経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・消費底落ちで3期連続ゼロ成長へ

2015年11月29日 | 経済(主なもの)
 少し早いかもしれないが、これだけ家計調査の結果が悪いと、10-12月期のゼロ成長も覚悟せざるを得ないだろう。原因は、8兆円を超える今年度の緊縮財政である。GDP比で1.6%ものデフレ圧力をかけているのだから、景気失速も当然だ。日本経済は、政策どおりの結果を出している。もっとも、こうした現実を見ても、統計が間違っているとしか言えない立場の人もいるようだが。

………
 10月の家計調査は、二人世帯の消費支出の季節調整済指数が93.9で前月比-0.7となり、7-9月期平均より-0.7も低かった。「除く住居等」は、94.4で前月比-0.4、前期比-1.1であり、ここまで落ち込むと、11、12月に1.0ずつ伸びたとしても、前期比がプラスにならない。10月の水準は、消費増税直後の2014年5月の94.1と大差なく、底へ落ちたレベルだ。しかも、10月は物価の低下に助けられており、名目の前月比は-0.5に広がる。

 勤労者世帯の消費性向は、やや低く、回復の余地があるものの、実収入の水準が夏前よりかなり落ちていて、多くは期待できまい。エネルギー価格の低下による後押しも一巡している。今年に入ってから、消費は低迷を続けており、月々の振れによって、四半期がプラスになったり、マイナスになったりする。こうした傾向は変わらず、10-12月期の消費は、プラスに振れた前期のレベルを維持するのもやっとの状況にある。

 10月の鉱工業指数の発表は週明けだが、9月から投資財の在庫が減り始めており、10-12月期は、前期の在庫増の停止から、在庫減へ変わる公算が高い。そうすると、GDPには、消費のゼロ成長状態に、在庫減が加わり、マイナス方向へ引っ張られる。設備投資は、先行きを示す機械受注が弱含みであり、公需と外需の牽引力は乏しいため、振れ方次第で、3期連続のマイナスになることは十分にあり得る。

(図)



………
 こうした消費の低迷の背景には、雇用の鈍化がある。まず、景気ウォッチャーは、3月から低下傾向が続いており、消費動向調査も、4月をピークに同様だ。また、労働力調査の就業者数は、3-5月に下落したために、それまでの増加トレンドが屈曲した。ただし、9,10月は高めの水準になっている。毎月勤労統計の常用雇用の前月比は、4月の伸びを最大に、以降は低下が続く。実質賃金は、昨秋の底とほぼ変わらないレベルにとどまる。

 10月に倍率が低下した新規求人については、11/7のコラムで指摘したとおり、消費増税後、対前年同月の増加数が下り坂となっていた。「パート」は、今年に入ってもプラスを保ち、回復局面も見られたものの、「除くパート」は、昨年の終わり頃から、マイナスとプラスを行ったり来たりの状態にある。いずれも、医療・福祉が大きな割合を占め、低賃金で定着しないために嵩む社会保障の求人が全体を支える。

 政府・日銀の景気判断は、「緩やかな回復を続けている」だが、「底堅い」とされる消費は、10月の家計調査で、消費増税以来、何度目かの「底落ち」となった。増税直後の反動減が深過ぎ、「底割れ」だけはないことが、「底堅い」の意味するところになっている。これでは、統計批判で目眩らましをするしか、手はあるまい。残る「回復」の根拠は、社会保障の低賃金の求人増、外国客増による宿泊飲食でのパート逼迫、円安に伴う食料品の物価高と企業の収益増といったものになってはいないか。

………
 他方、真に「力強く回復している」と言えるのは、税収である。そもそも、2015年度は、国、地方、年金を合わせて8兆円の緊縮財政をする計画であり、それは、中長期の経済財政に関する試算に明記されている。加えて、国税だけで4.4兆円も上ブレしそうで、7割規模の地方税も同様の傾向であろう。これほど大規模にマネーを堰き止めれば、経済の好循環が回るわけもない。

 緊縮財政で需要の拡大を抑制すると、企業は設備投資ができなくなる。当然、正社員も増やせない。投資増による生産性向上が望めなければ、円安によるコストアップは価格転嫁の道が選ばれる。かくして、マネーは、企業に滞留する。企業からすれば、緊縮財政の下で、設備投資せよと、政治から言われても、困ってしまう。先日の官民対話の10兆円増も、名目成長率が実現できていれば、おのずとなされる程度でしかない。

 緊縮財政の下では、需要リスクが怖くて設備投資ができないので、経済界は、投資減税より、法人減税を求めるようになる。これがまた、設備投資の意欲を弱める。法人減税の財源になる投資減税は、アベノミクスの当初に大盤振る舞いしているから、財源なしに法人減税するのと変わらない。国内投資への減税の代わりに法人減税をすると、外国人株主に利益が流出するから、経済も財政も弱めることになろう。

 エコノミストの中には、消費増税から1年半も経ったので、何が今の景気後退の原因なのかと訝しむ向きもあるが、財政をフォローしていれば、疑問の余地はない。外国の経済学者は、当局が積極的に説明しない財政の実態に疎く、デフレの重力圏から脱するのに、アグレッシブな財政出動をせよと宣ったりしているが、現実になされているのは、語るに落ちる財政の逆噴射である。

………
 さて、金曜に補正予算編成の指示が首相から出されたが、規模は明かではない。もし、前年並みの3兆円程度であれば、3期連続で成長を失いそうな今の景気を維持するにとどまるから、来夏の参院選は捨てたも同然であろう。3期連続のマイナス成長は、リーマン対策を一気に切った後に震災に遭遇した管政権、消費増税法にかかずらわって景気対策を逸した野田政権に続く例となるが、いずれも政権を失っている。財政を掌中にできない政権の末路は、似たようなものだ。


(今日の日経)
 脱・持合株に企業動く。かみ合わない官民対話・実哲也。読書・加賀屋 笑顔で気働き (母子寮で働きやすく)。

※家計調査が推計に用いられるGDPの消費も、供給側の統計も、ほぼ同様の動きにあることは、ニッセイ研・斎藤太郎11/16 p.3を参照。家計調査と商業動態統計の比較については、同11/17 p.3を参照。
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11/25の日経

2015年11月25日 | 今日の日経
 昨日、毎月勤労統計の確報が公表になり、給与総額の季節調整済指数は99.1と対前月で横バイ、常用雇用は106.2で+0.1であった。給与総額は、6,7月のボーナスの撹乱をはさんで、停滞が明らかになった。常用雇用も減速があらわとなって、昨年の増税後の夏の停滞局面と同様の動きになっている。この感じからすると、10月の消費もあまり期待できまい。鉱工業の在庫水準はまだ高く、次の10-12月期GDPがプラスになるか予断を許さない。

 一方、政策対応は矢つぎ早だ。最低賃金1000円とは、連合も顔負けだ。本コラムが訴える年金保険料の軽減や社会保険の適用拡大にも着手するようである。「予想」は当たったみたいだが、誰が考えても必要なことであり、どれだけ多くの人が考えるかで、実現の度合いが大きくなる。軽減税率の4000億円や給付金3000億円に比べれば、いまだ限定的であるのは、そういうわけだ。


(今日の日経)
 軽減税率を段階的に拡大、財源4000億円。最低賃金1000円めざす。厚生年金を中小のパートに、国年保険料は出産前後免除も。低年金者への給付金は3000億円。
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子供の貧困と非正規の解放の解題

2015年11月22日 | 社会保障
 長年の読者なら、お気づきかもしれないが、本コラムでは、このところ、子供の貧困や、それと重なる母子家庭に関わる記事が増えている。まあ、7-9月QEの解説とかは、他の人でもできるしね。実は、2年前に子供の貧困対策の法律ができ、今、各都道府県で計画が作られている最中なのだ。それもあって、新たに関わることになった有識者の方は多いと思う。筆者も、この齢で新たな社会問題に首を突っ込むのは避けたかったが、これも巡り合わせというものだろう。

………
 子供の貧困対策の最重要の課題は、学習支援と居場所づくりによって、高校を卒業させ、進学や就職に結びつけ、貧困の連鎖を断ち切ることである。しかし、これに関する厚労省の予算は19億円に過ぎず、来年は33億円に「急増」するらしいが、貧困状態の子供は330万人もいることを思えば、お寒い限りである。

 他方、母子家庭の経済状況を、どう改善するかも課題だ。これはマクロ的な問題になる。児童扶養手当のアップは一つの手だが、国の財政事情からは、数千円上げるのも難しいだろう。むろん、地方レベルで、どうこうできる範疇を超えている。そこで、厚生年金の方で支援ができないか考えたのが、前回の「フィクション」である。(制度設計は「ニッポンの理想」がベース)

 社会保険を使うに当たって問題になるのは、やはり、財源と公平であるが、これらは、さほど難しくない。軽減に必要な財源は、1人16万円弱として、ざっと600億円だが、厚生年金の年間収入額の37兆円からすれば微々たるものだから、年金受給者全体で広く薄く負担することも可能な範囲である。それも、今の受給者ではなく、マクロ経済スライドの期間がほんのわずか長びくことで、「将来」の受給者が負うことになる。

 財政当局のエリートと社会保障の話をすると、判で押したように、高齢者向けの社会保障を削って子供に回すべきという答が返ってくる。彼らは、「今」の年金額をカットして財源に回すことをイメージしているようだが、それは無明というものだろう。国際的には、高齢者の社会保障が充実しているわけでもないし、そんな「痛み」を伴うことができるはずもない。

………
 母子家庭を軽減することの公平性はどうか。これには立派な前例がある。継続雇用の下にある育児休業中の女性は、保険料が免除されるだけでなく、給付額にも反映される。この制度の趣旨は、こうでもしないと、雇用主は休業中も保険料を払わなければならないため、解雇に結びつきかねないからである。また、次世代の育成が年金制度への貢献になることに報いる意味もあろう。

 次世代の育成については、母子家庭の貢献は言うまでもない。子供を平均1.58人も抱え、一般の家庭の倍も貢献している。そもそも、次世代の育成の有無に関わらず、専業主婦は、夫の扶養にある限り、免除である。それでも、自分名義の基礎年金がもらえる。母子家庭は、別れた夫が厚生年金に加入していても、当然ながら、免除の特権は得られない。こうしてみれば、決めの問題、すなわち、政治判断によると言うべきだろう。

 母子家庭を認めれば、父子家庭も、さらに、夫婦世帯でも子供のいる年収200万円未満の低所得世帯もとなるかもしれないが、ここまで広げても、母子家庭の2倍くらいではないか。上手くいけば、財源はもっと少なく済む可能性もある。なぜなら、軽減に安住せず、より多く稼いで、軽減が小さかったり、範囲を超えたりする者がかなり出ることが考えられるからだ。試す価値の高い社会実験となるだろう。

………
 前回のクミコは、そんな懸命な女性の姿をイメージしている。それで得られた小さな余裕が娘の部活を可能にした。母子家庭の子供は、勉学が振るわず、貧しさで部活もできないという場合が少なくない。これが学校をおもしろくなくし、友人関係からの孤立にもつながる。それで高校をドロップアウトしてしまうと、貧困の連鎖に陥る。読者の中には、高校で部活が続けられたくらいで、なんで親子が涙を流すのか、ピンとこなかったかもしれないが、そんな厳しい現実がフィクションの背景にある。

 こうした母子家庭の貧困は、一般の方には縁遠いものだろう。ここには、パートに押し込める社会保険料の壁、社会投資の観点なき緊縮財政といった社会制度の矛盾が集中している。それだけに、これに取り組むことは、経済社会の全体を良くすることにつながる。矛盾を解いて、母子家庭の貧困の緩和で成功を収めれば、必ずや非正規の若者全体へと波及する。団塊の世代が好きな「一点突破、全面展開」というやつである。

 この意味で、決して、かわいそうな人たちの問題ではない。母子家庭の貧困を解決しようと制度を工夫することが、日本を変えて行く。まさに、「情けは人のためならず」なのだ。貧困の当事者は、制度改革の案を口にしている余裕などない。読者には、経済学や政策学を志す若い方が多いと思う。ぜひ、成長に結びつく重要なマクロ経済政策のテーマと考え、クミコたちに語るべき「言葉」を与えてもらいたい。


(今日の日経)
 民泊を許可制で全国解禁、訪日客急増に対応。

※母子家庭のドラマのテーマソングだった「Wildflower」を聞きながらだと、執筆に力が湧きますよと教えられた。確かに勇気づけられるね。「咲き誇れ、荒野のど真ん中で」か。
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非正規の解放、経済の覚醒

2015年11月15日 | 基本内容
 2020年7月、クミコは、オリンピックの女子バレーボールの会場へと急いでいた。女手一つだから、生活は楽ではない。それでも、選手を夢見る高校生の娘を連れて行けるだけの小さな余裕は持てるようになった。5年前、パート掛け持ちで疲れ果てていた頃なら、とても無理だったろう。それどころか、お金がなくて、部活をやめさせていたかもしれない。そんな親子の危機をいくつも乗り越え、ここまで来た。

………
 「理屈はいいから、母子家庭だけは救ってやれ」、時ならぬ怒声が総理執務室に響いた。「財源が、公平が」と言を左右にする役所の幹部を、総理が一喝したのである。その瞬間、5年後のクミコたちの運命が切り替わった。母子家庭については、年収130万円まで、年金保険料を月額500円に引き下げ、130万円を超えた場合も、急に負担がのしかからないよう軽減されることになった。これで彼女らはパートでも社会保険に加入できる。

 総理が怒ったのも無理はない。経済財政諮問会議の民間議員が11/11に「130万円前後で働く場合に、当面の緊急対応として、負担の公平性を踏まえつつ、社会保険料負担が増加する主婦等の負担軽減を検討すべき」と提案したにもかかわらず、役所はさっばり動こうとしなかったからである。「参院選もあるのに、あいつら俺を追い落とすつもりか」、退散する官僚の背中を眺めながら、総理は一人つぶやいた。

………
 クミコは、店長に呼ばれると、「来月から、6時間と言わず、思い切り働いてください」と申し渡され、狐につままれたような感じがした。「保険料負担を渋って、働かせなかったくせに」と、手のひらを返したような態度にとまどいつつも、これで、パート掛け持ちをせずに済ませられるかもと、内心ほっとした。「とにかく、この店で、がんばろう。チャンスをものにして、部活で娘が使うシューズのお金をなんとかしなきゃ」

 世の中は現金なもので、それまでは、「子供の病気ですぐ休む」などと嫌味を言っていたのに、年金保険料の負担がほとんどないとなったら、「母子家庭のおかあさん大歓迎」である。実際、彼女たちは生活がかかっており、必死に働くから、押しなべて成績は良かった。その場を与えれば、すぐに分かることで、お役所の怠慢で放置され続けた社会保険の「壁」さえなければ、本来の持てる力が解放されるのである。

 この成功ぶりを見て、声を上げたのは、独身の若年層だった。「正社員になれずとも、もっと長く働きたい」、「国保や国年から脱して、正社員と同じく安定して社会保険に入りたい」というのは、切実な願いだった。これに押された政権は、ついに年金保険料の軽減を全パートに拡大することを約束するに至る。母子家庭への「情け」が、日本経済を覚醒させる「蟻の一穴」になって行く。

………
 社会保険の適用拡大は、労働力供給を高めて、成長を押し上げただけでなく、意外な効果も生んだ。正社員の長時間労働が減り始めたのである。パートの労働時間を押し込めなければ、正社員が無理をして補う必要がないという、ごく当たり前の理由からだった。そして、パートも正社員も同じ社会保険に入り、労働時間も大差なくなると、「身分」で差別するのが不自然になる。

 そんな中、「全員正社員」を宣言する企業が現れた。人事担当者は不況時の人員調整を思って反対したが、社長は言い放った。「そん時は、全員が短時間労働で我慢すりゃ、ええやないか。苦楽を共にする、そんな経営がしたかったんや」 創業者でなければ、なかなか言えないセリフだったが、ものごとの本質を衝いていた。社会保険の壁なしに、労働時間が調整できるなら、雇用期間を限定する必要性は薄い。

 こうして、日本から非正規への差別が消えていった。掛け声だけの「同一労働、同一待遇」が、まさか、母子家庭への特例から実現するとは、思いもよらぬ展開だった。差別が消えれば、継続雇用の下で、誰でも育児や介護の休業を取れるようにもなる。柔軟な働き方で生産性が向上し、成長は高まり、財政まで改善した。若年層の待遇が向上すると、結婚も増え、出生率は1.8を望むところまで伸びた。日本の未来を危ぶむ者は、もういない。夢の実現は、案外、手に届くものだったのである。

………
 オリンピック女子バレー準決勝の最終セット、日本代表のエースが勝利のスパイクを打ち込み、銀メダル以上が確定すると、場内は地鳴りのような歓声に沸き、総立ちとなった。クミコと娘も飛び上がって喜び、抱き合った。その時、「おかあさん、バレーをありがとう」という言葉が聞こえ、クミコの脳裏に5年間の苦労がよぎった。あの時、チャンスをつかめたから、今がある。頬を伝う涙は、ニッポンの勝利を祝うだけのものではなかった。

※以上はフィクションであり、以下のみがノンフィクションです。
※内容の説明は、11/22の「解題」に記してあります。


(今日の日経)
 パリ同時テロ。配偶者手当見直し就労後押し・経団連。求人なくて働けず失業は解消。
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11/13の日経

2015年11月13日 | 今日の日経
 9月の機械受注は、対前月ではプラスだったが、2か月連続で大きく落ちた後にしては、もの足りない結果だった。日経でも報じているように、前期比は10%減で、先行きの見通しはプラスであるものの、中国への輸出の停滞、中国からの素材の流入を踏まえれば、下振れのリスクは大きい。こんな調子で、10-12月期のGDPはプラスに戻れるのかね。

 機械受注の動きについては、前にも指摘したが、非製造業は、消費増税後の落ち込み、リバウンド、その後の降下と、消費の動きとパラレルである。製造業は、増税とは関係なく伸びてきたが、夏以降、下落に転じた。こちらも中国始めとする海外需要の動きと同様だ。設備投資は、金融緩和や企業減税とは関係なく、需要に応じてなされるという、教科書経済学には反するが、常識どおりの結果である。


(今日の日経)
 中国で人員削減の波。浜田市・ひとり親世帯呼び込み。政府税調・低所得者の税負担軽減機械受注7-9月10%減、先行きも下振れ懸念。
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11/11の日経

2015年11月11日 | 今日の日経
 月曜の毎勤では、常用雇用は小さめだったが、ゼロやマイナスにはならず、ひと安心。火曜の景気ウォッチャーは、現状DIが低水準でも持ち直し、季調値は50超だった。ただし、雇用が3か月連続で悪化し、幅も大きめなのは気になるところ。人手不足を訴える声がある中で、求人減を指摘するものが散見される。

 このところ、消費性向の低下が言われるが、一般的に、雇用が明るくなると所得の割りに消費が伸び、曇ると鈍るという傾向があるので要注意である。サイフのヒモが固くなるには理由があり、気分とか、偶々とかでは、片付けられない。やたらな緊縮をせず、民心を安んじないと、設備投資だけでなく、直接、消費まで悪くしてしまう。

 児童扶養手当といい、パート保険料といい、安倍政権も再分配を真剣に考えているようだ。選挙対策であろうが、何であろうが、今の日本には必要だ。11/8に、ブレイディみかこさんがヤフーニュースに執筆した英国議会におけるコービンのレポートは素晴らしかったね。経済政策の潮流は変わりつつあるのかもしれないな。


(今日の日経)
 耕作放棄地の課税1.8倍。焦る習氏・中沢克二。児童扶養手当を増額。10月の街角景気3か月ぶり改善。(前日夕刊) 諮問会議・パートの保険料負担を軽減を提言。
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11/9の日経

2015年11月09日 | 今日の日経
 タイトルにイツワリで、今日は新聞休刊日。でも、滝田洋一さんが今朝の本紙電子版のトップに「惑う市場に税収上振れの援軍」(11/8)を書いてくれている。本コラム試算の4.4兆円よりは小さく、2.6兆円という結論だが、上ブレの実態が分かる良い記事だ。これで、安倍政権がどのくらいの規模まで補正予算を積み増せるかが見ものである。

 前回、有効求人倍率について書いた。一言にすれば、増えている求人は低賃金の介護や保育ばかり。定着しないから、求人はかさ上げされるし、そんなものばかりと知れれば、求職も鈍る。高い有効求人倍率の内実は、そんなものだろう。もっとも、大事なのは、くさすだけでなく、内実を次のステップに生かすことだ。

 補正で予算をケチるなら、せめて、介護、保育、そして、母子家庭の母だけで良いから、社会保険料を軽減し、パートへの適用拡大を実現すべきである。人材の確保により、介護や保育の不足が緩和され、母子家庭も貧困から救われる。ひいては、出生率も向上する。そうなれば、経済や年金まで良くなる。この程度もできないのかね。この国は。

(今日の日経)
 新聞休刊日。日経はネットでご覧ください。
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高い有効求人倍率の幻想

2015年11月07日 | 経済
 最新の9月の有効求人倍率は、1992年以来の23年ぶりの高さだったが、バブルの頃の水準と言われる割には、好景気の実感がなく、消費増税以降は、逆に悪化している印象がある。いまや唯一ともなったアベノミクス御自慢の数字だが、検証すると、やはり失速していることが分かる。こうした傾向は、家計調査など他の統計と共通するものだ。「家計調査は低すぎる」などと批判するより、現実を直視すべきだろう。

………
 有効求人には前月から繰り越されたものが含まれ、倍率は求職者の減少によっても上がるので、今回は、新規求人が、前年同月と比較し、どのくらい増えているかに着目した。フルタイム(正確には「除くパート」)における結果は、下図のとおりである。ここでは、各月の変動が激しいことから、傾向性をつかみ易くするよう、3か月移動平均を示している。

 新規求人の増加数を追うと、リーマン・ショックの影響が癒えるに従い、2010年に大きく回復し、2011年から2012年にかけて、やや低下しながらの高原状態となる。2012年後半に、円高に伴う「ノダ後退」で低下するものの、アベノミクスが始まり、円安に戻った頃から急速に戻した。そして、消費増税を境に下り坂となり、2014年の終わり頃からは、ゼロをはさんで上下するまでに落ちぶれている。

 こうした中、医療・介護・保育の分野は、安定して下支えする役割を果たした。特に、消費増税のあった2014年には上げ潮基調で支えている。その意義は大きく、もし、これがなければ、求人の増加数は、ゼロどころか、マイナスに転落していたところだ。この分野は、社会保障をどのくらい拡大するかで決まる。雇用を作ってきたのは、金融緩和でも、産業政策でもなく、社会保障である。

(図1) 



………
 せっかくだから、パートの動向も確認しよう。パートは、2010年にリーマン・ショックから回復したものの、東日本大震災で、一度、大きく落ち込み、その反動で2012年前半に大きく伸びるという激しい動きを見せている。安倍政権となった2013年は、落ち着いた動きを示していたが、やはり、消費増税後は下り坂になり、2015年に入る頃には、落ちては戻すを繰り返している。

 医療・介護・保育の分野の新規求人は、この1年、全体の増加数のほとんどを占めることもしばしばである。介護や保育の仕事は、低賃金が知れ渡っているが、それが新規求人の大半を占める。先に見たように、フルタイムの増加数は、ゼロ状態にあるのだから、パートからフルタイムへの移行はあまり期待できない。雇用の質の改善には、パートの地位を向上させるよりほかないと考えられる。

(図2)



………
 アベノミクスの雇用の命脈は社会保障にかかっているのに、財政当局は、来年度予算に5000億円増のキャップをはめ、これを断つべく、必死になっている。10%消費増税を先送りされた怨みの深さがうかがわれる。一方、安倍政権は、そうはさせじと新三本の矢を放ち、社会保障の充実で保育や介護の雇用を確保し、来年夏の参院選に備えようとする。何とも凄まじい争いだ。

 一億総活躍の国民会議の資料「実現に向けた新三本の矢の関係」のド真ん中には、非正規雇用の正規化が掲げられているが、フルタイムの新規求人の増はゼロ状態という足元の有様からすれば、絵に描いたモチでしかない。それでも、安倍首相の言葉どおりの「従来の発想に囚われない発想での新たな案」なら可能だ。1.6兆円で社会保険料を軽減することで、すべてのパートや非正規に社会保険を適用し、差別をなくせば、実質的に解決できるからである。

 しかし、日本に社会保険を使う発想はない。当局が自ら軽減案を出してくるはずもなく、待機児童の解消と同様、20年かけてノロノロと適用拡大を進めるだけだろう。待機児童対策をケチり、20年かけても解消できないまま、日本は少子化が進み、人口崩壊が不可避になったように、非正規の地位向上への冷淡さは、労働力の質の低下を招き、いずれ、日本の成長力の深刻な重荷となるだろう。解決策はあっても、日本は衰退するばかりだ。
 

(今日の日経)
 中台首脳が初会談。国家公務員の配偶者手当見直しへ。
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11/5の日経

2015年11月05日 | 今日の日経
 今日の経済教室の諸富先生の論考は傾聴すべき内容だったね。筆者は「給付措置派」だが、自分とは違う意見にこそ真剣に耳を傾けたいものだ。むろん、給付措置にも弱点はあるものの、本コラムが薦める社会保険料軽減型は最も弊害が少ないと考える。残る弱点の雇用者以外の扱いは、別途の措置で補うよりほかないという割り切りになる。政策は、よりマシなものを選ぶという行為にならざるを得ない。

 社会保険料軽減型の給付措置は、逆進性解消だけでなく、日本の経済社会の最大の桎梏である非正規労働を一掃できるメリットもある。まあ、現実には、それに欠かせない社会保険の適用拡大を、20年かけてノロノロとやるのだろう。待機児童の解消は、エンジェル・プラン以来、20年かけて、未だ到達していない。財政をケチり続けた結果、団塊ジュニアを少子化に追い込み、人口崩壊を招来した。また、同じことになりそうである。

(今日の日経)
 郵政上場、次は成長力。経済教室・軽減税率には税額票の導入が不可欠・諸富徹。
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2015年度の税収は4.4兆円上ブレ

2015年11月03日 | 経済
 補正予算が議論される季節となり、11/2に9月の租税調も公表されたので、2015年度の国の税収の予想を見直した。結果は、予算から4.4兆円の上ブレだった。今後、更なる上ブレもあると見ている。2014年度の決算剰余金が1.6兆円あるから、国債の追加発行なしで5兆円規模の補正予算を組むのは十分可能である。おそらく、11/16公表の7-9月期GDPの不振を受け、そうした方針がアナウンスされるだろう。

………
 本コラムの税収予想は、誰でも理解できるように、極めてシンプルにしてある。前年度税収の決算額を、政府経済見通しの名目成長率で伸ばし、主な税制改正を加減しただけである。2014年度の一般会計の税収は54.0兆円であったから、これを2.7%増にし、昨年の消費増税の平年度化分1.7兆円等の税制要因を加減すると、57.0兆円になる。これだけで、2015年度予算の税収額から2.5兆円もの上ブレになる。

 この堅い見積もりでも、これだけあるから、10/30の日経夕刊が報じた「税収の上ブレは1兆円超」というのは、何を言っているんだというレベルである。憶測だが、この「3兆円規模の補正を打つ」というニュースは、同日に日銀が金融政策決定会合で追加緩和を見送ることを見越したものだったのだろう。おかげで、株や円に大きな悪影響が出なかったわけだから、それなりの意味はあったと言えよう。

 来年夏に参院選があることを踏まえれば、補正予算が前年度並みの3兆円規模で済むはずがない。まして、堅い見積もりの税収であっても、4兆円規模に積み増すのは容易だ。ニュースも、そうした含みを残していた。だが、税収の上ブレは、そんなものにとどまらない。経済はゼロ成長に低迷しても、企業収益は膨らみ、配当に係る所得税も伸びると見込まれるからである。

(表)



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 4~9月の租税調によると、所得税は、前年度の累計額を14%も上回るハイペースである。そのため、9月までの実績値を使うと、10月以降は名目成長並みに「失速」すると保守的に仮定しても、先の堅い見積もりから、更に0.8兆円増大し、所得税は18.0兆円に達して、2015年度予算からの上ブレは1.6兆円に及ぶと予想される。むろん、実際には、これを大きく超える可能性が高い。

 一方、法人税は、租税調では前年度実績を下回る状況だが、11月と3月にまとまって納税されるので、この数字からは、まだ何とも言えない。そこで、証券各社の企業業績見通しの経常利益を確認すると、9月に上方修正され、二桁の伸びとなっている。単純に、法人税も企業業績とパラレルに伸びると仮定するなら、名目成長分を超過する法人税の増収額は、1.1兆円になるだろう。

 以上の二つを勘案すると、2015年度税収の予想は58.9兆円、予算からの上ブレは4.4兆円という結果になる。加えて、消費税の税収も極めて好調である。一般の方には煩雑になるので説明は省くが、9月までの実績で、既に0.9兆円程度の上ブレを確保できていると見られ、先の堅い見積もりの1兆円の上ブレには十分に届く勢いにある。今日の日経でも、野村證券の西川昌宏さんが1兆円上ブレの予想を披露しているところだ。

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 2015年度税収の大幅な上ブレによって、詳しくは別稿に譲るが、2020年度に基礎的財政収支の赤字をゼロにする目標には、自然体で到達できる見通しが立った。この夏に飛び出した、9.4兆円の歳出削減が必要とする財政当局の主張は、一体、何だったのか。それは2014年度決算の税収が出た段階で6.2兆円に減り、たぶん、2015年度決算が明らかになる頃には、ゼロとなろう。もし、予定どおり10%の消費増税を今秋にしていたら、経済が瓦解し、この成果も水の泡になっていたと思われる。

 その意味で、税収もろくに見積もれない財政当局に代わり、安倍政権は、財政再建という偉大な成果を、解散総選挙という非常手段を使って、実現したことになる。ただし、企業収益と税収は躍進させても、その引き換えに、経済成長は失速し、国民生活を低下させたのだから、選挙で誇るわけにもいかない。財政再建は大成功を収めたが、アベノミクスは大失敗である。

 今度の補正予算は、これをリカバーするチャンスとなる。今の官邸なら、きちんと税収を見抜き、5兆円規模にするのは可能だろう。問題は、その中身だ。財政当局が振り回す屁理屈に惑わされ、そのとき限りのバラマキを膨らますようでは、選挙での勝利はおぼつかない。「新3本の矢」のど真ん中にある非正規労働の不合理を解消するため、全員に社会保険を適用するのに不可欠な「保険料軽減」にお金を使ってほしいものだ。

 日本の財政当局には中期的な財政計画を立てる能力がないので、繰り返し書くが、2015年度に5兆円の補正を打てば、需要を急減させないために、2016年度も2.5兆円の補正は必要になる。2017年度には、消費税を1%上げるデフレ効果を相殺するのに、2.5兆円の補正は続けざるを得ず、2018年度も、増税の悪影響が続いて、やめるわけにいかない。2019年度には、また1%の消費増税が巡って、2.5兆円の補正は欠かせず、2020年度も同様になる。つまり、2.5兆円は恒久的財源であり、毎度、そのとき限りのバラマキに費やすのは、あまりに惜しい。

 一億総活躍なのに、全員に社会保険が適用されないなど在り得まい。適用の障害になっている重い保険料が軽減されれば、若者や女性の低所得層が救われるだけでなく、多くの中小企業も助かる。非正規と正社員の垣根が取り払われて労働条件が均等化し、夫婦二人で1.5人分稼ぐことで子供を持てるようになり、育児や介護の都合に合わせた労働時間の調整も容易になる。オランダのワッセナー合意にも匹敵する大きな社会変革になる。無能な財政当局を退けるだけで、それは簡単に実現する。


(今日の日経)
 慰安婦の財政支援拡大へ。日産が10年ぶりの最高益。軽減税率・消費税収上振れで綱引き。大機・10.6兆円の原油代金減・富民。

 ※さすが富民さんは景気の経験則にお詳しい。
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