フジユージーン(Fuji Eugene)とは、2021年5月14日生まれの日本の競走馬である。黒鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2023年:ビギナーズカップ(M3)・ネクストスター盛岡(M1)・南部駒賞(M1-全国交流)
2024年:スプリングカップ(M2)・ダイヤモンドカップ(M1-東日本交流)・東北優駿(M1)・楠賞(園田重賞-全国交流)
タイトル・称号
2023年:岩手2歳最優秀馬
2024年:岩手二冠[ダイヤモンドカップ・東北優駿]
父ゴールデンバローズ、母デザイナー、母父スウィフトカレントという血統。
父ゴールデンバローズは2歳時に中央ダートで大活躍しUAEダービー遠征まで経験した素質馬だったが、その後は成績が低迷し中央オープンでは勝てずに地方へ移籍。数戦を走ったのち引退となった。しかし父タピットという良血などが評価点となり種牡馬入りを果たし、1年目には18頭の牝馬に種付けを行いそこから10頭の産駒が誕生しうち9頭が競走馬登録を受けた。
…が、何故かゴールデンバローズは2年目以降の種付けを行っておらず子どもたちが初年度産駒のみしか残されていない。一応種牡馬登録からは抹消されていないため復帰の可能性はゼロではないが、何か理由があったのだろうか…。彼のその後については余談に記載する。
母デザイナーは岩手競馬で2戦したのみで引退。繁殖牝馬としてフジユージーンの前に3頭産んでいる。母父スウィフトカレントは2006年小倉記念を制しサマー2000シリーズの初代優勝馬。その後種牡馬になったが特筆した仔がでなかったこともありマイナー種牡馬と言わざるを得ないだろう。そして母母父はあのピルサドスキー。輝かしい競走人生とは裏腹に種牡馬としては大失敗の烙印を押されがちな悲しき名馬である。
血統背景だけを見れば存外良血な部分あり、しかしその血筋のわりに繁殖成績が絶望的だったり結果を残せてなかったりする親族が多いなど絶妙に期待できなさそうな出生のフジユージーンだが、本馬はそんな予想を良い意味で裏切ることとなる。
2021年5月14日、北海道新冠町の村上牧場で誕生し、翌年の北海道オータムセールにて税込み550万円で落札された。オーナーは静岡で乗馬クラブを運営する(有)富士ファーム。地方競馬である岩手・水沢の瀬戸幸一厩舎に入厩した。
馬名の由来は「冠名+アメリカの都市名」から。しかし同オーナーの所有馬にフジラプンツェル号がいることからディズニー映画「塔の上のラプンツェル」に登場する同名キャラクターのユージーン・フィッツハーバート(ディズニーファンには偽名であるフリン・ライダーと言えば分かるかも)が直接的な元ネタと思われる。その後後輩にフジマキシマス号が現れたためラプンツェルシリーズは健在な模様。
デビューは2023年6月4日。水沢競馬場のダート850m戦を軽快に逃げて後続に2.2秒突き放し大差圧勝。同時に父であるゴールデンバローズに産駒初勝利をプレゼントした。
続く二戦目の盛岡1400mも逃げて8馬身差で圧勝すると、水沢2歳重賞のビギナーズカップに出走する。ちなみにこの時のフジユージーンは2歳馬ながら既に馬体重が540㎏を越える超大型馬であり、その雄大な馬体ゆえに小回りの水沢1400mに手間取る様子も見せたがそれでも最後の直線で2着馬に2と1/2馬身差をつけて快勝。地方重賞ではあるが2023年デビューの新種牡馬における重賞勝利一番乗りを父にプレゼントした。つくづく孝行息子である。
この勢いのまま10月3日に行われたネクストスター盛岡に堂々参戦。なお地方ダート界は2023年から抜本的改革をいくつも実施しており、全国各地に新設された2歳重賞ネクストスター競走もその一つである。1着賞金1000万円の高額レースながらフジユージーンが参戦するということで他陣営は直接対決を避けるためか頭数はやや少なく8頭立てに。単勝1.1倍の圧倒的人気を背負うとフジユージーンは出遅れながらも軽々と他馬を置き去りにし1.9秒差の大差で優勝。もはや岩手に敵なしを決定づけるレースとなった。
そして満を持して盛岡で行われる地方全国交流である南部駒賞に駒を進めた。このレースは北海道をはじめとした他地区からの強豪参戦も多く、事実として直近5年間は北海道勢が優勝を独占する有様。加えて23年の他地区は北海道・南関の重賞馬や中央オープンで結果を残した馬が列挙して遠征しており、過去の出走メンバーと比較しても相当な面子が揃いフジユージーンの真価が問われる一戦となった。そんな中でレースはオスカーブレインがハナを切って超ハイペースで逃げる展開になるが、フジユージーンは多少出遅れつつも悠々と追いつき先団につける。3コーナーで外に持ち出すために一度減速するが最後の直線だけで先行馬たちを軽々と抜き去り4馬身差の圧勝。6年ぶりの地元馬優勝を飾るとともにフジユージーンの力が全国レベルであることを証明した。
陣営はこの後、来年から始まるダート三冠への参戦を表明。早々に年内休養を決めて馬主である富士ファームの牧場にて英気を養う運びとなった。本格的な乗り込みは年明け2月からの予定で、順調にいけば羽田盃の前哨戦である京浜盃からの始動の予定。2月20日時点の情報では、調整に時間を要するため京浜盃は回避し、4月7日のスプリングカップ(水沢競馬場 ダート1600m)から始動の予定とした。
そして迎えた2024年最初のレース、スプリングカップ(M2)。
ここには2歳重賞の金杯を勝ったリトルカリッジにその3着馬サクラトップキッド、3歳Aを5馬身差で圧勝したサンエイキャノン、2歳芝重賞若鮎賞を勝った芝専門機ユウユウププリエと少数ながら中々のメンバーが揃った。
レースはフジユージーンがすんなりとハナを切るとリトルカリッジら有力馬がその後ろで様子を伺う形になる。向こう正面までは淡々と進んでいたが3コーナー手前になると持ったまんまなのに後続との差が3、4、5馬身差と広がっていく。後続は必死に追い始めるもそのまま直線コースに入るとその差はドンドン広がるだけ。結局最後まで追わないままで圧勝。タイムは1.41.7の同レース歴代2位の好タイム。2着には2.4秒差がついていた。メイセイオペラやトーホウエンペラーといった、全国区で活躍した競走馬が在籍した時代のファンファーレが鳴り響いた水沢競馬場。大差圧勝したフジユージーンには、かつての怪物達の姿が重なって見えた。岩手競馬60周年の記念すべき年にフジユージーンが出現したのも、何か運命めいたものを感じてしまう。
その後はダイヤモンドカップ(盛岡競馬場 ダート1800m)を使って、東京ダービーへ向かう予定との事。翌年の2024年からは岩手の伝統重賞である不来方賞も三冠路線の前哨戦としてダートグレードJpn2に昇格したこともあり、こちらも地元の大将格として中央馬と立ち向かう予定。
三冠路線新設を含めたダート界の大きな改革の年に生まれたスケールの大きな岩手の新怪物のこれからに期待したい。
そして迎えた岩手三冠第一戦ダイヤモンドカップ(M1)。このレースは今年から東日本地区の交流競走となったのだが他地区からは平和賞3着のオオイチョウ、南関特別戦2勝のエドノバンザイ、鎌倉記念3着のパンセなど重賞馬がゼロと少々小粒気味。地元勢はフジユージーンにスプリングカップ2、3着のサクラトップキッド、サンエイキャノンらが中心となって迎撃する事となった。
レースは序盤からフジユージーンが5馬身ほど離して逃げる展開に。ちなみにこの時フジユージーンは逃げる予定というよりは単に掛かった結果スピードが出過ぎてしまったらしく2コーナー時点で後続との距離に気付いた鞍上の村上忍は慌てて手綱を押さえて折り合いを優先。そのため向こう正面半ばでいったんはリードを詰められるも4コーナーまでは持ったままでハナを保ち、直線に入るとここでようやく仕掛け始め一気に他馬を置いてけぼりに。ただ一頭、同じゴールデンバローズ産駒である門別のオオイチョウが猛然と末脚を伸ばしてきたがフジユージーンも同じ上がりの末脚を残しており楽々と突き放してそのまま4馬身差圧勝。7戦無敗で岩手一冠目を制するとともに自身の重賞連勝記録を5にまで伸ばした。勝ちタイム1分52秒8は現盛岡競馬場1800mで行われた同重賞競走のレースレコードを出していた。
終わってみれば他地区馬相手に楽勝だったのだが陣営的には満足のいくレースではなかったらしく、レース後のコメントで村上が「(自分の騎乗が)30点ぐらい」、瀬戸調教師が「(レース内容は)正直言って70点」と結果に対してやや辛口のコメントが飛び出した。これも大器であるフジユージーンゆえに求める内容も自然と高くなるゆえか。
この結果を踏まえ気になる次走についてはレース後から1週間ほど考えて選択するということだったがその後正式に東京ダービーへの出走が決定。無事選定もされたフジユージーンは岩手代表としてファンの期待に応えるべく日本ダートの大舞台へと向かっていく。
と思われた矢先の5/27、フジユージーンが東京ダービーを回避すると岩手競馬公式より発表された。どうやら馬房で寝違えたらしくその際にトモを痛めてしまったとのこと。幸い大怪我には至らなかったようだが調整に狂いが生じたため予定していたローテーションは一旦白紙となった。
なんとか調整が間に合い仕切り直しで迎えることとなった東北優駿は新興勢力こそいたものの依然フジユージーンの牙城を崩せるほどではなく、単勝オッズは前走に引き続き貫禄の1.0倍。なお休養も挟んだためかこの時の馬体重は過去最高の562kgをマークしている。
レースはスタートこそそれなりだったが自然と逃げ馬の番手につけて道中は悠々と運び、2週目の向こう正面から先頭に立つとあとは持ったままどんどん後続を突き放して通算4度目となる大差でのゴール。最終直線では観客から早々と拍手と歓声が飛び交う中で二冠目を手中に収めた。
またこれにより岩手三冠競走が設立してから初となる『無敗での岩手二冠達成馬』が誕生した。
9月に控える三冠目の不来方賞までは期間が空くため避暑も兼ねて遠野馬の里へ短期放牧。
既に中央から強豪馬が名乗りを上げている不来方賞で地元代表として立ち向かう準備を整えている。
Jpn2となった不来方賞にはJRAから鳳凰S圧勝のカシマエスパーダ、レパードS二着のサトノフェニックス、JBC2歳優駿でフォーエバーヤングの二着だったサンライズジパングなど実績十分な馬たちが参戦。さらに門別クラシックを一冠ずつ制したブラックバトラーとパッションクライも遠征しており大幅に相手強化。フジユージーンにとっては試金石となる一戦となった。
レースがスタートすると中団から徐々に先団グループへ取りつくように位置取りをあげて向こう正面を迎えたフジユージーンだが3コーナー付近から先行するJRA馬3頭がペースを上げるとやや追走に苦しみだし、最終直線では懸命に追い上げようとするが差を縮めることは敵わず4着。初となる敗北は少々苦い結果となった。しかし地方最先着は死守しており地元岩手の意地は垣間見せた。
悔しい敗北ではあったがまだまだ成長途中の3歳馬。JRA馬のレース展開も経験したことでこれを糧にしてくれることを陣営も期待していた。
次走の予定については状態を見てジャパンダートクラシック(JDC)か南部杯を考えているとのことだったが、その後JDCへの参戦を正式に決定。遠征に際して鞍上には南関東の名手森泰斗を起用しており、フジユージーンにとっても大井2000mの大舞台で新たな刺激を得るきっかけとなるか。
主なる出走馬をここに書き出すとそれだけで数行埋まってしまうほど中央地方合わせて超豪華メンバーで迎えた第一回ジャパンダートクラシック(Jpn1)。
フジユージーンは出脚こそそこそこだったがすぐに最内を通って先団グループに取りつく積極策に出た。向こう正面では世界を経験したフォーエバーヤングや前走で辛酸を舐めたサンライズジパングたちに一歩も譲らぬ並走してみせた岩手の雄は、しかしハイペースがたたったのか三角に入ると徐々に先団集団から離され最後の直線は懸命に追うも10着で入線となった。
二戦続いて悔しい結果となったが勝ちにいった騎乗に陣営は一つ手ごたえを感じ、騎乗した森泰斗ももうワンランク上があると来年の成長を伺えるコメントを残していた。
ここまでの走りから今後はマイル前後に距離短縮していく模様。次走は園田で行われる1400mの全国交流重賞・楠賞に向かうこととなった。こちらも各地方から今年名をはせた著名馬たちが集まるレースとなったが、フジユージーンも主戦騎手である村上忍に戻り有力馬の一頭として参戦していく。
楠賞のゲートが開かれると、最近は落ち着いてきたのっそりスタートがまたもや発動し後手を余儀なくされる展開に。しかし鞍上村上は腹をくくって外に出すと早めからスパートを掛けて小回りの園田コースを大きく使い先行集団に追いついた。
3コーナーに入ることには有力どころが続々と殺到しはじめ先頭からギガース船橋、フークピグマリオン名古屋、フジユージーン岩手、プリフロオールイン高知、ストリーム北海道。珠玉の遠征馬たちが所属とともに名を読み上げられ、最終直線を迎えることとなった。
ここで先頭で逃げていたギガースをフジユージーンが捉えると最内からはストリームが突っ込んで三つ巴の様相になり、最後はアタマ差でストリームを押さえ見事フジユージーンが優勝を飾った。サラブレット競走導入後の兵庫では初となる岩手所属馬による園田重賞制覇。これで地方馬同士の戦いでは負け無しを継続している。JRA馬たちとの厳しいレースを経験した結果がここにきて花開くこととなった。
陣営はその後地元重賞や笠松グランプリ遠征なども視野に入れてはいたが、ダートグレード競走を含む激戦の疲れを労り昨年同様実家である富士ファームで休養放牧に入ることを決定。来年度については次走含めて検討中だがこのまま順調に行けば地元の大一番である南部杯(Jpn1)に岩手を代表する馬として参戦したいとのコメントをしている。
競争成績の項でも何度か触れたようにフジユージーンの特徴としてその馬体の大きさが挙げられる。
デビュー当初から馬体重は526kgと若駒にしてかなりの重さだったがそこからどんどん成長し2歳戦終了時で540kgオーバー、3歳になると550kgを超えて躯体が整った頃には560kgとダート古馬と比較しても相応な大きさを誇る。
馬体重と同じくかむしろそれ以上に体高・体長も極めて大柄であり、他の馬と並ぶとひと回り以上大きく映る。実際に体高の大きさは170cmを超えている模様。
そんな恵まれた馬体ゆえに走法も1完歩の大きなストライド走法を得意としており、素軽いフットワークから自然とスピードを出せるエンジンの強さも兼ね備えている。
ただし色々と大きな馬であるため水沢のような小回りのコースなどはやや窮屈になりがちな点や、馬群に包まれるのは苦手ではないが狭くなる分他の馬以上に動きにくくなる傾向にある。
そのためなのかレースでは多少の距離ロスを受け入れて大外を回して加速する戦法を取ることがままある。それでも逃げから追い込みまでどの脚質でも勝ちを掴めるのもフジユージーンの強さの一つかもしれない。
血統の項で前述したとおり父ゴールデンバローズは初年度しか種付けが行われていない零細を超えた激レア種牡馬だったのだが、フジユージーンをはじめとした数少ない初年度産駒から中央・地方ともに活躍馬を輩出している。その甲斐もあってなのか、現在ゴールデンバローズの種牡馬復帰に向けての動きがあるようだ。一度種付け数が落ち込んだ種牡馬が復活する機会はそう多くないなかで貴重な産駒たちの働きによって復帰の道が拓かれたのは喜ばしいことだろう。その後正式に種牡馬復帰が決まり、新冠町の白馬牧場にて繋養されることが分かった。種付け料も初年度から増額されており競走馬生産界からも期待されていることが伺える。事実、復帰年となる2024年は6月時点で種付け頭数は80頭を超えてかなり好調の様子。
さらに何の因果か、かの岩手の魔王トウケイニセイと同じナスルーラ系である。競馬は不思議な事が起きると言う。もしかしたら、次の魔王はフジユージーンなのかもしれない。
余談だが、血統だけなら同期のミヤギヴァリアント(Storm Catの4×3 奇跡の血量)の方が良かったりする。ちなみに、同馬はフジユージーン以外には敗北しておらず、重賞若駒賞を含む4戦3勝で、岩手においてはフジユージーンに次いで世代二番手の馬である。
*ゴールデンバローズ 2012 栗毛 Seattle Slew系 |
Tapit 2001 芦毛 |
Pulpit | A.P. Indy |
Preach | |||
Tap Your Heels | Unbridled | ||
Ruby Slippers | |||
*マザーロシア 2006 青毛 |
Mayakovsky | Matty G | |
Joy to Raise | |||
Still Secret | *ヘネシー | ||
Runaway Spy | |||
デザイナー 2013 鹿毛 FNo.[1-l] |
スウィフトカレント 2001 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ホワイトウォーターアフェア | Machiavellian | ||
Much Too Risky | |||
マサプラーナ 1999 黒鹿毛 |
*ピルサドスキー | Polish Precedent | |
Cocotte | |||
*フィトゥーン | Shareef Dancer | ||
Avum |
クロス:Mr. Prospector 5×5(6.25%)
掲示板
48 ななしのよっしん
2024/11/16(土) 21:32:36 ID: KbQra8fHwL
陣営からは「長い」ってコメント出てたなあ
attack地方競馬でもタイツが「2000は長かったね」とか言ってたし
千六がベスト、千八でギリとかだろうか
フェブラリー、かしわ記念、南部杯、ギリ来年のJBCクラシックとかが狙い目か?
49 ななしのよっしん
2024/11/24(日) 15:22:56 ID: AJ5wb73Xej
年内は休養だと
50 ななしのよっしん
2024/11/25(月) 11:45:38 ID: QP68AqsJZs
3月前後始動ならオグリキャップ記念、福永洋一記念を目標に白嶺賞からかね?
この時期はマイル短距離の全国交流が少ないな…
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/04(土) 03:00
最終更新:2025/01/04(土) 02:00
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