俺の住む町は、アメリカ中西部のそこそこの規模の地方都市だ。典型的なレッドステートの片田舎で、周りを見渡せばトランプの赤い帽子をかぶった人間がちらほらいる。コロナ禍のときもマスクをしない主義のやつが多く、ワクチンを打たない自由を誇らしげに語る人間が珍しくなかった。でも最近、その手の人々の間で、ある意外なものが流行り始めている。それがテコンドーだった。
発端は、地元の人気ラジオ番組だった。右派寄りの論調で知られるトークショーのホストが、リスナーからの質問に答えるコーナーで、突如こう言ったのだ
「最近、俺はテコンドーを始めた。これがなかなかいい運動になるし、何より自己防衛にも役立つ」
最初は冗談かと思ったが、彼は本気だった。テコンドーがどれだけ優れた格闘技で、特にミドルエイジの男性にとってどれほど有益かを熱く語った。そして最後にこう締めくくった
「お前らも試してみろ。俺たちは常に戦う準備をしていなければならない」
これがきっかけだったのか、保守派の人々が地元のテコンドー道場に通い始めた。特に40代、50代の男性が多い。これまで運動とは無縁だった中年太りの男たちが、いきなり道着を着て蹴りを繰り出しているのだから、最初は笑い話だった。だが、彼らの熱意は本物だった。
地元のスポーツ用品店でも「テコンドー用の道着はないか?」と尋ねる客が急増し、一部の店舗では小規模ながらコーナーが設置されるほどになった。SNSでは「俺の町の保守派グループもテコンドークラブを作った」といった投稿が増えている。彼らはテコンドーを単なるダイエット手段としてではなく、「戦うための準備」として捉えているようだった。
俺のアパートの隣に住むジェイクも、そんな一人だった。50代前半、腹の出た元軍人。普段は「リベラルのせいでこの国は終わった」と愚痴をこぼしているが、最近は道場帰りに「今日は回し蹴りの練習をした」と誇らしげに語るようになった。
だが、冷静に考えると、このムーブメントには妙な皮肉がある。トランプ支持者の多くは愛国心を誇り、アメリカ第一主義を掲げる。そして、テコンドーは韓国の国技だ。にもかかわらず、彼らはなぜかテコンドーを選んでいる。
理由はいくつか考えられる。まず、テコンドーは他の武道に比べて敷居が低い。柔道やブラジリアン柔術のように相手と組み合う必要がなく、剣道や空手よりも派手な蹴り技が多い。特にYouTubeで見られる「強そうな技」のインパクトが大きいのかもしれない。そしてもう一つ、これはあくまで俺の推測だが、彼らの中に潜在的な「戦闘願望」があるのではないかと思う。
彼らは口を開けば「リベラルのせいで国が滅びる」「移民が犯罪を増やしている」と言う。選挙が近づけば「俺たちの国を取り戻すべきだ」と熱を帯びる。そんな彼らにとって、テコンドーは単なるエクササイズではなく、ある種の「戦うための訓練」なのかもしれない。もちろん、道場のインストラクターは「平和的な精神が大切です」と言っているのだが、それがどこまで響いているのかは分からない。
ある日、スーパーの駐車場で、ジェイクが突然俺に向かって言った
「見てろよ」
そして、車のそばでいきなり後ろ回し蹴りを繰り出した。しかし、バランスを崩して派手に転んだ。
「大丈夫か?」と声をかけると、彼は痛みに顔をしかめながらも笑っていた
「これができるようになったら、俺は完璧だ」
ウソ乙。ジェイクはもう何年も前に死んでるぞ。
日本だとテコンドーは雑魚だからいまさらやるやつおらんな
オリンピックだけ見てたらペチペチ殴って派手な蹴り技ひけらかす競技に見えるけど ちゃんとしたジムなら空手の型のような鍛錬もしっかりやるし、バランスが求められるから中高齢者...
最近の子供はネリチャギもキムカッファンも知らない 嘆かわしいことだ
せっかくおもしろい噺だったのにラストでいつもの創作癖がでちゃったね
やはりムエタイこそさいつよや
総合格闘技で答えが出てるんだなあ 必須 レスリング 柔術 ムエタイ ボクシング カス 柔道 空手 テコンドー
腕が使えない身体障害者だけど、足技だけならいいか、考えてみるかな…😟
カポエラの方がよくない?😁
腕使って回転してるやなーいかーい…😟
テコンドーが流行ることそのものは別に構わないんじゃね? それが銃の脅威の高い(≒実力行使のハードルの低い)アメリカだということをどう評価するかはともかく
なぜかウィリアムギブソンを思い出した