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曖昧さ回避
概要
赤痢とは、大腸に炎症を起こし、血便などの症状があらわれる感染症のことである。
病原体によって細菌性赤痢とアメーバ赤痢に分かれる。
細菌性赤痢
主に発展途上国で発生するイメージが強いが、日本などの先進国でも流行することがある。
日本でも高度経済成長期より前は年間2万人程度がこの病気で亡くなっていたが、近年は激減している。しかし現在でも海外旅行者が帰国後に発症する例(輸入感染症)や国内発生例もたまにみられる。
主に赤痢菌に汚染された食品を食べることで食中毒として発症するが、感染力が非常に強い細菌であるため、大便を介して人から人に伝染することもある。
赤痢菌は熱に弱いため、水や食品は十分に加熱してから食べると良いだろう。また、発展途上国では水道水ではなくミネラルウォーターを飲むことを強く推奨する。ちなみに予防のためのワクチンは存在しない。
主な症状は発熱、激しい腹痛、水のような下痢(水様便)など。人によっては吐き気や嘔吐を伴うこともある。
実は赤痢菌には4種類あって、最も危険な志賀菌(細菌学者の志賀潔が発見した)はベロ毒素と呼ばれる毒素を出すため、大量の下血や危険な合併症(溶血性尿毒症症候群、脳症など)を起こすこともある。ちなみにベロ毒素は腸管出血性大腸菌O157の毒素と同じものである。
昔は疫痢といって意識障害や痙攣などの神経系の重い症状を伴う激しい下痢を起こし短時間で死亡する劇症型の赤痢もあったが、現在はほぼみられなくなった。
一方、先進国に多いソンネ菌による赤痢はあまり重症化せず、軽い下痢程度で済むことが多い。
治療は主に抗生物質(抗菌薬)が使われる。また、脱水症状を防ぐために水分補給も重要となる。
感染症法では三類感染症となっているため、感染者は陰性になるまで飲食業やサービス業で働くことが禁止される(就業制限)。また、学校も出席停止となる。
赤痢菌
大腸菌に近い仲間の細菌だが、赤痢菌のほうがより重大な病気を起こす危険性が高いことから大腸菌とは区別されている。
感染症法ではO157やコレラ菌、腸チフス菌などと同じ四種病原体等となっているため、取り扱いの際には厳重な注意が必要となる。赤痢菌の中でも特に志賀菌と呼ばれるタイプは猛毒のベロ毒素を産生するため、特に注意を要する。
ちなみにヒト(人間)だけでなく猿にも感染する。猿も赤痢菌に感染すると下痢・下血などヒトの細菌性赤痢と似たような症状があらわれる。
アメーバ赤痢
こちらは赤痢アメーバと呼ばれる寄生虫(原虫)による大腸の病気。
赤痢アメーバが大腸に潰瘍を作るため、腹痛や粘血便などの症状があらわれる。細菌性赤痢に比べて症状が軽いことが多いが、薬で治療しなければ慢性化する危険性が高まる。また、稀に肝臓などに転移することもある。
感染症法では五類感染症となっている。細菌性赤痢よりは危険度がやや低いとされているが、それでも重症化すると死に至るケースもあるので注意が必要。
関連項目
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