かつてないほど無邪気なBIGMAMA!?──エモを踏襲し描いた、大人の青春
アルバムのテーマはずばり、青春。BIGMAMAが5年ぶりにリリースした9枚目のフルアルバム『Tokyo Emotional Gakuen』は、彼ら史上最もあどけなく、そしてエモーショナルな作品となった。その背景には、2021年に加入したバケツを被ったドラマー、Bucket Banquet Bisの存在や、これまでリリースした全149曲を披露したツアー〈BIGMAMA COMPLETE〉があったという。今作の軸となった"現文 | 虎視眈々と"と"17 (until the day I die)"の2曲に着目しながら制作過程を探っていくと、現在のBIGMAMAの無邪気な精神が垣間見えてきた。
これまでで最も無邪気なBIGMAMA!
INTERVIEW : BIGMAMA
BIGMAMAが、5年ぶり9枚目のフルアルバム『Tokyo Emotional Gakuen』をリリースした。バケツを被ったドラマー・Bucket Banquet Bisが加入し、新体制になってからはじめてリリースされるフルアルバムで、愛称は『エモ学』。前作からの5年の間には新型コロナウイルスの流行、メンバーチェンジ、事務所の移籍など様々な出来事があったが、彼らはバンドの未来と"バイオリニストのいるロックバンド"の可能性を信じ、都度荒波を越えてきた。そんな日々を経て完成したのは、二度目のデビュー作と呼ぶべきみずみずしい作品。なぜBIGMAMAは、かつてなく無邪気に音楽と向き合えているのか。 バンド創設時からのオリジナルメンバーの金井政人(Vo/Gt)、柿沼広也(Gt/Vo)に話を聞いた。
取材・文:蜂須賀ちなみ
撮影:つぼいひろこ
「心の底から好きなものを叫ぼうよ」と純粋にクリエイティブを楽しめる状態
──アルバム、最高ですね。ニュアンスが伝わるといいんですが、爆笑しました。トラックリストが時間割のようでラストが"帰宅部"といったユーモアに頬が緩んだり、曲や演奏に対して「この5人でなければそうはならないでしょう」とツッコみつつ、その痛快さに大笑いしたり。過去最高に無邪気なアルバムですよね。
金井政人(Vo / Gt):無邪気度2億パーセントですよ。
柿沼広也(Gt / Vo):分かる人には分かるオマージュも入れているんですけど、そういうことはいままであんまりやってこなかったんです。だけど、バンドを続けるなかで、自分たちのカッコいいと思うものをストレートに表に出すことに対する恥じらいもなくなってきた。むしろ、分かりやすいことの魅力もあるなといまは思います。だから、本当に無邪気なアルバムですよ。数年後にどう思っているかは分からないけど(笑)。
金井:でも、俺はその方がいいと思っていて。爆笑というワードをいただきましたけど、なんとなくバランスをとりに行くよりも、その時の自分たちをちゃんとパッケージングして、あとで笑えた方がずっといいと思います。
──「あとで笑えるような感じになったとしても、いいよね」というマインドっていまの時代において貴重で、重要な気がします。
金井:そうですね。そういう気持ちを個人で背負うことは僕にとって簡単なことですけど、バンドに背負わせるのは、いいチームじゃないと難しいと思うし。それができるほど信頼の置ける環境を今作れていることは、自分たちの希望だと思うんです。
──今日は「なぜBIGMAMAは、かつてなく無邪気に音楽と向き合えているのか」という質問から話を展開していければと。
金井:春先のコンプリートツアー(※2023年3~4月に開催された全国ツアー〈BIGMAMA COMPLETE〉。全25公演のうちにこれまでに発表した全楽曲を披露した)が大きかったです。ライヴで149曲改めて演奏したあとに自分がもう一度曲を作りたくなるのか、少し不安だったんですよ。だけど実際にやってみたら、すごくデトックス効果があった。どう評価されるか、どう見られるかは意識の外にあるような……「いいものを作ろうよ」「心の底から好きなものを叫ぼうよ」と純粋にクリエイティブを楽しめる状態に戻れたんです。それは僕だけじゃなくて、他のメンバーもそうだったんじゃないかと思う。
柿沼:コンプリートツアーは本当に実のあるものになりましたし、あとはやっぱり、ドラムのビスくん(Bucket Banquet Bis)がバンドに入ってくれたことが大きかったです。彼はハングリー精神があって、いろいろなことを勉強している人だから尊敬できるんですよ。心強いし、「俺らももっと頑張らなきゃいけないな」って4人が思える。
金井:これは太字で書いておいてほしいんですけど、僕らがピンチの時にバンドに入ってくれた救世主が、情熱的で、視野が広くて、丁寧な人間だったことは、ギャンブルとして勝ったなと思うし、彼を選べた他4人の感性が素晴らしいなと思う。長年音楽活動をやってきましたが、こんなに心強い味方はいません。この先「彼の加入が分岐点だったね」と言わせてあげたいし、言いたいです。