さい。

第1章 労働法について

労働法とはなんだろう

 労働法といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではありません。労働問題に関するたくさんの法律をひとまとめにして労働法と呼んでいます。その中には、労働基準法労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法最低賃金法といった様々な法律が含まれています。このテキストではそういった様々な法律で決められている約束事を紹介しています。

労働法の役割とは

 みなさんが会社に就職しようとする場合、みなさん(働く人、労働者)と会社(雇う人、使用者、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束労働契約が結ばれます。どういう条件で働くかといった契約内容も労働者使用者の合意で決めるのが基本です。

だからといって、この契約を全く自由に結んでよいとしてしまったらどうなるでしょうか。

労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。したがって、雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければいけないかもしれません。

また、もっと高い給料で働きたいと言って、会社と交渉しようとしても、

「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、結局会社の一方的な条件に従わなければいけなくなることもあるでしょう。

 このように、全くの自由にしてしまうと、実際には立場の弱い労働者にとって、低賃金や長時間など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。そうしたことにならないよう、労働者保護するために労働法は定められています。労働法について知識をつけておくことが、みなさん自身の権利を守ることにつながります。

 なお、労働法保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、パートアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

労働組合とは

 労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善経済的地位の向上を目的として組織する団体」、すなわち、労働者自分たちの手で自分たちの権利も守るために作る団体です。

 休みも十分にとれずに低賃金で働いている状況をなんとかしたくても、労働者ひとりで会社相手に改善を要求・実現していくことは、簡単なことではありません。要求しても、「君の代わりはいくらでもいるから、嫌なら辞めてくれていいよ」と会社に言われてしまったらそれで終わり、ということにもなりかねないからです。

そこで、労働者が集団となることで、労働者使用者会社)と対等な立場で交渉できるよう、日本国憲法では、

労働者労働組合を結成する権利(団結権

労働者使用者会社)と団体交渉する権利(団体交渉権

労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権争議権))

労働三権を保障しています(日本国憲法第28条)。

そして、この権利を具体的に保障するため、労働組合法が定められており、使用者は正当な理由がないのに、団体交渉を行うことを拒否してはいけないとされています。

 また、労働組合法は、会社が、労働組合に入らないことを雇用の条件としたり、労働者の正当な組合活動を理由に解雇不利益な取扱い(給料の引き下げ、嫌がらせなど)をすることなどを不当労働行為として禁止しています。このような不当労働行為を受けたときは、労働組合側は、中央労働委員会都道府県労働委員会に救済を求めることができます。

もう一歩進んで「労働協約

 団体交渉によって労働組合会社意見が一致し、それを書面にしたものを労働協約といいます。会社が、労働協約に定められた労働条件や労働者の待遇に反する内容の労働契約会社の規則を定めようとしても、その部分は無効となり、労働協約の基準によることになるので、労働者が団体交渉によって勝ち取った条件が守られることになります。

コラム仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス

 仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすものです。しかし、同時に家事育児、近隣との付き合いなどの生活も、暮らしに欠かすことができないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがい、喜びは倍増します。

 しかしながら、現実社会は、安定した仕事に就けず経済的に自立できなかったり、 仕事に追われ、心身の疲労から健康を害してしまう、 仕事子育てや老親の介護との両立に悩むなど、仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られます。

 これらが、働く人々の将来への不安や、豊かさが実感できないことの大きな要因となっており、社会の活力の低下や尐子化・人口減尐という現象にまで繋がっていると言えます。それを解決する取組みが、仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス)の実現です。仕事と生活の調和の実現には、国、企業、そして働く人々自身の取組みが不可欠です。

 仕事と共に個人個人の生活を充実させるため、効率よく仕事をする、業務の状況を見て、早く帰れそうなときは早く帰る、趣味の時間を持つなどの取組みが大切です。

もう一歩進んで

第2章 働き始める前に


労働契約を結ぶとき

みなさんが仕事をするときは、仕事の内容や給料、勤務日などの労働条件をチェックして、自分に合った条件の会社で働こうとしますよね。しかし、条件の合う会社に就職できても、実際に働き始めたら、会社の人が最初に言っていたことと全く条件が違っていた、なんてことになってしまったら、困ってしまいます。そこで、労働法ではそんなことがないように、労働契約を結ぶときには、使用者労働者労働条件をきちんと明示することを義務として定めています。

さらに、特に重要な次の5項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付しなければいけません(労働基準法第15条)

契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)※

② どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

仕事時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間休日・休暇、就業時転換(交替制)勤務のローテーション等)

賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

⑤ 辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間の定めがなく、アルバイトなどパートタイム労働者は期間の定めがあることが多いです。

これら以外の労働契約の内容についても、労働者使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています(労働契約法第4条第2項)。

労働契約を結ぶことによって、会社は「労働契約で定めた給料を払う」という義務を負いますが、一方でみなさんも、「会社の指示に従って誠実に働く」という義務を負うことになります。

労働契約の禁止事項

今の会社をやめて新しい会社転職したくなったときに、途中で辞めるとペナルティとして罰金を取られるという条件があっては、辞めることができなくなりますよね。そこで、労働

もう一歩進んで

そこで、労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社契約に盛り込んではならない条件も定められています。

労働者労働契約違反した場合に違約金を支払わせることやその額を、あらかじめ決めておくこと(労働基準法第16条)

たとえば、使用者労働者に対し、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めておいたとしても、それに従う必要はありません。もっとも、これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するものですので、労働者故意や不注意で、現実会社に損害を与えてしまった場合損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

労働することを条件として労働者お金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること(労働基準法第17条)

労働者会社からの借金のために、やめたくてもやめられなくなるのを防止するためのものです。

労働者に強制的に会社お金を積み立てさせること(労働基準法第18条)

積立の理由は関係なく、社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは禁止されています。ただし、社内預金制度があるところなど、労働者の意思に基づいて、会社賃金の一部を委託することは一定の要件のもと許されています。

採用内定

新規学卒者の採用においては、就職活動、採用試験の後、実際に入社する日よりかなり前に採用の内定をもらうというのが一般的ですが、この採用内定にはどのような意味があるのでしょうか。大変な就職活動を経て、行きたい会社から「春からうちにきて下さい」と言われたら、その会社で働けることを期待するのが当然ですし、突然、「なかったことにする」と言われてしまっては、その先の予定がすべて狂ってしまうことにもなりかねません。そこで、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、内定取消しは契約の解約となるとされています。したがって、この場合は、通常の解雇と同様、正当な理由がなければできません(→P.11コラム3参照)。

もっとも、実際に働き始めた後の解雇よりは解約理由が広く認められますので、学校卒業できなかった場合や所定の免許資格が取得できなかった場合、健康状態が悪化し働くことが困難となった場合履歴書の記載内容に重大な虚偽記載があった場合刑事事件を起こしてしまった場合などには内定取消しが正当と判断され得ます。

もう一歩進んで

就業規則を知っていますか

みなさんが会社で働くときの労働条件は、その職場で働く人たちみんなに共通のものが多いですが、そのような共通のルールは「就業規則」に定められることになっています。

就業規則は、労働者賃金労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律等について、労働者意見を聴いた上で使用者作成するルールブックです。大勢の集まりである会社においては、ルールを定めそれを守ることで、みんなが安心して働き、無用なトラブルを防ぐことができるので、就業規則の役割は重要です。就業規則は、掲示したり配布したりして、労働者がいつでも内容がわかるようにしておかなければいけないとされていますので(労働基準法第106条)、自分職場で何か気になることがあるときは、就業規則を見て確認しましょう。

就業規則のきまり

 常時10人以上の労働者雇用している会社は必ず就業規則作成し、労働基準監督署長に届け出なければいけません(労働基準法第89条)

就業規則に必ず記載しなければいけない事項(労働基準法第89条)

 始業および終業の時刻、休憩時間休日、休暇、交替勤務制の場合の就業時転換(交替制)に関する事項

賃金に関する事項

 退職に関する事項

就業規則作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴かなければいけません(労働基準法第90条)

就業規則の内容は法令労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条、労働契約法第13条)

3 安心して働くための各種保険年金制度

みなさんは求人情報を見ているときに、「各種保険完備」と書かれている会社を見たことがあると思いますが、これはどういう意味でしょうか。「各種保険完備」とは、会社雇用保険労災保険健康保険厚生年金保険に加入しており、その会社で働く従業員にはそ

もう一歩進んで

れらの制度が適用されますよ、ということを示しています。これらは、病気や怪我をしたとき、出産をしたとき、失業したとき、高齢になったときなど、働けなくなってしまうような様々な場面で必要な給付を受けられるようにして、労働者の生活を守ることを目的とした国が運営する制度です。就業する際には、自分が働こうとしている企業がどういった制度に加入しているのかチェックしておくことがとても大切です。

それぞれの制度を詳しく見てみよう

雇用保険

雇用保険は、労働者失業した場合に、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。勤め先の事業所規模にかかわらず、①1週間の所定労働時間が20時間以上で②31日以上の雇用見込がある人は適用対象となります。雇用保険制度への加入は事業主の責務であり、自分雇用保険制度への加入の必要があるかどうか、ハローワークに問い合わせることも可能です。保険料労働者と事業主の双方が負担します。

失業してしまった場合には、基本手当(=失業給付→P.28参照)の支給を受けることができます(額は、在職時の給与等によって決定されます)。雇用保険に関する各種受付はハローワークで行っています。

労災保険

労災保険は、労働者の業務が原因の怪我、病気、死亡(業務災害)、また通勤の途中の事故などの場合通勤災害)に、国が会社に代わって給付を行う公的な制度です。

労働基準法では、労働者仕事で病気やけがをしたときには、使用者が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を支払うことを義務づけています(労働基準法第75、76条)。しかし、会社に余裕がなかったり、大きな事故が起きたりした場合には、十分な補償ができないかもしれません。そこで、労働災害が起きたときに労働者が確実な補償を得られるように労災保険制度が設けられています。

基本的に労働者を一人でも雇用する会社は加入が義務づけられており、保険料は全額会社が負担します。パートアルバイトも含むすべての労働者が対象となり、給付が受けられます。

会社が加入手続きをしていない場合でも、事故後適用が可能であり補償を受けられます。各種受付は労働基準監督署で行っています。

健康保険

健康保険労働者やその家族が、病気や怪我をしたときや出産をしたとき、亡くなったときなどに、必要な医療給付や手当金の支給をすることで生活を安定させることを目的とした社会保険制度です。病院にかかる時に持って行く保険証は、健康保険に加入することでもらえるものです。これにより、本人が病院の窓口で払う額(窓口負担)が治療費の3割となります。

健康保険は①国、地方公共団体又は法人の事業所あるいは②一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(パートアルバイトでも、1日または1週間の労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります)。また、保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。

※ 一定の業種・・・製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業教育研究調査業、医療保健業、通信報道業など

厚生年金保険

厚生年金保険は、労働者が高齢となって働けなくなったり、何らかの病気や怪我によって身体に障害が残ってしまったり大黒柱を亡くしてその遺族が困窮してしまうといった事態に際し、保険給付を行い、労働者とその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とした制度です。

厚生年金保険適用事業所は、健康保険と同様①国、地方公共団体又は法人の事業所あるいは②一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業所では強制適用となっており、適用事業所で働く労働者は加入者となります(パートアルバイトでも、1日または1週間の労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上あれば加入させる必要があります)。また、保険料は、事業主と労働者が折半で負担します。

コラムハローワークではどのようなサービスが受けられるか

ハローワーク公共職業安定所)は国が運営する地域総合雇用サービス機関です。仕事をお探しの方に対して以下のサービスを行っています(サービスは全て無料です)。

① 窓口での職業相談職業紹介

雇用保険の給付や訓練・生活支援給付金の給付

③ 公的職業訓練制度の紹介

ハローワークでは、地域求人情報について求人検索パソコンや職種ごとにまとめたファイル等も公開していますので、仕事を探している際には、利用するとよいでしょう。また、 Permalink | 記事への反応(0) | 12:14

 
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