ミネラルウオーター製造販売の奥長良川名水(岐阜県関市)は21日、水素水を粉末にした新商品「ハイドロエッグ水素パウダー」の販売を始めた。水素が持続的に発生し、無味無臭であるのが特徴。味に影響を及ぼさないため、飲み物のほか、食べ物などに混ぜて利用できる。年間1万箱の売り上げを目指す。
新商品は岐阜大、東京工科大との共同研究により開発した。同社が2010年から販売している清涼飲料水「逃げない水素水36」を凍結乾燥して粉末化したもの。一般的な水素水は開封後に水素が抜けてしまうが、逃げない水素水は独自の製造技術で水素を内から発生させ続ける。粉末化してもその機能を保持しており、水に溶かすと48時間以上水素が発生するという。
この日、東京都内で会見した中村隆春社長は「日本で唯一の商品として、世界に愛される商品にしていきたい」とアピールした。
1箱30包入り(1包3グラム)で、価格は8400円(税別)。同社オンラインショップなどで購入できる。
「粉末の水素水」というインパクトのあるフレーズで局所的に話題になっているのが冒頭に引用した記事と商品なのですが、まぁ本当に水素を粉末化することができれば水素の燃料化における画期的なブレイクスルーです。それこそ世界の燃料事情が一変しますよね。事実なら時代を揺るがす世紀の大発見となりますけれど――8400円(税別)とのことですので、なんだか庶民的です。
なお岐阜新聞も伝える同社オンラインショップを見ると"HYDRO EGG SUISO powder"などと銘打たれておりまして、水なのだか卵なのだか、果ては謎の新物質SUISOなのだか粉末なのだか、色々と盛りだくさんです。そして原材料名を見ると「ブドウ糖」「マルトース」と書かれています。とりあえず、飲んでも身体に害はなさそうな材料ですね。
しかし、岐阜新聞の伝えるところでは「無味無臭であるのが特徴」なのだそうです。普通のブドウ糖やマルトース(麦芽糖)であれば甘い味がするものですけれど、何か秘密の製法でもあるのでしょうか。糖類の中でも色々と人工的に加工すれば甘くないものも作れるらしいですが、ますます以て謎は深まるばかりです。
その他の原材料としては「二酸化ケイ素」「水酸化カリウム」と続いています。まぁ、よほど極端な摂取をしなければ害はないと思われる範疇ですけれど、水素水の類を好む人から見た食品添加物って、どうなんでしょうね。わざわざ水素水を購入するような人が、「二酸化ケイ素」「水酸化カリウム」をどう考えているかは興味深いところです。
さて人手不足(本当か?)が声高に叫ばれる一方で「(お前らは)AIに仕事を奪われるぞ」などと語る予言者も喧しい昨今です。AIが本当に仕事を奪うなら、人手は余るばかりで不足などは起きなくなりそうなものですけれど、しかるに現実世界はいかがなものでしょう。とりあえずこの岐阜新聞報道などを見ていますと、そうそうAIは人間に及ぶまいな、と感じました。
中学生程度の理科の知識があれば、ブドウ糖と食品添加物を混ぜて「粉末の水素水」なんてインチキだとすぐに分かってしまうわけです。しかしインチキなら需要がないかと言えば話は完全に別で、不合理で非生産的な代物にも社会的な需要がある、だからこそ結構な大手企業もエセ科学に基づいた健康グッズの類いを大々的に販売してきたと言えます。
そうでなくとも、忖度やゴマすり、社内政治や諸々の不正行為、パワハラやセクハラに、誇大広告やデマの類いも、それを求める人がいる、需要があるからこそ存続していることは認められなければならないでしょう。合理的な選択はできなくとも、あるいは科学的に真っ当な商品を開発できなくとも、それはビジネスとしての成否に必ずしも直結するものではない、と思うのですね。
東京都の教育委員会によると、AIに仕事を奪われないためには、中学校の卒業時に少なくとも教科書を読めるようにすることがこれからの公教育の最重要課題なのだそうです。しかるに中学校の教科書レベルの知識でインチキと分かるようなグッズも普通に売れている、商売できているわけです。そしてこういう類ほど生命力が強いと言いますか、いかにAIが発展しようとゴキブリのように生き延びる、と私は予言しておきます。