図解
※記事などの内容は2018年11月2日掲載時のものです
トランプ政権が仕掛けた貿易戦争に反対する米国の企業や業界団体が中間選挙を目前に激しいロビー活動を展開している。2年前の大統領選でトランプ氏勝利を決定付けた中西部の激戦区「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)では、「反トランプ」のうねりを一段と強めようと、多くのロビイストが奔走する。
◇史上最大のロビイスト
「大恐慌以来の貿易戦争だ」「仕入れ価格の上昇に耐えられない」。中西部ウィスコンシン州最大の都市ミルウォーキーに先月25日に結集した地元の企業経営者や農業団体代表からは、追加関税による中国製部材の値上がりや米産品を標的にした他国の報復関税に相次いで悲鳴が上がった。
同州選出のロン・ジョンソン上院議員は陳情に耳を傾けるが、「政権に意見は伝える」となだめるのに精いっぱい。与党共和党に所属するだけに、守りに終始せざるを得ない。
集会を主催したのは、トランプ関税に反対する業界横断組織「Americans For Free Trade(自由貿易を追求する米国人の会)」。石油大手エクソンモービル、アマゾン・ドット・コム、アップルなどが所属する主要団体130余りが参加しており、米史上最大規模のロビイストとも言われている。
9月の発足以降、ラストベルトに含まれるインディアナ、ペンシルベニア州でも集会を開いた。インターネット交流サイト(SNS)でも情報発信し、「反トランプ」票を増やそうと、あの手この手で取り組む。
◇再選阻止も視野
「投票所では関税問題を思い出して」。全米商工会議所で中西部担当理事を務めるジョン・カーシュナー氏はウィスコンシン州の集会で、聴衆に念を押した。商工会議所は伝統的に共和党寄りとされるが、反旗を翻した。トランプ政権が導入した外国産品に対する追加関税が米企業や農家の輸出に及ぼす被害額を州別に算出し、同州を含む中西部を「極めて深刻な影響がある地域」に指定した。
商工会議所は2020年の大統領選も見据える。財界重鎮である同会議所の働き掛けで「経済界の大統領離れ」は勢いを増し、ロビー活動を調査するNPOによると、通商分野でロビー活動を行った企業・団体数は現時点で過去最大の1219に達した。
追加関税の副作用は、トランプ大統領が復活を掲げた「メード・イン・アメリカ」製品をもむしばむ。
「職場には『Too Poor To Vote Republican(貧しくて共和党に投票できない)』と書かれた貼り紙もある」。ウィスコンシン州に本拠を構える二輪車大手ハーレーダビッドソンに関連した仕事に就くジョン・ロスさん(47)は重い口を開いた。欧州連合(EU)の報復関税がハーレーを直撃した。ロスさんの妻が勤める同州の老舗ビール、ミラー・クアーズもアルミニウム関税のあおりで缶価格の高騰にあえぐ。「家族にとって関税は頭痛の種」
トランプ大統領を勝利に導いた地から広がる反乱は、中間選挙や次回大統領選の行方を左右しかねない。
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