TOPPANホールディングスは「印刷会社」から脱却し、企業の課題を解決するソリューションカンパニーへと生まれ変わろうとしている。とりわけマーケティング領域への投資に積極的だ。だが、業務効率化のためのDXは一定の成果を上げたものの、新価値創造には至っていない企業が多いと聞く。グロースX COOの山口義宏氏が様々な企業の経営層と話す中で浮かび上がってきた3つの課題を解説する。
今回は日経クロストレンドの記事の中から、「打倒コンサル&広告代理店、TOPPANが名乗り 脱印刷会社の野望」を紹介します。
本記事によればTOPPANの齊藤昌典社長は、企業向け支援事業において「マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)」の分野が最も伸びしろが大きいとにらんでおり、2025年度までに売上高を23年度比で2.8倍となる700億円まで引き上げる計画を掲げているそうです。
▼関連記事 打倒コンサル&広告代理店、TOPPANが名乗り 脱印刷会社の野望マーケティングDXは非常に抽象度の高い言葉ですが、記事内で齊藤氏はその定義を「顧客データを基軸として、事業のデジタル基盤(DX)、顧客体験(CX)、従業員体験(EX)の変革を同時並行で行い、計画から実装、実行まで伴走しながら事業全体の改革(BX)につなげる」と述べています。
この説明は、DXというデジタル基盤上で、CX=顧客体験とEX=従業員体験を変化させた結果、BX=事業変革が実現するという本質的な構造の関連性が形容されており、私も大いに賛同する内容です。
しかし、これだけの多くの要素を連動させながら変革を実現できるスキルを持つ人材をそろえ、チームを組成するのは、まさに「言うは易く行うは難し」なテーマです。
TOPPANは「専門人材約700人育成、新卒でも『マーケ採用』開始」と書かれていることから、齊藤社長の本気度がうかがえます。
本稿では「マーケティング人材育成」を生業とする、グロースX(東京・渋谷)での筆者の経験を踏まえ、DX推進におけるCX、マーケティングが関連する領域での「よくある課題」について書いてみます。
経営視点でのDXの課題は3つに集約
DXという言葉が一般的になってからずいぶんと年数がたちました。上場企業のIR資料において「DX推進」が経営テーマに掲げていない企業を挙げるほうが難しい状況です。
既にこの4~5年で大企業を中心にDX投資は第1段階が進み、その成果を評価しつつ、課題がクリアに見えてきたのが現状と言えます。
経営層の皆さまと話していると、DX推進において3つの課題がよく挙がります。
1つ目は、デジタル化に当たり、その基盤としてデータベースとITツールに投資をし、業務の効率化やデータ分析においては一定の成果を上げたものの、CXまで変えるには至っていない。また、データを基にCXをアジャイルに磨いていく組織にもなっていない。
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