札幌市電 単語

札幌市電とは、札幌市交通局が保有し、札幌市交通事業振興公社が運行(営業)^[1]する路面電車である。

概要

札幌市電 (一条線・山鼻西線・山鼻線・都心線)
基本情報
所有事業者	札幌市交通局
運行事業者	札幌市交通事業振興公社
総路線距離	8.905km
総停留場数	24停留場
路線記号	SC
軌間	1,067mm
電化方式	直流600V
	架空電車線方式
使用車両	本文参照
最高速度	40km/h
部分開業日	1918年8月12日
全線開業日	1964年12月1日
最終部分廃止日	1974年5月1日
再延伸開業日	2015年12月20日
路線テンプレート

2023年現在、札幌都心部と山鼻地区を循環する8.9kmの路線を有する。全線複線の併用軌道で、後述のように4つの路線に区分される。

歴史は古く、1910年に建築用石材である「札幌軟石」の輸送線を開業した事業者が、その後市中心部に路線を伸ばしていった。この時点では軽便軌道且つ動力が馬だったが、1918年に改軌、電化などを行い晴れて路面電車となった。
その後、市民の生活路線とすべくドンドン路線が延伸、新設されたが、1927年には市営化された。
以降、札幌市の人口増加とともにドンドン発展。最盛期の1960年代には市内東西南北に広がる総延長25km余りの路線を有していた。増え続ける旅客に対応するため、2両編成の連接車や、非電化開業区間向けの路面ディーゼルカーなど様々な車両も登場し、正に札幌市の基幹交通であった。 

だが自動車の増加に伴う道路混雑が顕著になると、慢性的な遅延に悩まされるようになり利用者は逸走。決め手となったのは1972年の札幌オリンピック開催で、これを契機に市内交通網は再整備されることとなり、市電路線は次々と廃止。各地で路面電車事業の廃止が相次いだこともあり(同時期には旭川市の旭川電気軌道も1972年いっぱいで廃止されている)札幌市でも全廃の方針であったが、現行区間は沿線住民の反対運動もあり廃止を免れた。ついでに山鼻地区に存在していた地下鉄建設計画も吹っ飛んだ。

2000年代に入ると赤字転落もあり廃止が再検討されたものの、札幌市は存続を決定。2013年には実に25年ぶりの新型車両、A1200形を導入した。

さらに2015年12月20日には、微妙に路線が分断されていた西4丁目～すすきの間(直線距離にして400m程度しか離れてない)を都心線として接続開業のうえ、環状運転を開始。現存する路面電車の環状線としては、富山地方鉄道富山市内軌道線の富山都心線(環状線)に次いで2例目となる。なお同区間には下記の通り西4丁目線が1973年まで存在しており、42年ぶりに廃止区間が復活した形だ(ちなみに富山都心線も一時廃止後に復活した路線)。

その後も老朽化車両を低床車に置き換え、停留場とともにバリアフリー化を推し進める等、札幌市の提唱する「人と街を繋ぐ交通機関」を目指し変革を続けている。

運行形態

以下の4路線で環状線を形成しており、全区間を総称して「一条・山鼻軌道線」または単に「軌道線」とも呼ばれる。

2015年の環状化によって、西4丁目から西8丁目に向かう方向が内回り、逆が外回りと呼称されるようになった。同時に中心部3停留場の乗継指定駅が拡大接続され共通となり、利用時の回遊性が向上した。

大半の電車が通し運転を行うが、出入庫を兼ねた中央図書館前発着電車や、ラッシュ時間帯には「中央図書館前・西線16条→西4丁目」「西8丁目→西線16条・中央図書館前」等の区間運転も行われる。車庫最寄りの電車事業所前では乗務員交代が行われるものの、車庫からの線路は直接繋がっておらず、1つ隣の中央図書館前が運行上の起終点となっている。

停留場一覧

全停留場が札幌市中央区に所在。

下記所在地における下線は、各方向の停留場が別々の条丁目に跨っていることを示す。住所を隔てる道路を「南○条通り」「西○丁目通り」と呼称する慣例に従い数字の大きい側を記載した。
（例：西線9条旭山公園通の場合、外回りホームが南9条西15丁目、内回りホームが南8条西14丁目に位置するため「南9西15」と表記^[2]）

西4丁目停留場・狸小路停留場・すすきの停留場からは、地下鉄大通駅（南北線・東西線・東豊線）、すすきの駅（南北線）・豊水すすきの駅（東豊線）のいずれにも乗継可能である。
ただし、ICカード・磁気カード使用時は、指定外の停留場で乗降した場合でも地下鉄との乗継割引が自動で適用されてしまう。市電への乗車は完全フリーであり、降車時もカード処理時に停留場チェックが行われていないため。

もいわ山ロープウェイとの乗継割引は行われていないが、ロープウェイ入口停留場付近にシャトルバス乗り場が設けられ、山麓駅までの接続を担っている。

廃止路線一覧

以下、廃止順に並べる。

路線縮小前(1971年9月現在)の運行系統

車両形式一覧

かっこ内は製造年、黄色はディーゼルカー、緑色は連結車^[7]。

現役

• 210形(1958年)、220形(1959年)、240形(1960年)
  • いずれも330形を踏襲した外観で登場。昭和末期からの車体更新により、250形と共に正面の外観が大きく変わった。
• 250形(1961年)
  • 500形の電装品を流用し製造。平成11年には札幌市電初となる一般広告塗装車となった。
• 8500形(1985年)、8510形(1987年)、8520形(1988年)
  • VVVFインバーター制御と直線的な外観を持つ札幌版軽快電車。古めかしい逆導通サイリスタは2013年までにIGBTへと更新された。
• 3300形(1998～2001年)
  • 330形を元とする車体更新車。当初はM100形も更新対象となっていたが後に白紙化。
• A1200形(2012年～)
  • 超低床3連接車両（リトルダンサーType Ua）。初の冷房搭載車両でもある。連接車の導入は1965年のA830形以来47年ぶり、連結車を意味するAの文字も1969年のA870形以来43年ぶり。老朽車両の置き換えとバリアフリー化、都心線開業に伴うイメージアップを狙い導入され、公募によりポラリス^[8]という愛称がつけらた。
• 1100形(2018年～)
  • 超低床の単体車両（リトルダンサーType S）。東京オリンピック特需によるメーカー繁忙の影響を受け、製造に時間を要する連接構造のA1200形に代わり、短納期で製造できる車両として導入された。こちらはシリウス^[9]の愛称がつけられている。
•  雪1形(1949年～)、雪10形(1998年)、雪20形(2019年～)
  • 竹製のブラシを回転させて路面を除雪する、通称ササラ電車。

過去

• 10形(1898～1907年)
  • 電化開業に合わせ名古屋電気鉄道より24両が転籍。客室と仕切られた運転台は吹きさらしという暖地仕様だったため、冬季の乗務は電球を握るなどして凌いだという。1936年までに廃車となったが、ひっそりと保管されていた1両は1960年の市電まつりに合わせ動態保存車となり車籍復活。現在は静態保存されており、2013年からは10年間に渡って故郷愛知県の博物館明治村へ貸出展示された。
• 40形(1921～1924年)
  • 乗降ドアを装備し、乗務員スペースは客室と一体化された。
• 100形(1925～1926年)、110形(1927年)、120形(1929年)
• 130形(1931年)、150形(1936年)、170形(1937年)
  • 当形式より半鋼製半木造車。最後の単車群である。

• 500形(1948年)
  • 初のボギー車。車体は大型化したが、戦後まもなくの製造とあって隙間風どころか雪も容赦なく入り込み、乗務員は冷凍車と忌み嫌った。
• 600形(1949～1951年)
  • 計20両が製造された名車で、この形式より電気暖房を装備。正面窓は木造サッシ3枚の姿で登場したが、のちにゴム支持1枚窓に改造。更には大型方向幕への換装、ドア配置の変更と鋼製化、一部の車両は側窓のアルミサッシ化など改造の嵐で、廃車前には近代的な外観へと大変貌していた。
• 550形(1952年)
  • 正面2枚窓、端部の絞りが無いいかつい見た目。
• 560形(1953年)、570形(1954～55年)、580形(1956年)
  • 本形式群より鋼製車体となる。デザインは550形に近いが、正面下部がせり出すように傾斜がつけられた。
• 320形(1957年)
  • ゴム固定窓や細長く丸みを帯びた車体は、後に定番となる流線形車両の嚆矢となった。軸バネを省略した台車を採用するも振動が酷く失敗。
• 200形(1957年)
  • 地元の鉄工所連合体による初の「道産電車」。廃車発生品を流用し、320形亜流の外観を持つ。
•  330形(1958年) 
  • 製造は僅か5両ながら、以降の形式に多大な影響を与えたエポックメーカー。卵型断面と曲面を多用した車体に、濃いクリームとライトグリーンのカラーリングは札幌市電の定番となる。331～333号は、1992年より姉妹都市ミュンヘンの市電塗色へと変更された。

•  D1000形(1958年) 、D1010形(1959年)、 D1020形(1960年) 
  • 世にも奇妙な路面ディーゼルカー。非電化開業とした鉄北線北27条以北の輸送に対応するため開発された。力行はAT車と同様に自動進段で、当時保有していた直接制御や間接非自動制御の電車とは操作性が全く異なっていた。330形に準ずる外観を持つが、排熱を目的にスカートが大きく切り欠かれた他、床高維持のため空気バネ台車を採用。
• M100形+Tc1形 (1961年)
  • 両運転台のM101号と、片運転台の付随車Tc1を連結させた親子電車。ラッシュ対策のため導入され、日中時間帯は切り離しのうえM101号単独での使用が想定されていた。地下鉄南北線2000形と同じような構想であるが、増解結に手間がかかるためご破算となった。1970年に親子離別となり、M101号のみが往年の面影を残したまま度重なる延命治療の末、2021年10月まで使用された。
• A800形(1963年)
  • 親子電車計画を捨てて導入された連接車第一弾。極端に絞られた正面が独特な車体。なおAはArticulate=関節接合の意から。
• A810形(1964年)
  • 正面の絞りは標準的になった。中扉は、両開戸を結合させたような外観を持つ有効幅たっぷり1800mmの超大型1枚引戸。当然開閉にもたっぷり時間がかかった。
• A820形(1964年)
  
  • 正面窓は大型曲面ガラス、方向幕と一体化させた通気口、金属製飾り帯の中に2灯並べた前照灯など斬新な欧風スタイルに仕上げられ登場。側窓も天地寸法を大きく取った結果背もたれが犠牲となり、外観と引き換えに座り心地を大きく損なった。
• D1030形(1963年)、D1040形(1964年)
  • 路面ディーゼルカーの増備車両。D1040形はA820形を踏襲したモダンなデザインだったが、全線電化により製造から7年で早くも廃車された。
• A830形(1965年)
  
  • A820形のデザインを元に、ドア配置等を変更した札幌式連接車の決定版。登場翌年にローレル賞受賞。1976年の地下鉄東西線開業により活躍の場を失うが、3編成が名古屋鉄道へ譲渡されモ870形に生まれ変わった。
• A850形(1965年)
  
  • 570形、580形を改造した連接台車を持たない連結車。正面2枚窓の外観はそのまま。
• 700形(1967年) 、710形(1968年) 
  • 電化完了により使命を失っていたD1000形、D1010形、D1020形の3形式を電車化改造。8500形の登場で置き換え対象となり消滅。
• A870形(1969年)
  
  • 560形の主要機器とD1030形の車体を組み合わせて誕生した非連接連結車。地下鉄開業を間近に控えた中での導入ではあったにせよ、長すぎる車体が災いしてか1972年に早々と休車に追い込まれ、その2年後には廃車という極めて短命な形式だった。
•  720形(1970年) 
  • こちらは事故廃車された245号の主要機器と、D1037の車体を流用し製造。その経緯から1台のみの形式であり、加えて僅か4年で廃車された日陰者。

• 散水車1～2(1930～1931年)、水1～2 (1952年)、水3～4 (1954年) 
  
  • 軌道敷は戦後も依然として未舗装道路が多く、馬車馬の糞が混じった砂塵が車内に入り込む有様であった。対応策として戦前に使用されていた散水車^[10]を再度新製、復活させた。舗装化が進むとともに1966年までに廃車されている。
• 貨1～旧2号(1944年) 、貨2～6号(1956年) 
  • 保線等の物資運搬目的で製造された貨車。旧2号が1950年に廃車されるが、100形の流用機器を用いて再増備。時には花電車としても駆り出されていた。1966年を以て消滅。
• 雪10形(初代･1970年) 
  • 客用10形を改造したスノープラウ式除雪車。3両が製造されたが1984年までに全廃。
• DSB形(1961～1964年) 
  • ササラ電車のディーゼルカー版。ラッシュ時間帯も変電所容量を気にすることなく運用できるため、全線電化後もしばらく残された。

料金

大人料金を示す(小児半額･10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定時点。

• 札幌市営地下鉄との乗り継ぎ方法 
  • 地下鉄→市電…地下鉄の乗車駅で該当する額の乗継券を購入する。
  • 市電→地下鉄…市電降車時に乗務員より乗継券を購入のうえ、乗継指定駅の改札より入場する。2区以上へ乗り越した場合は下車駅で精算。
  • ICカード乗車券を利用する場合、いずれも乗継券は不要。
• 市電のみの料金は、実に25年に渡ってバスより割安な170円のままであった(2014年4月の消費税引き上げの際は値上げせず)。2017年4月、現在の料金に改定。
• 早朝割引：2014年5月終了。始発～午前7時までの間、現金で支払う場合のみ大人150円。ラッシュ時間帯の混雑抑止を狙ったもので子供料金は設定されていなかった。

乗車券

• SAPICAをはじめとするICカード乗車券類(詳細は当該記事を参照)
• 路面電車1日乗車券
• どサンこパス(土日祝日、振替休日、年末年始のみ利用可能な一日乗車券)
• デジタル乗車券
  • モバイル版路面電車1日乗車券
  • モバイル版どサンこパス
  • 札幌市電24時間乗車券

2015年3月までは、前年まで発売されていた札幌市営地下鉄及び市内バス路線(一部を除く)でも利用できる磁気カード「共通ウィズユーカード(プリペイド式)」と「共通1DAYカード(1日乗車券)」が利用できた。

豆知識

• 冬の風物詩として知られるササラ電車(除雪用路面電車)を保有しているのは、日本でも札幌と函館のみ(そもそも豪雪地帯で路面電車が残存している都市自体が珍しいのだが…)。毎年冬になると札幌市電のササラ電車を各メディアが取り上げ、時には北国の厳しい冬の訪れとして全国に紹介されることもある。ちなみに富山では軌陸両用車を用いており、先述の函館でもトラック除雪の割合が増えているなど、昨今は除雪トラックが幅を利かせている。若者のササラ電車離れのようだ。
• 車両は上述の通り経営の悪化もあり、1988年の8520形を最後にしばらく新車の投入を行わず、車体の改造、更新などで凌いできたが、2013年に25年ぶりの新車であるA1200形が導入され、同年5月5日より運行開始。そして、2018年10月には4年ぶりに1100形が導入された。しかし、運用開始後1ヶ月後にポイントの切替ミスにより並行した線路に前後の台車がまたがって入線してしまうという事故を起こし、修理のため一時的に休車となってしまった事がある。
• 西4丁目線と一条線を接続し、現在と全く同じルートで循環運転を行っていた時代があった。1971年12月～西4丁目線全廃までの僅か1年4ヶ月間である。後の都心線開業時は同区間の廃止前と異なり、線路は道路の中央(センターリザベーション)ではなく路側帯部分に敷設(サイドリザベーション)。新設の狸小路停留場と、内回り用の西4丁目停留場は歩道上に設置され、安全な乗降が可能となった。
• 開業当時の鉄北線非電化区間は、麻生町の新興住宅団地以外に目立った集落が無く、農場やサイロが並ぶ大変牧歌的な沿線風景を醸していた。こうした新規路線向けに開発されたのが路面ディーゼルカーであったが、当該区間は僅か3～4年で電化移行、さらには地下鉄構想の浮上と市電の地位低下で路線延長も望めない状況となり、登場から10年ほどで姿を消すこととなる。
• 鉄北線終点の新琴似駅前停留場付近には、郊外路線の発着するバスターミナルが設けられ、交通結節点を構成していた。市電が市内交通の骨格を担っていた証左であろう。
• 2011年からは、さっぽろ雪まつりにて初音ミクの雪像が作られたことをきっかけに誕生した「雪ミク」のラッピング電車が冬季に運行されるようになった。車両は一部の年度を除き3300形が使用される。車内にはピアプロキャラクターズによる啓発広告や資料、車内アナウンスを初音ミクの中の人こと藤田咲が担当している。詳細は「雪ミク電車」の項目を参照。

関連動画

関連リンク

• 札幌市交通事業振興公社

関連項目

• 札幌市
• 札幌市営地下鉄
• 札幌市営バス
• 鉄道事業者・路線一覧
• 鉄道関連項目一覧
• 鉄道車両一覧
• 駅名一覧
• 路面電車
• 雪ミク電車

脚注

1. *2020年4月より局直営から上下分離方式に移行
2. *なお札幌市交通局の公式資料から確認できる停留場所在地は「南9西14」であり、停留場の置かれていない区画を指している。ほかにも西15丁目停留場の所在地は「南1西14」だったり、また地下鉄では北24条駅が「北23西4」、北34条駅が「北33西4」に所在するなど、駅名・停留場名と所在地名は必ずしも一致していない。
3. *のち[西58]北5条線。2003年4月1日よりジェイ・アール北海道バスに移管後(系統番号54）、2017年4月1日のダイヤ改正で廃止。
4. *北24条～麻生間延長開業までは、市営バス[53]鉄北西5丁目線を運行。
5. *現在の中央図書館前
6. *丸井は○の中に井
7. *札幌市電では貫通幌で接続した車両は全て連結車と呼称
8. *現在の北極星であるこぐま座α星
9. *おおいぬ座α星
10. *貨1～旧2号の種車となり消滅