互いの個性を敬愛し、共鳴するということ──北(ルサンチマン) × 横山優也(KOTORI)対談
今年結成5年目となったルサンチマンと、来年結成10年目を迎えるKOTORI。「4ピースバンドの先輩として話をききたい」という北(ルサンチマン)の熱い想いにより、横山優也(KOTORI)との対談が実現。ソングライティング、ヴォーカル、ライヴのパフォーマンス。どれをとってもスタイルがそれぞれで異なるからこそ、互いの個性が際立つ濃密な1時間となった。またルサンチマンが10月25日にリリースした、ファースト・アルバム『ひと声の化石 / rebury』についての話も。全20曲入りとボリューミーな今作の作詞作曲を手がけた北は、今作にどのような想いを込めたのか。またそれを横山はどう受け取ったのか。バンドの要となる、フロントマンというポジションにいる両者が赤裸々に語らう。
インスト10曲を含む全20タイトルを収録した、ルサンチマンのファースト・アルバム
TVアニメ『アンダーニンジャ』EDテーマに起用された、KOTORIのニュー・シングル
対談 : 北(ルサンチマン)× 横山優也(KOTORI)対談
4ピースバンド・ルサンチマンのファースト・フル・アルバム『ひと声の化石/rebury』が10月15日にリリースとなった。今作は、歌が入った楽曲を収録したDISK1と、インスト楽曲で構成されたDISK2からなる2枚組の合計20曲入りという超ボリューム盤! ライヴですでに披露されている楽曲も多く含まれており、最初のフル・アルバムにして、まさに現在のルサンチマンの集大成と呼ぶに相応しい内容になっている。そんな気合いの入った今作について、北(Vo / Gt)が敬愛するKOTORIの横山優也(Vo / Gt)との対談が実現。今作の話のみならず、ルサンチマンとKOTORIの共通点や、互いに違うからこそ惹かれ合う点についてをふたりにたっぷりと語ってもらった。
取材・文 : 峯岸 利恵
KOTORIは赤い炎で、ルサンチマンは青い炎のようなバンド
──今回の企画は、北さんが「横山さんと対談したい!」と熱望されたそうですね。
北(Vo / Gt):そうなんです。2回ほどお会いしたことがあったんですけど、その度に優しい人だなと思っていてお願いしました。
横山優也(Vo / Gt):ははは 俺なら喋れるなと思った?(笑)。
北:話しやすいなと思いました(笑)。あとは、4ピースバンドの大先輩としてお話を伺いたかったんです。ルサンチマンとKOTORIはバンドの音楽性やライヴ・スタイルが違うとは思うのですが、だからこそ聞きたいこともありました。
──サーキットイベントでは名を連ねていますが、まだがっつり対バンはされてはないんですよね。
横山:最初に会った時に連絡先を交換して、何度かお誘いしてもらっていたんですけど、毎回タイミングが合わなくて……。それで今年の〈MURO FESTIVAL〉でやっとルサンチマンのライヴを観る事ができたんですよ。
北:嬉しかったです。僕が最初にKOTORIのライヴを観たのは、2019年の〈JAPAN'S NEXT 渋谷JACK 2019 SUMMER〉でした。初めにギターがトラブって、「あ、音出ました! そのまま曲やります!」と言ってはじまったのが衝撃的でしたね……。そこから何度もライヴに行っていたんですけど、曲をしっかり聴くようになったのは、『We Are The Future』(2021)がきっかけです。元々、ルサンチマンのドラムのもぎがKOTORIのことがすごく好きなんですよ。もちろん僕も聴いていたんですけど、特に『We Are The Future』は「KOTORIってこんな感じの曲も作るんだ!」と感動したことを覚えています。
──『We Are The Future』をきっかけとして、KOTORIの音楽やライヴのどういったところが北さんの琴線に触れたんでしょうか?
北:ライヴはバンドもお客さんも元気いっぱいな感じなのに、曲自体は繊細さもしっかりあるというバランスの取り方が物凄く絶妙だなと思っています。
横山:嬉しいな、ありがとう! 俺はルサンチマンのライヴを観て、「嘘でしょ?」と思いましたね。彼らの年齢もきいていたので、こんなに上手いのか……と。でも、個人的には「演奏が上手い」ってライヴの褒め言葉として捉えられない場合もあると思ってあんまり使わないんですけど…….。それにしても上手いなと思いました。あと、もっとクールなバンドだと思っていたので、ライヴが熱かったので驚きましたね。陰と陽でいえば、KOTORIは陽のバンドなんですけど、俺は元々は陰の方をやりたかったんですよ。でも自分には合ってないなと思って陽に振り切ったので、ルサンチマンのような陰寄りのバンドがあんなに熱いライヴができるっていうのは凄いなと思いましたね。
北:僕もKOTORIは赤い炎で、ルサンチマンは青い炎のようなバンドだと思っているので、横山さんがおっしゃってくださったことはめちゃくちゃ分かります。僕は逆に、外に思いきり熱を放つKOTORIのライヴの圧倒的な一体感にぶちのめされたので、そこに羨ましさを抱きますね。僕らはステージの内側に籠るような熱を大事にしているので、お客さんにどうしたら熱量を感じてもらえるのかを試行錯誤しています。
横山:それ、超分かる。ルサンチマンはステージのなかでじわじわと生まれた熱がどれだけ広がっていくかを突き詰めているライヴをするなと思ってた。俺らも元々は、そっち側のスタイルだったんだけど、自分たちに合うスタイルはいまの方だなと思って変えていったところがあるから、気持ち分かるよ。
北:だからMCも僕はあんまり喋れないんですよね……。曲のなかに全部込めているので。MCでなく、ライブで圧倒したという思いが強くて。
横山:うんうん、俺も喋る時間があるなら曲をやろう! って思っちゃう。
──放ち方は違えども、共鳴する部分は確かにあるんですね。北さんは、ヴォーカリストとしては横山さんのことをどう思っています?
北:まず、声ですよね。KOTORIのメロディが真っ直ぐだからこそ、ストレートな歌と相まって遠くまで飛んでいくイメージがあります。僕は逆に、小難しいメロディに、かなり歌詞を詰めていくスタイルなので、そこは大きく違うなと。
横山:ルサンチマンは、歌メインじゃなくて、オケができてから歌を入れる感じ?
北:いや、逆ですね。弾き語りからデモを作る方法がほとんどです。
横山:マジ!? 逆だと思ってた。俺らは、オケ作ってから歌を入れるんだよね。
北:え、それも意外っすね!
横山:歌に関しては音符が長いのが好きだし、歌詞をいっぱい書けないから、ああいう曲になっていくんだよね。隙間というか、歌っていて大変じゃない形にしている節はあるなぁ。歌詞も最後にできるし、どれだけオケを邪魔しないかを考えているんだよね。
北:ルサンチマンらしさは、歌詞の詰まり方だったりメロディの上下だったりの難解さだと思っているので、僕らとは真反対ですね……。曲を作っているなかで、これってなにかに似ているなと思った時に、自分らしさで塗り替えるために色々と複雑になっていっているのかなとも思います。
横山:俺らはそのまま出しますね。好きだからやりました! って言っちゃう。好きな気持ちに自信があるというか、オマージュにせよ、自分たちらしさは絶対的に含まれているはずだから。というか俺はむしろ、分かってもらえた方が嬉しい。
北:その潔さがいいですよね。僕らは、まだ自分たちのキャラクター性というか、オリジナルも周りに分かりきってもらえてないと思うので、しっかりルサンチマンを確立するべきだなという責任感はあります。なので、ライヴでも自由度の高さというよりはライヴバトルだと思っちゃうタイプです。なので、100%楽しいだけで終わる日はあんまりないかもしれないですね。
横山:でも、その気持ちは大事だよね。俺らも楽しくやってるけど、やる側の気持ちとしては「この日、俺らが誰よりも最高になるぞ!」という気持ちは絶対的にあるし。