トウケイヘイローとは、2009年生まれの日本の競走馬・種牡馬である。鹿毛の牡馬。
4歳時に武豊と共に重賞を3連勝し、サイレンススズカの再来と呼ばれた馬。
主な勝ち鞍
2013年:札幌記念(GII)、ダービー卿チャレンジトロフィー(GIII)、鳴尾記念(GIII)、函館記念(GIII)
概要
トウケイヘイロー Tokei Halo |
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生年月日 | 2009年4月22日 |
馬種 | サラブレッド |
性・毛色 | 牡・鹿毛 |
生産国 | 日本 |
生産者 | 中村和夫(北海道三石町) (現・新ひだか町) |
馬主 | 木村信彦 |
調教師 | 清水久詞(栗東) |
馬名意味 | 冠名+父名の一部 |
抹消日 | 2015年10月10日 |
戦績 | 27戦8勝[8-2-2-15] |
獲得賞金 | 3億3378万9700円 |
2009年4月22日生まれ。父ゴールドヘイロー、母ダイスクィーン、母父*ミルジョージという血統。
父ゴールドヘイローは脚部不安に泣き競走馬としては大井の条件馬止まりだったが、父がご存じ*サンデーサイレンスのため種牡馬入りを果たすと仕上がりの早さで地方の2歳リーディングサイアーになるなど成功を収めた馬。
母は大井で7戦1勝の条件馬。産駒8頭のうち地方含めて重賞を制したのは本馬のみだが、デビューできた7頭全員が勝利を収めるなどなかなかの安定感である。
母父はイナリワンやロジータを出し中央・地方の総合リーディングサイアーに輝いたこともある、昭和から平成初期を代表する種牡馬。
本馬は7番仔に当たり、それまでの6頭の仔のうちデビューできた5頭はすべてダートの短距離からマイル戦(あと障害競走)を主に使われていた。ついでにいうと8番仔も中央未勝利で園田に移ったのち3勝をあげて中央に出戻っている、いわゆるマル地である。
…なんでこの馬だけ芝の、しかも中距離で活躍できたんだろうか。
生産者は上記のミルジョージを日本に導入し、またゴールドヘイローを繋養していた中村和夫氏。馬主はトウケイ冠を用いる木村信彦氏(本業は司法書士)。調教師はのちに顕彰馬キタサンブラックを管理することとなる清水久詞氏であった。
2歳(2011年)
デビューは2011年7月の新馬戦、血統ゆえに1400mという短い距離のレースであった。柴山雄一騎手を鞍上に迎えたレースでは中団から最終直線で外に持ち出すと上がり3ハロン36秒2という脚で前方の馬を鮮やかに差し切って初勝利を挙げる。
2戦目は初重賞挑戦となった新潟2歳ステークス(GIII)。ここでは新馬戦のタイムが際立ったものでもなかったためにブービー17番人気と低評価を下される。そしてレースはというと人気よりは上に来たが7着と掲示板を外す結果に。…この時1倍台の人気を背負って2着に敗れた馬と長きにわたる因縁が生まれるとはだれが予想できただろうか。
中1週で臨んだ3戦目のカンナステークス(オープン、中山芝1200m)ではのちに主戦となる武豊と初コンビとなり、7番人気に反して3着と好走。続く4戦目のくるみ賞(500万下、東京1400m)で後藤浩輝騎手を鞍上に2勝目をあげる。
そして年内最後として初GIとなる朝日杯フューチュリティステークスに出走。鞍上は前走に引き続き後藤浩輝。割れまくっていたとはいえ9番人気と今一つな評価。レースではハクサンムーンが逃げる中、第3コーナーから仕掛けていき直線で先頭に立つ強気の競馬を見せたが、内を突いたアルフレードにかわされ4着に終わる。
3歳(2012年)~4歳春(2013年)・マイル戦線での苦闘
年が明けて3歳はシンザン記念(GIII) から始動。当然ながら1番人気に推される。しかしレースはというと2番人気の鬼貴婦人ことジェンティルドンナに直線引き離されての4着。続くファルコンステークス(GIII)は2番人気を大きく裏切る10着、鞍上をニコラ・ピンナ騎手に変えて臨んだ短距離オープン戦も3着、11着。このあたりから鞍上をコロコロ変えつつ自己条件の火打山特別(1000万下、新潟1400m)を勝ち長岡ステータス(1600万下、新潟1400m)を2着としたところで3歳戦を終える。
翌年は目標を安田記念に定め、3月の武庫川ステークス(1600万下、阪神1600m)より始動。ここを勝ってオープン昇格を果たすと、続くダービー卿チャレンジトロフィー(GIII)では松岡正海騎手と共に逃げを打ち、最後追い込んできたダイワマッジョーレをクビ差振り切って念願の重賞初制覇を果たす。馬主・調教師ともに初の重賞制覇であった。
しかし続く京王杯スプリングカップ(GII)では距離が足りなかったのか、それとも前半800mを45秒1という速い流れで体力を消耗したか、ダイワマッジョーレのリベンジを許す8着に終わる。そしてここで賞金を積めなかったことにより、安田記念からは哀れ除外となってしまう。まあ出たところで相手は龍王ロードカナロアだったのだが…。
4歳夏・開眼
仕方がないので初の2000m戦となる鳴尾記念(GIII)に出走。初の2000m戦ということで6番人気。鞍上はこの年ダービー5勝目を挙げて復調傾向にあった武豊と1年9か月ぶりにコンビを組んだ。前半はモズが逃げ、その後ろの2番手で進めたが900m前後で交わして先頭に立つ。速いペース…かと思いきや前半1000mは60秒4という絶妙なペースを刻む武豊。最終直線で後続が足を伸ばすも、上がり3ハロンを34秒7でまとめる粘り腰を見せて見事1着。重賞2勝目を挙げた。
この勝利を期に中距離路線への転向を決めた陣営。天皇賞(秋)に向けて賞金を稼ぐべく夏競馬へと向かう。まずは函館記念(GIII)。今度は最初からハナに立ち、前半1000mを58秒8という平均ペースで入る。そして後続が洋芝で伸びあぐねる中、上がり3ハロンを35秒7でまとめて堂々の2連勝。
続くはこの年札幌競馬場が改修中だったために函館競馬場で開催された札幌記念(GII)。相手はこの年の皐月賞馬ロゴタイプ、2011年の天皇賞で1分56秒1という驚愕のレコードを出したトーセンジョーダン、ヴィルシーナを抑えて2012年のエリ女を制したレインボーダリア(函館記念に続いての顔合わせ)など。降り続く雨により重馬場となったレース、本馬はいつものようにゲートを決めて先頭に立ち、重馬場を苦にすることもなく前半1000mを61秒7で入る。そして後続が追走に苦労する中、本馬は第3コーナーで早めスパートで一気に突き放す。そのまま2着のアサカクリチャンに6馬身差つける圧勝、重賞3連勝である。この勝利で2013年のサマー2000シリーズのチャンピオンに輝いたのであった。
ちなみに例年札幌記念に出てくるような有力馬は他のサマー2000シリーズに出てくることがないしサマー2000を狙う馬もわざわざ札幌記念には出ないため、札幌記念に出走した馬がサマー2000シリーズを勝利するのはこれが始めて。また函館記念と札幌記念を同一年に優勝する馬は1975年のツキサムホマレ以来38年ぶり、札幌記念が芝のレースになってからは初である。ともに札幌競馬場が改修中だった故の珍事と言えよう。
天皇賞(秋)・サイレンススズカの再来と呼ばれて
さて、「逃げ戦法を取り」「途中から乗り替わった武豊と共に」「重賞を3連勝し」「強敵相手のGIIで圧巻のレースを見せた」馬といえば競馬ファンならだれもが知る馬がいる。そう、1998年に金鯱賞でマチカネフクキタルなどの強豪を相手に大差価値を収めたサイレンススズカである。その後ススズは宝塚記念でエアグルーヴやステイゴールドを抑えてGI馬となり、毎日王冠では強力な外国産馬であったグラスワンダーとエルコンドルパサーを破り、そして勝利を確実視されていた天皇賞(秋)で骨折し天国へと駆けて行ってしまったのであった。
その死から15年、GI100勝(!?)に王手をかけた武豊が駆る有力な逃げ馬ということで本馬は「サイレンススズカの再来」として勝利を期待されていた。まあユタカさんはススズとダブらせることを歓迎してなかったらしい(そりゃそうだ)。あとトウケイヘイローは大逃げでもないし、重賞連勝中に左回りを走っていない。
そんなこんなで天皇賞(秋)本番。大本命は前年にシンザン記念で本馬を破ったのちに牝馬三冠を制し、さらにはジャパンカップで2011年の三冠馬オルフェーヴルを文字通りぶっ飛ばしたジェンティルドンナ。5冠目をかけて2.0倍の1番人気である。そして4.4倍の2番人気は本馬。前年覇者で今年も毎日王冠を制してきたエイシンフラッシュ(3番人気、4.7倍)を抑えるあたり、サイレンススズカの再来への期待がうかがえる。
レース本番。6枠11番というあまり良いとは言えない枠からだったがしっかりとスタートを決め、こちらもスタートを決めたジェンティルドンナを制して先頭に立つ。そのままジェンティルドンナにマークされながら逃げ続け、前半1000mを58秒4という速めのペースで入る。
速い!前半の1000m!このラップを刻んでいるのは武豊、トウケイヘイロー!
鬼婦人がゴリゴリマークしてるのに緩めたら抜かれておしまいのような気もするし、洋芝の函館記念で同様のラップで逃げ切った経験のある本馬、直線に入っても懸命に粘りを見せる。しかし1完歩ずつ距離を詰めてくるジェンティルドンナ、そして残り400mを過ぎたあたりで両馬は並びーー
ジェンティルドンナ、ジェンティルドンナ、外からジェンティルドンナ、
ーーその両馬を外から爆発的な末脚で抜き去っていった一頭。2年前に新潟2歳ステークスで1度だけ顔を合わせ、その後はアーリントンカップ(GIII)を制したものの重賞で銀2着ばかりの勝ちきれない日々を過ごし、収得賞金上位馬の回避による繰り上げで出走にこぎつけていた5番人気のジャスタウェイであった。
レースはジャスタウェイが2着ジェンティルドンナを4馬身ぶっちぎって優勝。トウケイヘイローは府中の長い直線では勝手が違ったか力尽き、後続に飲まれて10着。結果的にはトウケイヘイローの作り出したハイペースがジャスタウェイら差し馬たちに有利な展開を作り出す形となり、同期が花開くのを間近で見届ける形になってしまった。
香港カップ・ススズとユタカが出会った舞台で
トウケイヘイローの次走は、16年前にサイレンススズカと武豊が初めてコンビを組んだ香港カップ(G1)。本馬は前走の大敗が嫌われたか6番人気。
龍王ロードカナロアが香港スプリントを5馬身差の圧勝した余韻の冷めぬ中、5番ゲートからスタートを決めるとスムーズにハナを切ることに成功。最初の2ハロンを25秒7、次の2ハロンを24秒7とゆるみのないラップで逃げる。3コーナーで後続が差を詰めてくるが1馬身差をつけたまま最終直線へ。直線でも鞍上武豊のゲキに応えて粘り腰を発揮する本馬。なかなか差を詰められない後続!悲願のGI制覇なるか!!
…しかし最後150mで足が鈍り、内ラチ沿いを通ってきた同年の香港ダービー(G1) 馬アキードモフィードに残り50mで捉えられて2着。それでも後続の追撃は1/2馬身振り切り、優駿ぞろいの2012年クラシック世代の一角としての実力は示したのであった。
5~6歳・落日
香港の好走を受け、陣営はドバイへの挑戦を表明。手始めに中山記念(GII)から始動。ここが復帰戦となるジャスタウェイとは3度目の顔合わせである。ジャスタウェイが4か月ぶりの復帰戦であること、天皇賞はフロックではないかという見方があったこと、58kgの斤量を負っていること、舞台が直線の長い府中から直線の短い中山になったこと、などなどあってジャスタウェイ(2番人気)を抑える1番人気。
しかしレースはというとゲートで暴れて痛恨の出遅れ。同期のゴルシがそっち見てるぞ。外を回って向こう正面で強引にハナに立ったが、そんな真似をして粘りこめるわけもなく…。残り1ハロンで好位で立ち回ったジャスタウェイとロゴタイプに躱されると、そのまま掲示板外となる6着に沈んだ。思えば、この時点でトウケイヘイローの歯車は狂いだしていたのかもしれない。
とはいえ出遅れが敗因なのは明らかなので、そのまま陣営はドバイデューティーフリー(GI)に出走。ちなみにまたしてもジャスタウェイ&ロゴタイプと一緒のレースである。人気は重賞連勝のジャスタウェイが1番人気になる中6番人気。もう負けられないとばかりにスタートを決めるとドバイでもハナを切り、よどみないペースを刻む。しかし直線を向いた時点でハンターズライトに並びかけられ、懸命に抵抗するトウケイヘイローであったがーー
トウケイヘイロー先頭だ!粘れトウケイヘイロー!ハンターズライト上がってくる!
ーー天皇賞(秋)の再現のごとく、最後方からまた爆発的な末脚を発揮したジャスタウェイに抜き去られた。結局ジャスタウェイは2着ウェルキンゲトリクスに6と1/4馬身つける圧勝。このレースで叩きだしたタイム1分45秒52は従来のレコードを2秒41上回り(なんなら距離延長前の1777m時代のレコードより早い)、いまだに1分45秒台で走った馬が本馬含め4頭のみという異次元のタイム。そのタイムをゆるみない逃げで演出した本馬は7着に沈んだ。
このレースののち、トウケイヘイローはシンガポール航空国際カップ(星G1、2015年限りで廃止)に出走して4着と復調の気配を見せ、連覇を目指して札幌記念に出走。凱旋門賞を目指す同期の白いのゴールドシップ・ハープスターからは離されたもののロゴタイプを抑えて3番人気に推される。スタートも決めて1000mを58秒4とゆるみないラップを刻むいつものレース…だったのだがさすがに重馬場では早すぎたかそれとも衰えか、直線入り口で早々とハープスターとゴールドシップに捕まると11着大敗。
おまけにレース後左前脚の屈腱炎が発覚し、1年後復帰したものの掲示板に乗れず、初ダート戦のシリウスステークス(GIII)で8着に敗れたのちに今度は右前脚に屈腱炎を生じて引退となった。
引退後はアロースタッドで種牡馬になったが、すでに同じくSS孫世代であるオルフェーヴルやジャスタウェイが種牡馬入りしている状況ではGI未勝利の馬にチャンスが回ることはなく、残せた産駒はわずかに23頭であった。その後2023年を持って種牡馬を引退し、薔薇親父ファームYogiboヴェルサイユリゾートファームにて功労馬として余生を過ごすこととなった。
血統表
ゴールドヘイロー 1997 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ニアーザゴールド 1991 鹿毛 |
Seeking the Gold | Mr. Prospector | |
Con Game | |||
*ニヤー | Northern Dancer | ||
Far | |||
ダンスクィーン 1992 鹿毛 FNo.9-f |
*ミルジョージ 1975 鹿毛 |
Mill Reef | Never Bend |
Milan Mill | |||
Miss Charisma | Regusa | ||
マタテイナ | |||
ハイネスポート 1982 黒鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
*ファンシミン | Determine | ||
Fanciful Miss | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.50%)
関連動画
もたなかった天皇賞(秋)
悲願のGIまであと一歩だったのに…
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関連項目
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