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大そうじへの備え
courrier.jp
戦争が長引きロシア軍がウクライナへの侵攻を進めるなか、兵士たちは愛する家族のもとに帰るという希望をほとんど持たずに戦っている。そこで、ウクライナの女性たちは恋人や夫に会うため、電車や車で何時間もかけて危険な前線近辺へと赴く旅に出る。子供連れの姿も珍しくない。 彼女たちはハルキウのような、自分たちが住んでいる場所よりも危険な場所にまで足を運ぶこともある。戦線に近く兵士が多いハルキウは、「前線デート」のホットスポットになっているのだ。駅には、花屋が2軒ある。その主な顧客は兵士だ。 ジャーナリストのカテリーナ・カプースチン(32)は、9歳の息子ヤロスラフを連れて、夫のイホル・カプースチン(34)がいる最前線の村で休暇を過ごした。かつて整備士だったイホルは、現在ロシア軍と対峙する危険な場所から壊れた車両を撤去する作業をしているという。カテリーナは、米「ニューヨーク・タイムズ」紙に「息子とイホルは私
見た目以上に大変な「踊る棒人間」 わずか27秒の動画を制作するのに、会計士のダンカン・マッケイブ(32)は10ヵ月を要したうえ、1100キロ以上を走ることになった。 2024年1月、熱心なランナーでアニメファンでもあるマッケイブは、踊る棒人間のアニメーションを作りはじめた。そのために彼が使用したのは、ランナーやサイクリスト向けの、SNS機能とルート記録機能を兼ね備えた人気のGPSアプリ「Strava」だった。 マッケイブはStravaを使って日々のランニングルートを記録。その後、それらをつなぎ合わせ、「パープル・ハット」という曲に合わせてトロントの街を踊る帽子をかぶった棒人間のアニメーションを作り上げた。彼の動画はSNSで何千万回も再生され、Xだけでも2500万回以上再生されている。 I’ve seen a lot of the Toronto running community, but
トレンドの餌食となった男性が同メディアの取材に答えている。失業し、借金に苦しんでいたというこの男性はある日、SNSで広告を見た。監視カメラが設置されたホテルの部屋で顔をいっさい隠さず、そこで26日間過ごすことができれば、85万9000元(約1820万円)の賞金が与えられる、というものだった。 一見すると単純だが、達成することはかなり難しい。香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」によれば、詳しいルールは次のとおりだ。 「参加者は複数の監視カメラでスタッフに見られている部屋に入れられる。1日1回だけ、照明のオン・オフを切り替えることができ、毎日午前6時までに切り替えておかなければならない」
※本記事は『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(アレクセイ・ナワリヌイ著、斎藤栄一郎・星薫子訳)の抜粋です。 何事もない朝 推理小説よろしく、あの日の出来事一つひとつを正確につなぎ合わせていこうじゃないか。それが定石である。ほんの些細なことが謎解きの鍵を握っている可能性があるからだ。 あれは2020年8月20日のことだ。私はトムスクのホテルの部屋にいた。朝5時30分、目覚まし時計が鳴る。すくっと起きて、バスルームに向かう。シャワーを浴びる。ヒゲ剃りはしない。歯磨き。ロールオンタイプの制汗剤は空になっていた。それでも空の容器を脇に転がしてからごみ箱に放り込む。その容器は、数時間後に部屋を捜索に訪れた仲間が見つけることになる。 大きなバスタオルを羽織ってベッドに戻り、今日は何を着るか考える。下着にソックス、Tシャツ。スーツケースの中を覗き込んで10秒。服選びとなると軽いめまい
2024年2月、ロシア北極圏の刑務所に収監されていたアレクセイ・ナワリヌイが死亡した。現在、妻のユリア・ナワルナヤは、夫の意志を受け継ぎ反体制派を団結させようと活動している。普段は取材を受けることが少ない彼女が、スペイン紙のインタビューに応じた。 約束の時間である正午に1分たりとも遅れることなく、ユリア・ナワルナヤ(48)がパソコンの画面に現れた。控えめな黒のセーターに、同じく黒い縁のメガネを身につけ、特徴である長い金髪はポニーテールにまとめている。背後には白いパネルが設置されており、彼女の居場所のヒントになるようなものがいっさい映らないようにしている。 この数分前に、ナワルナヤのアシスタントがやや気まずそうに、ナワルナヤの居場所を私に明かしてしまった自分の不手際を慎重に修正し、「敵にあまり情報を与えないほうがいいので、どうかお願いします」と言った。 このような探偵小説めいた段取りの理由は
※本記事は『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(アレクセイ・ナワリヌイ著、斎藤栄一郎・星薫子訳)の抜粋です。 異常事態 例の客室乗務員のお目こぼしのおかげで、おかしな事態の発生の瞬間を正確に思い出すことができる。あれから18日間も昏睡状態が続き、集中治療室で26日間を過ごし、入院は34日間に達したわけだが、今思えば、確かPCを取り出す前にまず手袋をして、アルコールで拭き取ってから画面を開き、例のアニメ番組が21分経過した瞬間である。 離陸時のお楽しみである『リック・アンド・モーティ』の視聴を放棄するくらいだから、よほどのただならぬ事態が発生したわけだ。乱気流くらいであきらめる私ではないのだが、画面を凝視しても集中できない。冷や汗が額を伝う。とんでもなくおかしなことが起こっている。もはやPCを開いていられない。額を流れる冷や汗はさらに増えていく。 あまりの事態に、左隣のキー
禁止の限界 何十年もアルコール依存症と戦い続けても効果が見込めず、あとは亡くなるだけとなった場合、もはや「禁酒」は意味をなさない。むしろ、適切な環境で適量のアルコールを飲みながら、最後の日々を仲間と過ごすほうが、本人にとっても地域コミュニティにとっても幸せなのではないか──こうした考え方に基づき、飲酒をあえて許可しているドイツのアルコール依存症患者向け福祉施設が注目を浴びている。 ドイツのハンブルクにある「ハウス・エーイェンドルフ」には、2024年8月時点で137人の入居者がいる。みんなアルコール依存症患者だが、全員に対して自由に飲酒が許可されている。アルコール依存症患者にも飲酒が許可されているホームはドイツに何箇所かあるが、ここが最大規模だと独誌「シュピーゲル」は報じる。 シュピーゲルによると、以前はハウス・エーイェンドルフも、ほかのアルコール依存症患者向けの施設と同様、アルコールを禁止
手足の切断、外見の変形、脳の損傷……。彼らは人生が一変する傷を負い、この何万人もの死者を出している戦争を生き延びた。 彼らがガザを脱出し、治療のためにたどり着いたカタールで、米紙「ニューヨーク・タイムズ」はその姿を撮影し、話を聞いた。 一命をとりとめ、生き残ることができたけど、このまま生き続けたいのかどうかわからないという子供もいる。 もぎ取られた腕が、流し台の中に マフムード・アジュール(9)の家族は、イスラエル軍の砲撃が始まったときに家から逃げ出した。だが母親のヌールによれば、みんなの動きが遅かったので、マフムードが家に戻り、急ぐように言ったという。 そこに爆発が起きた。片腕がもぎ取られ、もう一方の腕もずたずたになったマフムードは、逃げ遅れそうな家族に言った。 「僕のことは置いていってほしい、僕はここで死ぬんだ」
政府が年度内の策定を目指す新たな「エネルギー基本計画」では、「原発依存度を可能な限り低減する」という表記が削除され、原発を「最大限活用する」と明記されることが明らかになった。一方、今年の元旦に起こった能登半島地震により、国民の原発への不安は再燃したままだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、能登半島地震で原発が被害を受けた石川県志賀町を取材。原発をめぐる住民たちの複雑な思いを報じている。 原発への恐怖、再び 2022年、史上最悪の原子力災害のひとつとされる福島第一原発事故から10年以上が経ち、日本はついに原子力発電を再開しようとしていた。 当時、日本国民の過半数以上は原発再稼働への支持を表明しはじめていた。2011年に福島県で地震・津波を原因とする原発のメルトダウンが発生して以来、日本の原発のほとんどは停止状態にあった。自民党は休止中の原発を再稼働させるのみならず、新たな原発の建設計画をも
川村美術館閉館の余波 DICが川村美術館の閉館を発表して以降、いくつかの変化があった。1つ目は、休館という報道を見聞きした多くの人が、日本が誇るお宝を目にできる日はもうあまり残されていないと大慌てしたことだ。その大半は、同美術館を訪ねてみようと思ったことなど一度もないのに、いまこそ出向かねばと考えた。 2つ目は、休館という決断に強く反対する声が上がったことだ。美術館周辺の道路沿いには「休館しないで」と書かれた看板がいくつも設置され、地元・佐倉市役所の公式サイトでは存続を求めるオンライン署名活動が始まった。12月6日までに、5万8131件の署名が集まっている。 3つ目としては、日本を一変させうる事態が起きた。DICのような企業が日本にはほかにどのくらい隠れているのかと、投資家の関心が集中したのだ。社会的に問題をはらむこの手の宝探しをいまや専門とし、本紙がここ数ヵ月ほど話を聞いている複数のヘッ
エヌビディアのジェンスン・フアンCEO Photo by Lachlan Cunningham / Getty Images エヌビディアを時価総額世界一にした男の秘密 世界で最も時価総額の高い企業の一つを築いた男は毎朝、電子メールの受信トレイをスクロールし、その日で最も重要な100通に目を通す。そして日曜の夜には、お気に入りのスコッチウイスキーを1杯注ぎ、さらに多くのメールを読む。 米半導体大手エヌビディアの従業員は「T5T」(Top-5 Things=最も重要な五つのこと)として知られるメモを書いてきた。自身が取り組んでいること、考えていること、事業の各分野で気づいたことをつづったものだ。 そして何十年もの間、ジェンスン・フアン氏はそれを全て読んできた。
敷地の50%を農地に オランダ郊外の町に住むマルコが新鮮な食材を調達するのに、わざわざ遠くのスーパーまで行く必要はない。彼の家のすぐ外には800平方メートルの区画があり、リンゴ、ナシ、ピーマン、バジル、ビーツ、カリフラワーなど、さまざまな作物が育っている。 冬の間、彼と妻は冷凍庫に保存された野菜だけでほとんど生活できてしまう。「昨日、食事のことを考えるのを忘れていました」と彼は言う。「庭を歩き回り、何か作物を見つけて、それがその日の食事になるのです」 2017年からマルコが住むオースターヴォルドは、アムステルダムの東、アルメレ市の郊外にある4300ヘクタールの都市実験地区だ。アルメレで市議会議員を務める彼が暮らすこの地区は、約10年前に構想された。
企業が保有する美術品は誰のもの? 2024年9月も終わりにさしかかった週末の午前、千葉県佐倉市の川村記念美術館(インキ大手DIC運営)では、脇道にある入場券売り場に長蛇の列ができていた。美術館前の並木道には車が列をなして、第2駐車場の空車待ちをしている。 館内のギフトショップは、このところ人が殺到したために休業中だ。まだ11時45分だというのに、併設されたレストラン「ベルヴェデーレ」入口前のスクリーンには「待ち時間181分」の文字。美術館の公式サイトは「弁当の持参」を呼びかけている。 川村記念美術館は2024年8月27日、2025年1月下旬をもって休館することを発表した。すると、これは一大事だと慌てた芸術愛好家らが、のどかな地区にある同美術館に大挙して押し寄せた。しかし、芸術愛好家とは比較にならないほどこの事態を重く受け止めているのが、多くの日本企業だ。 知名度が高いとは決して言えない川村
※本記事は、関卓中『地球上の中華料理店をめぐる冒険』の抜粋です。 これは私の「東京物語」である。 日本という国を初めて実際に目にしたのは、横浜港に入っていく客船の上からだった。時は1965年8月。1年前から東京に赴任していた父と合流するために、私は母、妹とともに香港を離れ、4日間の船旅の末に日本にやってきたのだった。前年に東京オリンピックが開催され、父は体操競技を観戦したと興奮ぎみに語っていた。 私たちは、4日前の真夜中に香港のビクトリアハーバーを出港した。港には、友人たちが見送りに来てくれた。当時、私は14歳。次に会えるのはいつになるのかわからない。夜の闇に消えゆく街の灯を見ていると、早くも友達と会えなくなる寂しさが込み上げてきた。 移住はこれが初めてではない。生まれは香港だが、生後10ヵ月にして祖母の腕に抱かれてプロペラ機でシンガポールに移った。12年後には、貿易会社に勤めていた父が香
「カシオ」の最新AIロボット「モフリン」の面倒を見ることになった英「ガーディアン」紙の記者。最初は最低限しか相手にしていなかった記者だが、徐々に愛着が湧いてきて──。 フワフワの小さなスリッパの片方に見えなくもない。キーキーと鳴き、身をくねらせ、手のひらのなかで丸くなる。黒い目が、銀白色の毛の下に隠れている。重さは缶入りスープと同じくらい。食事や散歩の必要もなく、ペット用トイレも使わない。家のドアの上がり口に“プレゼント”を残すことがないのも非常に素晴らしい。なぜなら、それはもうすぐペットとして我が家にやってくるからだ。 日本製の最新AIコンパニオンロボット「Moflin」(モフリン)の世話を託される前、家電メーカーの「カシオ」東京本社で同ロボットの開発者らと会った。カシオは11月7日、モフリンを発売した(価格は5万9400円)。「人との関係を築くのがモフリンの役目」だと同社企画担当の市川
ますます拡大するインバウンド市場。外国人観光客の目的地は、日本旅行の定番である東京・京都から地方へと移りつつある。なかでも、世界遺産・白川郷の合掌造りで知られる岐阜県白川村には、年間100万人を超える外国人観光客が押し寄せるという。現地では今、何が起きているのか。白川村役場観光振興課、小瀬智之課長補佐より話を聞いた。 人口の1000倍の観光客が訪れる村 ──外国人観光客は、いつごろから増加しましたか? 小瀬 大きなきっかけは世界遺産に登録された1995年ですが、ここ10年ほどで飛躍的に増加しました。2013年の外国人観光客の年間訪問者数は15万人で、全訪問者の1割程度。しかし、2019年には100万人を超えました。 外国人観光客の国籍も多様化しています。以前は台湾やタイなどアジア圏の方が多くを占めていましたが、現在は欧州や南米など多種多様な地域からいらっしゃっています。
ひと昔前まで、海外で「日本食」といえば「寿司」一択だったが、近年ではラーメンが世界中の人々の心を捉えてやまない。スペイン「エル・パイス」紙の記者が、そんなラーメンファンのために情熱を持って、東京のラーメン店を紹介する。 日本のどんなごちそうも、国民食の称号を「寿司」と争うことはできない。だが、おいしい一杯のラーメンからは、食習慣、 歴史、経済、そして過去70年間のニッポンのポップカルチャーまでが垣間見える。 ピザ、タコスそのほかのお手頃で万能な世界のファストフードと比較されるラーメンは、カロリーと塩分を美味しく補給して体力補充できる、日本人の大好物だ。一杯は10分とかからずに完食できる。だが俳句や相撲の取組といった、束の間を楽しむ日本のそのほかの文化形態と同じように、ラーメンはじっくりと手間暇かけた準備を必要とする。 体力回復に効くスープは「うま味」に富んでいる。ラーメンには、地域に結びつ
世界中の大人たちが苦戦 先進国の5人に1人は、数的思考力と読解力に関して、10歳程度の子供たちに求められる以上の能力を有していない──経済協力開発機構(OECD)が10年ごとにおこなう「国際成人力調査」から、そんなショッキングな事実が明らかになった。 OECDは38の加盟国のうち、31ヵ国に住む16~65歳の約16万人を対象に「数的思考力」、「読解力」、「問題解決力」の3つを調査し、12月10日に結果を公表した。 OECDは報告書で、「ほとんどの加盟国において、大人たちの数的思考力と読解力は、過去10年間に大幅に低下したか横ばいの状態にある」と結論づけた。とくに読解力の低下が著しく、大幅な向上が見られたのはフィンランドとデンマークの2国のみだった。 フィンランドは読解力のみならず、全3分野で1位だった。日本は読解力と数的思考力で2位、問題解決能力ではフィンランドと並んで1位だった。他にも、
2024年、フランスで合弁会社を設立し、本格的なヨーロッパ進出に出たKADOKAWA。まだフランスでの知名度は高くないというが、仏誌「ル・ポワン」は、CEO夏野剛へのインタビューを掲載し、フランスの読者に同社を紹介する。 日本を代表する出版グループ、KADOKAWA。フランスではまだあまりその名は知られていないが、同社は全世界で7000人の従業員を抱え、年間売上高は20億ドル(註:2024年3月期の年間売上高は約2580億円)に上る企業だ。 24時間のフランス滞在中、取材に応じたKADOKAWAグループのCEO夏野剛(なつの・たけし)は、完璧な英語でこう説明する。「KADOKAWAは日本の出版業界の4強の一社です。他社に比べると、実写映像・アニメ、映画製作、動画プラットフォーム、ゲーム、オンライン教育など、多角的な事業展開をしています」。彼はNTTドコモの元幹部で、株式会社ドワンゴでもCE
K-POPアイドル推し活用のライトスティックを振りながら、尹錫悦大統領の弾劾を求める若者たち Photo: Ezra Acayan / Getty Images 大音量で流れるK-POPミュージック、ライトスティック、フードトラック、そしてお決まりの自撮り──。韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日に戒厳令を宣言して以降、国中で増えているデモが、意外なほどお祭りムードになっている。 10日夜、首都ソウルにある国会議事堂の外では、通り沿いにフードトラックが立ち並び、トッポギ(辛い餅炒め)やスンデ(血のソーセージ)、冬の楽しみであるポンテギ(茹で蚕)など昔ながらの軽食を売っている。 おもに若い女性のデモ参加者たちが振っているのが、ライトスティックだ。これは高価なLED機器であり、もっぱらK-POPのコンサートで推しのアイドルを応援するときに使われる。それぞれ異なるファン界に属してい
この数年のあいだで、英国の書店に入ったことがある人は気づいたはずだ。日本の小説が空前のブームであることに──。 日本の小説は、2022年の英国における翻訳小説すべての売上高の25%を占めたことが書籍売り上げデータサービス「ニールセン・ブックスキャン」の数字からわかっている。 その優勢は2024年、さらに目立っている。ガーディアンが入手した数字によれば、2024年の翻訳小説売り上げトップ40作品の43%が日本の小説だ。その第1位を飾ったのも、柚木麻子による、風刺的で社会意識の高い犯罪小説『Butter』(原題も『BUTTER』)だった。 『Butter』は2024年の「Books Are My Bag」読者賞のブレイクスルー作家賞も受賞した。この読者賞は書店が選書し、消費者が投票して決められる。 英国での現代日本小説の人気ぶりは、もちろん新しい現象ではない。しかし、英国で多種多様な日本人作家
米国では多くの学生がまもなく期末試験を終え、冬休みに入る。そんななか、母国に帰省する留学生や海外出身の教職員に対し、多くの大学が2025年1月20日のドナルド・トランプの大統領就任までに帰国し、大学に戻るよう勧告している。 米「ニューヨーク・タイムズ」はトランプが前政権時代、イスラム教徒が多数を占める7つの国からの入国に制限を課し、当時海外にいた数千人の学生が足止めにあったと伝える。その後、彼は渡航制限リストにさらに多くの国を加えた。トランプはホワイトハウスに戻り次第、これらの制限を復活させたいと明らかにしている。 「就任後すぐに渡航制限が発効されるだろう」とコーネル大学のグローバル・ラーニング・オフィスは11月、ウェブサイトに掲載した。「入国禁止令は、トランプの第一次政権で対象になった国々(キルギス、ナイジェリア、ミャンマー、スーダン、タンザニア、イラン、リビア、北朝鮮、シリア、ベネズエ
近年の円安に伴い、買春目的の訪日外国人客が増えているという。彼らが目指すのは、多くの少女たちが「客待ち」をしていることで知られる東京・歌舞伎町の大久保公園だ。「そのうち誰かが殺されてもおかしくない」と関係者が心配するほど危険な少女たちの日常を、香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が取材した。 一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)」事務局長の田中芳秀は、「日本は貧しい国になってしまいました」と本紙に語る。 同団体の事務所の近くには、東京の売春産業の中心地である大久保公園がある。そこでは若い女性が、まだ日没前にもかかわらず客待ちをしている。 青母連によれば、コロナ禍による入国規制が撤廃されると、この公園を訪れる外国人の数が増えはじめたという。 「いまはその頃よりも、はるかに多くの外国人男性がやってきます。さまざまな国・地域から来ていますが、多いのは中国系です」と田中は
スウェーデンで「ソフトガール」と呼ばれるトレンドが物議を醸している。 ソフトガールは、TikTok発のトレンドで、キャリアの追求よりもスローダウン(ゆったり生きること)、セルフケア、そしてウェルビーイング(健康で充実した状態)を重視する精神性を指す。 このトレンドは数年前から各国で話題になっていたが、スウェーデンでは「女性が仕事を辞めて、男性パートナーに経済的に依存するライフスタイル」として広がっており、議論を巻き起こしている。 というのも、男女平等の先進国としてのスウェーデンのイメージとは対照的な動きだからだ。 スウェーデンの代表的なソフトガールのひとりである、インフルエンサーのヴィルマ・ラーション(25)は、以前は、食料品店や介護施設で働いていたが、1年ほど前に仕事を辞めた。 以来、在宅で金融関係の仕事をするボーイフレンドに養ってもらう「専業彼女」になり、「私の人生はよりソフトになった
日本と欧米のビジョンの違い ──オーストラリアや日本のビジョンは、米国やEUのビジョンと合致しているのですか。 日本は、欧州諸国や米国と比べると、多数の国が参加する包摂的な制度を用います。これは日本の歴史上の経験に根差したものです。第一次世界大戦後の1919年、三国協商の側についてドイツと戦って戦勝国となった日本は、国際連盟の規約に人種差別撤廃の条項を入れる提案をしましたが、それが西洋諸国によって拒否されたのです。このときの屈辱は、いまも忘れられない記憶として残っています。 グローバルサウスに関連するところで言えば、日本の包摂的なビジョンが表れたのが、2023年5月に開催されたG7広島サミットです。このG7サミットには、G20議長国のインド、ASEAN議長国のインドネシア、太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国のクック諸島、アフリカ連合(AU)議長国のコモロ、クアッド(日米豪印の4ヵ国で安全
米誌の消費者調査で信頼度No.1に輝いたのはスバルだった Photo: Fatih Aktas / Anadolu / Getty Images 「ハイブリッド車の信頼度はガソリン車とほぼ同等」 米誌「コンシューマー・レポート」による最新調査によれば、2024年は電気自動車(EV)とプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の信頼性が大幅に伸び、ガソリン車との差が縮まったことがわかった。 同調査では、EVはガソリン車よりも平均して42%多くの問題があったという。だが、2023年度の79%に比べ、大きな改善がみられた。 コンシューマー・レポートで自動車テストのシニア・ディレクターを務めるジェイク・フィッシャーは、「EVとPHEVの技術は成熟しつつある」と米紙「ワシントン・ポスト」に語っている。 自動車メーカーは新しい自動運転技術やその他の機能をEVでテストすることが多く、新しいモデルには不具合が
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、仏誌「ル・ポワン」の取材に応じ、活況を呈するAIについて語った。 2022年11月に発表されたOpenAI のChatGPTは、公開後わずか5日で100万人のユーザーを獲得した。これに先立つ2019年、グーグル、メタ、アマゾンといった大手テックがOpenAIを過小評価していたころ、ナデラは同社に10億ドルという多額の投資をしていた。 危機に陥ったマイクロソフトを、時価総額で世界3位にまで成長させたインド出身のエンジニアは、どんな未来を予見していたのだろうか。 誰でも「AI教師」がいる時代に ──AIの台頭は、今日の社会にどのような変化をもたらしているのでしょうか? 私たちは、コンピュータの計算能力が6ヵ月ごとに倍増する世界に生きています。この新たな法則が、「ムーアの法則」(半導体の性能は18ヵ月ごとに倍増するという経験則)に取って代わったのです。
「ローマ帝国」のモチーフに異様なこだわりを持つ米国 ──2023年、上梓された『パクス──ローマ黄金期の戦争と平和』(未邦訳)は、あなたが書いたローマ帝国に関する本としては3冊目です。欧米人はなぜ、これほどまでローマの歴史が好きなのでしょうか。 フランスの歴史家のレミ・ブラッグは、西洋の本質とは、キリスト教になる前のローマ帝国に心が強く引かれるところだと指摘してみせました。 この指摘は、かなり当を得たものです。ヨーロッパは、かつてローマ帝国の西半分の領域に広がっています。だから、ヨーロッパの人は、どうしてもローマを意識してしまい、ローマを再建しようという大望がつきまとうのです。 わかりやすい例を挙げるならナポレオンですし、カール大帝も同じです。フランス革命のときも、画家のダヴィッドは、革命家たちを古代ローマ人に似せて描き、ナポレオンをローマ皇帝として描きました。 独立戦争の頃の米国でも、ロ
大川原化工機事件や袴田巌の無罪確定など冤罪事件が続いている原因として、日本の人質司法への批判が高まっている。長期勾留や自白の強要に近い取り調べ──日本で逮捕されると、被疑者はどんな扱いを受けるのか。他の先進国との違いを英誌「エコノミスト」が指摘する。 出世欲から事件を「捏造」 2020年、横浜市にある化学機械メーカー「大川原化工機」の社長ら3人が逮捕された。容疑は、生物兵器に転用可能な機器を中国へ輸出したというものだった。 3人は約11ヵ月間勾留された。5回の保釈請求は、いずれも裁判官によって却下された(6回目で許可)。捜査官たちは罪を認めれば釈放するとほのめかしたが、彼らは応じなかった。 1人は勾留中に胃がんが見つかり、適切な治療を受けられないまま亡くなった。最終的に全員の無実が証明された冤罪事件である。 この事件は、日本の刑事司法制度が抱える根深い問題を浮き彫りにしている。それは被疑者
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