田園都市線とは、渋谷駅(東京都渋谷区)~中央林間駅(神奈川県大和市)を結ぶ、東急の鉄道路線である。
歴史
東京の副都心の一つである渋谷から、神奈川県大和市にある中央林間までほぼ全線にわたって住宅地を走り続ける日本を代表する通勤・通学路線の一つである。一日平均輸送人員は1,188,720人(2012年度)と東急最多。
この路線の基本像ができたのは戦後ではあるものの、一部区間は戦前からあるなど、その生い立ちは意外と複雑なものである。そのため、路線の成り立ちは「渋谷~二子玉川間」「二子玉川~溝の口間」「溝の口~中央林間間」で大きく分けることができる。
まず最初に開業したのは二子玉川~溝の口間である。この区間は玉電の延長線として「溝ノ口線」という名称で1927年に開業した。当初は軌道線であった。
1943年に戦時中に伴う輸送力増強のため、1,372mmから1,067mmへの改軌を実施し、大井町線に編入された。
その後、1945年に正式に鉄道線に変更され、1963年に大井町線が田園都市線に改称された。
1966年4月1日に多摩川を渡る二子橋梁が道路との併用橋から鉄道線用橋に変更され、同時に長津田駅まで延伸された。ここに田園都市線の大きな骨格が出来上がった。
これは、東急の戦後の一大プロジェクトである「東急多摩田園都市」のアクセス路線として開業したものである。
東急多摩田園都市は、現行の田園都市線で言うところの梶が谷駅~中央林間駅付近の地域を指し、民間主導で行われた戦後有数の住宅開発事業である。この当初は18m級車両による4両編成、鷺沼~長津田間に至っては日中2両編成で運行されていた。
しかしながら、都心側のターミナルが大井町ではアクセスが悪い事は明らかで、長津田開業の2年前から新玉川線の建設へと東急は舵を切っている。
その後も田園都市線は細々と路線を延伸することとなる。1968年にはつくし野まで、1972年にすずかけ台まで、1976年につきみ野まで延伸すると、1977年4月7日には新玉川線として渋谷~二子玉川間が開業した。
新玉川線は田園都市線と都心方面とのアクセス路線として、ほぼ全線を地下で建設された路線である。
当初は銀座線との直通運転が計画されたものの、種々の問題で断念され、結果として半蔵門線との直通運転に計画変更された。
なお、新玉川線の一部区間のトンネルは首都高速3号渋谷線の高架橋と一体となって建設された事が特筆される。
新玉川線の建設費が膨大だったため、新玉川線は加算運賃が適用されていた(償還完了に伴い1997年に廃止)。
1978年に半蔵門線が開業し、新玉川線との直通運転を開始し、1979年8月12日に田園都市線の基本運行経路が大井町方面から新玉川線方面に変更され、二子玉川~大井町間は大井町線として分離された。
その後、1983年に10両編成の運行を開始し、翌1984年に中央林間まで延伸し、現在の田園都市線の全体像が出来上がった。
1991年には、日本で初めて全線で保安装置を速度制限をほぼ5km/h刻みで設定できる新CS-ATCに変更した。
これは増え続ける旅客需要に応えるため、運転間隔を短縮するために実施されたものである。
2000年8月6日には、運行系統に合わせ新玉川線が田園都市線に編入された。
列車運行
基本的にほとんどすべての列車が東京地下鉄半蔵門線への直通運転を行い、さらにおよそ4割程度の列車が東武スカイツリーライン経由で伊勢崎線久喜駅・日光線南栗橋駅まで直通運転を実施している。
特に、半蔵門線には渋谷始発が無い(田園都市線にはある)うえ、田園都市線との直通を行わない列車も一日に押上方面2本のみ(半蔵門線内のみで完結する列車はうち1本だけ)である、半蔵門線の車両基地が鷺沼にあるなど両線はほぼ同一の路線と言っていいくらい一体的な運行体系を構築している。
また、大井町線の列車の一部も田園都市線に乗り入れて運行している。
列車の車両数は大井町線直通は5両編成ないしは7両編成、それ以外は全て10両編成である。
以下、各列車種別ごとに解説。なお、停車駅は下の路線図を参照。
急行
基本的な優等列車。種別色は赤色で、フルカラーLEDを使用した表示機や幕式行先表示機では「急行 」、東武車では「急行 」、メトロ車は「急行 」、それ以外では「急行 」と表記される。
ほぼ全日にわたって運行されるが、朝ラッシュ時(2016年3月28日以降、平日夕方の上りも含む)は全列車準急となる。
日中は一時間に6本が運転される。日中は全て中央林間発着で運行され、押上発着が毎時2本、久喜発着が毎時2本、大井町線直通が2本であり、鷺沼・長津田で各駅停車に連絡し、桜新町で各停の追い抜きを実施する。
ラッシュ時間帯やその前後は本数が増え、梶が谷・江田・藤が丘(上りのみ)での通過待ちを行う場合がある。
特に平日朝の上りは急行への乗客集中に伴う遅延を防止するため、鷺沼・長津田での緩急接続は実施せず、全て通過待ちのみで追い越しを行うダイヤが組まれている。
2019年10月1日ダイヤ改正までは、土休日にのみ南町田グランベリーパーク駅に停車していた。これはかつて、ゴールデンウィークや三連休の間などで、駅前にあるショッピングモール「グランベリーモール」の利用の便を図るために臨時停車していたものを、分かりやすくするためにすべての土休日に拡大し、定期化したためである。
2019年改正以降、11月13日に南町田グランベリーパークがまちびらきすることもあり、終日急行が停車するようになった。
大井町線急行は7両編成で運行され、二子玉川、鷺沼、長津田で田園都市線の各駅停車と連絡を行う。
準急
平日朝ラッシュ時および全日の日中に運転される列車種別。朝ラッシュ時の準急運転時間帯は急行は設定されない。
種別色は緑色だが、種別表示は大きく分かれており、幕式表示車とフルカラーLED表示機を有する車両では「準急 」、8500系の3色LED車や東武車は「準急 」、メトロ車は「準急 」、駅の発車案内表示機に至っては「準急」と表示され、統一性が全くない。
桜新町での急行通過待ちを嫌い、二子玉川で急行への乗り換えをする乗客が多数いたために急行と各停の乗車率に差が生じ、結果的に急行の混雑激化と遅延の拡大を招いていたことから、これらを緩和するために2007年4月のダイヤ改正で平日朝ラッシュ時の上りに登場した。
その後、2014年6月21日のダイヤ改正で平日朝ラッシュ時および全日の日中時間帯の上下列車に拡大した。また、新たに南町田(現・南町田グランベリーパーク)が停車駅となっている。
停車駅は1996年まで存在していた快速とほぼ同じ(あざみ野駅が追加されているのと、運転区間が中央林間まで拡大しているのが相違点)。
更に2019年のダイヤ改正で長津田~中央林間が各駅に停車するようになった。
当初は渋谷着8時台の急行が置き換えられたが、その後適用が拡大し、現行ダイヤ(2014年6月21日改正)では、平日の朝ラッシュ時は上り渋谷着7:42~9:05、下り渋谷発7:34~8:58となっている。2016年3月28日以降、平日夕方の上り列車も急行から準急に置き換えられる。
前述の急行と同じく、優等列車への乗客集中を防止する観点から、各駅停車の追い抜きは朝ラッシュ時は藤が丘・江田・梶が谷のみで行い、待ち合わせでの接続は一切ない。
なお、6ドア車が健在だった頃は、上りの3本目から12本目までの準急は4・5・8号車に6ドア・座席格納車両を連結した東急5000系が充当され、座席格納車の座席は半蔵門駅まで利用不可になっていた。
各駅停車
田園都市線で最も多く運転される列車。略称は「各停」。
田園都市線では各駅停車は種別表示を省略している(大井町線直通列車を除く)ため、種別色は不明。
3色LEDの駅の案内表示機では「各停 」、二子玉川駅と溝の口駅は「各停」(白枠囲み)、渋谷駅は「各停」と表示している。車内の案内LCDでは「各停 」と表示する。
日中は一時間に8本が運行され、2本は渋谷駅発着(渋谷駅~半蔵門駅間を回送し、半蔵門駅の留置線で折り返す)となっている。途中駅での待避は、桜新町で急行の通過待ち、鷺沼・長津田で急行・準急の待ち合わせ、土休日は二子玉川で大井町線直通急行の待ち合わせのうち2-3回を行う。
一部、長津田発着の列車もあるが、日中の運行に関しては長津田~中央林間間の各駅停車に連絡するダイヤが組まれている。
ラッシュ時は藤が丘・江田・梶が谷でも退避を行う場合があるが、駅の時刻表には田園都市線内の退避パターンが記載されているため、確認を行いやすい。
なお、日中も遅れなどにより退避駅を急遽変更する場合がある。その場合は車内アナウンスなどで案内されるので、各停から急行に乗り換える(あるいはその逆)際は注意が必要。
早朝の上り、夜間の下りでは、大井町線との直通運転を行う列車が鷺沼発着にて存在する。
これは車庫への入出庫を兼ねたものであるため、片道のみの運転である。
大井町線には各駅停車が2種類存在するが、乗り入れてくるのは種別色が青色のB各停のみである。
なお、大井町線のB各停は3色LEDを使用する大半の駅の案内表示機では「各停 」と表示される。
臨時ダイヤ・臨時列車
田園都市線は毎年8月に行われる(2011年は東日本大震災の影響で10月)多摩川花火大会の開催時は、大井町線・世田谷線とともに臨時ダイヤで運行される。
花火開催時間帯とその前後は全列車各駅停車として運行され、一部区間で列車の増発が行われている。
また、一時期、隅田川花火大会や東京湾の花火大会開催時に臨時列車の運行を行っていたが、近年は設定が無い。
また、ゴールデンウィークの時期にも、東武伊勢崎線館林・太田方面への直行臨時急行「フラワーエクスプレス」が運転されていたが、こちらもここ数年は設定が無い。
ダイヤ乱れ時の列車運行
人身事故などで運転を見合わせた際は、運転できる区間で全列車各駅停車で運行を行う場合が多い。事故がデータイムに発生した場合などは、稀に急行列車の運転が継続されたまま折り返し運転を行う事もある。
その際、東武線との直通運転は打ち切られる事が多いが、半蔵門線と田園都市線との直通運転は渋谷駅前後が不通の場合を除き継続される。
これは、渋谷駅の構造上、両者が同時に双方向に折り返すことが困難(というかほぼ無理)なためである。
途中の折り返し可能駅は二子玉川(用賀)・梶が谷・鷺沼・あざみ野・長津田。このうち、二子玉川に(用賀)と併記したのは二子玉川で折り返す際には用賀駅手前の渡り線を利用するためであり、場合によっては用賀まで(から)客扱いとするケースがあるためである。
田園都市線の運行車両
東急車
東京メトロ車
東武車
※大井町線直通列車に関しては「大井町線」の項目を参照してください。
路線図
【凡例】 ●:停車駅 |:通過駅 ■:乗換え路線 ○:周辺施設
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脚注
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