基本データ | |
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正式名称 | アイスランド共和国 Lýðveldið Ísland |
国旗 | |
国歌 | 賛美歌 |
公用語 | アイスランド語 |
首都 | レイキャヴィーク(Reykjavík) |
面積 | 103,000km²(世界第105位) |
人口 | 約31万人(世界第170位) |
通貨 | アイスランド・クローナ(ISK) |
時間帯 | UTC+0 |
アイスランド(Iceland)とは、北大西洋に浮かぶ島国である。
以前は金融部門を中心に高い国際競争力を誇っていたが、2008年の世界金融危機の影響を受けて、経済危機に陥った。
概要
正式名称は「アイスランド共和国」。現地語では「イースラント(Ísland)」と呼ばれる。漢字では氷島、氷州、愛撒倫など。
「アイスランド」の名はフィヨルドに流氷が浮かんでいるのを見たヴァイキングのフロキ・ヴィルゲルザルソン(鴉のフロキ)がつけたものとされる。しかし実際は火山島であることに加えまわりに暖流が流れていることにより、フィンランドやスウェーデンの同緯度地域と比較して冬はそれほど寒くない。名前のわりに実際は極寒のグリーンランドとは対照的である。
(真偽のほどは定かでないが、先に到達した島にアイスランドなどと馬鹿正直な名前をつけてしまったために入植者が集まらず、後に到達した地には人が集まるようにグリーンランドと名づけた、と言う風に言われている)
面積は北海道+四国程度、人口は青森市や東京都中野区と同じくらい。
最初はノルウェー、その後は永らくデンマークの支配下にあったが、1918年にはデンマークとの同君連合(君主はデンマーク王で外交権はデンマーク)で独立、1944年にデンマーク本土でナチスドイツが好き放題やってる隙に完全独立した。こうした経緯もあり、文化的には北欧圏に属する。
北米プレートとユーラシアプレートの境界である大西洋中央海嶺の真上にあり、また地下深くのマントルからマグマの吹き上がってくるホットスポットに位置し、活発な地質活動がみられる。1783年に噴火して欧州全域での異常気象の原因の一つとなったラキ火山など、全島で約130の火山が存在する火山島。
2010年4月には南部のエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull)火山の噴火で火山灰が欧州上空に滞留し、噴火規模こそアイスランドでは珍しいものではなかったものの、欧州全域で航空便の欠航を引き起こした。この航空混乱により、物流がストップして経済活動に多大な損失がもたらされたほか、同年4月10日に墜落事故で亡くなったポーランドのレフ・カチンスキ大統領の国葬にオバマ米大統領やサルコジ仏大統領らが参加をとりやめざるをえなくなるなど多方面への影響がみられた(カチンスキ大統領の墜落事故そのものは噴火と無関係)。
地表の1割が氷河に覆われていて、沿岸には多数のフィヨルドがある。
また火山島であることから、多くの温泉・間欠泉が見られる。首都レイキャヴィークの郊外には世界最大の露天風呂として知られる「ブルーラグーン」がある。ただしこれは天然の温泉ではなく、ここに隣接する地熱発電所が汲み上げた熱水の排水からできた温泉である。
大瀑布 Gullfoss の近くにある間欠泉 Geysir は英単語 geyser の語源である。
お湯の蛇口をひねると温泉水が出てくる場合がほとんどである(本当)。銀製品を洗ったりすると悲惨なことになります。
比較的治安はよく、シドニーに本社をおく国際研究機関「経済平和研究所」が毎年公表している「世界平和度指数」では、世界平和度1位を獲得している(2013年)。しかし都市部を中心に外国人窃盗団による置き引きや引ったくりの増加や、麻薬の深刻な社会問題化などもみられる。
独自の漁業政策がとれなくなることなどを懸念し、欧州連合(EU)には加盟していない。2008年の経済危機の結果、「EUの傘下に入るべき」との声が俄かに高まったため、2009年に加盟申請し、2010年に加盟交渉が開始されたものの、2013年の政権交代によって中断。経済状況の改善等を踏まえ、2015年には加盟交渉が打ち切られた。
OECD(経済協力開発機構)の中で日本・韓国と共に夏時間を導入していない。西経15度線が通るのに経度0度を標準子午線にしているため年中夏時間同然だからとも、国土があまりに北過ぎて夏は白夜同然になるので必要ないからとも言われる。
時間帯はUTC+0である。前述の通りサマータイムを導入していない。そのため、世界時計の設定をする際、”UTC”の項目がないデバイスにおいて、レイキャヴィークは重宝される。(イギリスには夏時間がある)
アイスランド語
スカンジナビアからの定住が始まった頃に使われていた古ノルド語からほとんど文法・単語が変化していない。そのため他の北欧人が読めない北欧古典をアイスランド人はそのまま読めるとまで言われる。古くから伝わる言葉を変えない伝統は今でも受け継がれていて、外来語をそのまま取り入れることを極力避けている。例えばテレビすら television を自国風の発音にするのではなく、 sjónvarp (sjón 映像 + varp 投げる)といったように自国語から作った造語で置き換える徹底ぶりである。またルーン文字に起源を持つ Þ þ が現役で使われている(発音は three の th )。海外では発音記号でしか使われない文字 ð も地の文に使う(これについてはフェロー語でも使われる)。
経済
産業
古くから漁獲資源に恵まれ、労働者の8%ほどが漁業に従事している。捕鯨賛成国でもあり、捕鯨反対国による反発を受けながらも2006年に商業捕鯨を再開した。
氷河の侵食により形成されたU字谷の高低差を活かした水力発電と、火山島であることを活かした地熱発電によって電力のほとんどがまかなわれており、その豊富な電力を利用したアルミニウム精錬業や鉄鋼原料の生産が盛ん。ソフトウェア産業やバイオテクノロジー、コンクリート加工なども発達している。
温泉・間欠泉などの観光資源やホエールウォッチング、オーロラなどを目当てにした観光客が数多く訪れる。
主な輸出品目は魚およびその加工品、アルミニウムおよびそれを使用した製品。
かつて漁業権を巡って英国を相手にタラ戦争(冷戦cold warをもじったcod war)と呼ばれる外交問題になり、英国の譲歩を引き出したことがある。
経済危機
2008年、世界的な金融危機によってアイスランドの金融機関が続々破綻、国有化され、未曾有の経済危機に陥った。以下はその簡単な流れである。
- 2008年9月29日、グリトニル銀行が国の管理下におかれアイスランド・クローナの対ユーロ相場が大幅に下落。
- 10月6日、国が非常事態宣言を発し、国内の全銀行を国有化することが決定。
- 10月8日、ロシアから40億ユーロの緊急融資が行われることが発表。
- 10月14日、正式に国際通貨基金(IMF)への支援要請が行われた。
- 10月27日、最大手カウプシング銀行のサムライ債(円建て債権)780億円が事実上の債務不履行となることが判明。
- 2009年3月、大手投資銀行ストラウマー・バーダラスが政府管理下に入り、これでアイスランド大手4行がすべて国の管理下に入った。
2008年の1年間で株価は99.37%下落。失業率も2008年1月には1.0%だったのが12月には5.4%まで上昇した。
政府は米国などにある大使公邸の売却や、防衛庁[1]の廃止まで検討を始めた。また、IMFが100億ドルの支援計画(うち25億ドルを北欧諸国が負担)を発表している。
経営破綻して国営化された銀行の預金補償問題も浮上し、いまだ経済危機の後遺症は癒えていない。
背景
2000年に金融自由化を受けて、アイスランドの金融機関は国内の不動産市場に進出し、イギリスや北欧を中心に他国の金融機関を買収。2006年末には、大手3行の資産はアイスランドのGDPの約8倍にもなっていたという。
銀行は資金の多くを国外から調達し、また一般市民も金利の高いクローナではなく円建てやスイス・フラン建ての決済制度を利用していた。そこに世界的金融危機が直撃、外部金融に依存していたアイスランド経済は急激に悪化したのである。
イギリスとの関係悪化
アイスランドの銀行には約30万のイギリスの顧客がいたが、経済危機を受けてアイスランド政府が口座を凍結。英国政府はアイスランド政府に預金保護を要請するがどうにもならず、挙句には英国の地方自治体やロンドン交通局など100以上の団体が約10億ポンド(約1700億円)をアイスランドの銀行に預けていたことが判明した。
この事態を重く見た英国政府は2008年10月8日、なんと反テロ法を適用し、アイスランドの銀行が英国内に持つ資産を凍結してしまった。これにはアイスランド側も当然反発、2009年1月にはアイスランドの国有化銀行カウプシング銀行がこれを不当として英政府を提訴。アイスランド政府もこれを支持し、両国の関係は現在ちょっとした泥沼状態にある。
エピソード
このように経済危機で大混乱が巻き起こっていたさなかの2008年10月10日、アメリカのネットオークションサイト「イーベイ(eBay)」に『アイスランドの国丸ごと(ただし世界的歌手ビョークは除く)』が売りに出されるという椿事が起きた。99ペンス(約170円)で始まったこの競売は、最終的に1000万ポンド(17億円)の高値を突破。結局この競売はいたずらと確認され(そりゃそうだ)、イーベイのシステムから削除された。
名産
漁業が盛んなため、サーモン料理、タラ料理、テナガエビ、鯨ステーキなどシーフードが豊富。羊の牧畜が行われており、ラム肉料理が楽しめる。またアザラシ肉やパフィンという海鳥などの珍味も。
みやげ物としては国内随一の観光スポットである温泉施設「ブルーラグーン」の関連グッズやニット製品などがある。
著名なアイスランド人
アイスランド人の名前は基本的に「個人名+父称」で構成され、苗字を持たない。「父称」とは父親の名前にソン(-son、~の息子)もしくはドッティル(-dottir、~の娘)をつけたもので、たとえば「フリドリク・オスカルソン」なら「オスカルの息子フリドリク」という名前。もし彼に息子が生まれればフリドリクソン、娘が生まれればフリドリクドッティルが父称となる。このため家族で父、母、息子、娘でラストネームが異なるのが当たり前で、アイスランドの電話帳はファーストネーム順に並んでいる。
余談だが、かつては他の北欧諸国でも同様に父称をもちいていたが、現在では世襲の姓として固定されており、この習慣が残っているのはアイスランドだけになっている。
下記に挙げる著名なアイスランド人のうち、この法則に沿わないものはアイスランド系以外(デンマーク系など)の人物であるか、もしくは芸名などである。
実在の人物
- ウラディーミル・アシュケナージ(ピアニスト、指揮者) ※ソ連出身、アイスランドに帰化
- オラファー・エリアソン(現代美術家)
- レイフ・エリクソン(ヴァイキング)
- 赤毛のエリック(人殺し、欧州にとってのグリーンランド発見者)
- エイドゥル・グジョンセン(サッカー選手)
- エギル・スカラグリームスソン(詩人)
- スノッリ・ストゥルルソン(詩人、歴史家、政治家)
- ヨン・スティーブンソン・フォン・テッツナー(Opera Software創業者)
- ビョーク(歌手)
- フリドリック・トール・フリドリクソン(映画監督、脚本家、プロデューサー)
- グドベルグー・ベルグッソン(作家)
- ヴィグディス・フィンボガドゥティル(政治家、世界初の民選女性大統領)
- ムーム(エレクトロニカバンド)
- Mezzoforte(フュージョンバンド)
- ヨハン・ヨハンソン(作曲家、鍵盤楽器奏者)
- シガー・ロス(ロックバンド)
- ステインソール・ソルステインソン(サッカー選手)
架空の人物
関連動画
関連項目・リンク
脚注
- *2006年の米軍の撤退を受けて2008年設置。主な業務は米軍が使用していた基地・施設の管理で、約10億円の予算が計上されている。なおアイスランドに軍隊は存在せず、180人からなる沿岸警備隊がいるのみである。
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