PC-6001とは、新日本電気(1983年7月より日本電気ホームエレクトロニクス)が発売していたパーソナルコンピュータである。愛称「パピコン」。
後継機種としてPC-6001mkⅡ、PC-6001mkⅡSRがある。また上位機種にPC-6601、PC-6601SRがある。発売元ではそれぞれ「PC-6000シリーズ」「PC-6600シリーズ」と区別していたが、当時を知るユーザーの間では、すべてひとまとまりでとらえられることも少なくない。
概要
PC-6001
PC-6001は1981年11月10日に発売された8bitパソコン。当初、カスタムLSIをふんだんに使用することで、ベストセラー機種であったPC-8001の完全上位互換、かつ低価格にすることを目標としていたとされる。しかし社内事情や技術面の制約から、最終的に互換性はBASICがPC-8001の下位互換、周辺機器は一部流用できるものもあるというレベルになり、内部のICやLSIもすべて既存品でまかなわれた。
だが、家電製品を扱っていた新日本電気による開発だけに、PC-8001よりも家庭用・教育用を強く意識した製品になっていた。直接家庭用テレビに接続できるようになっていたのはもちろんだが、英数字・カタカナ以外にひらがなを表示できるようにしたのも、10万円未満のパソコンとしては先駆的だった。
また、操作が簡便なゲーム専用機にならい、ジョイスティックや、ソフトを納めたROMカートリッジも利用できるようにした。加えてソフトのキー操作で迷わないよう、キーボードにかぶせて各キーの周囲に機能を表示するシート(オーバーレイ)にも対応した。
音源LSIは、ゲーム専用機向けに売られていたもの(PSG)をそのまま搭載し、これをBASICからコントロールできるようにした。当時は「ちょっとしたシンセサイザー並み」という評価さえあったほどである。
これらのことから、発売直後から入門用のパソコン(当時はまだ「マイコン」という呼称が支配的だった)として人気となり、ゲームソフトも多数発売された。さらに、発売から1年ほど経ってからではあるが、すがやみつるの漫画「こんにちはマイコン」で大きく取り上げられたことで、電子ゲームにしか興味がなかったような低年齢層の子どもからも、羨望を集めるようになった。
一方、処理速度は当時としても速くはなかった。同時期に発売されたPC-8801に比べれば、画素数が少ない分グラフィック機能を使う際の画面処理の負担は軽かったものの、アクションゲームなどではプログラムに工夫が求められた。
また、キーボードの全キーをオーバーレイ対応にしたために、個々のキーが横長で上下方向に大きく隙間が開いていた。見た目から「かまぼこキーボード」「キャラメルキーボード」などとも呼ばれ、打ちやすさの観点からは難があった。
なお、日本電気グループ自らも、「じゃんけんポン、カセットポン」というキャッチフレーズのCMを流した上で、ROMカートリッジとオーバーレイを使用した教育向けソフトを用意するなど、親しみやすさとともに、具体的な利用用途を提案していた。TK-80以来の「Do It Yourself」な機械から、誰にでも使える「ソフトウェアプレーヤー」としてのパソコンへと一歩踏み出したのが、このPC-6001であると言える。
PC-6001mkⅡ
PC-6001mkⅡは1983年7月1日に発売された8bitパソコン。PC-6001で実現しなかった、カスタムLSIの採用もあり、機能向上を果たしながらも定価は若干の値下げとなった。
機能向上点の中で、もっとも特徴的なのは、「漢字ROM」「音声合成機能」の標準搭載である。
漢字ROMの標準搭載は、10万円未満のパソコンでは初めてのことだった。もっともこれにはからくりがあり、JISに規定された水準の漢字全部ではなく、小学校で習ういわゆる「学習漢字(教育漢字)」に限定したROMを搭載したのである。当時の学習漢字は996字あり、これに独自に選定した漢字28字を追加して、1024字が収録された。
面白いのはこの追加された28字で、都道府県名や県庁所在地名で学習漢字に含まれていないものが多数入っている。21世紀に入ってから常用漢字に追加される見込みとなった、「媛」や「阜」も入っているのである。国語では使わなくても、社会科では使えるに越したことはない字というわけで、いかにこのシリーズが教育用途を重視していたかがわかる。
音声合成機能は、PC-6001用のオプション品として提供されていたものを、ほぼそのまま内蔵したものである。
具体的には、フォルマント合成に必要な音素の発振器やフィルターを内蔵した、音声用のLSIがPSGとは別に搭載されている。さらに、このLSIをコントロールして日本語の母音や子音を合成させるためのデータがBASICのROMに追加されており、これらによって、BASICからローマ字とアクセントなどを指定する記号を与えてやれば、任意の日本語を発声することができるようになっている。
こういった機能をオプション品として提供しているパソコンは他にも存在したが、標準搭載にまで踏み切ったのは、特定用途向きの製品を除けば、ほとんど例がない。
PC-6001mkⅡは、これらのユニークな機能を備えつつ、キーボードのオーバーレイ対応を打ち切り、タイプライター型のキーボードを採用することで、外観からも本格的なパソコンに近づいた。その一方で、人気機種PC-6001のソフトウェアの大多数がそのまま使える高い互換性を保ったことから、順当に人気を博した。
一方処理速度については改善はなく、表示能力の向上でグラフィックの画素数が増えたことが、かえって不利になる場合もあった。このため、PC-6001mkⅡ(以降)専用のゲームソフトでも、PC-6001と同じ画素数の画面モードを利用しているものがある。
PC-6001mkⅡSR
PC-6001mkⅡSRは1984年11月15日に発売された8bitパソコン。同時に発表されたPC-6601SRから、内蔵フロッピーディスクドライブを取り除いた廉価版という位置づけである。フロッピーディスク関連以外はほとんどPC-6601SRと同等であり、そのため、PC-6601やPC-6601SRと同じように音声合成機能に「歌う」能力も追加されている。
PC-6001mkⅡSRは、PC-6001mkⅡからさらに文字やグラフィックの表示能力が強化され、ついにPC-8001の上位互換に近い性能を持つことになった。BASICも、命令セットや中間コードがほぼPC-8001の上位互換になるよう改められたため、テープに保存されたPC-8001用のリストを読み込むことも可能だった。
処理速度も改善され、表示能力の向上を補ったが、これに伴い、標準搭載の映像出力端子が専用ディスプレイ向けのみとなった。家庭用テレビに接続するためのビデオ出力・RF出力はオプションになったわけだが、このことで、本機の立場は難しいものになった。
すでに10万円未満のパソコン市場は、家電各社などにより前年から発売が始まったMSXが攻勢を強めており、これらはほとんどすべての機種がビデオ出力・RF出力を備えていた。絶対的な能力で言えば、PC-6001mkⅡSRのほうが優れている点も少なからずあったが、家庭用のパソコンとして見るなら、そのままでテレビにつなぐことができないのは明らかにマイナスである。かといって、専用ディスプレイまで買い足すことを前提としてしまうと、逆に高級8bit機と言われていたFM-7やX1シリーズ、あるいはPC-8800シリーズと比較されるような価格帯になってしまう。
翌年(1985年)早々に発売されたPC-8801mkⅡSRがホビー向けパソコンとしての地位を固める一方で、同年夏には本機と同等の価格帯で、同等以上の性能を持つMSX2の発売が始まる。結局本機とPC-6601SRをもって、PC-6000/PC-6600シリーズは開発終了となった。
日本電気ホームエレクトロニクスの内部では、一時期MSX2とPC-6601SRのデュアル互換機の開発も検討されていたが、陽の目を見ることはなかった。
ニコニコ動画におけるPC-6001
PC-6601での音声合成関連を除くと、ゲームプレイ動画の割合が多い。
「タイニーゼビウス」「スペースハリアー」でのつながりもあり、MZ-700とはよきライバルである。
関連動画
PC-6001のCM
PC-6001mkⅡ以降専用のゲームソフトで、PC-6001と同じ画素数の画面モードを利用しているもの
関連商品
関連項目
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