蒼き狼と白き牝鹿(あおきおおかみとしろきめじか)とは、コーエーのシミュレーションゲームシリーズである。またその第1作のタイトル。
概要
1985年の第1作「蒼き狼と白き牝鹿」から「チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV」まで4作品発売されている。タイトルの蒼き狼と白き牝鹿は、ゲームの主人公とも言うべきチンギス・カンとその妻ボルテのこと。
『三國志』『信長の野望』と同様の国盗り戦略シミュレーションゲーム。大きな特徴は、チンギス・カンとモンゴル帝国をテーマにしており舞台がユーラシア大陸全土に亘ること、13世紀から14世紀という時代設定、オルドシステムなどである。そのチンギス・カンの活躍した時代の英雄を登場させるために、プレイ開始年代に実際には死んでいる人物が結構登場する。
舞台の規模が大きいことから登場武将も非常に多いが、勢力によって初期所属武将に大きく差が出ている所が多い。これを補うためにか、人材発掘コマンドで歴史上に登場しない架空の武将を探してくることができ、どんな勢力でもある程度人材を確保できるようになっている。ゲームが進むに従って病死・処刑で退場していく武将は多くなるため、その結果ゲームの後半になると実在武将がほとんど残っていないことも。
『三國志』『信長の野望』とならぶ歴史三部作の一つという位置づけであったが、他の2シリーズと比べると作品数は少なく、4を最後に新作が発売されていない。『シブサワ・コウ 0から1を創造する力』では理由として欧米人からはジンギスカンの存在が悪だとみなされていて、海外での売り上げの悪さが原因だったと書かれている。同書には対照的に『三國志』シリーズは中国人をはじめ世界中で受け入れられており、キャラクターの認知度や人気で売り上げは大きく左右されると書かれている。
登場人物・勢力
主な勢力
このゲームには複数のシナリオが用意されており、シナリオの年代により登場する勢力も変わってくる。3作目「元朝秘史」まではモンゴル統一編と世界編に分かれており、モンゴル高原でしか登場しない勢力もある。また、一部のバージョンでは源平合戦編もある。3作目までは選択できる国は限られていたが、4作目では全勢力が選択可能になった。
モンゴル族(モンゴル帝国)
主人公テムジン(チンギス・ハーン)の勢力。開幕の資産こそ多くないものの、当主の能力が非常に高く、人材も優れており、また優秀な兵種・蒙古騎兵を最初から徴兵可能と非常に優遇されている。モンゴル統一編のあるシリーズでは、一定期間内に高原統一を達成すると、資産と将軍をある程度引き継いで世界編に移行できる。初心者が始めるのに最適で、4の説明書には「どうせならチンギス一代クリアを目指してみたら?」などとも書かれているほど(実行しても特に特典はない)の、全シリーズを通して最強クラスの勢力である。
主な登場人物に、チンギス・ハーン(テムジン)、ジュチ、オゴタイ、ムカリ、ボルテ、イェスイ、イェスゲン、耶律楚材など。イベント絡みの人材も多い。
ジャダラン族
テムジンと袂を分かち、後に敗れて滅ぼされたジャムカの率いる勢力。モンゴルには若干劣るが、こちらも蒙古騎兵を徴兵できる。3作目より操作可能になり、テムジンを倒して期間内に統一を果たせば、世界編にジャダラン帝国を登場させられる。4作目では世界マップに普通に存在し、一応テムジンを倒さなくても世界進出ができる。
主な登場人物に、ジャムカ、ジェベ、ラッチなど。ジェベは放っておくと出奔する場合があるので、忠誠は上げておいてやろう。
元朝
分割されたモンゴル帝国で、フビライが華北に興した王朝。後期シナリオの主人公勢力である。歴史通りに華北に広大な勢力を持ち、人材・資産・文化力ともにトップクラスで、蒙古騎兵に加えて火砲兵も徴兵できる。華南に残った南宋を滅ぼすのが当初の課題であるが、普通にやれば簡単に勝てるので問題ない。4作目では、日本に侵攻すると台風に見舞われる神風イベントもあったりする(元以外でも発生するが)。一方、PC版4PKの追加シナリオでは明朝に追われ滅亡寸前の状態になった元でもプレイできる。
南宋
金に華北を追われ、華南に本拠を構えた宋王朝の後継勢力。意外にも使用可能となったのは4作目が初めて。前期シナリオでは金と、後期シナリオでは元と対峙することになる。人材も文化も優秀だが、元には一歩劣るため、工夫を凝らさないと滅ぼされてしまう。後期シナリオでは皇帝がとことん無能なのも痛い。
鎌倉幕府
ご存知いい国作った鎌倉幕府。1作目から操作可能で、一部バージョンでは源平合戦シナリオもある。前期シナリオでは源頼朝または源実朝、後期シナリオでは北条時宗が君主となる。文化レベルこそいまいちだが、人材は十分で、また徴兵できる武士も強い。そして何よりマップの端であるため、防衛拠点が少なく済むという点が強みである。
主な登場人物に、源頼朝、源義経、北条時政、北条時宗、那須与一、安達泰盛、北条政子など。シナリオによっては、義経一行は平泉に身を寄せて敵対している。ちなみに日本では時間経過次第で、足利幕府の人材も登場する。
イギリス
日本とは反対方向のユーラシアの端っこブリテン島の国。正しくはイングランド王国。1作目から使用可能で、前期シナリオではリチャード1世またはジョン、後期シナリオではヘンリー3世またはエドワード1世が国王になる。この作品における劉禅・今川氏真ポジションのジョン欠地王は当然ながら、他の王も政治力が低いものが多く、国王の政治力が重要な3作目以前では苦戦を強いられる。
主な登場人物に、リチャード1世、ジョン、エドワード1世、エドワード黒太子、ウォルター、ロビン・フッドなど。
フランス
全盛期のカペー朝フランス。3作目より使用可能になった。前期シナリオのフィリップ2世が完璧なまでのステータスを誇り、豊かな国力もあってヨーロッパ開始の勢力では最もやりやすい。4作目ではイギリスを征服するとイベントがあったりもするなど、かなり優遇された勢力。
主な登場人物に、フィリップ2世、フィリップ4世など。え、ジャンヌ・ダルク?残念ながらこのゲーム姫将軍いないもんで・・・
神聖ローマ帝国
ドイツ諸侯の連合国家。3作目から使用可能になった。基本的に本国はドイツで、4作目では最初からドイツのケルンと北イタリアのジェノヴァの2都市を所有している(ただし途中にフランス領があって不便)。どのシナリオでも初期状態では皇帝以外はあまり有用な人材がおらず、その点で英仏には若干劣る。
主な登場人物に、フリードリヒ1世、フリードリヒ2世、ルドルフ1世など。
ビザンツ帝国
ローマ帝国の末裔としてバルカン半島に栄えた帝国。1作目から使用可能。文化レベルこそ非常に高いが、すぐ隣にアイユーブ朝・マムルーク朝・オスマントルコといった敵対強国があり、割と早くから戦争状態に突入するので忙しく、割と難しめの国である。シナリオによっては、すでにベネチアに滅ぼされてラテン帝国になっていることも・・・
主な登場人物に、イサキオス2世、テオドルス、ミカエル8世など。
アイユーブ朝
エジプトからシリアにかけてを支配したスンニ派イスラムの王朝。3作目から使用可能に。イスラム圏の主役格の勢力で、国力も高く、また初代君主のサラディンの能力が非常に高い。周囲も海を隔てたビザンツ以外は強くないので、十字軍退治も国家運営もかなり好きにできる。ただしサラディン没後は武将の質が思い切り落ちる。
主な登場人物はサラディン、アル=アフダル、アル=アーディル、イブン=アラビーなど。
マムルーク朝
アイユーブ朝を滅ぼして成立した、奴隷軍人の王朝。こちらも3作目から使用可能。実質的にアイユーブ朝の後継ポジションで、それと同等の国力を保持し、隣国イル=ハン国と抗争を繰り広げている。国王バイバルスの能力が高い点もアイユーブ朝と同じで、当主が没するとやはり武将の質に困りがち。
主な登場人物に、バイバルス、カラーウーン、イブン=バットゥータなど。
ゴール朝
インド北部からアフガニスタンにかけてに栄えたイスラム王朝。3作目より使用可能。インド文化圏では象兵が徴兵可能で、機動力こそ馬に劣るが近接戦闘能力は高い。君主格のゴーリーの能力が高く、南インドのインド諸王朝以外には周囲に敵が少ないなど有利な環境ではあるが、君主の寿命があまり長くない難点がある。とにかく象の好きな人におすすめ。
主な登場人物に、ギヤース・ゴーリー兄弟、アイバク、キルジーなど。アイバクより始まる、後のデリー=スルタン朝(インド奴隷王朝)のスルタン格の人物も周囲に在野で潜んでいたりする。
主じゃない勢力
妙な存在感のある小さな国たち。4作目では全勢力使用可能なので、たまにはこいつらも使ってやってください。
大越(李朝・陳朝)
現在のベトナム北部に栄えた小さな国。3作目では現在の雲南省にあった大理国となぜかセットになって大理大越連合という謎勢力になっていた。4作目で普通に使用可能になったが、残念ながら大理国は登場しなかった。
吐蕃
いわゆるチベットの勢力。君主が僧侶で軍事能力ゼロ、人材はへぼい、文化レベルも低い、全面山だらけで移動も開墾も困難と、何をするにも苦労する最弱候補のマゾ向け勢力。ド田舎すぎて、あまり攻めてくる相手がいないのが救い。前期シナリオなら周囲に敵が少ないので、なんとか南方に下山すれば光明が見えるが、後期シナリオだと塞がれていてそれも厳しい。
ノルウェー
4作目にして初登場という、ある意味珍しい国。北の果てすぎてどこも攻めてこないが、一方でこっちも攻めにくい。将軍もぱっとせず、土地も狭いなど吐蕃に近い窮屈なプレイを強いられる。バイキングという海戦に強い兵種を使えるが、そもそもこのゲームはあまり海戦やらないという・・・
パガン朝
現在のミャンマー(ビルマ)に栄えた王朝。4作目では後期シナリオでのみ登場する。東南アジア勢力の特徴として象兵を使えるものの、象部隊を運用するにも国力が乏しく、また君主含む将軍の能力もしょぼく、さらに一番近い他国都市が同シナリオ最強勢力の元朝のものなので、開幕に攻め込むスタートダッシュも難しいなど、結構なハードモードを体験できる。腕に自信のある人にオススメ。
オルド
オルドとは当時のモンゴル遊牧民部族の後宮のようなもので、言うなればハーレムである。ゲーム中では各地を攻め取った時に獲得した姫を並べ、政略コマンドの一環として彼女らとキャッキャウフフすることができる。君主が死亡した時に血縁者がいないと継げなくなるので、子作りは現実でもゲームでもとても重要な仕事である。シリーズ通して史実・架空含めて多数の妃を抱えることが可能で、どれだけ集めて回れるかもゲームの楽しみ方の一つである。
流石はかつてはエロゲメーカーでもあったコーエー、事が成ればそれぞれの妃のちょっとエロいイラストを拝むことができる。しかしそこに至るまでにはまず妃を口説かねばならず、自分の力を誇示したり、贈り物でご機嫌をとったりと、シリーズによってその駆け引きの仕方は多分に異なる。妃ごとに興味のある話題・ない話題などもあり、相手のことをよく把握していないと成功させるのは難しい。特に3作目は選択肢がやたらと豊富で、コマンドによって体力の消費量や親密度の上昇・下降量も変わるので、色々試してみると面白い。4作目のオルドはクイズゲー。
逢瀬が成立した妃は確率で懐妊し、約1年後に君主の子供を出産する。これが男子であれば将軍に、女子であれば他の将軍への婚姻相手として利用できる。特に血縁の武将は裏切りにくく(4作目では裏切ることもある)、また君主の能力が高ければそれをある程度引き継ぐので、優れた将軍の量産にも繋がる。特に王族の持てる兵力が大きい4作目では、いかに優秀な息子将軍を用意できるかが攻略の鍵となる。なお、オルドで生まれる子供は基本的にすべて架空人物で、史実の後継者などは別の形で登場することがある。
蒼き狼シリーズのオルドの名物として、モンゴルで獲得できるラッチという、いろんな意味ですごい妃がいる。ラッチは、オルドが最初の選択から必ず成功して、2回のオルドで必ず翌春に出産する、という仕様になっている。
関連動画
関連項目
外部リンク
- Steam 「Genghis Khan / 蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン」 KOEI TECMO GAMES CO., LTD. ・・・ Steam公式サイト上の、2作目の販売ページ。
- Steam ゲーム Blog 「KOEI 蒼き狼と白き女鹿 ジンギスカン。」・・・2作目の紹介サイト。
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