カカポ(Strigops habroptilus 英語:kakapo)とは、オウム目インコ科またはフクロウオウム科の鳥類である。絶滅危惧種。
日本ではフクロウオウムの名でも知られる。
概要
珍獣大国ニュージーランドに生息している、オウムの仲間としては唯一飛ぶことの出来ない陸生の鳥。
オウムでありながら大柄で顔立ちがフクロウに似ているのが特徴であり(属名の Strigops は「フクロウ(strigo-)の顔(ops)」という意味 )、それがフクロウオウム(英語:owl parrot)の名前の由来となっている。 ニュージーランドだからといって、決してフクロ・ウオウムという有袋類ではない。
もちろん最初にそう呼んだのは入植者達であるが、現在では「夜(pō)のオウム(kākā)」を意味する現地マオリ語による呼称カーカーポー(kākāpō)に由来するカカポと呼ぶのが普通である(英語での発音はカーカポウに近く、アクセントは英国式が最初の a に、米国式が最後の o にくる)。
生態
体長は60cmほどで、体重も4kg前後とオウムとしては体重としても最重量。非常に長寿であり、90歳まで生きることもあるらしい。羽毛の色は苔にも良く似た緑色で、生息地の風景に比較的マッチしている。
自分で決めた縄張りを周回して獣道を作り、その圏内を毎日往復して食事をとる。食物は主に果実で、ウサギが鳥になったような生活を送る。
繁殖方法がユニークであり、「レック」と呼ばれる形態をとる。オス達は決まったディスプレー場でメスにアプローチを行い、メスはその中で気に入ったオスを選んでつがいとなる。強いて人間で例えるなら、婚活パーティのようなものに近い。つがいが決まると、オスは庭を作ってメスを迎え入れる準備を行う。
ニュージーランドは元々おとなしい野生動物の天国であった。そのため聴力は優れているのにも関わらず、非常に警戒心が乏しく、人間が近づいてきてもそれほど恐れない。それどころかあちらから近づいてくることすらあるほどで、人間に懐いてしまう個体もいる。
また、危険を察知してもせいぜい蹲ることしか出来ず、緊急事態に対する生存能力は非常に低い。
絶滅危惧種になるまでの道
ニュージーランドにポリネシア人やヨーロッパ人が進出してくると、カカポは食肉利用や装飾品製造のために乱獲された(ちなみに種小名の habroptilus は「柔らかな(habro-)羽根(ptilo-)をもつ者(-us)」という意味)。さらに致命的だったのは外来生物の侵食であった。
小型の陸生鳥類の性であるが、天敵のいなかったカカポにとって自身もそうだが、卵までも食い荒らされてしまうので、彼等の駆逐はどんどん進んでいった。減れば減るほど希少価値はあがるので、博物館はこぞってカカポの標本を求めた。こうして人間にも捕食者にも狙われたカカポの数は、みるみるうちに減少した。
人間の進出によって、ニュージーランドの野生環境はもはや原型を留めていなかった。さらにカカポはあろうことか繁殖能力が恐ろしく低く、鳥類の中でも最低とすら言われる。繁殖期は4・5年に1度、子育てに対する意識も高いとは言えず、オスは子育てには一切参加せず、メスはメスで食べ物を探すために卵を離れることもしばしばである。その間に卵が死んでしまったり、卵が捕食者に襲われてしまうことも少なくなかった。
やがてカカポに対する保護の意識が高まってくると、人は保護のため近隣の肉食獣のいない環境に移住させることにした。一度は成功したかに見えたが、肉食獣の執念は凄まじかった。カカポは甘いジャコウ臭を放つのだが、そのことが災いし、シロテンはカカポを食らうため海を泳いで渡り、カカポの移住先を襲撃した。せっかく移住したカカポ達はあっという間に滅んだ。
その後も八方手を尽くし保護したものの、戦争によって保護に尽力するどころではなくなり、カカポ存続の危機は棚上げにされた。こうしているうち、ついにニュージーランドからカカポの鳴き声は完全に消滅、ついに絶滅したと思われていた。
しかし、念入りな調査と保護を繰り返した結果、ついにカカポ達を今度こそ安全な島に定着させることに成功する。その後の尽力の結果、80羽から100羽程度まで個体数を回復させた。依然種の保存としては完了に程遠い状況だが、ようやくスタート地点に立ち、保全への道を歩み始めたといえる。
現在
あれだけ重宝されたカカポの存在は、時が経つにつれて人々の意識から消え去っていた。しかし、BBC放送が1989年に絶滅危惧種のラジオドキュメンタリー『Last Chance to See (これが見納め)』を放送、その中でこのカカポのことも取り扱われた。
番組の出演者は『銀河ヒッチハイク・ガイド』の作者ダグラス・アダムスで、彼が翌年に出版した書籍版『これが見納め』には旅に同行した動物学者マーク・カーワディンがあとがきを書いている。
さらにBBCは2009年に同名のテレビ番組を放送、既に故人となっていたアダムスに代わり、俳優スティーヴン・フライとカーワディンが20年後の絶滅危惧種達に会いに行くこととなった。番組中、シロッコと名付けられたカカポがカーワディンの頭と交尾しようとするハプニングが発生、視聴者から大きな反響を呼んだ(シロッコは雛のころに病気を患い、自然保護庁の保護官によって育てられたため、同族の雌ではなく人間に交尾行動を示す傾向があった)。
これを受け、ニュージーランドの観光局などが、シロッコを環境保護大使に任命、ツイッターにフェイスブックと非常に幅広く種の多様性の保全に対する啓蒙活動を始めるようになった。
シロッコくんは、自分達カカポの未来のみならず、この地上の尊い生物達を守るため、これからも活動を続けていくようである。
関連動画
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- これが見納め - 絶滅危惧の生きものたちに会いに行く (ダグラス・アダムス/マーク・カーワディン(著), 安原和見(訳), 河出文庫, 2022) | 河出書房新社
- カカポ - 月の子ども (うちだいずみ(著)/さじ ちあき(画), 1993) | ハート出版
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どれも英語のみなので注意。
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