財務省が発表した6月の税収実績(一般会計分)によると、国から企業などへの消費税の還付額が、輸出や設備投資が好調だった影響で、単月で最高の8690億円に上った。
消費税は、輸出取引や多額の設備投資などに応じて還付される制度がある。6月の消費税収は、3月期決算の企業が申請した還付金が多く計上されたため、還付額が納付額を上回り、差し引きマイナス1753億円だった。マイナス幅は2000年5月に次ぐ2番目の水準だ。
還付―――すなわち国から納税者に支払われる額ですが―――この還付額が過去最高の8690億円に上ったそうです。消費税の仕組みについては過去のエントリ「ニラ茶でわかる消費税のからくり」でも扱ったのですが、仕入れに掛かった際の消費税が仕入れ元(消費税を納めるのは仕入れ先なのですが)に返納されるものとなっており、それが妙なところで利益を生むこともあるのです。
例えばトヨタが下請け企業からの仕入れに100億円を支払ったとします。
下請け会社は消費税として4.76億円を国と地方に納付しなければなりません。
そしてトヨタが仕入れた材料を使って2億ドルで販売したとします。
輸出には消費税がかかりませんので、トヨタは消費税を納めません。
そして、仕入れの還付金として4.76億円が国からトヨタに支払われます。
消費税のお陰で余分に儲かっているところがありますよね?
それから、課税しているはずが取り損ねているところもありますよね?
さて、6月の消費税税収は差し引きマイナス1753億円です。通年で見れば話は違うのでしょうけれど、6月に限ってみれば赤字です。消費税が存在するために、かえって国の歳出が増えています。この上で消費税率を倍増などさせようものなら歳出も倍増してしまいます。ここは一つ、歳出削減のために消費税撤廃を提案したいくらいです。
もちろん通年で見れば、消費税による歳入はその還付による歳出を上回るわけですが、個別の企業を見ればその限りでもありません。トヨタやキャノンなどの「厳しい国際競争に晒されている」企業の多くは消費税の納付額を還付額が上回る逆転状態にあり、消費税によって国から収入を得ている訳でもあります。消費税納税額の少ない輸出企業にも還付の制限がないために、消費税のお陰で逆に黒字が産まれる、この黒字を「輸出戻し税」などとも呼ぶのですが、この「輸出戻し税」の総額はなんと2兆円に達します。
たとえば仕入れ税額控除に上限を設ける、最大でも支払った消費税までしか還付を認めないとするのはどうでしょうか? 現状では消費税として300億円しか納税していないのに3000億円もの還付を受けている企業があるわけですが、納税によって納税者に利益が、課税によって課税する側に損益が出る仕組みはいかがでしょう。せめて100億円納税した企業には還付も100億円までに制限するなどしてこの奇妙な逆転現象を抑制する措置が必要ではないでしょうか。支払った消費税までしか還付を認めないことにすれば、それだけで歳出を2兆円削減できるのですが。