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ワクチン(独:Vakzin)とは、動植物に与えて感染症にかからないようにする医薬品のこと。生物が自然に持つ免疫機構を利用して特定の病気にかかりにくくする。
ワクチンはドイツ語であり、英語では「ヴァクシーン」(Vaccine)になる。
曖昧さ回避
- コンピューターウイルスを排除するためのウイルス対策ソフトのこと。 → アンチウイルスソフト
- デジモンの属性の一つ。他にデータ属性、ウイルス属性がある。「ワクチン種のメタルグレイモン」
概要
弱毒化、無毒化したウイルスや細菌などの抗原をわざと接種して抗体をつくり、その病気にかからないようにする予防法。感染症拡大を押さえ込むために欠かせない要素であり、致死的な病気に対抗する最強の武器である。何らかの理由でワクチンが作れない場合は、基本的に感染者を隔離して自然治癒するのを待つしかなく、家畜なら可能な限り速やかに群ごと殺処分することが望ましい。
もともと、天然痘などは一度かかると二度はかからないことが知られていたため、天然痘患者のかさぶたをわざと接種したり、はしかも二度目はかからないためはしかをうつしてもらうなりの原始的なワクチン的な手法は昔から行われていた。当然何の加工もしていない病原菌を取り込むことになるのでそのまま発病して死ぬ可能性が高い危険行為である。
近代的なワクチンはイギリスのジェンナーが発見した。牛痘と言う病気になると天然痘にもかからなくなることがイギリスの田舎では知られていた。牛痘は牛にかかる天然痘の一種だが、人間にも感染する。しかし、人間には毒性が強くなく軽症で済むことが多かった。そこで、ジェンナーは使用人の子供に牛痘のウイルスを接種し、その後天然痘のウイルスを接種するという、今だったら絶対怒られるような人体実験を行い、その有効性を証明した。
これを天然痘以外にも応用し、様々な細菌、ウイルスのワクチンが作られるようになった。主なワクチンとしては細菌またはウイルスをうまく加工し弱毒化(増殖しにくくしたり毒素を出しにくくしたり)したもの、細菌やウイルスをバラバラにした断片を使うものがある。
ワクチンは病原体の感染発病メカニズムに依存するため開発は基本的にその都度手探りで進めるしかない。完全に安全かつ効果的なワクチンというものは殆ど存在せず、正式に認可されるのは臨床試験段階に進んだ内の1%未満とも、実用化までに最低10年かかるとも言われる。ワクチン開発には非常に金と人材と時間がかかるため、たとえ作れる可能性があっても患者が少なかったり病状が深刻化せず自然治癒するような病気のワクチンを作る企業は殆どない。
予防接種
事前にワクチンを接種する事で病気への罹患を防ぎ、同時に周囲への感染を防ぐのが予防接種である。
日本では乳児への予防接種が普及しているため、生後数か月の頃からワクチン接種が行われている。その際に使われるワクチンは4種混合ワクチンや3種混合ワクチンなど、一回の摂取で複数の病気への抗体を得られるものも使われている。
毎年冬になると流行するインフルエンザへの予防接種も広く普及している。かつては小学校中学校で児童・生徒を対象とした集団予防接種が行われていたが、2020年現在では個別の摂取に切り替えられている。
アフリカなど、衛生環境が整っていない国や日本ではすでに根絶された病気がまだ存在する国へ海外旅行をする際にもワクチンの予防接種が推奨されることがある。本人の安全はもちろん、日本に帰国する際に海外から危険なウイルスを持ち込ませず社会全体を守る目的もある。
人間だけでなく、ペットへの予防接種というものもある。特に犬・猫に対しては広く普及しており、定期的な摂取が推奨される。
事件・問題
反ワクチン主義
ワクチンに対して懐疑的な目を向けている者たちもいる。それが「反ワクチン主義(ワクチン反対派、ワクチン忌避派などとも)」「ワクチン陰謀論」と呼ばれるものたちである。
別記事があるためそちらを参照。 → 反ワクチン
ワクチン格差問題
医薬品は年々その開発費が上昇しており、少しでも効果が上がる新薬開発には、優れた人材や設備および高性能コンピュータなど、億や兆単位の資金が必要となるケースも有る。
メーカーは開発費用を回収するため医薬品の価格高騰が起きる。もちろん大量生産などで価格は抑えられるが、結局その薬品を買えるのは一部の先進国・権力者層・富裕者層だけであり、経済的に貧窮している発展途上国などはその「安全」の範囲内に入れない。
パンデミックの収束には先進国だけでなく途上国のウイルス汚染の根絶も必要となる。しかし、世界保健機関(WHO)などが立ち上げた低価格で広くワクチンを普及させる枠組み「COVAX」では、アメリカやロシアなどが自国での囲い込みを優先して参加しておらず、COVAXが想定している1回の接種費用約3ドル(約300円)という価格ですらアフリカやアジアの貧困国は払うことが難しい状態にある。
人命を優先としてコピー薬や低価格薬または無料の生産権などが出回れば多くの国と人は助かるが、今度はそれで割を食うのが薬品メーカーである。資金やコンピュータなどのリソースを割いて作られたその薬品およびレシピや特許には、今後の研究費用や従業員の賃金、運送やパッケージ等の協力企業の賃金などといった様々な利益が含まれているからである。
コピー薬など作られた場合メーカーは本来の利益がなくなるのだから、次に襲ってくるであろう病気の研究開発の資金がなくなる。最悪、利益すら生み出せなくなり薬品メーカーが倒産した場合、人類は次の病気を研究・克服できる可能性を一つ失うことになる(途上国でも生産できるため薬品のレシピを開示するよう要求されたり、途上国で違法コピー薬を作られたメーカーが国際世論の批判や人命尊重の観点で泣き寝入りしたケースもある)。
- 途上国のワクチン調達支援 アジア開銀が9400億円融資 (日本経済新聞)
- 途上国へのワクチン供給、コストやインフラ課題山積み (日本経済新聞)
- 世界の「ワクチン格差」浮き彫りに 途上国ではめどたたず (NHK)
- ワクチン格差アジアでも 先進国“買い占め”に批判 寄付募る国も (西日本新聞)
- 知的財産権の保護は世界にとって望ましいのか (夢ナビ)
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関連項目
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