小中千昭とは、日本の男性脚本家・小説家である。自称「特殊脚本家」。映画監督の小中和哉は実弟。
概要
1961年4月4日生、東京都出身。成城大学(映画記号学専攻)卒。
幼少の頃から媒体を問わずファンタジー性の強い作品に惹かれる。
10歳の頃より弟の和哉と共に8mm映画を製作し始める。1971年に『死因不明事件』を製作(未完)、13歳で特撮映画『インベーダー』を完成させる。
それからは大学を卒業するまで年1本のペースで自主制作映画を製作し続け、大学在学中より特殊映像を専門としたライター業に手を染める。
1986年に映像制作会社と契約し、映像ディレクターとしてデビュー。多くのテレビ番組・PRビデオ・展示映像などを製作・企画。
翌年の1987年からフリーランスとなり、演出家から徐々にホラー・SF・ファンタジー系専門のライターへとシフト。
『代官山ワンダーランドHORROR』で特殊メイクを担当したことで監督の石井てるよしと知り合い、1988年に同じく石井の監督作であるホラービデオ『邪願霊』にて正式にシナリオライターとしてデビュー。
『邪願霊』『ほんとにあった怖い話』など初期の頃に手掛けたホラー作品で使われた手法は「小中理論」と呼ばれ、高橋洋・黒沢清らに影響を与え、後のジャパニーズ・ホラーのイデオローグ的存在となった。
一時期は高橋洋の紹介により映画美学校の脚本コースで講師を務めていた。
現在はテレビ以外の映像媒体や文筆活動を中心に活動している。
また、中学時代よりベーシストとしても活動している。マッキントッシュの愛好家としても有名。
人物・作風
自身にとって創作活動とは日常に介入する非日常を描くものであると断じ、RPG的な独自の世界観を持ったファンタジーには興味が持てないと語っている。幽霊・怪獣・魔法など描く非日常の種類によって作品のジャンルは分かれるが、自身にとっては全て同一線上にあるとの事。
複数の作家によって拡張されてきたクトゥルフ神話の構造に共感しており、作品ごとに新たな設定を考えるよりも合理的であるという考えから、多くの作品にそのエッセンスを盛り込んでおり、最早代名詞と化している。
ホラー作家として、ロジックを持ちながらも全く理解出来ず圧倒的な暴力性を持ってその体験者に襲い掛かる不条理こそが最も恐ろしいと語っている。その為、敵の目的・正体が明かされずに物語が完結する場合が多い。
俯瞰図からではなく常に人間の目線で話が進み、キャラクターの感情を丁寧に描き出しながらも、その行間から広がる渇いた空気が持ち味。
その反面、ウエットだったり、キャラクターに感情移入させるようなドラマは不得手との事で、そのタッチは業界内外から「ドライ過ぎる」と評されている。
地下フェチであり、ストーリー展開に地下空間を絡める事が多い。
デビュー作である『邪願霊』においてのフェイク・ドキュメンタリー方式を筆頭に、視聴者の存在を強く意識した手法を多く取り入れており、『ウルトラマンティガ』の「悪魔の審判」「輝けるものたちへ」・『serial experiments lain』の最終話などでは、メタ的な視点から画面の中の出来事と視聴者が相互干渉し合っているかような構図を用いている。
途中からいきなり始まる、固有名詞や専門用語を多用する、時には言葉の使い方すら間違った明け透けで生っぽいダイアローグが特徴。
各シーンを有機的に機能させる構造はカットバックから生まれるというのが持論であり、誰かが言葉を呟くと画面が切り替わるなど、シーンをバラす傾向がある。シーン数が多いと同時にワンシーンが短いカットである場合も多く、ともすればカット割りに近い印象を持たれる事すらある。
通常、ストーリーテリングは物語の結末を予め想定する帰納法に則って行われるが、それを酷く嫌っており、一つ一つのアイデアを積み重ねて行く演繹法でなければ面白いものはできないと語っている。キャラクターの設定についても、当初から明確にせずに必要に応じてライブ感で決めて行く事が多い。
また、頭の中で完全に絵を作り、字コンテに近いト書きを入れているが、これも本来は邪道とされる作法である。
脚本は自分の出したプロットから作っていきたいという姿勢から、プロットを各脚本家に配り、それに基づいた脚本を書かせてストーリー全体をコントロールするシリーズ構成という役職に懐疑的であり、自分がシリーズ構成を務めた場合にはそういったことはせず、担当する脚本家に話数の前後の繋がりも含めてプロットから考えて貰い、シリーズの縦軸として必要な事を適宜付加していくというスタイルを取っている。
『ウルトラマンガイア』では、藤宮の思想、根源的破滅招来体の正体などと言ったものを敢えて明確にせず、脚本家陣に各自の考えで執筆させる事で、作品がボリュームを持って発展していく事を狙った。
MBSの丸谷嘉彦プロデューサーは小中を「天才肌」と評価して認めているが、喧嘩をするとキレる性格であると語っている。
自らの正当性を主張するためには徹底的に議論をする事も辞さず、『ティガ』の「悪魔の預言」の打ち合わせにて、監督の村石宏實がティガと預言者が対話するシーンを書き足したところ、ウルトラマンの神秘性を保つ為にティガが喋る事について反発し、強弁の余り声を荒らげ机を強く叩いた事もあった。
TBSのベテランプロデューサーである橋本洋二と仕事をした際も、「これほど作家(テレビ脚本家)に折伏された経験は無い」と苦笑いされたという。
近年は浅田真央やBABYMETALにかなり入れ込んでいた様子で、公式HPは更新停止状態なものの、夫々についての自身の論考を載せたブログを特別に設けていた。
主な作品
テレビ
- 世にも奇妙な物語「屋上風景」
- B級ホラー WARASHI!
- ギミア・ぶれいく「オカルト勘平」「インスマスを覆う影」
- 学校の怪談 (テレビドラマ)
- 乱歩 妖しき女たち
- Alice 6
- ウルトラマンティガ
- エコエコアザラク
- ねらわれた学園
- ゲゲゲの鬼太郎 (第4作)
- 吸血姫美夕
- ふしぎ魔法ファンファンファーマシィー(シリーズ構成)
- serial experiments lain(シリーズ構成)
- ウルトラマンガイア(シリーズ構成)
- バブルガムクライシス TOKYO 2040(シリーズ構成)
- ガサラキ
- デビルマンレディー(シリーズ構成)
- 魔法使いTai!(シリーズ構成)
- THE ビッグオー(シリーズ構成)
- デジモンアドベンチャー02
- デジモンテイマーズ(シリーズ構成)
- Hellsing(シリーズ構成)
- カスミン
- ラーゼフォン
- プリンセスチュチュ
- ASTRO BOY 鉄腕アトム
- TEXHNOLYZE(シリーズ構成)
- なるたる(シリーズ構成)
- ウルトラQ dark fantasy
- 交響詩篇エウレカセブン
- ウルトラマンマックス
- 怪 〜ayakashi〜「四谷怪談」
- エア・ギア(シリーズ構成)
- モノノ怪「海坊主」「鵺」
- 神霊狩/GHOST HOUND(シリーズ構成)
- GR-GIANT ROBO-(シリーズ構成)
- 地獄少女 三鼎
映画
- 死霊の罠2/ヒデキ
- くまちゃん
- DOOR III
- THE DEFENDER
- バニパルウィット 突然!猫の国
- ガラスの脳
- 蛇女
- 稀人
- 楳図かずお恐怖劇場「まだらの少女」「DEATH MAKE」
- ミラーマンREFLEX
- キノの旅 病気の国 -For You-
- 師匠シリーズ
- VAMP
オリジナルビデオ
- 邪願霊
- 地球防衛少女イコちゃん3 大江戸大作戦
- ウルトラマンG
- ドラッグレス
- ほんとにあった怖い話
- アミテージ・ザ・サード
- 魔法使いTai!
- 鉄腕バーディー
- 恐怖新聞
- Malice@Doll
- ウルトラマンガイア ガイアよ再び
- ふたりエッチ
- PARASITE DOLLS
Webドラマ
- 拝み屋怪談
ゲーム
- ありす in Cyberland
- serial experiments lain
- 吸血姫夕維〜千夜抄〜
著書
- 魔法使いTai!
- scenario experiments lain the series
- 深淵を歩く者
- ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言
- 稀人
- ですぺら
- 恐怖の作法:ホラー映画の技術
- 光を継ぐために ウルトラマンティガ
- 怪獣文藝の逆襲「トウキョウ・デスワーム」
- 日本怪獣侵略伝 ―ご当地怪獣異聞集―「十二階幻想」
- クトゥルー・ミュトス・ファイルズシリーズ
- BABYMETAL試論
- ウルトラマンティガ 輝けるものたちへ
関連動画
関連チャンネル
関連商品
関連項目
関連人物 |
外部リンク
- Alice6 Chiaki J. Konaka's Web(公式サイト)
- Bear Brothers Ltd.(こぐま兄弟舎公式ホームページ)
- Night Shift(マカロニアンモナイト連載のエッセイ)
- 浅田真央試論(本人による浅田真央についての論考)
- BABYMETAL試論(本人によるBABYMETALについての論考)
- 小中千昭 バトル・オブ・円山町(映画美学校脚本コース講師陣によるブログ)
- 小中千昭 Chiaki J. Konaka (@yamaki_nyx) on Twitter(本人による『デジモンテイマーズ』についてのアカウント)
- 1
- 0pt