●伝承料理研究家・神戸山手大学教授の奥村彪生先生による、『現在の面白雑煮 東西南北』 をご紹介いたします。 明治以前の日本の食文化圏は大きく三つに分かれていた。 日本の先住民である北海道を中心にしたアイヌの人々の食文化と、琉球(沖縄)の人々の食文化、そして本州、四国・九州を結ぶ列島型の食文化である。 従ってアイヌや沖縄の食文化の中には、雑煮文化は存在しなかった。 現在北海道には雑煮はあるが、それは明治以後、ここに移り住んだ人々が持ち込んだ文化である。 沖縄には今も雑煮文化はない。 雑煮文化は本州・四国・九州を結ぶ文化であるが、気候風土(環境)が異なれば言葉も生活習慣も異なるように、産物も異なる。 その産物を、そこに住まう人々の嗜好に合わせて食生活が営まれていた時代であれば、おのずとそこに郷土色が出る。 今のように恵まれた時代からみれば、生きるのも精一杯だった時代に生きた人々の生活の体臭が感