大魔王バーンとは、「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」の登場キャラクターである。
アニメ版の声優は内海賢二(1991)、土師孝也(2020)→子安武人(2020版真・大魔王)。
人物
ダイの大冒険の世界には「天界」「地上界」「魔界」という3つの世界が存在しており、バーンはその中の魔界における最強の実力者とされており、魔界の神という異名をも持つ。
一人称は「余」であり、常に威厳と余裕を感じさせる雰囲気を持っている。また、弱肉強食の考えを地で行っており、強い者には種族を問わず敬意を払っている。事実、本来ならば敵対関係にあたりそうなバランや、勇者アバンの弟子でもあるヒュンケルすらも仲間に取り込んでいる。
一方で非常に用心深い人物であり、普段見せている余裕の表情とは別に、入念な準備や警戒を怠らない一面も併せ持っている。特に未知の力の類には強い警戒心を抱いており、自分が信じる強さとは異質な強さを持つアバンを「地上一の切れ者」として真っ先に抹殺しようとしたり、竜の騎士の遺伝子を持つバランがどんな戦いを仕掛けてくるか分からないために、そのリスクを避けようと仲間に引き入れたりといった対策を講じている。
強き魔族を魔界の闇に押し込め、一方で脆弱な人間に地上界と太陽を与えた"神々"をバーンは強く憎んでいたため、魔界の上に存在する地上界を消滅させ、魔界に太陽の光を降り注がせようと考えた。そこで魔界で数千年に渡って力を蓄え、地上界を消滅させるための準備を整えてたと発言している。
その地上消滅計画を進める上で、バーンは自らの手駒として動いてくれる人材を集め、魔王軍として組織させた。その大半の構成員は地上界で集めたものだが、ミストバーン、キルバーン(ピロロ)といった面々に関しては魔界で先に出会っている。
戦闘について
バーンは作中内において、3タイプの姿を見せている。ここでは各々について記述する。
老バーン
バーンは限りなく永遠に近い命を手に入れるために、自らの肉体を2つに分けた。「叡知と魔力」のみを残した肉体をベースにして「若さと力」をもう一つの肉体に分離させ、その分離させた肉体に「凍れる時間の秘法」を掛け続けることによって何千年もの間、全盛期の肉体を封印し続けてきた。
普段はベースとなっている「叡知と魔力」のみを残した肉体で活動しており、それがこの老バーンにあたる。この状態ですら「神々を明らかに超越した力」を持っている。
前述の通り全盛期の強さは封印状態にあり、身体能力そのものは並程度になっているため、基本的にはその高い魔力を用いた呪文を使って戦闘を行う。しかし、カイザーフェニックスと呼ばれるバーンのみが操れるメラゾーマをはじめ、ポップのメラゾーマすら寄せ付けないメラ、あらゆる呪文を跳ね返すマホカンタ、イオナズン級の破壊力を有するイオラをガトリング砲の如く連射するなど、呪文だけでも驚異的な強さを誇る。
バーンが放った火の玉に対してメラゾーマを連発しても押し負けたポップが「大魔王のメラゾーマだ」と発言した直後の「今のはメラゾーマでは無い… メラだ…」という台詞は、その絶望的戦力差を一発で読者に叩き込む名言として名高い。フリーザの名言「私の戦闘力は530000です。」と並び、よく引き合いに出される。
さらに、状況によっては魔界の名工であるロン・ベルク作の武器、光魔の杖を使う。光魔の杖はDQに実在する装備「りりょくのつえ」(攻撃すると使用者のMPを一定数削る代わりに、通常より大ダメージを与える)の強化版。使用者の魔力を一定MPと言わず無尽蔵に吸って力に代える能力があるため、絶大な魔力を持つバーンが手にした時に限り史上最悪の破壊力を有することになる。
バーンはその莫大な魔力から、カイザーフェニックス級の呪文であっても「溜め」をせずに即座に呪文が放てると言う特徴も持つ(人間その他では魔力の容量の関係で、一定時間「溜め」によって魔法力を増幅しなければ十分な威力の呪文が使えない)。
つまり相手が1の動作をしている間に2回の呪文が使えるという事であり、作者はこれを「RPGのボスがよくする1ターン2回行動を漫画なりに表現したもの」としている。
真・大魔王バーン
普段はミストバーンに預けた状態にある「若さと力」を司る肉体と老バーンが融合し、再び一つに戻ることで、本来の姿を取り戻した状態がこの真・大魔王バーンである。
2020年版アニメ版での声優は子安武人。上記の設定からミストバーンとの兼役として担当している。
なお1991年版アニメではバラン編の途中で打ち切られた関係上、この形態以降が登場しないまま、声優不明のままで終わってしまった。参考までにミストバーンの声は難波圭一が担当していたので、こちらも設定準拠ならば同氏が担当していたことになるのだろう。
この状態での最大の特徴は、攻撃、防御、魔力の3つの同時使用を可能にする「天地魔闘の構え」である。これはRPGにおける1ターン3回攻撃を体現したものであり、真・大魔王バーンの代名詞とも言える。
余談だがドラゴンクエストIXには「天地の構え」という奥義が登場し、技説明が「通常攻撃を100%受け流しつつ反撃する攻防一体の技」となっている。 "魔闘"の部分、つまり呪文へのカウンターが無いだけで、どう見ても真バーン様のアイデアが十数年越しの採用です、本当にありがとうございました。
その他、呪文を弾き返すフェニックスウイングを使い、老バーン時には光魔の杖なしでは使えなかったカラミティウォールを素手で放つことができ、自らの手刀も伝説の武器と比べても遜色のない破壊力があるなど、全ての面において規格外の強さを持っている。ただ、本来の「若さ」を取り戻した影響なのかは分からないが、老バーンの頃よりもよく言えば饒舌かつ大魔王らしい自信と万能感に溢れた姿勢を、悪く言えば慢心したり感情的な側面を度々見せるようになっている。
ちなみに、真・大魔王バーン時に心臓が3つあることを明かしているが、これが老バーン状態や鬼眼王状態でも同様であるかどうかは不明である。
鬼眼王
鬼眼の力を解放し、自らの肉体に上乗せした姿。イメージ的にはミルドラースの第2形態みたいなもの。
不可逆の形態であるため、バーン自身もこの姿については推測でしか知識を持っていなかった。中盤戦の巨大移動要塞「鬼岩城」は、自分から成ることは決してないであろう(と思っていた)、この自らの最終形態をイメージして作らせたものであったとか。
非常に巨大な姿となり圧倒的な強さを誇っているが、登場期間が短い上に他の形態時と比較してインパクトが決定的に不足している為か、ファンの記憶にはあまり残っていない。
主な武器・技など
作中でも圧倒的かつ別次元の強さを見せ付けたバーンであるが、使用した呪文の数は5種と意外に少ない。
また、バーンの技は基本的に予備動作が恐ろしく短く速射性の高いものが多い。特筆するものは以下に列挙する。
- 光魔の杖
- ロン・ベルクが製作した魔法力をエネルギーに換え、光の刃を形成する杖。
先述したとおり魔法力を無尽蔵に吸収する特性を持ち、更に光刃のエネルギーを噴射させ、それにより障壁を作る事であらゆる呪文だろうが闘気であろうとも防ぐ事が可能となっている。
但し、この能力に関してロン・ベルクは一言も触れていないため、杖の機能なのかバーンが応用した結果によるものなのかは定かではない。
莫大な魔法力を誇るバーンが操る事で、オリハルコン製のダイの剣さえ容易にへし折るほどの攻撃力を有し、ロン・ベルクをして「最強の武具」と言わしめる武具であるが、使用中は呪文の威力が弱体化するほど魔法力を消費してしまう、という欠点も存在している。 - メラ
- 初歩的な攻撃呪文の一つ。
本来は小さな火の玉をぶつける呪文だが、バーン程の使い手になるとこれですら絶大な威力を持つようになる。
一見すれば極小の火の粉に過ぎないが、相手に命中すると巨大な火柱が上がる程の威力を持っている。
初歩呪文が必殺の威力を持つ、という点からも、バーンの圧倒的な強さを見せつける要素の一つとなっている。 - カイザーフェニックス
- 大魔王のメラゾーマ。
火炎が不死鳥の形を持っているのが最大の特徴で、本人によればその姿と想像を絶する威力から魔界で「カイザーフェニックス」と呼ばれるようになったとの事。
もはや超必殺技の域に達している呪文であるが、これを溜め無しで連発可能というのが、バーンがバーンたる所以である。 - カラミティウォール
- 「闘気に近い衝撃エネルギーの壁」を前方になぎ払うように放つ技。
老バーンの時は光魔の杖から、真バーンの時には素手から放たれる。
速度の調節が可能で、全力で放った時にはほぼ一瞬で前方範囲を削り取ってしまうほどの威力がある。
なお、バーンの技ではこれが最も動作が大きい。
ちなみに、本作の作者陣が後に執筆する「冒険王ビィト」の登場人物グリニデがこれに近い技を使用している。 - マホカンタ
- 呪文返し。作中において、呪文としてマホカンタを使用したのはバーンのみとなっている。
使用者の魔法力に応じて呪文の反射率が変化するという独自の設定が存在しており、バーンほどの者が使用した場合、反射率100%で跳ね返せる、といわれている。
フェニックスウィングと効果が被るためか、真の姿になったときは使用しなかった。 - ベホマ
- 老体時、ダイとの初戦時に使用。ストラッシュをまともに受けたダメージを瞬時に回復した。
真バーンになって以降は回復呪文を受け付けない竜闘気によるダメージが主になったことに加え、最初の決定的ダメージとなる左腕切断以降はずっとダイの剣が胸に突き刺さって心臓を潰したままになっていたため、ベホマに限らず回復行為が行われることは一切無かった。 - 凍れる時間(とき)の秘法
- 古代の秘術の一つで対象の「時間」を凍結させる封印術。
数百年に一度訪れる皆既日食の時のみ使用が可能。この秘術を掛けられた対象は「時間」が凍り付き、永続的に動けなくなる代わりに、如何なる衝撃も受け付けなくなる。アストロンと似ているが、異なる点は生命活動そのものも停止してしまうことにある。
バーンは限りなく永遠に近い生命を得るために、この術法を分離したもう一つの肉体に掛け続けることによって何千年もの間、「若さと力」を保った全盛期の肉体を封印し続けていた。
作中では他にアバンもこの秘術を使用しているが、力量不足だった為か自分も巻き込まれた上に1年程度しか効果が持続しなかった。また、ミストバーンの身体の秘密を推理する際、「完璧な凍れる時間の秘法をかけられるのは一人しかいない」と言う理由で結論に至っている事から、完全な形でこの秘法を行使出来るのはバーン以外にはいないものと推察される。
ちなみに現実世界での皆既日食は周期が数十年単位となっており、その都度見られる場所が異なる。 - 鬼眼
- バーンの額にある第3の眼で魔力の源となっている。
作中で判明している能力は以下の通りである。- 生物進化
- 鬼眼の力を生物に与える事で原形を留めないほどの怪物に進化させる事が出来る。
作中ではドラムーンのゴロアと鬼眼王バーンの2名がこの力により誕生した存在となっている。
なお、鬼眼王バーンの項にもある通り、自身に進化を施した場合は不可逆の変化となり、二度と元に戻ることが出来ないらしい。 - 「瞳」化
- 鬼眼の閃光を受けた者を「瞳」と呼ばれる宝玉に閉じ込める事が出来る。
但し、対象となるのは「バーンと戦う資格の無い者」に限られている。
ここで言う資格とは戦闘能力の事で、根本的にレベルが足りない者は言うに及ばず、ダメージを負って瀕死になった者も戦闘の途中で瞳になる。
「瞳」に閉じ込められた者は、「見る・聞く・考える」の3行動しか許されない。
そこそこ頑丈だが、カラミティウォール級の衝撃を受ければ壊れる(作中では瞳が壊れて失われる事は無かったが、カラミティウォールに巻き込まれそうな位置に落ちていたチウの瞳を見て「削れ散る」とバーンが言及した)。
バーンが解除するか、バーンの魔力を断つ事で「瞳」状態から開放することが可能となっている。
- 天地魔闘の構え
- 真・バーンの奥義。
相手に先手を打たせて、フェニックスウィング・カラミティエンド・カイザーフェニックスの3大超必殺技を一度に叩き込む、という究極のカウンター技。
原作者によれば、「RPGに於いて痛恨の一撃を連発してくるボス」を漫画で体現すべく考案したとの事。
フェニックスウィング・カラミティエンドの解説については「天地魔闘の構え」の記事にて解説されている為、ここでの解説は割愛する。
大魔王語録
作中でもそのスケールの違いを見せつけたバーンであるが、その発言も他のキャラとは重みが違うものとなっている。ここではその一部を抜粋、列挙する。
- 褒美をとらせよう…と思ってな(中略)
そこで余は考えた おまえたちが一番欲するもの…それはおそらく……余の生命…であろうな…? - 知らなかったのか…?大魔王からは逃げられない…!!!
- おまえたち人間は面白くはないのか?
鍛え上げて身に付けた強大な力で弱者を思うようにあしらう時 気持ちよくはないのか?
優越感を感じないのか? - ”力”ほど純粋で単純(シンプル)で美しい法律はない
生物はすべからく弱肉強食 魔族も竜も皆そうだ
人間だけが気取った理屈をつけて そこに目をそむけておる
……力こそがすべてを司る真理だ! - ……おまえたちは知らぬのだ…!!その平和とやらもより強大な力によって支えられていることを…!!!
そう!神々の力によってだ…!!
我らが故郷 魔界はおまえたちの大地のはるか地底に存在する世界だ
マグマがたぎるみわたすかぎり不毛の大地…
なにより魔界には すべての生物の源たる太陽が無い…
太陽素晴らしい力だ
いかに我が魔力が強大でも 太陽だけは作り出すことができん…
だが神々は人間に地上を与え 魔族と竜を魔界におしこめた!!
人間が我らより脆弱であるというだけの理由でだ!!
だから余は数千年にわたって力を蓄え 地上を跡かたもなく消し去る準備を整えてきたのだ
間もなく地上は消えて無くなる…!!そして我らが魔界に太陽がふりそそぐのだ…!!
…その時余は 真に魔界の神となる
かつての神々が犯した愚行を余が償うのだッ!!!! - だが魂で余は殺せぬぞ…!
おまえの正義を余に説きたくば 言葉ではなくあくまで力で語れっ!!! - 竜の騎士というのはどうも代々女を不幸にする存在らしいからな…ふふっ……!どうでもよい事であったな…!
- ……余の部下にならんか……?
- …人間は最低だぞダイ
おまえほどの男が力を貸してやる価値などない連中だ - …賭けてもいい
余に勝って帰ってもおまえは必ず迫害される…! - …そういう連中だ人間とは
奴らが泣いてすがるのは自分が苦しい時だけだ
平和に慣れればすぐさま不平不満を言いはじめよる
そして…おまえは英雄の座をすぐに追われる…
勝った直後は少々感謝しても誰も純粋な人間でない者に頂点に立って欲しいとは思わない…!
それが人間どもよ…! - …それは姫よ…そなたがダイに個人的好意を抱いているからにすぎん
それではバランの時と変わらん
たった一人の感情で〝国〟などという得体の知れないものはどうしようもない事は
公事にたずさわるそなたなら ようわかろう…? - ……だが余は違う!余はいかなる種族であろうとも強い奴に差別はせん!
- 己の強さに酔う…!どんな美酒を飲んでも味わえない極上の気分だぞ………
- 天よ叫べ!!!地よ!!!唸れ!!!!今ここに!!!魔の時代 来たる!!!!
さあッ!!!刮目せよっ!!!! - …の…あの太陽は魔界を照らすために昇る…!
- 余は大魔王バーンなり!!!!
- だが!!!敗北よりは良い!敗北よりは…!!大魔王バーンの偉大なる名だけは守り通す事ができるッ!!!
- いかんいかん奇蹟は起こる何度でも…!!ダイの死骸を粉々にせぬ限り終わりはないのだった……!
- た…太陽…っ!!?
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