4コーナーカーブ、スタンド前直線コースへ入ってきました、
先手を取った3番エルデュクラージュに、並んでいった! 6番テリオスベル!
江田騎手が押しながら押しながら、前を伺っています!
2頭が並んで、テリオスベルが先頭に立ちました!
今日も行ったテリオスベル! 個性全開の先頭! リードは1馬身半です!
テリオスベル(Teleos Bell)とは、2017年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
穴男・江田照男とともに、「捲り逃げ」の戦法で交流重賞を引っかき回した個性派ダート牝馬。
主な勝ち鞍
2022年: クイーン賞(JpnⅢ)
2023年: ブリーダーズゴールドカップ(JpnⅢ)
父キズナ、母アーリースプリング、母父クロフネという血統。
父は2013年のダービー馬。種牡馬としてもアカイイト、ディープボンド、ソングライン、ジャスティンミラノなどを輩出してディープインパクトの後継争いをリードする。産駒の活躍馬は芝が中心だが、バスラットレオンがゴドルフィンマイルを勝つなどダートでも一定の結果を出しつつある。テリオスベルは初年度産駒の1頭。
母はカレンチャンの全姉で、自身は7戦未勝利。テリオスベルは第4仔。
母父は言わずと知れたダートの伝説にして大種牡馬。
2017年4月18日、新ひだか町の野坂牧場(主な生産馬にナムラタイタンなど)で誕生。1歳時のサマープレミアムセールに上場され、600万円(税抜)で日本中央競馬会に落札された。
……ん? JRAが馬を落札? どゆこと? と思った人もいるかもしれない。
JRAは競走馬の生産・育成の研究や技術開発のための育成牧場・施設を持っており、毎年1歳馬を各地のセリで購入、自前の施設で育成した馬を2歳時に自前のセールに出して売却する、ということをやっている。こうした馬は昔は「抽選馬」、今は「育成馬」と呼ばれており、近年の活躍馬では2008年の朝日杯馬セイウンワンダーや、熊本産馬として初めて中央重賞を制したヨカヨカなどがこうした「育成馬」である。
テリオスベルもJRAが宮崎県に置いている宮崎育成牧場で育成され、2歳となった2019年のJRAブリーズアップセールにて、950万円(税抜)で現オーナーに落札された。
オーナーは「テリオス」冠名を用いる鈴木美江子。ちなみにnetkeibaの鈴木オーナーの所有馬一覧を見るとテリオスベルが一番年上だが、実際にはその前に地方移籍で手放した馬がいるため、テリオスベルが最初の所有馬というわけではない。オーナー名義の所有馬のデビュー順では5頭目のようだ。
馬名意味は「願いを叶える(古代ギリシャ語)+鈴」。
主戦騎手から「照男スベル」と言われることがあるが、テリオ/スベルではなくテリオス/ベルである。
タフな出走ローテ、無尽蔵のスタミナ、パワー馬場が得意といった特徴からマッシヴなイメージがつきやすいが、実際のテリオスベルは馬体重450kg台でダート馬としては牝馬としても小柄な部類であり、むしろ華奢。2023年12月現在、キズナ産駒の重賞馬の中ではマルターズディオサと並んで最も小柄な馬である。セリで血統のわりにさほど値段がつかなかったのも、この馬格のなさが理由だろうか。ちなみに顔立ちもかわいらしいタイプ。
美浦・田島俊明厩舎に入厩したテリオスベルだが、5歳のはじめまでの彼女の戦績自体はどこにでもいる平凡な条件馬そのもの。4歳頭に準OP入りと書けばそれなりに順調に見えるが、実際は見習騎手の減量特典をフルに活かしての勝ち上がりであった。
デビューは2019年7月20日、福島の芝1200mの新馬戦。5番人気とそこそこの評価は集めたが10着に沈むと、その後は札幌の芝1200mを2戦、東京芝1400、1600と距離を伸ばしていくも掲示板にも載れない。明けて3歳初戦は中山の芝2200mに挑んだがブービー15着。
ここで芝を諦め、続く3月の中山の未勝利戦でダート1200mへ。ここは減量特典のある見習騎手の小林凌大騎手が押して2番手先行から直線抜け出して3馬身差で快勝、以降はダートに専念することになった。
ところが1勝クラスで早くも壁にぶつかり、ダート1200か1400の平場を3戦走って最下位→13着→11着。先行したいのに騎手が押しても前にすら行けない。スタミナを余している気配もあったので1800に距離を伸ばしたが、前目につけることはできたものの途中で沈んで9着。
そんな調子だったので昇級5戦目、9月の中山ダート1800mの1勝クラスでは49kgの軽ハンデにもかかわらず13番人気だったが、小林凌大騎手がスタートからラストスパートのごとくビシバシと鞭を振るい、押しに押しに押しまくって強引にハナを切らせて逃げると、そのまま気持ち良く逃げて快勝。
普通なら途中でバテそうな無茶な乗り方である。田島師も「やりすぎだろ」と思ったというが、これで勝ったことがテリオスベルにとって最初の大きな転機となる。
この勝利で小林騎手と陣営は「とにかく無理矢理にでも逃げさせるべき」と悟り、続く同条件の2勝クラス初戦も強引に逃げさせ、後に障害で活躍するゼノヴァースの4着。
明けて4歳初戦も同条件の2勝クラスに挑み、ここは珍しく好スタートを切って逃げると、後の重賞馬フルデプスリーダーの追撃を退けて勝利。準OPに昇格した。
だが3勝クラスは基本全て特別競走。見習騎手の減量特典が受けられないため、小林騎手はあえなくここで降板となった。斤量の優位がなくなったテリオスベルは、昇級初戦はブービー10着に撃沈。
続く2戦目の上総ステークス(中山・ダート1800m)。ここで彼女は運命の相棒と出会う。忘れた頃の穴男・江田照男である。小林騎手が見つけた「かなり強引な逃げでも粘れる」という彼女の能力を考えたとき、そういう大胆な戦法を託せる騎手は誰か、と田島師とオーナーが話し合った結果、ネコパンチの日経賞など大胆な戦法に定評がある江田騎手にお鉢が回ってきたということだったらしい。
陣営の期待に応えて江田騎手もスタートからビシバシ鞭を振るって強引に2番手につけ、4コーナーで先頭に立ち、ラストマンにかわされて突き放されたものの2着に粘り、以降は江田が彼女の主戦となる。
しかしこれで簡単に勝ち上がれるほど甘くもない。続く下総ステークスは前にも行けず14着撃沈。半年休んで10月のトルマリンステークス(古川吉洋騎乗)は2番手から直線抜け出したものの力尽きて5着。江田に戻って2100mに距離延長した11月の晩秋ステークスも逃げたもののやはり力尽き6着。
ここまでの内容で、「なるほど、逃げ馬なのに出遅れ癖があるんだな」と理解した人もいるかもしれない。しかし、彼女のレースをよく見るとわかるが、テリオスベルは別にゲートを出ないわけではない。ゲートは普通に出るのに、出脚もなければ二の脚もないのでテンから逃げられないだけなのである。しかも砂を被ると走る気を無くすタイプなので控えるレースは当然不可能だし、もちろん速い上がりを使える瞬発力もない。とにかくスタート直後から無理矢理にでも叩いて押してハナを切らせるしかないのだ。
しかしこれではあまりにも競馬の幅が狭すぎる。スタートで押してももはや前に行けそうもないときは、もう諦めて後ろで回ってくるだけで終えるしかないのか?
ここで「そういう馬だ」と諦めてしまわないのが、穴男・江田照男の本領発揮なのかもしれない。
4歳ラストの北総ステークス。内枠の3枠4番だったテリオスベルは、いつも通りスタートから江田騎手が押すものの、すぐに前に馬が固まり、どう足掻いても前には行けそうもない展開となる。だが、江田騎手は諦めていなかった。
2コーナーの終わり、向こう正面に入って隊列が落ち着きペースが緩んだそのとき、後ろから大外を1頭どんどん上がって行く馬がいる。江田照男とテリオスベル! そのまま一気に先頭に取り付いたテリオスベルだったが、そこから抜け出すまでには至らず6着。
コーナー通過順は[9-9-2-2]。「スタートで逃げられないなら、道中で捲って途中から逃げる」――そう、これがテリオスベルと江田照男の、レースを引っかき回す捲り逃げ戦法の始まりであった。
明けて5歳初戦、3月の上総ステークスは久々に小林騎手が騎乗。小林騎手も5番手から向こう正面で捲るように先頭に取り付いたが沈んで9着。
翌月、江田照男に戻った下総ステークス。ここは久しぶりにスタートが決まり、捲るまでもなく多少の出鞭でハナを切れてそのまま逃げ、直線でも後続を突き放して3馬身半差で快勝。ついにオープンに昇格する。
続いて6月、東京ダート2100mのスレイプニルステークス(OP)。紅一点ということもあり、54.4倍、12頭中10番人気という低評価だったが、ここも大外枠を活かして押して押してハナを切り、そのまま後続を突き放して逃げると、牡馬・騸馬たちの追撃を振り切って逃げ切り連勝。3連単は126万5930円の波乱決着となり、穴男・江田照男の面目躍如と言うべきか。無名の条件馬だった彼女も、この連勝でようやく競馬ファンから認知されるようになる。
さて、牡馬を蹴散らしオープン特別を勝ったということで、満を持してダート交流重賞戦線に参戦することになったテリオスベル。重賞初挑戦は、実は前走を勝つ前になんと帝王賞にも登録していたのだが当然賞金が足りなかったので牝馬限定ではなく混合戦の盛岡・マーキュリーカップ(JpnⅢ)となった。52kgの軽ハンデながら、JRA勢5頭のうち最下位の7番人気である。
内枠の2枠2番となったテリオスベルは、スタートから江田騎手が押すもののハナには行けず、前が塞がると見るや江田騎手は押すのを止めて後ろに控える。そして2コーナー、外から上がって行くテリオスベル。向こう正面で実況が前から順に隊列を紹介しているうちにどんどん上がって行き、3コーナー前で先頭に立つ。そのまま4コーナーで後続を突き放して直線に入り、押し切ろうとしたものの、バーデンヴァイラーの末脚に最後クビ差屈して惜しくも2着。コーナー通過順は[10-7-1-1]であった。いやいや、なんでそれで2着に粘れるんだ……。
続いて向かったのは門別のブリーダーズゴールドカップ(JpnⅢ)。前走で牡馬相手に僅差の2着ということで、牝馬限定戦となったこのレース、彼女は初めての1番人気(2.4倍)に支持された。
しかし今回も2枠2番からハナを切れなかったテリオスベルは、降り続く雨で水たまりの浮く不良馬場のためか向こう正面で捲っていく展開にも持ち込めず(あるいは雨で砂を被らなかったので控えたか)、中団から3コーナー前で早めに押し上げていく策に出る。しかし直線では先に抜け出したグランブリッジと、追い込んできたプリティーチャンスに突き放されての3着。
秋初戦は大井のレディスプレリュード(JpnⅡ)へ。かしわ記念を勝った4連勝中の女王ショウナンナデシコが圧倒的1番人気(1.4倍)で、テリオスベルは評価を落として4番人気(9.1倍)。
そしてテリオスベルはスタート直後、隣の馬と接触して後退、最後方からのレースとなってしまう。1コーナーでは12頭立てのドンケツ。どうする? そんなの一択、捲るしかねえ! 2コーナーからグイグイ押し上げていき、向こう正面で外からどんどん上がって行くテリオスベル。ハナを切って逃げるショウナンナデシコをあっという間に追い越して先頭へ。3コーナーから後続を引き連れて直線へ向かう。
直線で一度は内からショウナンナデシコにかわされ、さらに外からプリティーチャンスに差し切られたが、最後は乱ペースで力尽きたショウナンナデシコを差し返して2着。
今回もコーナー通過順は[12-10-1-1]。ショウナンナデシコ銀行の破綻で「レースを壊しやがって」と怒る馬券師もいたが、いやいや、これが彼女のレーススタイルなのである。沈んだならともかく、ナデシコに先着して2着に残して何の文句を言われる筋合いがあろうか。
というわけで迎えた大一番・盛岡のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)。相変わらずショウナンナデシコが断然の1番人気(1.7倍)で、テリオスベルは13.7倍の5番人気。隣にロケットスタートの逃げ馬サルサディオーネがいることもあり、「テリオスベルがどこで捲ってくるか」が展開予想のひとつのポイントとなった。
レースが始まり、隣のサルサディオーネのロケットスタートにあっという間に置いて行かれてやっぱり後方からとなったテリオスベル。同じ逃げ馬同士なのに笑えるほどのダッシュ力の差である。
そのままサルサディオーネがいつもより緩いペースで逃げ、ショウナンナデシコはその後ろ、横でヴァレーデラルナががっちりとマークする形。向こう正面に入ってテリオスベルはもちろん捲って上がって行く。3コーナー前で先頭に取り付き、4コーナーでサルサディオーネが沈んで、ヴァレーデラルナと並んで直線へ。結局そこからヴァレーデラルナに振り切られ、さらに外から後続勢にも呑まれて6着。コーナー通過順は[9-7-2-1]。
ちなみに結果として直線ではショウナンナデシコの進路をブロックする位置となって、ナデシコは内に突っ込まざるを得ず伸びあぐねて3着に敗れた。
年内ラストは船橋のクイーン賞(JpnⅢ)へ。3戦連続でショウナンナデシコ・グランブリッジと一緒のレースとなった。その2頭が人気を分け合う中、テリオスベルは5.1倍の3番人気。
さて今回のテリオスベルは大外8枠14番。これなら前に邪魔はなし、控えて向こう正面で捲る必要は無い。出鞭に押して押して前へ向かい、2コーナー入口でショウナンナデシコをかわすと、向こう正面で先頭に立つ。これでまたしてもペースを乱されたのがショウナンナデシコ。テリオスベルの乱ペースに3コーナー前でもうついていけなくなり後退していく。それをかわしてグランブリッジが追いかけてきたが、気分良く逃げたテリオスベルは直線も悠々と押し切り、2馬身差で逃げ切り勝ち。待望の重賞初制覇を飾った。
なお、このレースのコーナー通過順は[1-1-1-1]。わあ、普通の逃げ馬みたいだあ。
かくして3戦続けてテリオスベルが捲りでナデシコ銀行を破綻させ、ショウナンナデシコのファンからは「天敵」と怖れられることになった。
デビュー33年目、50歳の江田照男は2019年の函館スプリントステークス(カイザーメランジェ)以来3年ぶりの重賞制覇。交流重賞はシャドウスケイプの2004年クラスターカップ以来、実に18年ぶりの勝利となった。
明けて6歳も現役続行し、大井ではラスト開催となるTCK女王盃(JpnⅢ)から始動。今回はナデシコはいないがグランブリッジはまた一緒。ヴァレーデラルナとプリティーチャンスも出てきたため、7頭立ての4番人気。
今回もスタートから江田照男がビシバシ鞭を振るうにもかかわらず、砂を被ったためか結局スタートは最後方。そこで外に出して鞭を入れ、1コーナーで一気に前をかわして先頭へ。そのまま後続を引き連れて逃げたが、直線では人気3頭にかわされてグランブリッジ(川田将雅)の4着。7頭全て人気順通りという珍決着となった。
ちなみに今回も記録上のコーナー通過順は[1-1-1-1]。データを見るだけでなく、ちゃんと映像を見ないとレースぶりはわからないということを教えてくれるテリオスベルである。
続いては、なんと連闘で川崎記念(JpnⅠ)に参戦。レースぶりが破天荒ならローテも破天荒である。テーオーケインズとウシュバテソーロの2強対決ムードの中、紅一点のテリオスベルは10頭立てのうち50.2倍の7番人気。しかし連闘だろうが牡馬相手のGⅠ級だろうがテリオスベルと江田照男のやることは変わらない。その捲り戦法を経験していない一線級の牡馬相手に、またしても彼女がレースを引っかき回す。
スタートダッシュではもちろん牡馬の先行馬とは勝負になるはずもなく、差し馬のウシュバテソーロと同じような位置からスタートしたテリオスベル。いつも通り最初のコーナーから捲りにかかり、ホームストレッチで逃げるライトウォーリアら先行集団を捕らえる。これに釣られて見事に掛かってしまったのが4番人気のノットゥルノ。固まった先行集団の隊列が崩れ、さらに3番人気のペイシャエスが馬込みに後退していき、この2頭のレースはここで終了してしまう。
隊列をかき乱して先頭に立ったテリオスベルはそのままライトウォーリアを引き連れて4コーナーへ。後ろにつけていたテーオーケインズの鞍上松山弘平は、こんな捲りをしたテリオスベルは垂れて内は前が塞がると見て、ライトウォーリアの外に出していく。ところがテリオスベルは垂れず、むしろライトウォーリアが膨らんで、その空いたスペースに突っ込んで来たのがウシュバテソーロ! 勝負を分ける松山騎手の判断ミスを誘ったテリオスベルは、直線で2強に置いて行かれ、追い込んできたニューモニュメントにもかわされたものの、あわや馬券圏内の4着に粘り込んでみせた。
ちなみに川崎記念で牝馬が掲示板に載ったのは2016年のアムールブリエ(4着)以来。1998年に統一GⅠ格付けされて以降では5頭目(6回目)である。
なお、今回も記録上のコーナー通過順は[1-1-1-1]。ちゃんと映像を見ないと(以下略)。
続いては中3週で3月のエンプレス杯(JpnⅡ)。9歳の女傑サルサディオーネの引退レースだが、人気はやはり4歳2強のグランブリッジとヴァレーデラルナに集まり、テリオスベルはその2頭に次ぐ3番人気。
今回も隣の枠からサルサディオーネがロケットスタートでハナを切り、当然逃げるどころかスタートで前目につけることもままならないテリオスベルは、もちろん外に出して最初のコーナーで捲っていく。ホームストレッチでサルサディオーネに迫るも、これが最後のサルサディオーネは意地でもハナを譲らず、テリオスベルは少し離れた2番手での追走となった。直線でサルサディオーネを捕まえるが、外からグランブリッジ(川田将雅)にかわされ、あとは突き放される一方。それでも粘り込んで、最後はヴァレーデラルナにもクビ差かわされたものの3着。ハナを取りきれなかったことでペースを緩められず、江田騎手は2100mずっと追い通しになってしまったが(注:江田騎手は51歳です)、人馬ともにタフな粘りを見せ付けた。引退後のインタビューでは、江田騎手はこれを「一番疲れたレース」として一番の思い出のレースに挙げている。なおコーナー通過順は[2-2-2-2]であった。
さらに中1週でダイオライト記念(JpnⅡ)へ。ローテまでスタミナゴリ押しなのか……。グロリアムンディ、ペイシャエス、メイショウフンジンが人気を集め、テリオスベルは10.8倍の4番人気。
今回も内の2枠2番なので当然のようにスタートでは押しても前に行けず。しかし先行勢が砂の深い内を避けたため、テリオスベルと江田照男は外に出さずそのまま内で捲りをかけ、ホームストレッチでメイショウフンジンをかわして先頭へ。そのままついてきたメイショウフンジンやアナザートゥルースを引き連れて逃げるが、3コーナー前から抜群の手応えで進出してきたグロリアムンディ(川田将雅)には4コーナーであっさりかわされ、あとは突き放される一方。それでもメイショウフンジンとエルデュクラージュは振り切って、9馬身差もつけられたもののそのまま2着に粘り込んだ。コーナー通過順は[1-1-1-1]。
ちなみに牝馬のダイオライト記念連対は交流初年度の1996年に勝ったホクトベガ以来27年ぶり、馬券圏内も19年ぶりである。
続いては新装京都競馬場で初めて行われるダート重賞の平安ステークス(GⅢ)へ。1年ぶりの中央、帝王賞出走には勝利が必須なのだが、相棒・江田照男が落馬負傷からの復帰が間に合わず、鞍上は捲り逃げを編み出す前の3勝クラス時代に一度だけ騎乗経験がある古川吉洋となり、62.2倍の11番人気。
6枠12番と久々に外目の枠を引けたが、出鞭数発を入れてもやっぱりスタートでは前に行けず。外に持ち出して古川騎手がひたすら鞭を入れて追い続けるも、いつものように捲っていくこともできず4コーナーで失速、あえなく最下位16着に撃沈。ちなみに1着はグロリアムンディ(川田将雅)。
中盤が全く緩まず最後の2Fが13秒台という特殊な消耗戦ラップになったので江田騎手であっても捲れたかどうかは疑問だが、スタート直後に外に持ち出すときに明らかに変なブレーキがかかってしまったことといい、ひたすら鞭を入れまくる古川騎手とも手が合っていたとは言い難く、いずれにしても残念な結果に終わった。この惨敗が変に後を引かないといいのだが……。
というわけで帝王賞には出られず、昨年に続きマーキュリーカップ(JpnⅢ)へ。無事に鞍上も江田照男に戻り、前走の悪影響を懸念した陣営は4週続けて調教で江田騎手に乗ってもらうなど、万全の立て直しをして臨んだ。4歳馬ウィルソンテソーロと前年覇者バーデンヴァイラーに次ぐ5.9倍の3番人気(4番人気メイショウフンジンと同オッズ)に支持される。
内目の4枠4番から頑張ってハナを取りに行こうとするが、ダッシュをつけてハナを奪うメイショウフンジンとは対照的に、やっぱりすぐに前が塞がりスタートでは中団の位置取りに。外が空いていると見るや江田騎手はすっと外に出して行き、1コーナー前からビシビシ鞭を振るって外を捲っていくと、2コーナーでハナを奪って逃げる体勢へ。
前走の悪影響は全くないと言わんばかりのいつも通りの捲り逃げでレースを引っぱると、直線では残り200m前で勝ったウィルソンテソーロ(川田将雅)にかわされたものの、その後は追いすがるメイショウフンジンを寄せ付けず、4着バーデンヴァイラーを突き放して2着。コーナー通過順は[6-1-1-1]。
ちなみに3着メイショウフンジンの酒井学騎手はレース後コメントで、勝ったウィルソンテソーロを差し置いてテリオスベルの話しかしていなかった。いかにテリオスベルの捲りによる乱ペースが他の逃げ先行馬の陣営から警戒されているかという証であろう。
続いても昨年同様、門別へ転戦してブリーダーズゴールドカップ(JpnⅢ)へ。斤量が重くなるグランブリッジが回避したため、相手どころは関東オークスを勝ってきた3歳馬パライバトルマリンと、過去5回対戦して実は一度も先着できていない同期のプリティーチャンス、重賞初挑戦の4歳馬カラフルキューブといった面々。実績ではこの中で頭ひとつ抜けているが、結局1番人気はパライバトルマリンに譲り、2.6倍の2番人気となった。
さて、今回は8頭立ての6枠6番という待望の外枠である。ゲートが開いてスタートした直後から全力で鞭を入れる江田照男に応え、すんなりハナを取りに行くテリオスベル。内ではパライバトルマリンがハナを伺うが、それを制してあっさりホームストレッチでハナを確定して逃げる態勢に突入する。そう、誤解なきよう今一度言っておくが、捲り逃げはあくまで二の脚が無さすぎてハナを取れないがゆえの次善の策。すんなり逃げられるなら逃げ馬の彼女にとってそれ以上のことはないのだ。
そのまま後ろを離してマイペースで逃げたテリオスベルは、3コーナーからどんどん後続を突き放し、直線でも全く後ろを寄せ付けず、4馬身差で完勝。コーナー通過順もちゃんと詐欺ではない[1-1-1-1]。3歳4歳のお嬢ちゃんたちに貫禄を見せ付けて重賞2勝目を挙げた。江田照男騎手は34年目にしてホッカイドウ競馬の交流重賞初勝利である。
JBCレディスクラシックの前哨戦となる10月のレディスプレリュード(JpnⅡ)では、グランブリッジ、ヴァレーデラルナの4歳2強に、これが初対戦となる4歳の地方女王スピーディキック、さらにレパードSで牡馬を蹴散らした3歳馬ライオットガールも参戦。そのままJBCレディスクラシックのメンバーと言われても違和感のない好メンバーが揃った。天敵川田将雅の騎乗するグランブリッジが1番人気、以下スピーディキック、ヴァレーデラルナと続き、真ん中5枠5番のテリオスベルは8.1倍の4番人気。
前日に続き不良馬場となったレースは、今回も江田騎手はビシバシ出鞭を入れるも行き脚がつかず後ろの方から。いつも通り外に出して2コーナーで捲っていくが、不良馬場でハイペースの展開になったことで向こう正面で逃げるノーブルシルエットに並んだもののハナを確保しきれない。3コーナーでかわして先頭に立ち4コーナーで突き放しにかかるが、ハイペース前潰れの展開を後方から強襲してきたライオットガール、グランブリッジ、そしてさらにその2頭を一気に差し切ったアーテルアストレアにあっという間にかわされて4着。馬場が締まってハイペースの流れになると捲るのが大変というのは解っていることなので、展開が向かない中でよく粘ったというべきか。コーナー通過順は[5-2-1-1]。
本番のJBCレディスクラシック(JpnⅠ)では前走レディスプレリュードの1~7着が全員そのまま出走に加え、サマーチャンピオンと南部杯を3着好走したレディバグ、前走シリウスS2着のアイコンテーラーらが参戦し、現役ダート女王決定戦に相応しいメンバーとなった。7枠10番という外枠を引き、大井の砂が船橋・門別と同じ白砂に変わってパワー馬場になったこと、天敵の川田将雅も不在と好条件も多いテリオスベルは1800は短いという懸念もあったものの、アイコンテーラー、グランブリッジ、アーテルアストレアに次ぐ7.8倍の4番人気に支持される。
例によって江田騎手はスタートから出鞭を入れていくが、スタートダッシュ力の差はどうにもならず中団後方に。2コーナーから向こう正面にかけてもなかなか上がっていけず、3コーナーでようやく前のアイコンテーラーに追いついたが、かわしきれないまま直線であっさりと突き放され5着。しかも3コーナーの入口で斜行してノーブルシルエット(最下位12着)の鞍上笹川翼が立ち上がるほどの不利を与えてしまっており、降着や審議にはならなかったが江田騎手に戒告と、ちょっと後味の悪いレースになってしまった。コーナー通過順は[8-8-2-2]。
気を取り直して連覇を目指し、来年から2月開催になるクイーン賞(JpnⅢ)へ。アイコンテーラーはチャンピオンズカップへ向かい、グランブリッジも出てこなかったため、相手関係は3歳馬のライオットガールとパライバトルマリンとなり、この3頭で人気を分け合うことになった。他が54kg以下の中、トップハンデ56.5kgを背負うことになったが、大外8枠11番を引いたこともあり、最終的に2.5倍の1番人気(前年のBGC以来、生涯2度目)に支持された。
しかしレースは斤量が響いたのもあったかもしれないが、テンが昨年よりもハイペースになり、テリオスベルのダッシュ力では出鞭をビシバシしてもなかなか厳しい流れ。船橋の長い1コーナーまでの直線の間でもハナ争いには加われず、2コーナーを越えて向こう正面でようやくパライバトルマリンを捕まえ、2頭でレースを引っぱる形になった。それでも直線に入ってパライバトルマリンを叩き合いの末振り落としたが、好位から追走してきたライオットガールにあっさりかわされて2着。レース史上初の連覇はならなかった。コーナー通過順は[4-2-2-2]。
レース後江田騎手は「追い通しで疲れた。スタートしての行き足もないし、道中で楽に行く足があればいいけど…」とかなり疲労困憊を感じさせるコメントを残した。惨敗したようなコメントだけど2着です。
これで年内は終了……かと思いきや、年内11戦目として12月21日の名古屋グランプリ(JpnⅡ)に参戦。このところ勝ちきれないレースが続くグランブリッジ、前走浦和記念を勝ったディクテオンが人気を分け合い、次いでミトノオーまでが抜けた三強というオッズの中、最内の1枠1番を引いてしまったテリオスベルはメイショウフンジンに次いで13.7倍の5番人気。
レースはミトノオーと浦和の3歳牝馬マテリアルガール、そしてメイショウフンジンが3頭で競り合ってテンからどう見てもハイペースの流れ。毎度の出鞭とともにスタートしたテリオスベルは、他馬が砂の深い内を避けたことで進路を塞がれることなく、押して押してグランブリッジの後ろの5番手でスタートする。前のペースが緩まず2コーナーでもまだ5番手だったが、前が離れて砂を被らない位置だったことや外への進路をグランブリッジにブロックされていたもあってか、江田照男も強引に早めに捲ることはせず、マテリアルガールが早くも向こう正面で力尽きるとともに、そのまま砂の深いインを通って進出開始。ミトノオーとメイショウフンジンをまとめて3コーナーでかわして先頭に立ったが、追いかけてきたグランブリッジと、後方から捲ってきたディクテオンの人気2頭が4コーナーで迫る。そのままあっさりディクテオンにかわされ、直線でグランブリッジにも振り落とされたが、それ以上後続は寄せ付けず3着。
なお、記録上のコーナー通過順は[4-3-2]。これはもう捲り逃げというより普通の捲りでは? そして地方競馬ファンは「なんで名古屋で内を回して3着に残るんだコイツ…」と改めてテリオスベルの常識外れの走りにおののいていた。
12月29日の東京大賞典にも登録しており、TCK女王盃→川崎記念に続いて連闘で出走するのかと注目されていたが、さすがにこちらは名古屋グランプリ当日に回避が決定。というわけで年内はこれで終了。重賞を11戦して[1-3-2-5]、掲示板を外したのは江田照男が乗れなかった平安Sのみという結果だけ見れば極めて堅実でタフな走りぶりと、その捲り逃げ戦法のインパクトで、稀代のおもしれー女個性派として競馬ファンに強烈な印象を残した1年であった。
田島厩舎のブログによると、2024年に引退・繁殖入りの予定とのことで、繁殖シーズンに間に合わせることを考えると、2月のクイーン賞か、引き延ばしても3月上旬のダイオライト記念のどちらかがラストランとなることが見込まれた。
そんなわけで7歳を迎えたテリオスベルは、2月開催になったクイーン賞(JpnⅢ)へ。10頭立ての7枠8番という外枠を引けたが、2ヶ月前と同じくトップハンデタイの56.5kgを背負うことになり、ライオットガールとアーテルアストレア、そして神奈川記念2着のキャリックアリードに次いで5.8倍の4番人気。
レースは例によってスタートから江田照男がグイグイ押すも後方から。もちろんビシバシと出鞭を入れ、ホームストレッチで枠なりに外からぐいぐい押し上げていくと、2コーナーであっさり先頭を確保。テリオスベルとしてはスムーズに、息を入れつつマイペースに逃げる展開に持ち込んだ。3コーナーから同斤量のアーテルアストレアが迫ってくるのに対し、直線でも残り100mまで内で粘りに粘りに粘り倒したが、最後は馬体を離したアーテルアストレアに差し切られ、1馬身半差の2着。しかし54kgの3着キャリックアリードは5馬身突き放し、スムーズに逃げられればまだまだ重賞勝ち負けの実力を見せた。コーナー通過順はギリギリ詐欺じゃない[1-1-1-1]。
厩舎ブログによると当初はこのクイーン賞で引退予定だったのだそうだが、惜しくも有終の美を飾れなかったので、協議中の結果ダイオライト記念(JpnⅡ)へ向かうことに。新鋭セラフィックコール、重賞連勝中のディクテオン、堅実な遅咲きハギノアレグリアスと牡馬の好メンバーが人気を分け合う中、逃げの強豪馬がいないこともあって、真ん中の6枠6番テリオスベルはこの三強に次ぐ7.2倍の4番人気に支持された。
レースは普段に比べたらかなりの好スタートでわりとすんなり5番手につける。外のアナザートゥルースが内に寄せていくのに合わせて外に出し、グイグイ押していつも通り最初のコーナーから進出開始。ホームストレッチで後ろを離して逃げるエルデュクラージュを捕まえると、「今日も行ったテリオスベル!個性全開の先頭!」の実況とともに1コーナー前で先頭へ。そのままエルデュクラージュを引き連れて逃げる。少し離れた3番手のハギノアレグリアスまでが大きく後ろを離して進む展開となり、3コーナー前で早くもエルデュクラージュが脱落するとともに4番手にいたセラフィックコールと後ろにいたディクテオンが進出してくるが、テリオスベルはそのまま単騎で逃げ込みを図る。残り200mでセラフィックコールに捕まり4馬身ちぎられたが、ハギノアレグリアスはそのまま振り切り、ディクテオンは全く寄せ付けず2着に粘り込んだ。
牝馬のダイオライト記念2年連続連対は交流重賞になってから史上初。これで船橋では5戦して[1-4-0-0]の全連対。そしてコーナー通過順は誇り高き[1-1-1-1]詐欺。これこそがテリオスベルである。
そしてレース翌日、これをラストランとしての現役引退を発表。3月14日に登録抹消され、故郷の野坂牧場で繁殖入りとなった。田島師は「本当は昨年いっぱいで引退する予定でしたが、オーナーと話し合って今年はクイーン賞とダイオライト記念の2戦を使うことになりました。最近では珍しいぐらいの個性派で、本当にタフで頑張ってくれたと思います」と語った。
通算41戦7勝[7-8-3-23]。うち、重賞戦績18戦2勝[2-7-3-6]。惨敗はほぼ条件馬時代のみで、オープン入りしてからの19戦で掲示板を外したのは2回だけ。大きな怪我もなくタフに現役生活を走り抜いた。生涯獲得賞金2億5193万円は、引退時点でアカイイトやファインルージュを上回り、キズナ産駒の中ではソングライン、ディープボンド、バスラットレオンに次ぐ4位。田島厩舎の管理馬では堂々のトップであった。
逃げ馬に夢を見て馬券を買い、その馬が出遅れて逃げられず、見せ場なく撃沈したとき、「なんで強引にでも逃げないんだよ!」と思ったことはないだろうか?
逃げ馬は逃げなければ持ち味を出せないのに、なぜ騎手はそうしないのか。答えは単純、そんなことをしたら序盤でスタミナを使い果たしてしまい、ほぼ確実に沈むからである。
故に、「スタートで逃げられない逃げ馬」というのは競馬の常識からはほぼ成立しない。前目から早め先頭で押し切りを得意としたタップダンスシチーのような例はあるが、それもあくまで先行できるからこそ。後方でのスタートから捲って先頭に立つというのは、2018年大阪杯のスワーヴリチャードのようなペースを読み切った奇襲か、2021年ジャパンカップのキセキのような強引な暴走のどちらかだし、重賞のレベルで普通はそんな戦法は通用しない。だからこそ2018年大阪杯のミルコ・デムーロは「神騎乗」と讃えられるのだし、「強引にでも逃げればいいのに」というのは、本来机上の空論なのだ。
そんな競馬の常識を一蹴し、机上の空論を現実の戦法にしたのが、テリオスベルと江田照男だった。
スタートのダッシュ力が絶望的に無さすぎて逃げたいのに逃げられないという、逃げ馬としては致命的すぎて「それはもう逃げ馬とは言わないのでは?」という弱点を、条件馬時代の模索を経て、無尽蔵のスタミナでゴリ押す「捲り逃げ」という戦法に変えてレースを引っかき回し続けたテリオスベル。
その捲り逃げ戦法がおなじみのものとなると、彼女が捲ってハナを取りに行くタイミングで観客からも大きな歓声が上がるようになり、稀代の個性派として人気を博すことになった。
もっとも陣営としては2022年クイーン賞や2023年ブリーダーズゴールドカップのように、外枠から普通に(?)逃げたいというのが本音だったようだが……。なんで内目の枠ばっかり引いたんだろう?
展開的には隊列が固まりペースが緩むタイミングで捲ってくるため、この捲りで自分のリズムを崩してしまう馬は多い。テリオスベル自身も途中で息は入れるが後続に脚を使わせる消耗戦の方が本領であるため、結果としてテリオスベルの出るレースは大きな着差がつきやすい。特に逃げ・先行馬にとっては天敵と言ってもいい存在で、何度も戦って悉く勝ちパターンを潰されたショウナンナデシコやメイショウフンジンは「テリオスベル被害者の会」として語られた。中団~後方待機の馬であっても、テリオスベルがもっと後ろからのスタートになることがあるので油断はできない。
なのでテリオスベルの出るレースでは、他の馬は「いかにテリオスベルの捲りを気にせず自分のレースに徹することができるか」が重要になる。その上でテリオスベル自身は放っておいたら残るので、彼女を捕まえにいくタイミングを見誤るとそのまま振り切られることになってしまう。
馬券師にとっては、どのレースでもテリオスベルが出走するというだけで買い目の馬が「テリオスベルに対応できるのか」が重大な焦点となり、ついた渾名が「ステージギミック」、またの名を「テリオスベル検定」。
その上で終わってみれば(固い決着が多い交流重賞ということを差し引いても)ガチガチに実力通りの結果になるレースが多く、「テリオスベルに勝てるのは本当に強い馬」とも言われた。
実際、テリオスベルの引退早々、2024年の川崎記念は前年テリオスベルに捲られて5着だった逃げ馬ライトウォーリアがグランブリッジやアイコンテーラーを振り切ってド根性で逃げ切り勝ち。
さらに翌日の兵庫女王盃では、それまで4戦続けてテリオスベルと同じレースを走っていたライオットガールがこれまた逃げ切り勝ち。鞍上の岩田望来は勝利騎手インタビューで初めての逃げを打ったことについて訊かれて「いつも、行けるんですけど、テリオスベルという強い馬がいるので、いつも番手からになって……」と発言、周囲からは笑い声が上がった。
テリオスベルの存在が他の逃げ・先行馬にとっていかに厄介だったのかが改めて浮き彫りになり、テリオスベルのファンのみならず馬券師の間でも「テリオスベルロス」が話題になった。
競馬の常識を蹴っ飛ばすトンデモ戦法でダート戦線を沸かせ続け、江田照男をして「たくさんの馬に騎乗してきたけど、その中でも1番の個性派です」と言わせしめたテリオスベル。レースを引っかき回すだけ引っかき回して自分はしっかり馬券圏内に残るので、最初の頃こそ怒る馬券師もいたが、これが彼女の勝利のためのスタイルだということが広まるとそんな声もなくなった。
これだけ個性的なレースぶりでありながら、ピンかパーの成績ではなく、ほぼ毎月のようなタフな出走ローテをこなして、安定して馬券内、掲示板内に残り続けるその姿は、トンチキなレーススタイルとは裏腹の「一生懸命な頑張り屋さん」という印象をファンに与えた。実際、田島師曰く普段から「非常に真面目で、走ることが好き」な馬だったという。
鞍上が穴男・江田照男というのも元より彼女の魅力のひとつではあったが、平安Sで「江田照男でないとテコでも動かない」ことが明確になると、もはや唯一無二のコンビであることを疑う者はなかった。レース後は常に荒れていることで有名なnetkeiba.comの掲示板ですら、レースのたびに彼女と鞍上をねぎらうあたたかいコメントで溢れていたことが、テリオスベルと江田照男のコンビの愛されぶりを物語っている。
江田騎手曰く、「この馬『走る!』って思ったこと一度もないんだよなぁ……」。調教で動くわけでもないし、逃げ馬なのに二の脚がなさすぎて逃げられない。捲るにしてもどこでハナに立てるかもスタートしてみないとわからない。ハナに立てなければレース中ずっと追い通し。強引に逃げて粘れる無尽蔵のスタミナの持ち主ということに気付かなければ、田島師も「1勝クラスで終わっていたかもしれない」と語る。
そんな彼女を、競馬の常識に囚われないスタイルで重賞2勝、馬券圏内の常連に導いた江田照男とのコンビは、まさしく競馬史に残る名コンビだったと言えるのではないだろうか。
馬柱だけでは決してその魅力は伝わらない、他に例える馬のないような稀代の個性派。レースを見なければわからないその魅力を、ファンはこれからも語り継いでいくだろう。
無事に野坂牧場で繁殖入りしたテリオスベル、初年度のお相手はなんと新種牡馬のタイトルホルダー。逃げ馬同士のロマン配合として、繁殖入り時点から(半ば冗談交じりで)期待していたファンが多かったため、11月22日に配合が判明するとSNSのテリオスベルファンはお祭り騒ぎになった。どちらもスタミナお化けで知られた逃げ馬の2頭でありながら、芝でのテンの速さで知られたタイトルホルダーとダートでのテンの遅さで知られたテリオスベルという対極のタイプでもあり、果たしてどんな仔が産まれるのか、楽しみにしたいところである。
キズナ 2010 青鹿毛 |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
*キャットクイル 1990 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
Pacific Princess | Damascus | ||
Fiji | |||
アーリースプリング 2006 黒鹿毛 FNo.13-c |
*クロフネ 1998 芦毛 |
*フレンチデピュティ | Deputy Minister |
Mitterand | |||
*ブルーアヴェニュー | Classic Go Go | ||
Eliza Blue | |||
スプリングチケット 1997 黒鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
カズミハルコマ | マルゼンスキー | ||
センシユータカラ |
出走した全重賞18戦。引退後にこの記事でテリオスベルを知った人は是非レース映像をご覧ください。
また、引退に際してYouTubeの東スポ競馬チャンネルで関係者ロングインタビュー(48分!)が公開されているので、そちらも必見。
掲示板
131 ななしのよっしん
2024/11/23(土) 07:01:35 ID: Ualpg3N3Ow
タイホ民とテリオスベル民を兼ねてる人は生きているのか不安になってきた
132 ななしのよっしん
2024/11/23(土) 13:09:08 ID: TdYb2Lrue9
133 ななしのよっしん
2024/11/30(土) 01:59:05 ID: o2LAxzGB78
> そのリハビリに、おとなしくて乗りやすい馬だったテリオスベル(当時は未勝利か1勝クラスの条件馬)があてがわれていたという噂があるが真偽は不明。
これガチです。
ソースはネトケ有料部分の調教欄で、2020年5月16日東京6R(13着)の追いきりで5月10日と5月13日に戸崎騎手が乗っています。なお5月10日は日曜日の為、復帰前ってのは確定です。有料部分なのでURLは省略します。
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最終更新:2025/01/02(木) 07:00
最終更新:2025/01/02(木) 07:00
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