海上保安庁とは、日本政府を構成する「庁」のひとつ、海上の安全と保安を維持する国土交通省の外局である。
事実上の日本の沿岸警備隊である。
概要
略称は海保。英語表記は「Japan Coast Guard」。かつては「Japan Maritime Safety Agency」を用いていたが、外国から見ると何をやっている組織なのか分かりにくいため、現在の表記に改まった。海上の安全と保安を維持する目的で設置された日本の省庁の1つで、国土交通省に属する。
予算は約1800億円、職員数はおよそ1万2千人前後、予算の半額が大体職員へのお給与である。国土交通省の直下に配置することにより純粋な行政組織として動作する国境警備隊と定義されている。
諸外国の沿岸警備隊・国境警備に相当する組織。日本は世界有数の広い領海とEEZを有する為、沿岸警備機関としてはかなり大きい。沿岸警備という特性上、また海自の海上警備行動の発令は限定的であることから、国境最前線で常に戦っている。朝鮮戦争時には特別掃海隊が朝鮮半島へ派遣され、触雷により掃海艇が撃沈。戦後初めて戦死者を出した。
「海自とは犬猿の仲だ」と言う人もいるが、不審船を真っ先に見つけた哨戒機からの情報を受けて現場へ向かったり、一緒に遠洋へ海賊対処に行ったりと、やはり協力することが多い。お互いに帝国海軍の末裔のような仕事をしていることから艦船の名前が被ることもあったが、今は被らないように工夫しているらしい。
日本で実戦経験を一番積んでいる組織かもしれない。
役割
海難事故が起こった際に救助を行う組織、または日本のEEZ=排他的経済水域に侵入する密漁船と戦っている組織としてのイメージがあるが、正確には
の4つが主な任務となる。
前述した、事故などの際の救助業務、密漁船・領海侵犯・密漁などに対する警察的業務などはもちろん、海上の船舶の交通管理と、海図の作成や天候情報などの海洋情報の管理も、同庁の業務となっている。
災害救助の際などに海上自衛隊と協力することもある。諸外国の船に対応する際、艦艇に対しては海上自衛隊が、船舶に対しては海上保安庁が担当するようになっている。
日本政府の見解では、同庁は軍事組織ではない。原則として、軍事活動には参加しないとされている。また海上保安庁法も、同法で定める規定が軍隊を編成するものとして解釈されるのを禁じている。「海の警察」と自称するのもそれが所以である。
海上保安庁法
第二十五条
この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。
諸外国の沿岸警備隊が軍事活動に参加することを認められていることに対して、特徴的な面である。 但し、自衛隊法では、内閣総理大臣が海上保安庁を防衛大臣の統制下に置く権限が定められている。
自衛隊法
第八十条
内閣総理大臣は、第七十六条第一項又は第七十八条第一項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。2 内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、防衛大臣にこれを指揮させるものとする。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による統制につき、その必要がなくなつたと認める場合には、すみやかに、これを解除しなければならない。
我が国では、公式には自衛隊は軍隊ではないとなっており、その点から言えば自衛隊法と海上保安庁法の間にはなんらの矛盾もない。一方で、海上保安庁を他国の警備隊と同じく『準軍事組織』として見なす国も多い。
警察と同様の非軍事組織と位置づけることによって他国との揉め事がおこった際に、軍事衝突前として外交交渉できるという建前(外交カード)を身をもって実装しているのがこの組織でなのである。
装備
日本が島国であり、EEZ面積も非常に広いこともあってか、世界の沿岸警備隊の中でもトップクラスの重装備。
平時活動している船舶数ではアメリカのコーストガードをも上回り、総保有数は459隻。航空機の保有数は73隻である。日本の持つ広大なEEZの警備・管理にはこれでも十分とはいえない。
船艇(計459隻)
警備救難用船艇(419隻)
船艇の大半を占める。その名の通り、警備救難の任務を担う船艇。
巡視船116隻、巡視艇230隻、消防船5隻、消防艇4隻、特殊警備救難艇64隻から成る。
巡視船は古いものだと非防弾のものがあり、また遡れば「軍隊ではない」とのことから非武装の時代もあった。現在では後述の通り、40mm機関砲を積んだ化物から、機関砲4門に加えて対空レーダーまで装備したどう見ても駆逐艦としか思えない船艇など、強烈な船艇が揃っている。もしまかり間違って密漁船に乗ることになっても、見つかった時に特攻しようとかは考えてはいけない。衝突してきた密漁船はほぼ例外なく転覆・沈没の憂き目に遭っている。海上の警備において、いちいち海自が出動していては諸外国への刺激となるため、海上保安庁の装備が強化されていくのはある意味仕方ないとも言える。
消防船は、「ひりゆう型」の名で有名。40m先の消火対象に放水可能な優れものであり、特に2代目は、最高27mに達する伸縮型放水塔も備えている。いずれも優れた実績を持つ。
特殊警備救難艇には、放射能漏れを検査する船艇などが含まれている。
測量船(13隻)
航路標識業務用船(24隻)
灯台の設置は海上保安庁の業務である。灯台見回り用船艇はこの船艇のうち21隻を占めており、絶えず全国の灯台を管理している。
実習船(3隻)
残りの3隻は実習用。
航空機(73隻)
警備や救助、監視などの業務に加え、火山調査・沿岸警備・被災地への物資輸送などにも用いられる。固定翼機27機、ヘリコプター46機から成る。
主な船艇
PLH31「しきしま」
海上保安庁の保有する巡視船のうち13隻は、700トン以上の大型船『PLH型』であり、いずれも遠方海域での大規模な救助活動の際の総拠点的役割を担っている。が、その中でも、排水量6500tの最大型船艇が、この「しきしま」である。巡視船(Patrol boat)としては世界最大級で、概ね諸外国の駆逐艦に相当する大きさ。
プルトニウム輸送船の護衛という最も危険な任務を担当しているためか、35mm機関砲・20mm機関砲をそれぞれ2門ずつ装備している。また、海自の護衛艦でも現役のOPS-14対空レーダーを装備しており、上空からの襲撃にも対応できるようになっている。大型ヘリ・AS332「シュペールピューマ」を2機搭載しており、周辺海域の哨戒能力も高い。 本来は護衛艦として建造されたものであったため、この重装備もある意味当然である。
また、プルトニウム輸送護衛という任務の性質上、その航路・日程は一切機密事項となっており、途中で寄港することもない。内部構造も、シージャックを防ぐために乗組員・国会議員以外には非公開である。さらに、任務中、船内では小銃を装備した特殊警備隊がスタンバイしている上、スパイ対策のために船長などを除く乗組員の殆どは海保の職員名簿に名前が載っていないという徹底ぶりである。本来ならば上記の排水量なども全て機密であった。
今のところ、護衛任務は全て問題なく成功させている。1992年には、グリーンピースのキャンペーン船「ソロ」が「しきしま」に衝突してくるという事件が起こったが、どう贔屓目に見ても勝ち目の全く無い行動であったため、今ではグリーンピース的にも黒歴史である。ある意味勇敢にも見えるが、もし「しきしま」が本気を出していた場合、例え「ソロ」にセガールが乗っていても撃沈は免れなかったケースである。
最近は海保が海外で活動することが増え、偉い人たちが極力海自ではなく海保に仕事を回そうとするので、2009年に新たに同型船を2隻建造する計画を内定。
建造する艦はしきしまの設計・建造から20年の月日が経つ事から、船首とヘリコプター格納庫上にある35ミリ機関砲を2006年建造のひだ型巡視船と同型の40ミリ機関砲に変更するなど、各所に改正が加えられた準同型船の建造となり、平成22年度予算で1隻の建造が承認され2012年7月4日にPLH32「あきつしま」として進水、2013年(平成25年)11月28日に竣工した。
PS180トン「みはし型巡視船」
4隻存在する巡視船。『PS』は、350トン以下の小型巡視船の区分。目標追尾型遠隔操縦機能=RFS付20mm機関砲を搭載した怪物。荒れた海の上でも、目標を正確に捉える。日向灘不審船事件を契機に開発された船艇で、防弾装備が充実している。
九州南西海域工作船事件では、3番船「いなさ」(PS03)と4番船「きりしま」(PS04)が、あまみ型1番船「あまみ」(PM95)と共に工作船を追尾した。「みはし」型の両船は荒れた海で逃げ回る工作船を追い掛け回し、その状況でも正確に船体射撃を行うなど、高い性能を見せた。工作船乗員から突撃銃や機関銃による攻撃を受けた際には、「いなさ」が正当防衛射撃を実施。工作船は自爆し沈没した。この事件の教訓が、次に記す「あそ」型の主武装大口径化に繋がる。
なお「いなさ」と「きりしま」の損害はそれほど酷くなかったが、「あまみ」は防弾装備が無かったので銃弾が操舵室の窓などを貫通し、乗務していた海上保安官が負傷している。
PL「あそ型巡視船」
PL型は、700トン以上の船艇のうち、「しきしま」などのPLH型以外の、ヘリコプターを搭載していない船艇。
250フィートの大型船艇でありながら、対工作船任務用に機動力を確保するため、船体が軽合金で建造されているという、当時は世界でも類を見なかった船艇。防弾措置は問題なく施されている。
高精度の射撃管制装置=FCSに連接された40mm機関砲を装備している。この機関砲は非常に有効射程が長く、工作船乗員が所持していることもあるRPG-7、携行型対空ミサイルなどの射程外から射撃を行うことが出来る。
また、停止命令を表示する電光掲示板と、赤外線を利用した捜索監視装置を備えており、特に夜間の警備行動に優れている。
国際協力
海賊対応
マラッカ海峡及びアデン湾で頻発する海賊事案に対処し、船舶の航行安全確保に貢献している。
マラッカ海峡事案に対しては、周辺国の沿岸警備能力向上に協力し、また海賊に関する情報収集も行った。前者においては巡視船を派遣し、合同訓練を行うなどをした。後者に関しては私服の海上保安官で現地で活動し、海賊について知る者と接触して情報収集を行うなどした。
アデン湾においては、派遣される海上自衛隊の護衛艦に法執行官として乗船し、また周辺国沿岸警備の能力向上のための協力を行っている。護衛艦派遣決定に至る議論では、海自を忌み嫌う人々から、
「海賊なんてマンガでしか知らない」
「海賊なんて強盗なんだから、これは警察の仕事。海保が行け」
「護衛艦が行くなら「しきしま」が行けばいいじゃないか。航続距離十分だろ」
など「vipでやれ」と言いたくなるような反論が出た。幸いにして当初案通り、海保と海自が協力し海賊対処することになった。
船主組合が最初に海賊対処を要望した相手は海保だったが、元々沿岸警備が目的の海保には運用面で負荷が大きく、単独での警備実施はほぼ不可能であった。 そこで海自と共同で行うと言う、合理的な方法に行き着いたのである。
マスコット
うみまる
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タテゴトアザラシの子供をモチーフにしたキャラクター。二等海上保安正(Lieutenant。一等海尉、海軍大尉相当)。妹のうーみんがいる。
うーみん
うみまるの妹。三等海上保安正(Ensign。三等海尉、海軍少尉相当)。3サイズはナ・イ・シ・ョ!。
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