【南壽あさ子】6ヶ月連続特集第4弾、デザイナー・広瀬開が語る南壽あさ子の「究極の理想的普通」とは?
南壽あさ子がヤマハミュージックコミュニケーションズに移籍、7月から3ヶ月連続で配信リリースをしていく。OTOTOYでは彼女の作品をハイレゾ配信、月1で南壽あさ子の魅力にさまざまな視点から迫る6ヶ月連続特集を7月から12月まで掲載する。第4弾企画となる今回は、9月にリリースされた南壽の新作『flora』のジャケットデザインを手がけ、ファンクラブ限定の会報誌の編集も行なっているデザイナーの広瀬開との対談を行なった。新しい南壽あさ子の魅力に迫る内容をお見逃しなく。
YAMAHA移籍3rdシングルをハイレゾ配信中
南壽あさ子 / flora <24bit/48kHz>
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC : 円(税込)
AAC、mp3 : 円(税込)
【Track List】
1. flora <24bit/48kHz>
2. このごろ、そのひぐらしで <24bit/48kHz>
広瀬さんが私の柔らかさみたいな部分を表現してくれた
ーー2人の付き合いは、いつからはじまったんでしょう?
広瀬開(以下、広瀬) : 以前、僕と弟でクイック・ジャパンのデザインを担当していたんですけど、川島小鳥さんが撮影した写真が裏表紙になったとき、初めてあさ子ちゃんの存在を知りました。あの時の記事は監督さんとの対談でしたよね?
南壽あさ子(以下、南壽) : 当時、積水ハウスのCMの映像を撮ってくださっていた監督の石川寛さんとの対談でしたね。
広瀬 : レイアウトを見直しながら、「一体、どんな人なんだろう?」と思って原稿を読んでいたら、自分が表現したい音楽と世界観を的確に言葉にできていることにすごく感心したんですよ。素敵だなって。
ーー文字で読んで想像した南壽さんと、曲を聴いてみての印象に差はありましたか?
広瀬 : ピッタリでしたね。感激かな。ただ、紙面上で対談を読むのとアーティストとしての世界の表現とは伝わり方が違うんだなと思う部分もあって。今、僕があさ子ちゃんの会報誌もデザインしているのでそれを通して思うんですけど、対談やインタビューなどの取材ではどうしても説明的になります。でも音楽での表現って、ピアノが語っているし、言葉で多くを語らなくても感じさせることができるんですよね。実際、ピアノだけを聴くのも大好きなんですよ。インスト・バージョンが入っていると「こんなメロディが入っていたんだ」って感じることも多くて。
南壽 : 実は唄に埋もれていて気付きにくい、ちょっとしたメロディを弾いているのにも広瀬さんは気づいてくれて。
広瀬 : 「フランネル」のピアノを聴いた時、歌が入っている状態とは全然違って「こんなピアノだったんだ」って別の唄のようにも聴こえて。ちょっと「街路樹」にも近い感じがします。そういうところでもドキッとさせてくれるんですよね。
ーーそうした間接的な関係性から、どうやって近づいていったんでしょう。
南壽 : クイック・ジャパンで「かたむすび」のミュージック・ビデオの制作過程を特集していただいたときのデザインを見た時、すごく繊細で、私のことを理解してくれているなと思ったんです。そのときはまだ広瀬さんにお会いしたことがなかったんですけど、デザインしてくれた人がすごく好いてくれているっていう話は聞いていて。その後、ESTACIONで撮影した時に来てくださったんですよね?
広瀬 : クイック・ジャパン vol.123号では鈴木惣一朗さんとESTACIONというユニットを組んだタイミングだったんですけど、編集の北尾さんから「よかったら、ビジュアルの方向性やカメラマンさんとの打ち合わせから参加しませんか?」とお話をいただけたんです。
ーー素材を受け取ってデザインするだけでなく撮影から立ち会われたんですね。
広瀬 : デザインに関しては…撮影前から、音楽とその世界観やあさ子ちゃんのかわいらしさも伝わるようにとイラストレーターの黒田さんに同時進行でイメージ画をお願いしていました。カメラマンの三宅さんにも音楽や人物像をお話ししていました。
南壽 : それもすごく嬉しかったんですよね。広瀬さんが私の柔らかさみたいな部分を表現してくれたような気がして。わたしはいつも写真を撮られると睨んじゃうんですよ。それを凛としていると言ってくださる人もいますが、時には強い、きつい印象を与えることもあるようです。キャンペーンではじめて出る場所などで会う人会う人に、「写真で見ていたイメージよりずっと柔らかいんですね」って言われることが多くて。私は自分のままにしているつもりでも、写真でイメージが先行してしまうのも事実なんだなと思っていたなかで、広瀬さんのデザインはちゃんとわたしに向き合ってくださっていると感じています。イラストとかもそうだし、凛としてる冬の寒さみたいなところも写真からちゃんと出ている。デザインによって柔らかい感じが表現されているんです。
広瀬 : 過大評価ですよ、それは(笑)。
南壽 : でも、それまで自分ではどうしようもない難しい課題だなって思っていたんです。
広瀬 : 表現といえば… 僕から見るとあさ子ちゃんは状況に合わせてそれぞれのスイッチが入るような気がします。
南壽 : そうですか?
広瀬 : 例えば、対談で真剣に話す時はちゃんとそのモードで会話ができ、のんびりとしている時には本当にふんわり。いろんなチャンネルを持っています。表情もそう。あさ子ちゃんの世界でスイッチできるようです。
南壽 : ゆるい時はほんとにゆるゆるですものね(笑)。
広瀬 : ふわふわ過ぎて…。
南壽 : 決断力の欠片もない(笑)。
広瀬 : 僕もそういう時があるんです。おっちょこちょいだし。
南壽 : うん…。
広瀬 : うんって(笑)。
南壽 : 似ているんですかね?
広瀬 : たぶん自由にお喋りを続けたら、ずっとのんびりと話していそうです。
南壽 : 昨日もライヴがあったんですけど、楽屋に帰ろうと思って開けたら掃除用具入れで。しかもそこに入ろうとしていたのをお店のスタッフさんが見ていて、不思議がっていました(笑)。
ものづくりとしてはほんとにいい形になっている
ーーあはははは。そんなおっちょこちょいな面もある南壽あさ子さんのイメージが、広瀬さんがデザインを担当することによって伝わりやすくなった?
南壽 : すごく近くなったのかなと思いました。ESTACIONの記事デザインをデータでいただいた時にすごく愛が伝わってきて、この人いいなって思ったんです。そこに添えられていた言葉も柔らかいなと思ったんですよね。それで、デザインで何かあった時には広瀬さんにお願いしようと決めて。
広瀬 : 僕も仕事としてではなく個人的にライヴを観に行ける時は行っていて。インストアにも(笑)。そのときにスタッフさんの気配りや働きぶりに感激したんですよ。あさ子ちゃんがステージに集中している時は完全にアーティストとしてのスイッチが入っているのでふわふわっとしていたりするから、それ以外を全部スタッフさんがフォローしている様子をいつも見ていて。それが熱いんです。
ーーまさに相思相愛状態だったわけですけど、いざ一緒に仕事をすることになったタイミングはどういうきっかけだったんでしょう。
南壽 : ファンクラブの会報誌を年に2度作っているのですが、私からそのデザインを頼んだんです。ちょうど会報デザインをしてくれる方を探していて、「あ、広瀬さんだ」と思って。これは私が編集長になって、やりたいようにやらせてもらっているんですけど、広瀬さんが興味津々で参加してくれていて、もはやデザイナーさんとしてだけじゃないですよね。
広瀬 : ほとんど編集の目線で見ていると思いますね。
南壽 : ものすごく細かいし、私よりすごく熱くなっているんですよ。もっといい写真がある!! とか、配置とかまでこだわってくれていて。私がここがベストかなっていう頑張り度があるとしたらそれ以上で、期限ギリギリでもそれを夜中までやってくれているんです。
広瀬 : あさ子ちゃんもツアー中の忙しい時期でもひとつひとつに対してていねいな返事をくれるんです。僕がこんなのどうかな? って提案したことに対して、ちゃんと意見をくれる。それって音楽で他の方とコラボレーションしているときと一緒だと思うんですよね。
南壽 : いろんな企画を組み込んで、取材も同行してくれて、私が気づかないところまで見てくれているので、すごく心強いんです。ただ単に投げてデザインしてもらうだけで返してもらうと、自分の中で見直すしかないので。
ーー第三者というか、他人の目が入ることは重要ですよね。
南壽 : そうですね。プロに任せたい部分もあったので、すごく頼りになります。
ーー広瀬さんは、プロの編集者であり、プロのデザイナーであり、プロのファンでもあり、全部を兼ね備えているというか(笑)。
南壽 : しかも物販まで手伝ってくださっていて…。
広瀬 : 何かやらせてくださいって気持ちなんです(笑)。
南壽 : それがチームになっているというか、ものづくりとしてはほんとにいい形になっている。編集だけお願いするというのではなくて、ツアーに来てくれているから、ツアーの写真を並べるのにも、すごく気持ちを入れてやってくださるんです。
広瀬 : 「あの時はこうだったからこんな感じの方がいいかも?」とか、観ていたからわかることもありますし。
僕が惹かれるのは、かたちがないものなんです
ーーこれだけ愛情を持っている方が作っていることってすごく重要なことで、誰でもこういう関係性ができるわけじゃないですからね。
南壽 : そうなんですよ。だからとてもうれしい出会いだったなと思って感謝しています。
ーー広瀬さんはいろんな南壽さんのことを知る機会がより増えたと思うんですけど、いまはどういう部分が魅力だと思いますか?
広瀬 : それがわからないんですよ。でも音楽の部分でいうとしたら、日本語の唄の場合は詞(詩)がよくないとダメなんですよ。メロディやリズムとして聴くんだったら、別にどこの国の曲でもいいじゃないですか? だから日本語の曲は歌詞がいいものを好んでいるので、言葉が頭に入ってきちゃってBGMでは仕事がしにくいんですけど、あさ子ちゃんの場合は全然平気で。
南壽 : ずっと職場でかけてくださっているって言っていましたよね。
広瀬 : 夏からここ最近までは本当に「flora」ばかり聴いていましたよ。
南壽 : 「flora」はCDデザインをしてもらったんですよ。
広瀬 : 過去に手伝ったことはあったんですけど、実際に一からCDデザインを手がけたのは初めてでした。しかも5種類あったので途中で精神が離脱していました(笑)。魂が上からもう1人の自分を見てるいるような感じ(笑)。
ーー南壽さんの魅力をひとことで伝えるのは難しいというのは僕も感じているんですけど、お話を聞いているなかで広瀬さんの南壽さんへの愛情はすごく伝わってきました。
広瀬 : 僕は曖昧さの中に見つかるものが好きです。あさ子ちゃんは唄の中で〈かたちのないものが怖くて仕方がない〉と唄っているんですけど、僕が惹かれるのは、かたちがないものなんです。あさこちゃんの表現がそうなのかな。真善美を追求しているようです。普遍的なもの。究極の理想的普通なのかも。あさ子ちゃんは事務的な仕事の話も完璧なのに、ちょっと浮かんだ状態で話をしてもそのまま‘‘すっと’’受け入れてくれます。
南壽 : 抽象的な事柄も話せるってことですか?
広瀬 : たぶんとてもロマンティストなんです。そして美意識が重層的で、トータル・バランスがいいんですよ。あさ子ちゃんって、すべてのものに対して同じ価値観で考えていて、些細なことからよく考えなきゃならないことまで同レベルで真面目に話せます。そういうところに共感できるというか、楽って言ったら変ですけど…。といいつつ、いまでも緊張もしますよ(笑)。
>>特集第1弾 コピーライター武田さとみとの対談はこちら<<
>>特集第2弾 エンジニア / コネクター、小島康太郎との対談はこちら<<
>>特集第3弾 OTOTOY編集部・西澤裕郎と振り返る南壽あさ子の歩みはこちら<<
南壽あさ子の過去作はこちら
YAMAHA移籍2ndシングルをハイレゾ配信
南壽あさ子 / 八月のモス・グリーン
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC : 500円(税込)
AAC、mp3 : 257円(税込)
【Track List】
1. 八月のモス・グリーン
※ダウンロードされた方にはOTOTOY限定オリジナル・ジャケットがつきます。
>>6ヶ月連続特集第2弾、マスタリング・エンジニア/コネクター、小島康太郎と語るサウンド
YAMAHA移籍1stシングルをハイレゾ配信
南壽あさ子 / エネルギーのうた (弾き唄い Ver.)
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC : 単曲 216円 / まとめ購入 2,160円
【Track List】
1. エネルギーのうた (弾き唄い Ver.)
2. エネルギーのうた (Piano Instrumental)
>>6ヶ月連続特集第1弾コピーライター武田さとみとともに考える言葉への想いとこだわり
記念すべき1stアルバム
南壽あさ子 / Panorama
【配信価格】
WAV / ALAC / FLAC / AAC : 単曲 216円 / まとめ購入 2,160円
【Track List】
1. サンセット・サイドストーリー
2. わたしのノスタルジア
3. 少年たち
4. どんぐりと花の空
5. みるいろの星
6. それがいいな
7. パノラマライン
8. かたむすび
9. PASSWORD
10. ちいさなラズベリー
11. ペーパームーンへ連れ出して
12. やり過ごされた時間たち
いろいろな人生や風景を垣間見るような1stアルバムーー南壽あさ子の世界が360°見える『Panorama』
金色に輝く築地本願寺でDSDレコーディング
南壽あさ子 / 南壽と築地と子守唄 〜南壽あさ子 at 築地本願寺〜
【配信フォーマット / 価格】
DSD(1bit/5.6MHz) + WAV(24bit/96kHz) : 1,080円(税込、まとめ購入のみ)
※南壽あさ子による手書きの歌詞カードを収録したPDFブックレットが付属
【収録曲】
1. 旅愁
2. 星のもぐる海
3. 500 Miles
4. 真夜中のスープ (オルゴール Ver.)
PROFILE
南壽あさ子
物心つく前から歌うことに心奪われた彼女は二十歳になり本格的に作曲活動をはじめ、2012年6月に「フランネル」でインディーズ・デビュー。 風景画家の祖父や70年代の音楽に影響を受けながら独自の世界観を生み出すその作風は、だれもが何処か懐かしい情景や心象風景を思い起こし、その透明感あふれる唄声とシンプルなピアノによって おおくの人の心を掴んで離さない。 2013年10月には「わたしのノスタルジア」でメジャー・デビュー、この曲が全国ラジオパワープレイを40局以上獲得しこの月の邦楽・洋楽OA回数1位となる。 ひとつひとつていねいに唄い届けることをモットーにし、 「Nostalgia」ツアーでは全47都道府県をまわり、赤坂BLITZにて 大成功のうち旅を完結させる。 2015年6月10日には待望のメジャーでのファースト・アルバム『Panorama』をリリースし、2度目の47都道府県ツアーを敢行。 同年12月には鈴木惣一朗(ワールドスタンダード)とのユニット“ESTACION(エスタシオン)”を結成、ファースト・アルバム『少女歳時記〈冬〉』をリリースする。 そして今年の4月から6月には自身初の春のツアー〈南壽あさ子弾き唄いワンマン “flora” tour 2016〉を開催し、全国16カ所を完走する。
その他にない声の魅力が支持され、積水ハウスシャーメゾンのCM「積水ハウスの歌」の歌唱、アステラス製薬の企業CM 「臓器移植をしたきみ」ナレーション、東京ガスのラジオCM「あなたとずっと今日よりもっと・エネルギーのうた」を担当するほか、 韓国・NCSOFTが運営する大人気MMORPG「ブレイドアンドソウル」の挿入歌や、累計200万本を超える大人気RPG「アトリエ」シリーズへの 楽曲提供など、幅広いジャンルで活躍している。