
若者より若い、大人による淡い恋心
新宿LOFTの3ヶ月連続ライヴで、、Baseball Bear、をそれぞれゲストに呼び、貫禄のステージを披露したムーンライダーズ。運良くチケットを譲ってもらうことができた3月のライヴについて、まずはレポートしよう。
水曜日の18時前にも関わらず、コマ劇場横の道路は会場入りを待つ人だかり。客層は40代前後と少し高め。入場とともに、キャパ500人程度の会場は人で埋め尽くされ、開演30分前にも関わらず、すし詰め状態。 最初は、の4人が登場。やくしまるえつこの抑揚を抑えたウィスパー・ヴォイスで曲が始まる。彼らの特徴は、アルバムとライヴの演奏スタイルのズレが少なく、黙々と演奏をすること。あとは、やくしまるえつこの一言不思議MC(今回は、「東京湾に、イルカはいるかなぁ・・・」など)。アルバム未収録の新曲2曲も披露するなど、あくまで自分たちのペースを貫いた。
そして、満を持してのムーンライダーズ登場に、フロアの温度が上がる。がクールなライヴとすれば、彼らは明らかにホットなライヴを展開。ミリタリー風のヘルメットを被った鈴木慶一をはじめ、メンバー紹介の際にそれぞれが演じるソロ・パフォーマンスは圧巻。全員がソロ活動を、うまく反映させているのが伝わってくる。ハイライトは、「Cool Dynamo,Right on」。観客との掛け合いで、改めて曲のキャッチーさと演奏の幅の広さを示す。音の強弱や観客の盛り上げ方を熟知しているのは、30年という活動の証であるが、今回のライヴが2000年以降の曲ばかりで構成されているのは驚きである。アンコールでは、やくしまるえつこをステージに呼び、「マスカット・ココナッツ・バナナ・ミルク」のセッション!? 鈴木慶一とやくしまるえつこの、まったく異なる唱法と曲のチョイスに脱帽。クールな彼女も鈴木慶一の前ではたじたじ。本当に懐の広いバンドということを見せつけてくれた。
さて、今回の配信は第5弾「三日月の翼」。氏の作詞作曲で、叙情的な恋心を詩的に描いた淡い歌となっている。慶一氏の「You & Us」と比較して聴いてみるのも面白いだろう。4月の3都市ツアーでは、これまでの配信曲をパッケージしたCDを、1000枚限定で発売することが決定。先述のライヴでは「これぞ、XTC商法」などとおどけてみせた。配信とは違う歌詞やミックスで収録されるようなので、どちらもお見逃しなく。まったく、この人たちはいくつになっても少年のようで、遊び心も興味関心も尽きなさそうだ。(text by 西澤裕郎)
セットリスト
M-01 Pissism
M-02 We are Funkees
M-03 Morons Land
M-04 スペースエイジのバラッド
M-05 銅線の男
M-06 11月の晴れた空には
M-07 Rosebud Heights
M-08 Cool Dynamo,Right on
M-09 ヤッホーヤッホーナンマイダ
【アンコール】
EN-01 You& Us
EN-02 果実味を残せ!Vieilles Vignesってど〜よ!
EN-03 WEATHER MAN
EN-04 マスカット・ココナツ・バナナ・メロン featuring やくしまるえつこ
【アンコール2】
EN-05 When This Grateful War is Ended
EN-06 Round Midnight
DISCOGRAPHY
『Tokyo, Round & Round』
配信限定でリリースされたムーンライダーズの新曲シングル第1弾。作詞は鈴木慶一、作曲が岡田徹。ムーンライダース流のキャッチーさとポピュラーさが見事に表れた作品。しょっぱなの「全ては不細工にはじまる。それがよく似合っている東京」という歌詞にやられちゃいました〜。
『Tokyo, Round & Round』 レビュー/text by 南日久志 https://ototoy.jp/feature/20081202
『恋はアマリリス』
配信限定シリーズ第2弾。メロウさポップさでは91年に発売された珠玉の一曲「涙は悲しさで、出来ているんじゃない」にひけをとらない名曲。こんな素敵なラヴ・ソングを嫌みなく歌い上げるムーンライダースの魅力がたっぷり入った名盤です!
『You & Us』
配信限定シリーズ第3弾となる今作は渋さと甘酸っぱさが入り混じった、おだやかなナンバー。アコーディオンやバイオリン、それにリコーダーなど様々な楽器が紡ぎだすメロディーに思わず、にんまりしてしまう慶一さんらしい楽曲です!
『You & US』 レビュー/text by 西澤裕郎
『Tokyo Navi』
12月から2月にかけて企画された、ムーンライダーズ新曲シングル配信限定リリースが好評を得たため、継続して今年5月まで毎月配信することが決定した2009年3月18日配信の第4弾! 武川雅寛作曲作品。6月にはフル・アルバムをリリース予定とのこと。どこまでもついて行きます!
『Tokyo Navi』 レビュー/text by まつり.com https://ototoy.jp/feature/20090318
RELATED ARTIST
相対性理論『ハイファイ新書』
moonridersのLOFTのマンスリーLIVEの対バンに抜擢されるなど、新世代ポップ・シーンを牽引し、時代の寵児となった相対性理論の最新作『ハイファイ新書』。萌え文化とリンクしながらアンダーグラウンドとも直結。淡々としているけど、突き刺さってくる言葉の群。『00年代後半のうた姫? 』センスが逸脱しております。ネクスト・ジェネレーションのナンバー・ガール的存在 !
相対性理論『ハイファイ新書』レビュー/text by 南日久志 https://ototoy.jp/feature/20090107
相対性理論『シフォン主義』
ファースト・アルバムから既にその破壊的で突き刺さるナンセンスな言葉と、テンションの上がりきらない、やくしまるえつこのボーカル・スタイルは完成されています。名曲「LOVEずっきゅん」を聞いていると、ものまね番組で後ろから本物が出てくるときのような、予定調和の気恥ずかしさと、妙な快感が味わえます。
トクマルシューゴ『Rum Hee』
こちらも1月14日 (水) に新宿LOFTで行われた、ムーンライダースのイベントに抜擢された日本を代表するポップ・マエストロ、トクマルシューゴ。「パラシュート(PARACHUTE)」級の超名曲! とすでに話題沸騰の「ラムヒー(RUM HEE)」をフィーチャーした、待望のニュー・リリース! ロング・セラーとなったサード・アルバム『EXIT』からさらに大きな飛躍を遂げた大傑作!
トクマルシューゴ × 今井智子 https://ototoy.jp/feature/20090401

LIVE SCHEDULE
Here we go 'round・・・moonriders 2009
- 4/11(土) @名古屋ボトムライン
- 4/12(日) @心斎橋クラブクアトロ
- 4/21(火) @SHIBUYA-AX
鈴木慶一 ソロ
- 5/5(水) @下北沢mona records
LINK
- moonriders website http://www.moonriders.net/
- moonriders MY SPACE http://www.myspace.com/moonriders1976
- 鈴木慶一 website http://www.keiichisuzuki.com/top.html
- 鈴木慶一 MY SPACE http://www.myspace.com/keiichisuzuki
- 岡田徹主催 valb label http://www.valb.info/
- かしぶち哲郎 website http://kashibuchi.com
- 鈴木博文 MY SPACE http://www.myspace.com/hirobumisuzuki

moonriders

アルバム『センチメンタル通り』1枚だけを発表し解散した、はちみつぱいを母体として、75年に結成。翌年、鈴木慶一とムーンライダーズ名義で1stアルバム『火の玉ボーイ』をリリース。ダブル・ネームでクレジットされたのは当初、鈴木慶一のソロ・アルバムとして制作が進められていたためだ。この作品は、ラスト・ショウ、ティン・パン・アレイ、矢野顕子といった面々も参加し、「東京のロマンティシズム」を描き出した秀作として語られている。当時から幅広い音楽的視野をもっていた彼らは、ロックン・ロール/ジャズ/ファンクなどのテイストを取りこみ、独自のスタイルをいち早く掌握しはじめていた。また、77年に発表されたアルバム『ムーンライダーズ』では、スパークスや10CCを彷彿させるモダン・ポップにアプローチし、ニュー・ウェイヴの先駆け的な楽曲を披露。実験性を併せもつサウンド・スタイルを提示した。 その後もアルバム毎に異なる音楽要素を吸収/反映させた作品をリリースし続けるが、86年の『ドント・トラスト・オーバー・サーティー』発表後、「異様なバンド・ブームで気持ちが萎えてしまったから」を理由に、5年間活動を停止。メンバーはそれぞれソロ・ワークスを展開。91年『最後の晩餐』発表と共に再始動。96年リリースの結成20周年記念アルバム『ビザール・ミュージック・フォー・ユー』には矢野誠、矢野顕子、糸井重里、野宮真貴といったムーンライダーズゆかりの人々が参加し、話題となった。彼らの時代の半歩先を行く先鋭性と特定のサウンド形態にこだわらないハングリー精神は、息の長いリスナーから熱い支持を得ている。