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古典中国語にするためのプロンプト ChatGPT で遊んでいたところ、GPT-4 ならばそれなりにちゃんとした古典中国語(漢文)で回答してくれることが分かった。なお、GPT-3.5では、あまりうまくいかず、ちょっと堅いだけの現代中国語が出てきくることが多い。 ChatGPT に古典中国語で回答してもらいたい場合、以下のプロンプトを入れれば良い。 Please answer in Classical Chinese. Please avoid using Modern Chinese and colloquial Chinese. 請勿用白話,當以雅言對之。 このプロンプトは、要するに現代中国語ではなく古典中国語で回答してほしいと指示している。 このプロンプトを入れると以下のような古典中国語で回答してくる。 請問君有何所詢,臣將竭誠以答。 ただ、時に現代中国語で回答してくることがある。その場
はじめに 博士課程に進むべきか、あるいは進むべきでないか。こんな問いに悩んでいる人は決して少なくないだろう。また、すでに博士課程に進んでいる場合には、これから自分がどうなるのかという問いに悩まされることがあるだろう。 そこでカギとなるのが情報だ。博士課程の実情(リアル)や博士課程修了後の進路の情報が重要になるのだ。もちろん、情報があるからといってすぐに問題が解決するわけではない。しかし、適切な情報は、悩みを解きほぐすのにだいぶ役に立つ。 「博士人材追跡調査」という調査があることを知っているだろうか。この調査の報告書には、博士課程に進む前に知っておきたい情報や、博士課程修了後の進路に関するに情報がたくさん掲載されている。また、博士課程修了者による自由記述回答も載っており、そこから修了者のリアルな声を知ることができるのだ。 この調査の報告書はウェブ上で公開されていて、誰でも読むことができる。も
令和4年度大学入学共通テストの漢詩の押韻問題は、高校生が普通に知っている範囲で解こうとするとそれほどややこしい問題ではないが、漢詩に関する知識が豊富になるとかなり解くのがややこしくなる。 はじめに 令和4年度の大学入学共通テストの国語の第4問問4に漢詩の押韻に関する問題が出た。この問題は、高校生が普通に知っている範囲で解こうとすると、さして難しい問題ではない。実際、『令和4年度大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書』の「高等学校教科担当教員の意見・評価」(p.23)では「漢詩の基本的な知識を問う問題」と評価されている。 しかし、漢詩についてなまじ詳しく知っていると逆に難しい問題となってしまう。なんでそうなるのかちょっと書いてみたいと思う。 まず、問題を挙げよう。詩には本来返り点などがついているが省略した。 【詩】 春城花事小園多 幾度看花幾度[X] 花為我開留我住 人随春去奈春何 思
iOS 15 で、アイヌ語のキーボードが導入された。このキーボードを使うことで、ローマ字のキーを押すことで、「イランカラㇷ゚テ」のようなカタカナ表記のアイヌ語が入力できる。 iOS のアイヌ語入力機能 iOS 15 で、カタカナ表記のアイヌ語を入力するためのキーボードが導入された [1] 。このキーボードでは、ローマ字のキーを押すことでアイヌ語用のカタカナを入力できる。これにより、「イランカラㇷ゚テ」の小書きのプのように、アイヌ語で使われる特殊なカタカナを簡単に入力することができる。 以下、アイヌ語キーボードの設定方法と、実際の入力方法を紹介していきたいと思う。 設定方法 iOS でアイヌ語キーボードを導入するには以下のようにする。 iOS の「設定」から「一般」→「キーボード」→「キーボード」を選択する。すると、現在使えるキーボードのリストが出てくる。 そのリストが出た状態で、「新しいキ
中国語の“改恶”(gǎiè) は日本語の「改悪」と異なり、普通は良い方向になることを示す。もし「悪い方向に改める」ことを中国語で表現したければ、“改坏” (gǎihuài) を使えばよい。 “改恶”は日本語の「改悪」と方向が違う 中国語に “改恶” (gǎiè) という単語がある。繁体字で書けば、“改惡”だ。これは字面こそ同じものの、一般には日本語の「改悪」と意味が違うので注意が必要だ。 日本語では「改悪」は普通は「悪い方向に改める」という意味になる。しかし、中国語の“改恶” (gǎiè) は普通はそうはならない。「悪(あ)しきを改める」ということで、結局の所「良い方向に改める」という意味になる [1] 。 例えば、1959年の中華人民共和国主席特赦令 [2] では、以下のように“改恶”という言葉が用いられている。ここでは犯罪人が共産党による改造を経て、過去の悪事を改めて善い道に進んだとい
「無洗米」は「洗う必要がない米」という意味であるが、「事前に洗われて無い米」という意味で解釈する人がいる。このような誤解が生じるのは、「無洗米」の構造と意味が特殊なものであるせいかもしれない。 「無洗米」は「事前に洗われて無い米」? 「無洗米」のことを「事前に洗われて無い米」と捉えている人をたまたま見つけた。 無洗米って事前に洗われて無い米だと思っててコメント欄の流れが意味わからなかった。 はてな匿名ダイアリー.(2020年6月17日).「米って洗う必要ある?」 https://anond.hatelabo.jp/20200617211134 もちろん「無洗米」の意味は「洗う必要がない米」である。だから、「事前に洗われていない米」と解釈すると話が通じなくなる。 米。洗われているか洗われていないか [1] 。 「事前に洗われていない米」のように解釈している人は他にもいる。例えば、歌人の俵万智
統計検定1級・準1級・2級のウェブ上の受験体験記へのリンク集。合わせて、1級・準1級・2級の対策にどのような参考書等がよく使われているかを紹介。 はじめに 本記事は、統計検定のウェブ上に公開されている受験体験記をまとめたものである。統計検定は、統計学に関する知識などを問う試験であり、一般財団法人統計質保証推進協会が実施している。統計検定には1級・準1級・2級・3級・4級があるが、本記事ではこのうち1級・準1級・2級の受験体験記のみ紹介する。 以下、1級から順に級ごとに受験体験記へのリンクと、体験記の中で推奨されている参考書・ウェブサイトを挙げる。統計検定をこれから受験しようとしている人にとって、参考になればと思う。 他の人の勉強方法を参考にして、合格を目指そう [1] 。 出題範囲の変更に関する注意 なお、以下に示すように、統計検定の出題範囲は過去に何度か変更されている。 2017年:準1
2020年3月にリリースされた Unicode 13.0 では、「日本で最も画数が多い字」とも呼ばれる「たいと」という漢字と宮沢賢治の詩の中に出てくる「鏡」を4つ組み合わせた漢字が収録された。また、Unicode 13.0 における部首の例示フォント変更についても触れる。 はじめに Unicode は世界の様々な文字をコンピュータ上で統一的に扱うための国際規格である [1] 。Unicode には毎年のように新しい文字が追加されており、2020年3月にリリースされた Unicode 13.0 では 5,930字が追加されている [2] 。 Unicode 13.0 での漢字の追加 Unicode 13.0 で追加された文字の大半は漢字である。Unicode 13.0 では、漢字 [3] を追加するためにCJK統合漢字拡張G (CJK Unified Ideographs Extension
はじめに ケニアは東アフリカに位置する。 東アフリカにあるケニアで、中国語の授業が必須になるというツイート [1] をしている人がいた。アフリカにおける中国の影響が強まっているとはいえ、さすがに必須というのは違うのではないかと思った。 私はケニアの情勢についてほとんどまったく知らないのだけれども、ネット上の資料を色々と見ていたところ、どうやら小学校4年生以上で選択科目として中国語の授業が設定されるだけだったということが分かった。 というわけで、調べた結果を以下に記しておきたいと思う。 ケニアの学校教育での中国語の授業 ケニアでは、2020年から後期初等教育、すなわち小学校4年生からの選択科目で中国語の授業が設定される (Dahir, 2019)。これはあくまでも選択科目であって、必須科目ではない。 ケニアの学制は、1985年から8-4-4制が導入されている。これは、初等教育が8年、中等教育
2019年8月7日は日付を表すのに用いられている数字に重複がない。その次にこのようになるのは、4259日後である。 この記事を書いている日付は、2019年8月7日だ。何の変わりもない日付のように思えるかもしれないが、実は年月日に用いられている数字にまったく重複がない。つまり、日付を表す数字がすべて異なっている [1] 。 しかし、この日を過ぎると、日付を表す数字がすべて異なっている日は当分来ない。直近の2019年8月8日は8が重複するし、2019年8月9日は9が重複する。 その後の日付についてもどこかで重複が起きる。 2019年8月10日から19日:1が重複する。 2019年8月20日から29日:2が重複する。 2019年8月30日:0が重複する。 2019年8月31日:1が重複する。 2019年9月:9が重複する。 2019年10月:0と1が重複する。 2019年11月:1が重複する。
非アカデミアへの進路を検討している博士学生に向けて、博士の進路を概括し、進路を考える際のヒントを与える。公開シンポジウム「博士キャリアの可能性」において、博士が非アカデミアで働くことについて話した際の原稿を加筆修正。 この文章について この文章は、公開シンポジウム「博士キャリアの可能性」において「学究の生活を終へた博士を社会は如何に遇したであらうか」というタイトルで発表した際の原稿に加筆修正を加えたものである。このため、実際に話したときの内容とは少し違っているところがある。 このシンポジウムは、2018年10月27日に東京の日本学術会議講堂において、「日本学術会議若手アカデミー 若手による学術の未来検討分科会 イノベーションに向けた社会連携分科会」が主催したものであり、博士が非アカデミアで働くことについての議論が行われた。私は、この中で博士後期課程をやめて民間企業に進んだ当事者として発表し
2020年の東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ページには、応募者の使用できる言語を記入するフォームがある。この中で「手話」が選択肢に含まれている。しかし、「手話」には「日本手話」や「アメリカ手話」などさまざまなものがあるため、どの言語を示しているかこの選択肢から分からず、問題がある。 はじめに 2020年の東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ページのユーザーインターフェースに問題があるという指摘が出ている。例えば、神田敏晶氏による2018年9月27日の記事「むずかしすぎる!五輪大会ボランティア応募フォーム」では、募集に応じるにあたって、「精神的苦痛を強いられる」ほど入力がややこしいことが記されている。また、楽しいBADUIの世界というWebサイトの「BADUIの要因全盛りで熱意と技術力が試される東京オリンピック・パラリンピック2020ボランティア募集ページ」と
「平方」のことを今は「二乗」と呼ぶ。しかし、明治初期に出た西洋数学書の訳書に「平方」を「一乗」と呼んでいる例があった。これは、おそらく和算の用法をそのまま利用したものであろう。 本文 1872(明治5)年に出た『代微積拾級訳解』(羅密士、1872)という本がある。これは、中国語訳された西洋数学書を、さらに日本語に訳したものである [1] 。この日本語訳書の冒頭には、西洋式の数学符号の使い方の説明が書いてある。その中で、今の「二乗」(=平方)のことを「一乗」と表記していた。 aの平方について、「同元ノ一乘ナリ aヲ自乘シタルナリ」と書いてある。また、aの立方については「同元ノ再乘ナリ aヲ再乘シタルナリ」と書いてある。(国立国会図書館デジタルコレクションの『代微積拾級訳解』より引用。) 和算では現代の n 乗のことを (n-1) 乗と言う(竹之内、2008)とのことだから、和算の用法をそのま
“出口”と1回書くだけで日本語と中国語の両方を表すなど、1つの文言で2言語分を表している案内標識の例の紹介。日本での漢字が関わる例のほか、ヨーロッパでのラテン文字が関わる例も紹介。 漢字 “南” 成田空港第2ターミナル出発ロビーにつるされている案内(2017年10月撮影)。“南”が日本語と中国語を表している。 2017年10月に、成田空港第2ターミナルに行ったところ、写真に示すような案内が天井からつるされていた。この案内には何種類の言語が書かれているだろうか。 上の方に “南”、“SOUTH”、“남”と書かれているから、日本語・英語・韓国語の3種類の言語が書かれているように見える。しかし、下の方は、“出発”、“DEPARTURES”、“출발”、“出发”となっている。ここでは、日本語・英語・韓国語・中国語(簡体字)の4種類が書かれているように見える。上が3種類で、下が4種類というのは何かおか
「プーと大人になった僕」の解釈その1 「プーと大人になった僕」という日本語のフレーズから想像される状況の1つとして、以下のものがあるだろう。 「プーと大人になった僕」の表す状況として、「プーがいて、大人である僕がいる」というものがありうる。 これは要するに、「プー」と「大人になった僕」が並列されているという解釈である。しかし、「プーと大人になった僕」は構造的に曖昧であり、他の状況も表しうる。 「プーと大人になった僕」の解釈その2 このフレーズを別の構造で捉えてみよう。 「プーと大人になった僕」の表す状況として、「僕は、プーとともに大人になった」というものがありうる。 ここでは、「プーと大人になった」が1つのかたまりとなって「僕」を修飾している。そして、「プーと」が「大人になった」を修飾して、プーと一緒に大人になったということを示す。要するに、プーと僕が一緒に成長しているような状況だ。 「プ
2018年6月18日にフランスで行われたバカロレア(大学入学資格試験)の哲学の試験でどういう問題が出題されたかを紹介。 バカロレアと哲学 この記事では、2018年のフランスのバカロレアのうち、一般バカロレアでの哲学の問題を紹介する。フランスにおけるバカロレア (baccalauréat) とは、大学入学資格を手に入れるための国家的統一試験であり、毎年6月に行われる。 バカロレアでは、哲学 (philosophie) という科目を受験することになっている。哲学の試験時間は4時間で、専攻ごとに問題は別のものになる。各専攻とも3つの問題が出され、受験者はそのうち1問に答えることになる。どの専攻でも、1問目と2問目は哲学に関する問題が短い疑問文で与えられ、受験者はそれに対して自分なりに考えた上で文章を書くことが求められる。また、どの専攻でも、3問目は哲学者などによる文章を読み、その解説を書く問題に
はじめに これから何回かに分けて、R言語の geosphere パッケージについて説明していきたいと思う。このパッケージは、球面三角法 (spherical trigonometry) に関する計算を行うパッケージであり、地球上の2点間の距離を計算したり、大圏航路を求めたりすることができる。 今回はまずパッケージの導入と、2点間の距離と方位角の計算方法について説明していきたいと思う。 geosphere パッケージの導入 geosphere パッケージはCRANに入っているので、以下のようにして簡単にインストールすることができる。 install.packages("geosphere") 実際に使うときには、library()を使って読みこんでおこう。 library("geosphere") 地点の表現 geosphere パッケージを使った計算に当たっては、地球上の地点を経度 (lo
以下、R言語を用いて、表型のデータにおいて重複している箇所を取り出す方法を紹介していきたいと思う。 解法1:dplyr パッケージを使う dplyr パッケージを使うことで、簡単に重複しているデータを抽出することができる。具体的には、group_by()を使って ID となっている列を指定し、filter(n() > 1) でIDに重複がある行(レコード)を抽出することにある。 具体的なコードの例を見てみよう。ここでは、先に挙げた作家名・作品名が載った表を literature というデータフレームに入れている。 # 必要なパッケージの読み込み library("dplyr") # 操作対象となるデータフレームの準備 literature <- data.frame( ID = c(2435, 5342, 4813, 2435, 8791, 9318, 6534), 作家名 = c("夏目
データクリーニングが繁雑な作業であることを示すために、政府の統計データから日本の男のみの高校と女のみの高校の数の推移をグラフ化する事例を紹介する。クリーニングの作業にはR言語を用い、複数のファイルを統合し、整然データに変え、グラフを作成する。 はじめに データクリーニングは、データ分析の際に非常に重要なプロセスの1つであるが、データ分析の教科書では必ずしも十分に扱われていない。そこで、現実のデータクリーニングがどのように行われるかについて、一事例を紹介したいと思う。具体的には、統計処理に適したプログラミング言語のRを用いて、粗悪なデータから簡単な折れ線グラフが作成できる程度のきれいなデータにするまでのデータクリーニングを実施していく。 本記事の対象読者 本記事は、既存のデータに対して自らの手でデータ分析を実施している人、または実施しようと考えている人を主な対象にしている。データ分析の際にど
《中華字経》という、4000字近くの漢字をほとんど1回ずつしか用いずに作った文章がある。この文章は中国語の漢字を色々と覚えるために作られたものである。 《中華字経》とは 《中華字経》(Zhōnghuá Zìjīng, 中华字经)という漢字4000字が並んだ中国語の文章がある。この文章がすごいのは、使用している漢字にほとんど重複がないことだ。つまり、ほとんどすべての漢字が1回ずつしか出てこない [1] 。このことにより、総字数が4000字でありながら、用いられている漢字の種類は3980字ととても多いものになっている [2] 。 《中華字経》は、鄭州大学の郭保華教授が中華人民共和国教育部語言文字応用研究所の専門家と3年をかけて作ったもの。中国語で使う漢字を色々学ぶという教育目的で作られたもののようだ。 四字で一句をなし、偶数句目で韻を踏むようになっている。全文は、百度百科などに掲載されている。
中国語の掲示物を出すときには、日本語のフォントと中国のフォントが混在することがないよう、中国語のフォントになるように明示的に指定すべきである。 日本語フォントと中国語フォントの混在 日本の街角にある中国語の掲示物を見ると、日本語と中国語のフォントが混在していることが少なくない。例えば、以下の写真に示す掲示では、中国語の部分で日本語のゴシック体フォントと中国語の非ゴシック体フォントが混在している。 2012年9月東京都港区の竹芝客船ターミナルにて撮影 [1] 。中国語は一番下の行に書かれているが、1文字目の“封”が日本語のゴシック体フォント、2文字目の“闭”が中国語の非ゴシック体フォントになってしまっている。 こうした事態は、大概の場合、掲示物を作成するときにフォントを適切に設定していないために起きる。日本のPCで掲示物を作るときは、日本語のフォントがデフォルトとなるのが多いと思う。すると、
「渋谷」を中国語で表記すると、簡体字では“涩谷”、繁体字では“澀谷”となるが、別字を使って“涉谷”とされることもある。 “涩谷”、“澀谷” 東京の「渋谷」を中国語で表記する場合、簡体字では“涩谷”、繁体字では“澀谷”となるのが普通である。なお、発音は、簡体字であろうと繁体字であろうと “Sègǔ” である。 東急電鉄/東京メトロの渋谷駅入口の看板(2017年7月撮影)。簡体字中国語で、“涩谷站”と書かれている。 渋と涩と澀は異体字の関係にある。『康熙字典』では“澀”が正字で、“澁”がその同字として扱われている。日本では旧字体が「澁」で、それに対応する新字体が「渋」なので、「渋谷」という表記が用いられている。また、“涩”は“澀”に対応する簡体字である。 “涉谷” ところで、たまに「渋谷」のことを中国語で“涉谷”と表記している例がある(簡体字でも繁体字でも“涉谷”となる)。渋(涩、澀)と渉は違
現代中国語の使用に当たっては、中国古典に関する知識が要求されることが少なくない。このため、中国語を本格的に使いたい人は、中国古典についてよく学んでおくべきだ。 はじめに 中国語の翻訳者になったり、中国報道に関わるジャーナリストになったりするなど、中国語を本格的に使うことを考えている人は、現代中国語の勉強と並行して中国古典をよく勉強しておくと良い。 なぜか。現代中国語の表現の中には、中国古典に由来する表現が相当含まれている。中国古典をしっかりと学ぶことなしに、古典からの表現のニュアンスをしっかり理解するのは難しい。中国語に少し慣れ親しむだけで良いという人であればそうでもないかもしれないが、中国語のプロになりたい人であれば中国古典を学ぶことは重要である。 現代の中国語で用いられる古典 中国共産党のプロパガンダ(2017年5月上海にて撮影)。右下に書いてある“以和为贵”(和ヲ以テ貴シト為ス)は、
中国外交部の報道官が米国の貿易制裁措置に関して「お返ししなければ失礼」といった件の中国語の原文は、“来而不往非礼也”であり、これは儒教の経典の1つ『礼記』に由来する。 “来而不往非礼也” 米国が中国への貿易制裁措置をとったことに対し、中国外交部の華春瑩報道官が2018年3月23日の記者会見で述べた言葉として、NHKが「お返しをしなければ失礼にあたる」というものを報じている [1] 。 この「お返しをしなければ失礼にあたる」の中国語の原文を見てみると、“来而不往非礼也”(来タリテ往(ゆ)カザレバ礼ニアラザルナリ)となっている。これは儒教の経典の1つである『礼記』を出典とする言葉だ。 『礼記』の曲礼篇には、以下のような文章が載っている。 礼尚往来。往而不来非礼也。来而不往亦非礼也。 (書き下し文:礼ハ往来ヲ尚(たつと)ブ。往(ゆ)キテ来タラザレバ礼ニアラザルナリ。来タリテ往(ゆ)カザレバ亦(ま
入試ミスの対応のために教職員に寄付をつのるのは、今後ミスを報告したくなくなるなどといった悪影響が考えられるため、やめるべきである。 はじめに 『毎日新聞』の報道によると、大阪大学が入試ミスに対応するために教職員に寄付をつのっているという [1] 。 このような手立てをとることは、教職員が今後ミスを報告したくなくなるなどといった悪影響が考えられるため、適切ではないと思う。 教職員寄付による基金 まずは、この寄付の話について知られていることをまとめてみよう。 阪大は、2017年に行われた入試の中で出題・採点のミスを犯し、2018年1月にその誤りを認め、新たに30人に追加合格を出すことになった [2] 。これにより、追加合格者の浪人中の予備校費用などを補償する必要が出てきたし、追加合格者が実際に転入学してきた場合は補講などをする必要が出てきた。『毎日新聞』の記事によると、追加合格者に対する補講や
渋谷駅構内の “Amoing torans only” という良く分からない英語が書いてある看板について。 看板の謎の言葉 2018年の1月に東京の渋谷駅に行ったとき、以下の写真に示す看板があった。 東京の渋谷駅構内の看板(2018年1月撮影)。上段には「この階段は降車専用です」とあり、下段1行目には“No bouding port the plantform”、2行目に“Amoing torans only” と記されている。 日本語で書かれている「この階段は降車専用です」の意味は良く分かる。しかし、その下にラテン文字で書かれているものが良く分からない。駅での案内の掲示では日本語と英語を併記するのが普通であるし、“the” や “only” といった英単語が記されているから、下段は英語を書いているつもりなのだろう。しかし、“Amoing” や “torans” という英単語はないし、全般
「元旦」は1月1日の朝を指し、1月1日全体を指すわけでないという説がある。しかし、用例を見ると、「元旦」で1月1日全体を指すことが誤りだとは言い切れないように思われる。 「元旦」=「1月1日の朝」説 「元旦」という言葉は1月1日の朝を指し、1月1日全体を指すわけではないと説明する人がいる。この説明に基づけば、「元旦の夜」というのは語義矛盾であり、「誤った」言い方になる。 しかし、私としては、この説に反対したい。「元旦」で1月1日全体を指すことは別に誤りというわけではないと思うのだ。実際、後に示すように、「元旦」で1月1日全体を指し示す事例はとてもたくさんある。一般の人だけでなく、太宰治や坂口安吾といったちゃんとした文章を書く小説家ですら、「元旦」を1月1日の朝に限定しておらず、むしろ全体を指すものとして使っている。 「元旦」=「1月1日の朝」説の事例 私からの反論を書く前に、まずは「元旦」
2017年のアドベントカレンダー(クリスマスまでに同じテーマで記事を1日1つずつ書いていく企画)で、R言語をはじめとする統計処理ソフトウェアや機械学習などに関わるものを紹介する。 アドベントカレンダーとは アドベントカレンダーでは1日に1つ記事を書いていく。 [1] 。 本来、アドベントカレンダー (advent calendar) は、12月の初めからクリスマスまでの一日一日を数えるためのカレンダーのことを指す。これにちなんで、クリスマスに向けて何らかのテーマを設定して記事を1つずつ書いていくことがあり、これもまたアドベントカレンダーと呼ばれる。一般的には、12月1日から25日まで1日1つずつ記事を書いていく。日によって別の人が記事を書くことが多いが、1人が複数日分の記事を書くこともあるし、1人で25日分全部の記事を書くこともある。 この記事では、1つずつ記事を書いていくアドベントカレン
はじめに 数学の本などで「○○について丁寧な証明を与える」と書かれていることがあります。この「丁寧な証明」とは何でしょうか。 以下で、どんなものが丁寧な証明になるのか、簡単に説明しておきたいと思います。 問題 証明するときには、まずどんなことを証明するのかはっきりさせましょう。例えば、以下のような形でお題が与えられるはずです。 AB = AC である二等辺三角形ABCにおいて、AからBCに下ろした垂線の足をHとする。また、直線AH上に AH = HD となるように点Dを置く。このとき、三角形ABHが三角形DCHと合同であることを証明せよ。 「証明せよ」という強い語気でせまられても、そこで怒ってはなりません。相手が丁寧でないからと言って、こちらが丁寧でなくなってしまっては相手の思うつぼです。あくまでも丁寧な証明をするということを忘れないようにしましょう。 問題の設定を示す図。ここで、△ABH
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