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大そうじへの備え
ikeuchisatoshi.com
面白い記事が出ていた。 黒井文太郎「戦いたい!海外の戦場へ向かう日本人たちの系譜 元自衛官からイスラム国を目指した北大生まで」JBプレス、2014年10月17日 日本の戦後の裏面史でもあり、中東情勢の番外編とも言える。紛争の大勢に影響を与えることはついぞなかったが、思想・文化現象として興味深い。 私自身は、さらにマイナーな、戦場には出ないが「後方支援」した日本人たちのことが時折気になる。フィールドワーク(というかただぶらぶらしていただけ)の時代にすれ違った、日本の規格からは外れたたくましい、ちょっとずれた人たち。 この記事で取り上げられるのは名前が通った人たちだけだが、私の若い頃の観察では、レバノンなどの各民兵集団(政府軍にも)にたいてい一人ぐらい、「日本人空手教師」みたいのがいた。日本人というと「ジャッキー・チェン」だったり「カラテ・キッド」だったりといった強固なオリエンタリズム的固定観
ものすごく遅れている論文が終わっておらず、それが何よりも気にかかって、自分自身の単著(複数)の執筆も滞る。そんな中ブログの執筆などしていたらどこ方面にも義理が立たないこととておりからの蒸し暑さも言訳に更新が途絶えていた。 しかし執筆の過程での発見やら、イラク、イラン、シリア、イスラエル・ガザやら、あと忘れられているようだが同様に重要な動きがあるリビアやイエメンなど、中東の現地の激しい変転と、それにまつわる情報や論説の奔出する勢いは止め処なく、受け入れるだけでは消化不良でよくない。 しかしそれらを包括的に集めて整理して分析などしようものなら今取り掛かっている論文やら本やらの完成は遥か先に遠ざかってしまいそうだから、やはり日々の中東情勢からは少し距離を置いておこう。 その代わりと言っては何だが、このブログを立ち上げたきっかけ、ブログのタイトルにもなっている『風姿花伝』について書いてみよう。今日
6月21日朝、サウジ、そして中東を揺るがす発表がありました。サルマーン国王が、皇太子のムハンマド・ビン・ナーイフを更迭し、実子のムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子を皇太子に昇格させたのです。 そのサウジ内政や国際関係に及ぼす影響については別の場所で考えましょう。ここでは「イスラーム政治思想のことば」シリーズの一環として、皇太子の任命の正統性を確保するために、現在サウジ発のメディア報道やSNS上で溢れている言葉を紹介しましょう。それは「バイア(忠誠の誓い;bay’a; oath of allegiance; pledge of allegience)」という言葉です。 サウジの王政は統治の正統性を示すために、イスラーム法に基づく政治思想を援用することが多くあります。全イスラーム教徒の共同体(ウンマ)を指導する「カリフ(あるいは「イマーム」)」を名乗ることはないまでも、聖地メッカとメディナを
新コーナーです。 「イスラーム政治思想のことば」と題して、イスラーム政治思想の有名な著作から一節を抜き書きしたり、イスラーム政治思想を論じる際に不可避の論点を特定した、長期的に残る研究書の名著から、主要な論点に関わる部分を転記して、簡単なコメントで補足します。 まず、近代のイスラーム政治思想を論じる際の最も大きな論点である、リベラリズムについて、古典的な研究書から少しずつ抜き出していきましょう。 まず、最初の数回にわたって取り上げるのはウィルフレッド・キャントウェル・スミスの『現代イスラムの歴史』(中村廣治郎訳)です。 原著はWilfred Cantwell Smith, Islam in Modern History, Princeton University Press, 1957です。 邦訳書は、中村廣治郎先生(私の学部時代の先生です)による翻訳で、1974年に紀伊國屋書店から『現代
中東・イスラーム学の風姿花伝 池内恵(いけうち さとし)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。予想外に評判となってしまったFC2ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝(http://chutoislam.blog.fc2.com/)」からすべての項目を移行しました。過去の項目もここから全て読めます。経歴・所属等は本ブログのプロフィール(http://ikeuchisatoshi.com/profile/)からご覧ください。 メニューとウィジェット
少しお休みしていた「今日の一枚」を再開してみましょう。「続き物」として道筋を通そうとすると、事態が発展していくうちに追い抜かれたりしてややこしくなって結局更新が滞るので、気楽に「一枚」をぺらっとアップする初歩に立ち戻ります。 ただでさえややこしいシリア内戦ですが、8月24日に、トルコ軍戦車部隊がシリア北部のジャラーブルスへ侵攻し(よりによって米バイデン副大統領のトルコ訪問の最中に!)、いっそう関与・介入する当事者が増えました。 ここでシリア情勢の現状を再確認しましょう。かなり重要な転換点です。 やはり英Economistは地図が的確ですね。 “Smoke and chaos:The war in Syria,” The Economist, 27 August 2016. ポイントはアレッポの北方、シリア・トルコの国境地帯の諸都市、ジャラーブルス、マンビジュ、アル・バーブ、およびユーフラテ
今朝(6月16日)のFacebookへのポストを転載しておきます。日経新聞のニース・テロに関する記事「呼応テロ、世界に拡散 ニース襲撃で仏政権打撃」 (2016/7/16 0:53)を素材に(特にそのタイトルを素材に)書いてみたものです。 ジハード主義のテロは組織の指揮・命令ではなく、共通の理念への義務を訴える扇動に「呼応」するというメカニズム、一般に理解されてきたと思う。 みなさん気づかないと思うけど、分散型のジハード運動に「呼応」するといった言葉一つだって、学界の大勢に抵抗して、「問題のある人」「反イスラームの人でしょ」と(文字通り)致命的な陰口を叩かれながら、私が言い続けていなかったら、現在このような報道にはなっていないと思う。文系の学問の必要性を示すためにあえて自画自賛しておきます。 書いている記者がどこまで学問的な成果を意識しているかは知らない。当然である。すでに流通している観念
7月1日のバングラデシュ・ダッカのカフェ襲撃事件について、NHK地上波の土曜日朝の番組「週刊ニュース深読み」で「”親日国”でなぜ? バングラデシュ テロの衝撃」が放送されていたのを見て、書いてみました。 ゲストの人たちは開発援助関係の人が多く、個々に言っていることは間違っていないと思うが、問題はそれらを全体として意味づける時に全員が少しずつ従う「空気」であり、その積み重なりによって方向付けられる結論と、そもそもの問題設定と前提のいずれもが、おかしな論理で成り立っている。なぜこうなるのだろうか。 以下はFacebookで朝に発信したものです。アゴラにも「日本でテロ事件の議論が見当はずれになる背景」として転載されました。 バングラデシュの事件について、NHKの土曜日の朝の解説番組を見ていたら、やはり日本での議論の仕方は、やはりテロ事件に対する反応としては、全般に見当はずれであった。 日本の議論
ダッカ事件については、『フォーサイト』で背景と全体像を解説した以外は、Facebookで記事をシェアしたり、NewsPicksで流れてくる日本語の記事をシェアしたり(自動でフェイスブックとツイッターに流れる。その逆はない)していましたが、日本での議論を見ていると、事実に基づかない、しかし願望や思い込みに基づいた議論が容易に提起され、容易に広まっていき、独特の「空気」を作っていき、それを見て消費者におもねるメディア産業の付和雷同を誘う(あるいはそもそも記者やディレクターの水準がSNSの素人と大差ない)場合が多いことに、いつもながら気づかされました。 そしてそのような状況を放置することが重大な帰結につながりかねないことは、直前の英国の国民投票の結果から、いっそう明らかになっていました。英国人がこれまで過度にと言えるまで得をしていた条件を捨て去るような判断を行ってしまう。そこには「二番手エリート
ここのところシリア内戦や「イスラーム国」、クルド人勢力の台頭などについて、地図を通じて紹介する長期シリーズが続いていますが、今日はトルコ。イスタンブルのアタチュルク空港で28日夜(現地時間)に起きたテロ事件(当日のライブ・アップデート)について地図をまとめておきましょう。(だんだん「一枚」じゃなくなってきたので通しタイトルを今日から変えました) 本来は、シリアやイラクやリビアやイエメンの内戦、イスラーム国の各地での広がりなどを順に紹介しているうちに、「本丸」とも言えるトルコに紛争が波及して・・・という順序を思い描いていたのですが、トルコへの波及が加速していますので、早めにトルコを見ておきましょう。 今回は思いっきり初歩的に、トルコ全体の中のイスタンブルの位置と、イスタンブルの中のアタチュルク空港の位置から。 “Istanbul Ataturk airport attack: 41 dead
5月16日(月)のNHKBS1「国際報道2016」の特集「サイクス=ピコ協定締結から100年」(特集がほぼそのままウェブサイトの「特集ダイジェスト」コーナーで活字になっています)で、サイクス=ピコ協定をどう適切に理解して、中東の現在の理解につなげていくか、について解説しました。 その冒頭では、近刊の新潮選書『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』の表紙が映し出されました。 (「本を映し出したテレビ画面を撮影した写真」という若干珍しい構図) 公共放送NHKとしては珍しいことなのではないかと思います。 関西方面の放送局の政治社会バラエティ番組では(旧「たかじん」系をはじめとして)何かとゲストが最近出した本、はたまた司会者までが最近出した本を、やおら懐から取り出して宣伝するのがお約束になっていますが、NHKではあまりそういうことは目にしません。また、今回も、あくまでも本の宣伝ではなく「このテーマで本が
3月の末ごろに「二つほど、文庫や全集に寄せた解説が刊行されました。そのうち一つは・・・」と書いて、『井筒俊彦全集 第12巻 アラビア語入門』の月報に寄稿したことをお知らせしましたが、二つ目の方をアップしていませんでした。フェイスブックでは通知していたのですけれども。 ブログに載せる時間がないのも当然で、その間に2冊本を完成させていました。 一冊は『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2016年) で、そこにはこの井筒俊彦全集第12巻の月報に載せた「言語的現象としての宗教」が早くも収録されています。まあ月報目当てに全集を、それも井筒俊彦の書いた大昔のアラビア語の教科書の巻を買うかどうか決める人もいなさそうなので、早めに採録させてもらいました。私がずっと書きたいと思っていたテーマですし。予定より長めになってしまったにもかかわらず会議をして予定を変更して月報に載せてくださった慶應義
シリアで消息を絶っている安田純平さんについて、私は個人的には面識がなく、安田さんの交友関係も知らないので、何も情報を持っていませんが、安田さんのものとみられる映像については、Facebookで書いておきました。私にはこれ以上のことは分かりませんし、言うことができません。無事の帰還を祈っています。 安田純平さんが、どの程度、英語を正確に話すのか、私は知らない。ビデオでの発言のこの部分は、英語の語法が不確かなので、意味を正確に理解することは難しい。 “I have to say to something to my country:When you’re sitting there, wherever you are, in a dark room, suffering with the pain, there’s still no one. No one answering. No one
これは重要なコラム。 三浦瑠璃「メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題」『山猫日記』ブログ、2016年2月16日 浅薄な党派性や、学者業界のやっかみ、色々なゲスの勘ぐりとかは別にして、自分の拠って立つ根拠を問い直すのに有用な論説です。 メディアへの政治の介入がメディア産業大手の媒体で盛んに議論されるけれども、どこかピンとこない。 言論が不自由になっているというが、不自由になったとされる事例の大部分は、メディア産業の内部で勝手に自粛し、勝手に忖度して不自由にしているだけだ。確かに政治家の圧力はあるだろう。しかしなぜそれにメディアが脆弱になったのか? ここで三浦さんはメディア産業のムラ社会としての崩壊あるいは弱体化を真の理由としています。 私がもっと大雑把に単刀直入に言ってしまうと、今の政治家が昔よりメディアに圧力をかけるようになったというよりは、今のメディア
米東海岸を襲った暴風雪が過ぎ去った翌朝、街は雪掻き、交通機関の復旧作業などが淡々と始まっています。ニューヨーク市は観測史上第2位の降雪量だったようです。セントラル・パークの積雪で、これまでの最高記録は2006年2月11−12日の26.9インチなのに対して、2016年1月22−24日かけての降雪は26.8インチとその差僅かに0.1インチ・・・。どうせなら歴代1位を目撃したかった。マンハッタン島への車両の出入りが止められていたので半日間、いわば巨大な歩行者天国となっていた訳ですが、通行止めも解除され、交通が徐々に通常に戻ろうとしています。立ち往生していたニューヨークから順調に抜け出せそうな見通しとなってきました。 それはともかく、米国滞在中の用務の間にいろいろな原稿を書いて出しましたが、そのうちまた一つがそろそろ発売されるはずです。1月15日(月)発売の『週刊エコノミスト』で、5号に1度担当し
『公研』の12月号に対談が収録されています。 『公研』は会員企業と関係官庁にのみ配布される媒体なので、フォロワー・友達が1万2000人以上に増えてしまった私のフェイスブックのウォールでの告知は控えています。もし「ください」という一般読者から連絡が殺到したら、『公研』の小さな編集部が崩壊してしまいますから。 黙っているつもりだったのですが、目ざとい編集者などが見つけて「面白い」といってくるので、私自身も備忘録としてここに載せておきます。確かに面白い。勉強にもなるが、とにかく面白い。しかしこの面白さは、SNSとかでみだりに拡散するようなものではないと思うんですね。拡散させれば、より多くの人に届くだろうけれども、同時に余計なことを言ってくる人の邪魔が入って本来伝わるべきことが伝わらなくなる。ここは、『公研』の元来意図された範囲の読者に着実に届けることを優先させ、その後間接的に広がって、最大限の効
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