日食とは、太陽が月により一部やすべてが覆い隠される天文現象である。
「金環日食」「部分日食」「皆既日食」についても本項で扱う。
(本来の表記は「日蝕」であるが、以下では現在一般的な「日食」で統一する。)
概要
分類
日食は、まず月と太陽の重なり方によって、中心食と部分日食に分類される。
中心食とは月と太陽が完全に重なる日食のことで、それ以外を部分日食と呼ぶ。
中心食は、さらに月と太陽の視直径の大小によって、皆既日食と金環食に分類される。
中 心 食 |
皆 既 日 食 |
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皆既日食とは、月と太陽が完全に重なり、かつ月の方が太陽より視直径が大きい時に生じる日食。 皆既日食が生じる地域では、月夜くらいまでの暗さになり、星が見える程になる。宇宙から見るとその部分だけ月の影が落ち、夜のように見える。なお、肉眼で観測してよい日食は皆既日食のみ。全世界で年に一度程度の割合で生じる。太陽が月に完全に隠れる直前と、月から太陽が出てくる直後の一瞬にリングの一部が明るくなるダイヤモンドリングという非常に美しい天体現象が見られる。 |
金 環 日 食 |
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金環日食(または金環食)とは、月と太陽が完全に重なるものの、月より太陽の方が視直径が大きい時に生じる日食。 月からはみ出た太陽が金の輪の様に見えることからこの名前が付けられた。太陽がはみ出ているため、皆既日食ほど暗くはならない。欠け具合によってはほとんど暗くならない場合もある。 月が完全に太陽の中に入るギリギリ直前と、月が太陽から出るギリギリ直前にベイリービーズという光の線にツブツブが見える現象が見られる。この現象が起きる理由は、月に山・谷があるため月の縁を拡大してみると滑らかな円ではなくデコボコであるためおこる現象である。 |
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部 分 日 食 |
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その他の現象
- 金環皆既日食
- 食の経過で月の見かけの大きさが太陽と一致する場合、中心食のときのみ皆既日食、経路の両端では金環日食で見える場合がある。これを金環皆既日食と呼ぶ。頻度は少ない。
全周にわたってベイリービーズが見られることがある。これをダイヤモンドネックレスと言われ、世界的に見ても非常にレアな天文現象である。
日本では1948年5月9日に礼文島にて観測された。
前回の金環皆既日食は 2013年11月3日 アフリカ大陸中部~東部であった。
次回の金環皆既日食は 2023年4月20日 オセアニアと予想されている。
- 日出帯食
- 日食が起こった状態で日が昇ること。
- 日入帯食(日没帯食)
- 日食が起こった状態で日の入りを迎える事。
日本で見られる日食の予定表(2010年~2049年)
年/月/日 | 中心食の種類 | 見られる地域 |
2010/1/15 | 部分日食 | 鹿児島、沖縄など。日入帯食。 |
2011/6/2 | 部分日食 | 北海道、東北など。日出帯食。ほとんど欠けていている事が分からない。 |
2012/5/21 | 金環日食 | トカラ列島、屋久島、種子島、九州・四国・近畿・中部・東北の一部、関東の大部分など。 |
2016/3/9 | 部分日食 | 全国。 |
2019/1/6 | 部分日食 | 全国。 |
2019/12/26 | 部分日食 | 全国。東日本では日入帯食。 |
2020/6/21 | 部分日食 | 全国。 |
2023/4/20 | 部分日食 | 沖縄と九州、四国、東海、関東の南岸。 |
2030/6/1 | 金環日食 | 北海道の大部分。 |
2031/5/21 | 部分日食 | 沖縄。 |
2032/11/3 | 部分日食 | 関東から北。日入帯食。 |
2035/9/2 | 皆既日食 | 能登半島から茨城県にかけて。 |
2041/10/25 | 金環日食 | 北陸、中部、東海地域と伊豆諸島。 |
2042/4/20 | 皆既日食 | 伊豆鳥島。 |
2042/10/14 | 部分日食 | 屋久島や種子島より南の地域。 |
2046/2/6 | 部分日食 | 北海道の北端を除いた全国。東北地方より南では日出帯食。 |
2047/1/26 | 部分日食 | 全国。 |
2049/11/25 | 部分日食 | 全国。東日本、北日本では日入帯食。 |
観察方法
日食を見るときには、絶対にしてはならないのは肉眼で見ることである。唯一の例外は皆既日食が起こっている場合のみである。太陽の光は強いので、直視すると数秒で網膜が焼けてしまう「日食網膜症」という病気になる。最悪の場合失明するので絶対にしてはいけない。これは薄雲がかかっているときなど、光が弱くなっていても同様である。望遠鏡、双眼鏡は論外である。
日食を観察する際には、一般には「日食グラス」や「日食メガネ」として売られている観察専用のグラスを用いる。ただし、 グラスを用いても長時間の観察は避けるべきである。また、グラスを用いても、双眼鏡や望遠鏡を使ってはいけない。粗悪品が出回っているので、蛍光灯の形がはっきり見えるもの、強い光を当てるとひび割れや穴が確認できるもの、可視光透過率0.003%以上、赤外線透過率3%以上のものは使ってはいけない。
カメラの場合は「NDフィルター」と呼ばれる専用のフィルターを使わないと、CCDが焼けてしまう。日食グラスをフィルターに用いたり、NDフィルターを肉眼観察に用いてはいけない。
一見黒いものや金属箔によって光をさえぎって見えたとしても、紫外線や赤外線が素通りしている場合がほとんどなので、煤をつけたガラス、お菓子の袋などのアルミ箔、その他黒いビニールや下敷き、感光したフィルム、サングラスなどは絶対に使用してはいけない。 ただし、日食観察専用の下敷きやフィルムはある。
日食グラスやNDフィルターが無い場合、ピンホールを使う方法や、手鏡を使う方法で安全な観測が出来る。また、道具無しでも、皆既日食以外は木漏れ日による観測が出来る。いずれの場合も、普段は円である太陽の像が欠けて見える。
2012年5月21日の金環食
日本中で見られる金環食であるため、国立天文台を中心として日本中の天文台などに観測の呼びかけを行なったり。日食を観測する際の注意(「日食グラス」「日食メガネ」の使用)を呼びかけている。
国立天文台 金環食HP http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/
2012年金環日食日本委員会 http://www.solar2012.jp/
日本全国でみられる金環食の際に起こるベイリービーズの起こる時刻を日本中で極めて正確に観測し、太陽の正確な直径を測定しようというものである。
金環日食観測チームB(ベイリービーズ拡大観測チーム) http://www.eclipse2012.jp/team-b/
国際天文連合が採用する太陽の半径(696000km)が1891年に観測されたことと、当時の観測機器の限界により誤差±500km程度もある。その後、世界中の天文学者が太陽直径を発表しているが正式な採用となっていない。
JAXAが2007年に打ち上げた「かぐや(衛星)」によって、月の正確な形状が±10mで分かったため、月が太陽を通過する際に発生するとベイリービーズの発生タイミングを正確に観測すれば太陽の『現在の』正確な大きさが解るはずである。月面の±0.01km→太陽±4kmとなり、その他の天文運動の誤差も加味される。
ただし、データの突き合わせ等に数ヶ月かかるため、発表までに時間が掛かる模様。
2012年5月25日の中間発表にて、2ヶ所の観測データから太陽半径が696010±20kmであると発表された。さらに全部の観測データ(11ヶ所)を付きあわせてより正確で確実な数値を計算するとしている。
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