踊る大捜査線とは、日本のテレビドラマ、およびそのシリーズである。
概要
1997年のテレビシリーズから始まり、1998年の劇場版(『OD1』)、2003年の劇場版(『OD2』)、2010年の劇場版(『OD3』)、そして2012年の劇場版(『ODF』)がつくられた人気ドラマシリーズ。
スピンオフ作品も数々つくられている。
ジャンルは刑事ドラマだが、本庁と所轄の対立や職場での描写など従来にない要素をとり入れているのが特徴。
従来の刑事ドラマでは、刑事はスタイリッシュであってもいぶし銀であっても格好いいものだったが、このドラマでは宮仕えの悲哀と苦悩をコメディ的に描いている。
具体的な例としては、刑事のことを「デカ」ではなく「捜査員」と呼ぶことが多く、加害者のことを「ホシ」ではなく「被疑者」とよぶことが多く、「発砲許可」・「パトカー手続き」といった手続きが存在するなどである。
織田裕二主演の連続ドラマ『ロケット・ボーイ』放映期間中に織田が腰を患って収録が中断した際、当面の対応として『踊る大捜査線』のドラマを再放送したところ、『ロケット・ボーイ』より視聴率が高くなってしまったことがある。
当時の製作と編成の苦悩は想像に難くない。
本来は2008年に公開予定だったのだが、一部の出演者がギャラや製作の関係で揉めごとを起こしており、事実上凍結状態にあった。
このトラブルのおかげで1年延びた挙句、2009年になって公開されたのは『踊る』ではなく『アマルフィ』であった。
しかし、ついに『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』(『OD3』)が2010年7月3日に公開された。
また、スピンオフの登場人物である木島丈一郎も当作品に登場するほか、和久の甥も青島の部下として登場した。
なお、『OD3』を観る前に特にドラマシリーズ第1話、『歳末特別警戒スペシャル』、『OD1』を観ることもすすめる。
そして、ついに踊る大捜査線全シリーズを締めくくる、劇場版最終作『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が2012年9月7日から公開された。
なお、もともと『OD3』製作時から、「3で過去の犯人をたどり、4で警察内部の話を描いて終わりにする」つもりだったようである。
また、『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』が同じく2012年9月1日にテレビスペシャル(テレビ版最終作)として放送された。
あらすじ(第一話から)
警視庁の青島俊作巡査部長は、ついに憧れの刑事になることができた。
赴任先は東京都江東区青海港区台場にある東京湾岸警察署。
所属部署は刑事課強行犯係である。
ドラマのような刑事を想像していたが、なってみたら大違い。
事件現場への移動は主にタクシーで、覆面パトカーは書類にハンコをいくつも貰わないと使わせてもらえない。
実際の仕事も地味で、殺人事件がおきても初動捜査は機動捜査隊が仕切り、所轄署の青島らは満足に話もきけない。
その後、捜査本部は湾岸署に設置されたものの、実際の捜査は本庁刑事部捜査一課がとり仕切り、青島らは運転手や道案内ぐらいしかやらせてもらえないのだ。
署長と副署長はお偉いさんのご機嫌とりに忙しい。
コンピューターの営業マンから転職した青島は、「これじゃサラリーマンと変わらないじゃないか」と腐る。
やっと取調べの仕事が入ったが、相手は鍵束をもってうろついていたときに職質を受けた、何の変哲もない地味なサラリーマンの男であった。
青島は取調べを始めるが、話しているうちにその男に対し、思わず自分の気もちを愚痴にし始める。
「サラリーマンと同じで、全然刺激がない」と。
当初はムダにやる気があっただけに、その揺り返しも半端なものではなかった。
その男も特に犯罪をしているとは認められず、家に帰された。
数日後、殺人事件の被疑者が出頭して、本庁が逮捕したとの報せが入った。
「結局自分はロクな仕事をしなかったのではないか」という青島に対し、大先輩の和久刑事は「俺は道案内をした、お前は運転手をした、それで事件が解決した」と、小さな仕事でも腐らないように励ます。
街で起きた小さな事件を調べるため、青島と和久が湾岸署を出ようとエントランスホールにさしかかる。
すると、逮捕された被疑者が本庁の捜査員に両脇を抱えられて、捜査本部のある湾岸署に入ってくるところに出くわした。
被疑者の頭にかけられていた上着を捜査員が取ると顔が露になり、青島はすれ違いざまにその顔を見た。
そこには彼が見知った顔があった。
数日前、青島が取調べをしたサラリーマンの男だった。
思わず男に駆け寄り、「お前、人を殺したのか!?」と胸倉を掴んで詰め寄る青島。
男は「あんたに話すために出頭したんだ。僕も毎日刺激がなかった。それで刺激が欲しくてビルに侵入したら、見つかって思わず殺してしまった」と動機を語る。
心の中にあるものは、男も青島と同じだった。
青島は「君もこっちにくれば良かったのに」と言うと、捜査員につれられていく男を見送る。
そして「俺はあいつになっていたかもしれない」と呟いた。
こうして刑事人生が始まった青島は、コンクリートジャングルで人格変わっちゃうような経験をしつつ、セクシーでダンディな命知らずの男たちとともに、今日も「殺人事件発生!全員出動!」の合図でお台場へと駆け出していく。
シリーズ一覧
以下は公開順に並べているが、『OD1』以降は公開年と作品内時系列が異なるものも多く存在する。
タイトル | 公開年 | 分類 |
踊る大捜査線 | 1997年1月~3月 | TVシリーズ |
踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル | 1997年12月 | TVSP |
踊る大捜査線番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル | 1998年6月 | TVSP |
踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル | 1998年10月 | TVSP |
深夜も踊る大捜査線 湾岸署史上最悪の3人! | 1998年10月 | TVシリーズ |
踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間! (OD1) | 1998年10月 | 映画 |
踊る大ソウル線 | 2001年9月 | TVSP |
深夜も踊る大捜査線2 | 2003年7月 | TVシリーズ |
踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! (OD2) | 2003年7月 | 映画 |
舞台も踊る大捜査線 | 2003年8月 | 舞台 |
プロジェクトK | 2003年12月 | DVD特典映像 |
前日も交渉人 真下正義 | 2005年5月 | TVSP |
交渉人 真下正義 | 2005年5月 | 映画 |
容疑者 室井慎次 | 2005年8月 | 映画 |
逃亡者 木島丈一郎 | 2005年12月 | TVSP |
広報人 矢野君一 | 2005年12月 | DVD特典映像 |
弁護士 灰島秀樹 | 2006年10月 | TVSP |
警護官 内田晋三 | 2007年1月 | TV(『トリビアの泉』) |
深夜も踊る大捜査線3 | 2010年6月~7月 | TVシリーズ |
係長 青島俊作 THE MOBILE 事件は取調室で起きている! | 2010年6月~7月 | ドコモ動画 |
スリーアミーゴス THE MOBILE | 2010年6月 | ドコモ動画 |
踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ! (OD3) | 2010年7月 | 映画 |
踊る大捜査線 THE GAME 潜水艦に潜入せよ! | 2010年7月 | NDS |
係長 青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている! | 2012年8月 | NOTTV |
踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件 | 2012年9月 | TVSP(テレビ版最終作) |
深夜も踊る大捜査線 THE FINAL | 2012年9月 | TVシリーズ |
踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 (ODF) | 2012年9月 | 映画(最終作) |
主な登場人物
テレビドラマ版での登場人物
- 青島俊作巡査部長 : 織田裕二
湾岸署刑事課強行犯係。
基本的に熱血漢でやる気はあるが、当初は空回りばかりしていた。
仕事をしていくうちに、正義とお役所仕事との狭間で段々と要領を覚えていく。
能力は優れているが、銃を撃つときに思わず目をつぶってしまう点はいかがなものか。
ガンマニア。
愛煙家で、好きなタバコはアメリカンスピリッツ。
いつも米軍払い下げの汚いジャンパーを羽織っている。
『OD3』では警部補・係長へ昇進し、強行犯係を率いる。 - 室井慎次警視正 : 柳葉敏郎
当初は警視庁捜査一課管理官。
エリート意識むき出しののちに改心管理官初号機。
キャリアだが東北大卒で、同じ旧帝でも東大閥が幅をきかせる警察庁や地方警務官の中では苦労しているようだ。
当初は青島と対立していたが、やがて彼の能力を見出し、一緒に仕事をすることが多い腐れ縁に。
青島とは「青島は現場で頑張る、室井は偉くなって警察を上から変える」と互いに誓い合う。
新城は彼のことを東大卒ではないことでバカにしていたが、やがて信頼を置くようになり、「あの人は警察に必要な人だ」と高く評価するように。
連続ドラマ以降は、降格させられたり昇進して要職についたり、地位の乱高下が激しい。
部下に対しては寛容かつ公平なところがあり、事件を解決するために本庁と所轄の壁をとり払ったり、部下が勤務時間中にコパンダンスを踊っているのを大目に見るなど、さまざまな配慮を見せている。
劇場版では毎回故郷の秋田訛りを見せる。 - 恩田すみれ巡査部長 : 深津絵里
湾岸署刑事課盗犯係。
窃盗事件を扱うプロだが、いつの間にか強行犯係の青島と一緒に行動していることが多い。
青島より先に刑事になっていたので、正義とお役所仕事の間でのバランスのとり方は当初よりできていた。
しかし、事件によっては正義が暴走してしまうことも。
キモヲタデブのストーカー(伊集院光)につけ狙われていた。
青島とは2828な関係。
青島とは違い、出世する気配がない。
本人曰く、上が出世しないのが原因。 - 柏木雪乃巡査 : 水野美紀
件のサラリーマンの男に父親を殺された、被害者遺族。
事件のショックで口がきけなくなったが、青島のフォローのおかげで徐々に回復していく。
麻薬密輸業者である寿司職人トリオの3人目と交際していたため、一時は警視庁に共犯者ではないかと疑われていた。
だが青島らの機転と努力のおかげで無実を証明できた。
のちに警視庁警察官に合格し、当初は交通課勤務であったが、のちに湾岸署で強行犯係に刑事として赴任する。
真下に一方的に惚れられて交際を始め、のちに結婚し、子どもも産まれたようだ。
『OD3』ではお察しください。
『ODF』で再び登場。 - 和久平八郎巡査長 : いかりや長介
湾岸署強行犯係。
いぶし銀のベテラン刑事。
定年退職後は湾岸署の指導員に就任する(『歳末特別警戒スペシャル』)。
腰痛持ち。
昔、同僚が殺される事件があり、その事件が未解決であったことが心の重荷になっている。
定年退職直前に、青島らのおかげでその犯人が捕まった。
青島に対しては趣味の説教をしつつ、「正しいことをしたければ偉くなれ。偉くなって、警視庁へ行け」と励ます。
警視庁副総監の吉田とは、青島と室井のような信頼しあった仲だった。
だが、2人とも警察の中の厚い軋轢を打ち破ることはできず、警察の未来を若いもんに託す。
演じていたいかりや氏の死去もあり、『OD3』では病死したという設定になっている。 - 真下正義警部補 : ユースケ・サンタマリア
湾岸署強行犯係。
父はキャリア警察官僚、本人も東大卒の若手キャリアなので、将来の出世は約束されたも同然。
だが、ほかの官僚とは違いエリート然としたことはなく、階級が下の青島やすみれ、和久さんらからはタメ口の上に使いパシリにされている。
本人もノンキャリを決して見下すことはなく、またさまざまな現場で誠実に努力し能力を発揮している人に敬意を抱いている。
行動の様相はノンキャリの警察官と基本的に変わらない。
警部、警視と順調に出世し、ロサンゼルス市警察で犯罪交渉人の訓練を受け、本格的な犯罪交渉人となった(『OD2』)。
その後はいろいろあって交渉人をやめることになり、『OD3』終盤では新湾岸署の署長に就任した。 - スリーアミーゴス : 北村総一朗、斎藤暁、小野武彦
前から神田署長、秋山副署長、袴田健吾刑事課長。
3人一緒に接待に忙しい。
署長はカラ出張したり、出入りの業者からリベートをうけとったり、問題がおきたら交通ナントカ協会に天下ろうとしたり、部下と不倫したりと、長らく問題になっている不祥事の温床のような人だが、キャラクターのおかげでかねがね部下から愛されている模様。
青島を湾岸署によび寄せた張本人でもある。
副署長は神田署長のコバンザメだが、舞台を見るとなにか企んでいるようなところもある。
刑事課長は3人の中では、青島を直接管理するだけあってかなり働いている。
3人ともお偉いさんにはいい顔をして接待するが、偉い人でも部下を軽視したり命を顧みないところがあったりすると、形相を鬼にして食ってかかったり、体を張って部下を守ろうとしたりすることも。
ちなみに神田署長は警視正なので、地方自治体採用のノンキャリ警察官ではすでに「上がり」まで出世した立派な人である。
『OD3』終盤では真下の署長就任に伴い、神田署長と秋山副署長が退職し、残った袴田課長は副署長に昇進。
『THE LAST TV』および『ODF』では神田・秋山の両名は湾岸署の指導員として引き続きスリーアミーゴスを結成している。
TVスペシャル版以降の登場人物
- 新城賢太郎警視正 : 筧利夫
『歳末特別警戒スペシャル』で初登場。
当初は室井の後釜の捜査一課管理官。
エリート意識むき出しののちに改心管理官弐号機。
その後は順調に出世。
東大卒のキャリアで、当初はご他聞に漏れずエリート意識が強い人柄であった。
中央官庁では学閥もあるので、東北大卒の室井を見下していた。
当然ながら所轄のノンキャリのことは犬扱い。
だが、青島が被疑者の母親に刺されて負傷したときは、現場の刑事の安否に関心を寄せない上層部の態度を垣間見たことで、「兵隊は犠牲になってもいいのか?」と憤りの態度を見せた(『OD1』)。
以後は苦しい立場におかれやすい室井を擁護しつつ、彼なりに現場と上層部との架け橋になろうと努力している。
沖田仁美が現場を露骨に見下しすぎて配慮が足りず捜査指揮が崩壊したときは、彼女を引き連れて戻るとともに室井が円滑に指揮を引き継げるようにした(『OD2』)。
ある意味、1番の苦労人かもしれない。
また、エリート意識むき出しのときでもお公家さんのような人物ではなく、袴田課長を人質にとった鏡恭一に銃を向け、一発で仕留めようとしたこともある。 - 沖田仁美警視正 : 真矢みき
『OD2』で初登場。
エリート意識むき出しののちに改心管理官参号機。
「女性が活躍する警察」を宣伝するという上層部の思惑で、台場会社役員連続殺人事件の捜査本部長としてやってくる。
演じている本人が宝塚出身なだけに階段をおりてくる姿が似合う。
警察の制服が18世紀のフランス軍のようなデザインだったら、さらにさまになっていただろう。
自信満々で優秀な人間だが、現場への配慮が足りないため柔軟で即応性のある指揮がとれず、本部長を解任されてしまう。
危うく警察から追い出されるところだったが、室井らの助けで警察に残ることはできた。
以後は自らも現場に赴きながら、捜査に励んでいる。
新城とともに室井のピンチを救ったことも(『容疑者 室井慎次』)。 - 木島丈一郎警視 : 寺島進
『交渉人 真下正義』で初登場。
警視庁刑事部捜査一課特殊犯係の捜査員。
パーマ頭にサングラス、作業用ジャンパー、赤いシャツ、白いネクタイという、個性的な風貌をしている。
柄が悪くて言葉も悪いが、根は優しく職務熱心。
立てこもり犯がいる屋内にも果敢に飛び込む。
試作地下鉄車両がハイジャックされた事件や、警察の裏金が絡む殺人事件(『逃亡者 木島丈一郎』)で大活躍。
『OD3』にも登場するが、青島とどのように知り合ったのかは不明である。
『ODF』に出演しないためか、『深夜も踊る大捜査線 THE FINAL』では主役を務める。 - 浅尾祐太警部 : 東根作寿英
『交渉人 真下正義』で初登場。
木島の相棒。
いつも木島にいいように使われ、修羅場をともにすることになる。
一見すると若くひ弱な印象だが、警部である。
特科車両二課に赴任した相沢警部補と境遇が似ている気もするが、相沢警部補と違ってなんだかんだいって部署には馴染んでいる。
木島の仕事に振り回されるおかげで、女性には苦労しているよう。 - 看護師 : 木村多江
『OD1』のゲスト。
青島が負傷して入院した病院の看護師。
日本的な美人でとても優しそうな雰囲気で、ナース服を介して程よくムチムチな体つきが見てとれる。
たたずまいが清楚であるだけに、にじみ出るようなエロさを感じる。
幸薄そうな感じもするが、それがかえって色っぽさを増幅させているようだ。
リハビリをあせる青島の話を聞いてあげた。 - 篠原夏美 : 内田有紀
『湾岸署婦警物語』で初登場。
湾岸署刑事課強行犯係。
「女青島」の異名で呼ばれている通り、青島と似たような性格の持ち主。
元々は交通課の婦警さんで、のちに刑事課に配属される(『OD3』)。
結婚しており、2児の母親でもある。
父親は青島が杉並北署に勤務していたときの上司である。 - 和久伸次郎 : 伊藤淳史
『OD3』で初登場。
新湾岸署への引っ越しの最中に刑事課にやってきた刑事で、刑事課強行犯係に配属。
和久平八郎の甥っ子にあたり、先述の「正しい事をしたければ偉くなれ」といった格言が記された「和久ノート」を形見としてもち歩いている。
実は青島と同じく元サラリーマン。
そのせいか青島から何かと雑用を押しつけられる羽目になる。
伯父と同じく腰痛持ちらしい。
他多数。
関連動画
関連項目
- 11
- 0pt