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冬になると、世界中で死亡率が上昇する。この現象は「冬季超過死亡(EWM)」と呼ばれている。(PHOTOGRAPH BY NORBERT ROSING, NAT GEO IMAGE COLLECTION) クリスマスやバレンタインデーなどがある冬は華やかな季節だが、命を落とす人が最も多い季節でもある。これは世界的に見られる謎の多い現象で、「冬季超過死亡(EWM)」と呼ばれている。 例えば、英国家統計局(ONS)によれば、イングランドとウェールズでは2021年から2022年にかけての冬(12~3月)、死者数がほかの季節の平均より1万3000人多かった。米疾病対策センター(CDC)によれば、米国では2011〜2016年、冬の死者数はほかの季節より8〜12%多かった(編注:日本では厚生労働省の2014年人口動態統計に基づき、12~3月は4~11月に比べて死者数が17.5%多いという調査結果がある)
政府の地震調査委員会(委員長・平田直東京大学名誉教授)は1月15日、マグニチュード(M)8~9程度が想定される南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率をこれまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げたと発表した。平田委員長は「(80%程度とは)いつ起きてもおかしくない数字」と述べ、引き続き「備え」を進めるよう求めた。 地震調査委員会は日本周辺の海溝や全国の活断層で想定される地震の発生確率を毎年1月1日時点で計算し、必要に応じて更新し、発表している。同委員会によると、想定発生確率は実際に地震が起きない限り、時間の経過とともに上がる。今回の引き上げに際しては1月13日や2024年8月に日向灘で発生した地震は影響していないという。 南海トラフ巨大地震を巡る発生確率は2013年から出された。この時は「60~70%」、14年は「70%程度」、18年に「70~80%」に引き上げられていた。地震
水深120メートル近い地中海の海底。この一帯で、1300を超える謎のリングが発見された。(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA) 地中海の海底で完全な円形をした奇妙なリングが発見されると、その正体をめぐってさまざまな説が唱えられた。そして4年に及ぶ調査の結果、その背後にある失われた世界が明らかになってきた。 2011年9月中旬の晴れた暑い日。海洋生物学者のクリスティーヌ・ペルジャン゠マルティニは、研究用の全長30メートルの双胴船のキャビンにいた。船は、地中海に浮かぶフランス領コルシカ島の沖、約20キロを航行中で、窓の外では太陽の光を受け、紺碧(こんぺき)の海が美しく輝いている。だが彼女の関心は、その下に広がる世界に向けられていた。 目の前には、船に搭載されたソナーシステムの画像を映し出すモニターがある。短い音波を連続的に発して、約120メートル下の海底の地形を調べて
2023年11月、日本の屋久島で、メスのニホンザルがニホンジカにマウンティングしようとしている。(Photograph By Atsuyuki Ohshima) 2015年に屋久島で一匹のオスのニホンザル(Macaca fuscata)がメスのニホンジカ(Cervus nippon)の背中に飛び乗り、交尾を試みた。研究者たちは、この行動はおそらく繁殖の機会がないことに対するはけ口だろうと報告した。言い換えれば、偶然カメラに捉えられた一度きりの出来事のようだったが、2020年、21年、23年にも目撃された。 後のいくつかの事例には、2015年のニホンザルが関与しているようだった。もしそれが本当に同じ個体であるなら、群れの他のサルはこのサルからシカへのマウンティングを学び、「社会的伝播」として知られる方法で広めている可能性がある。この研究は、2024年12月24日付けで学術誌「Cultural
グリーンランド北西部の小さな島にある町ウマナック。冷戦時代の軍事基地から現在の北極を巡る各国の野心に至るまで、グリーンランドの戦略的な位置と豊富な地下資源は世界の注目を集め続けている。(PHOTOGRAPH BY CIRIL JAZBEC) 米国は冷戦時代をピークに100年以上にわたり繰り返しグリーンランドに食指を動かしてきた。狙いは豊富な地下資源と、その戦略的な位置だ。しかし、グリーンランドの指導者たちはこうした野心を常に拒んできた。なぜこれほどまでにグリーンランドは狙われるのか、領土購入の試みや軍事基地を巡る交渉の歴史からひも解いていこう。 米国がグリーンランドに初めて関心を持ったのはいつ? 米国が世界最大の島であるグリーンランドに関心を持ち始めたのは19世紀の後半。1867年に720万ドルでロシアからアラスカを購入した当時の国務長官ウィリアム・H・スワードが、領土拡大のための次の候補
中国東部の安徽(あんき)省にある「武王墩(ぶおうとん)」の墓から発掘された漆塗りの面。中国の墓からこのような品が見つかったのは初めてだ。楚では、ウルシ(Toxicodendron vernicifluum)の樹液を木に塗って作る漆器の技術が発達していた。(Xinhua) 中国東部にある戦国時代の墓「武王墩(ぶおうとん)」1号墓の発掘を終えた考古学者たちは、埋葬されていた人物が楚の末期の王である考烈王(こうれつおう)であると発表した。安徽(あんき)省にある2200年前の墓には、精巧な品々がぎっしりと詰まっていた。現代中国の礎となった、動乱と文化的な繁栄の時代をうかがい知る新たな手がかりとなるものだ。中国安徽省文物局が1月9日に発表した。(参考記事:「世界を驚かせた考古学の発見100」) この墓の発掘は2020年に始まった。これまで見つかっている楚の時代の墓の中で、もっとも大きく複雑なものだ。
いれたてのお茶の香りを楽しむ人。この感覚体験は、人をリラックスさせ、ストレスを軽減する。(PHOTOGRAPH BY JUSTIN JIN, NATIONAL GEOGRAPHIC) お茶は水に次いで世界で2番目に広く飲まれている飲み物だ。それにはもっともな理由がある。お茶は栄養豊富であるだけでなく、心を落ち着かせる効果があり、おいしく、すばらしい健康効果があるからだ。 「お茶はノンカロリーで抗酸化物質を豊富に含む飲み物です」と、登録栄養士で米国栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)のスポークスパーソンであるホイットニー・リンゼンマイヤー氏は言う。 これらの特徴は、脳卒中のリスクを減らし、血圧やコレステロール値を改善し、免疫機能を高めるのに役立つ。実際、2022年に医学誌「Annals of Internal Medicine」に発表された英国の研
2024年9月3日、東シナ海に浮かぶ鹿児島県奄美大島において、生態系に大きな被害をもたらしたフイリマングース(以下「マングース」)の根絶が宣言された。外来種の根絶事例は世界にいくつか存在するがいずれも小規模で、東京23区よりも広い奄美大島全島級は世界初だといわれる。猛毒のハブ駆除のためにわずか30頭程度のマングースが放たれてから、実に45年目の出来事。根絶に至るまでの多難な道のり、そして外来生物問題のこれからを2人のキーパーソンに語ってもらった。 「早くやめたら?」と言われ続けた(阿部愼太郎さん・環境省 奄美群島国立公園管理事務所) ―阿部さんがマングース防除に取り組んだきっかけを教えてください。 大学を卒業し、民間企業に就職した1988年に奄美大島へやってきました。獣医師の資格を生かした、実験用霊長類の繁殖・供給施設での仕事です。その傍ら一人で島内の野生生物調査を始め、後に知り合った仲間
シンガポールで、メンタルヘルスを重視する地元の人や外国人観光客を引き付ける画期的な方法として、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイなどのセラピーガーデンや自然公園が注目されている。(Photograph by Jiro Ose, Redux) シンガポールはメンタルヘルス観光のパイオニアだ。この国には、自閉スペクトラム症(自閉症)、認知症、不安症、注意欠如・多動症(ADHD)などの症状を緩和する16のセラピーガーデンがある。ブラックライト迷路、自信を強める展望台、記憶を刺激する看板、免疫を高める園芸エリア、車椅子障害物コースなど、独特な設備も多い。シンガポール国立公園局(NPB)によると、科学者の助言のもと、2030年までに、人間の嗅覚、触覚、味覚、聴覚、視覚をやさしく刺激する30の無料ガーデンをそろえる予定もある。 こういった設備のもとになったのは、2022年4月に学術誌「Frontiers in
多くの人がコレステロール値を下げるためにシンバスタチン(写真)などのスタチン系薬を服用している。より新しいPCSK9阻害薬は、コレステロール値をさらに下げることができる。(JAMES KING-HOLMES, SCITECH IMAGE/ALAMY STOCK PHOTO) 心臓病は米国では1位、日本では2位の死因となっている。科学者たちが、心臓病の鍵を握る「低比重リポタンパク質(LDL)」、いわゆる「悪玉コレステロール」を減らす方法を求めて、これまで以上に努力しているのも不思議ではない。近年、LDLをさらに減らす強力な薬が次々と開発されているが、なかにはLDLの減らしすぎによる健康リスクを心配する人もいる。 LDL粒子は動脈の壁に「プラーク」と呼ばれる物質がたまる主な要因だ。プラークが破裂すると心臓発作や脳卒中を引き起こすおそれがある。「心臓病の分野には、(LDL値が)低ければ低いほど良
着色料はキャンディーからシリアル、ジュースまで、多くの食品に含まれているが、健康にどのような影響があるのだろう? (PHOTOGRAPH BY DANIEL ALBONE, ALAMY STOCK PHOTO) キャンディー、シリアル、調味料、スナック菓子、ジュース、一部の栄養補助食品や医薬品に使用されてきた合成着色料が今、注目を集めている。2025年1月15日、米食品医薬品局(FDA)は、カリフォルニア州で全面的に禁止された食品添加物の赤色3号の使用許可を取り消すと発表した。 FDAが禁止したのは発がん性を懸念してだが、カリフォルニア州が全面禁止に踏み切った理由のひとつは、赤色3号や赤色40号を含む合成着色料と「注意欠如・多動症(ADHD)」など行動の障害との相関関係を示唆したカリフォルニア州環境保護局の報告書だ。また、EUでは以前から原則的に禁止されている。そのため、合成着色料とADH
チチェンイツァのエル・カスティージョのように印象的なピラミッドで知られるマヤ文明。こうした都市部を支えた周辺の町や村の新たな調査で、古典期のマヤは崩壊も消滅もしていないという説を支持する証拠が得られた。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) メキシコ、ユカタン半島北部に住んでいた人々に関する新たな分析の結果、古典期のマヤは崩壊も消滅もしてはいないという説を支持する証拠が、2024年12月に学術誌「Journal of Anthropological Archaeology」に発表された。「明らかに、後古典期に入ってマヤ文明が崩壊したというのは議論の余地がある考えです」。メキシコ、ユカタン自治大学の考古学者であり、論文の共著者であるペドロ・デルガード・クー氏はそう話す。 教科書でのマヤ文明の時系列はだいたいこうだ。「古典期
南極観測基地では長年、あらゆる種類のペットを飼うことが禁止されてきたが、ネコ好きの科学者たちがそれを変えようとしている。(PHOTOGRAPH BY RAMON ESPELT GORGOZO, ALAMY STOCK PHOTO) 米国の主要な南極観測基地であるマクマード基地では、一時滞在者たちが仕事だけでなく、音楽室、バー、ジム、図書館といった設備で忙しく過ごしている。しかし、スターリンクのインターネット接続が導入されたとはいえ、何カ月も続く冬の夜は士気を保つのが難しい。 2月中旬から8月にかけて、マクマード基地は孤立し、暗くなる。滞在者は数千人から数百人に減り、届く物資も大幅に減る。4月に入ると、太陽が姿を見せることはなくなり、外の気温はマイナス50℃近くまで下がって、風速30メートル超の猛吹雪に見舞われることもある。 プライバシーはほとんどなく、ストレスは多大だ。自宅の快適さを恋しく
トリ君、ヒツジ君、ついに2025年の幕開けだね。 先生、本年もよろしくお願いします! 今回は正月恒例の座談会です。今年最初のテーマは、近年発展がめざましい「スリープテック(Sleeptech)」です。 スリープテックってなんですか? スリープテックとは、スリープ(Sleep、睡眠)とテクノロジー(Technology、技術)を組み合わせた造語だよ。最近は睡眠医学や睡眠科学の知見をもとにして、睡眠の改善効果のある商品やサービスを提供するビジネスが続々登場しているんだ。 特にウェアラブルデバイス(端末)はどんどん高性能になって、ユーザーの活動量や心拍、体温などの生体データを毎晩連続して収集することができるようになって注目されています。その解析から睡眠状態を推定することで個々のユーザーの睡眠の質や睡眠習慣の問題点を見いだして、オーダーメイドの睡眠コーチングをするようなサービスまであります。 この
2025年1月7日火曜日、ロサンゼルスで急速に燃え広がったパリセーズ火災に巻き込まれた集合住宅の火を消すために消火栓を開けるロサンゼルス市消防局の消防士。突然襲いかかった未曾有の火災は同市の水供給を逼迫させ、消火栓の水が一時的に出なくなった。(Photograph by Caylo Seals, Sipa US/AP Photo) 2025年1月7日火曜日に米カリフォルニア州ロサンゼルス市内各地で複数の火災が発生した際、人々の注目は、すぐに火から水へと移った。 ロサンゼルス市西部のパリセーズ地区で火災が発生してから7時間もたたないうちに、一帯の消火栓に水を供給するために用意されている容量約1100万リットルのタンクのうち、すでに1つを使い切ったと、ロサンゼルス水道電力局のジャニス・キニョネス局長は述べた。2つ目のタンクは同日夕方に、最後のタンクは8日水曜日未明に空になった。(参考記事:「ギ
中米の国ベリーズにあるマヤの聖地アクトゥン・チュニチル・ムクナル(ATM)洞窟。洞窟の暗闇の中で植物が育っており、その脆弱(ぜいじゃく)な生態系に観光が与える影響について懸念が高まっている。(PHOTOGRAPH BY JAD DAVENPORT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 中米の国ベリーズにあるアクトゥン・チュニチル・ムクナル(ATM)洞窟には、都市国家カラコルの遺跡などと並び、ベリーズにおける古代マヤ文明の歴史が保存されている。この洞窟の中に入って1.5キロほど進むと、石灰岩の壁に小さな新芽が張り付いている。(参考記事:「ナショジオ写真家による美しい洞窟写真9点とその撮り方」) 洞窟で見られる植物の大部分は、太陽光が差し込む入り口付近に生い茂るが、ATM洞窟の植物は完全な暗闇で生きている。なぜそのようなことが可能なのだろう? 植物は暗闇でどのように成長するのか
オランダのドルドレヒトで、供血デーにイヌから採血する獣医。(PHOTOGRAPH BY JEFFERY GROENEWEG/ANP / ALAMY) 2011年のある夜、オーストラリアのノーザンテリトリーにある都市アリススプリングスで唯一の動物病院に、殺鼠剤(さっそざい)を食べてしまった生後16週のボクサー犬の子イヌが2匹、運び込まれた。この病院の獣医師だったカリン・カノウスキー氏は、「容態は深刻で、歯茎は白く、ぐったりし、頭を上げるのもやっとの状態でした」と当時を振り返る。「だめかもしれないと思いました」 誤食した殺鼠剤は血を固まらなくするタイプのもので、子イヌたちは内出血を起こしていた。すぐに輸血をしなければ、一晩ももたないだろう。 この絶望的な状況で、カノウスキー氏は意外なヒーローに助けを求めた。それは、診療所の受付係の1人が飼っているブルースという名の大型のマスティフ犬だ。ブルース
2025年1月1日、米ワシントン州のピュージェット湾に、4番目の子どもの亡骸を運ぶシャチ「タレクア」の姿があった。(Photograph By Candice Emmons, Permit 27052/NOAA Fisheries/AP Images) お母さんシャチの「タレクア」が、死んだ子どもを頭にのせて運んでいる姿が確認された。しかも、今回で2度目だ。「J35」とも呼ばれるこのシャチは2018年、死んだわが子を頭にのせて17日間も海を泳ぎ、世界の注目を集めた。そのタレクアを再び悲劇が襲ったのは、2024年の暮れのこと。クリスマスの少し前に、新しいメスの赤ちゃんがいることが初めて確認されたが、年が明けるのを待たずに子どもはまた死んでしまった。 死んだ仲間を運ぶという行動は、ほかの海洋哺乳類でも報告されている。しかし、2018年のタレクアのように、子どもを運んで1600キロメートルもの距
抗酸化物質から心を落ち着かせる成分まで、毎日の習慣にお茶の方が適している理由を紹介しよう。(LILIAN CAZABET/HANS LUCAS/REDUX) コーヒーとお茶は世界で最も人気が高い飲み物であり、それにはもっともな理由がある。複数の研究によれば、コーヒーやお茶を定期的に飲む人は、そうでない人より長生きし、健康上の問題も少ないという。コーヒーはその力強い風味と活力を与える刺激で注目を浴びることが多いが、お茶も独自の成分で落ち着いた集中力を促し、コーヒーに負けない存在感を示している。ここでは、次の一杯にはお茶を選ぶべきかもしれない理由を紹介しよう。 カフェインが少なく、副作用が少ない お茶に切り替える価値がある主な理由の一つは、含まれるカフェインの量がコーヒーに比べて少ないことだ。カフェインは集中力と覚醒度を高めてくれるが、神経過敏、不眠、さらには動悸など、過剰摂取による副作用がメ
植物としての大麻からは、精神活性作用のないさまざまな製品と、テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む精神活性作用のある製品の両方が生産される。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) 大麻に対する規制が緩和されている米国では現在、およそ5人に1人が大麻を使用している。にもかかわらず、その健康への影響については、実は長い間わからない点が多かった。しかし今、大麻に関して、これまで以上に多くのことが明らかになりつつある。 大麻については、すでに多くのことがわかっているのではと思う人もいるかもしれない。なにしろ人間は1万2000年前から大麻を栽培し、少なくとも2500年前から精神活性物質として使ってきたのだ。一般に、大麻は痛み、吐き気、筋肉のけいれん、食欲不振、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療において、医薬品に代わる安全で自然な手
1947年、ニューメキシコ州ロズウェルで謎の残骸が見つかった。気象観測気球と発表されたが、異星人を乗せたUFOが墜落したと考える人もいた。それから50年近くが経ってから、米空軍はソ連を狙ったスパイ計画の残骸だったことを認めた。写真は、ロズウェルのUFO博物館で展示されている「異星人の死体」。(Photograph by PETER MENZEL, Science Source) 2024年12月上旬、米国のニュージャージー州付近で、謎のドローンが頻繁に目撃された。誰が何の目的で飛ばしているのかという不安が高まっているにもかかわらず、米国当局からの説明はほとんどなく、安全保障上の脅威ではないという見解を示しただけだった。 このような沈黙は、陰謀論が根づく余地を与えるだけだ。政府は公表されている以上の情報を持っていると考える人もいる。今回の件ではそのような証拠は存在しないが、米連邦政府が昔から
韓国のソウルで開かれた仏教の訓練キャンプで、3Dメガネとスマートフォンを使って仏教について学ぶ少年たち。(Photograph by Lee Jin-man, AP Photo) 米国で宗教を信じる人が減少している。これは、人口統計データを見れば明らかだ。北米全域、そして欧州でも、組織化された宗教に所属する人の数は減っている(一方、中東、南アジア、南米では状況が全く異なり、宗教は拡大している)。 人々の信仰や信念、認識の変化を間近で観察してきた米ビラノバ大学神学部教授のシスター・イリア・デリオ氏も、その傾向に気づいてはいる。だからといって、神への信仰が消滅するとは思っていない。「信仰がなくなったわけではありません。別の形で現れているだけです。そのことが、神や信仰に関する疑問を私たちがどう考えるかを大きく変化させています」 その変化の大部分をあおっているのが、スマートフォン(スマホ)やソーシ
2024年6月、米ロサンゼルスを熱波が襲い、最高気温の記録を更新した。(Photograph by Joyce Lee, The New York Times/Redux) 2024年も終わりに近づき、科学者たちは今年もまた地球の気候について不吉な警告を発している。2024年は観測史上最も暑かった年になることがほぼ確定しているというのだ。さらにいくつかの気候当局の調査によれば、産業革命前に比べて地球の平均気温の上昇幅を1.5℃までに抑えるというパリ協定の目標値を初めて上回る見込みだ。(参考記事:「2024年の画期的な科学の発見6選、未来を変える進歩が続々」) しかし、この先何年もたって振り返ってみれば、2024年が特に暑かった年として記憶されていることはないだろう。なぜなら、あなたの残りの人生のなかでは、おそらく今年は最も涼しいほうの年となるはずだからだ。 人間がこの先も化石燃料を燃やし、
7つの頭を持つ竜にとどめを刺そうとする大天使ミカエル。1405年頃、イタリアで描かれたスペイン風の絵画。(Metropolitan Museum, New York) 竜は、中世ヨーロッパの文化を象徴する生きものと言っていいほど、多くの伝説や物語、絵画に登場する。しかし、それよりもはるか以前から、竜やヘビのような形をした神話上の生物は古代世界の様々な文化で描かれてきた。そして現在にいたるまで、竜は想像の世界に生き続けている。(参考記事:「世界の壮大なドラゴン伝説6選、最古、最大、最強の竜は?」) 古代メソポタミアでは、バビロンの最高神マルドゥクが、原始の混沌と海水の象徴である悪魔のような竜ティアマトを倒して宇宙に秩序を確立し、世界を創造したと信じられていた。古代中国の竜は、健康、強さ、幸運を表し、水源の守護者であり管理者として崇められていた。ギリシャ神話も、獰猛なヘビやドラコーンと呼ばれる
コレステロール値を下げる薬のスタチンと組織の再生や修復に用いるナノサイズの構造体を一緒に使うと、視神経を再生・保護する能力が増すことを、米ピッツバーグ大学のグループがマウスの実験で明らかにした。ヒトをはじめとした哺乳類では自然には起きないとされていた視神経の回復につながることを示す成果。将来的には外傷や緑内障などによる失明を防ぐ治療に期待できるという。 マウスの視神経を圧迫して傷つけた(赤星の部分)2週間後の視神経。生理食塩水(Ctr)の注入だけでは軸索は再生しないが(上)、スタチン(Fluv)とナノ構造体(MBV)を注入すると(下)、1.2ミリ程度まで伸びた(ピッツバーグ大学の桑島孝明助教提供) 目で捉えた光の情報は、網膜の神経節細胞から伸びた軸索が集まった視神経を通じて脳に送られる。目に外傷をうけたり緑内障を患ったりすると、神経節細胞の死滅や視神経の損傷が進み、失明に至る。神経細胞は自
ペルーのラ・リベルタ州にある大規模な多国籍企業の農場で、ブルーベリーを収穫する労働者たち。(Photograph by Alessandro Cinque) 8月初め、南米ペルー北部ラ・リベルタ州の海岸沿いの砂丘は、青みがかった紫色の果実で覆われていた。ほんの10年余り前には果実の栽培などできないと考えられていた砂漠が、数週間後にはブルーベリーの収穫期を迎える。この乾燥地帯のおかげで、ペルーは今や世界のブルーベリー市場の最前線に立っている。(参考記事:「糖尿病予防に効果的な果物と摂取方法」) 低木の間を歩きながら、農業エンジニアのアルバロ・エスピノーサ氏は身をかがめ、鈴なりの実に目を見張った。なかには驚くほど大きな粒が混じっている。 「このゲージ(測定用の計器)では測れないくらいです」。いくつかの丸い穴が開いたキーホルダー代わりのゲージを取り出しながら、エスピノーサ氏は言う。一番大きな穴は
世界中の人々にとって身近で便利なプラスチック。その生産と消費の量は増加し、環境中に流出すると分解されにくいことから、プラスチックごみ(プラごみ)による環境汚染は深刻化する一方だ。危機感を共有した国際社会は2022年から国連の下、プラごみ汚染を防止するための国際条約づくりを進めてきた。 条約を策定するための政府間交渉委員会(INC)の「最終局面」と位置付けられた5回目の会合が11月25日から12月2日まで、韓国・釜山で170カ国以上が参加して開かれた。しかし、最大の焦点だったプラスチックの生産規制を巡って厳しい規制を求める欧州連合(EU)や島しょ国などと、プラスチック原料となる石油の産油国などとの溝は最後まで埋まらなかった。このため交渉委員会は条約案への合意を先送りすることを決めた。 この国際条約づくりの目標期限だった「2024年内の合意」は残念ながら実現しなかった。だが、プラごみの汚染防止
日本にしか生息しないこのモモンガが、リスの進化の謎を解く重要な鍵となるかもしれない。 リス科のニホンモモンガ。その生態についてはまだ明らかになっていないことが多いが、最近の研究で春に約2匹、秋に約5匹の子を産むことがわかった。この結果が、リスの進化の過程を解明する鍵になる可能性があると、注目を集めている。 ヒトを含め、哺乳類が1度に産む子の数は「おっぱい(乳頭)の2分の1」という法則がある。今回、森林総合研究所九州支所の主任研究員である鈴木圭さんは、世界中から2363回のリスの出産記録を集め、その比較分析を試みた。すると、プレーリードッグのような地上で暮らす地上性リスは、木の上でも活動するシマリスを除いて乳頭は10個、子はほぼその半数と法則通りだった。一方、木の上で暮らす樹上性リスと、飛膜を使って移動する滑空性リスの「木の上で活動する」グループは、乳頭8個に対して子は約2匹と少なく、法則か
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙に関する大きな問いに答えるために設計された。赤外線を検出する能力により、小惑星を発見する優れたツールでもあることが明らかになった。(Illustration by Adriana Manrique Gutierrez, NASA) ビッグバン直後に形成された銀河を観測したり、遠方の惑星を調査したり、太陽系内の衛星を細部まで観察したり。驚異的な能力を誇るNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)だが、素晴らしくも意外な一面がまた明らかになった。2024年12月9日付けで学術誌「Nature」に掲載された研究によると、火星と木星の間に位置する太陽系の主小惑星帯で、これまで発見された中で最も小さい長さわずか数十メートルの小惑星も見つけられるという。(参考記事:「ここがすごい!ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」) 今回の研究は、太陽系が形成された過程の
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