Web2.0とは何かを定義するのは難しいが,大きな流れとしてテクノロジからビジネスへと多くのエンジニアが視点を移していることは間違いないだろう。言語,設計,コンパイラ,ライブラリ,といった要素技術から,SOA(Service Oriented Architecture)の視点,例えばGoogle APIをどのように使ってサービスをミックスし,新しいビジネス価値を提供できるか,というサービスの視点がより時代に合ったものになっていると思う。エンジニアがビジネス・モデルに関心を示し,ビジネスの言葉で技術を語るようになってきているのだ。さらに,アジャイル開発の考え方が浸透し,「ビジネス価値(Business Value)」を開発の最優先とする考え方が広まっているという背景もある。
この連載では,このような時代におけるソフトウエア製品開発にはどういった視点が必要か,また,その開発はどのような手法によるべきか,という点について考えていく。プロダクト・アウト,マーケット・インから「コンセプト・アウト/デマンド・イン」へといった製品開発手法の移り変わり,アジャイル・ソフトウエア開発との関連,「永遠にベータ版」に由来する保守工程の重要性の高まりなど,様々なトピックを取り上げていく予定だ。現場で開発に携わっている方から,Web周りのマーケティングに従事する方まで広く読んでいただければ幸いである。
目次:
- 第1回 イノベーションはマーケット・インでは生まれない
- 第2回 イノベーションのカギは“民主化”にあり
- 第3回 コンセプト・アウト/デマンド・インでユーザーの要望を取り込む
- 第4回 コンセプト・アウト/デマンド・インを実践する3つの企業
- 第5回 コンセプト・アウト/デマンド・インと相性が良いアジャイル開発
- 第6回 アジャイル開発でタイム・ボックスを決める---TRICHORDの開発現場から
- 第7回 “相対見積もり”でストーリの規模を効率よく見積もる---TRICHORDの開発現場から
- 第8回 チームの開発速度を計測してリリース・プランニングに役立てる
- 第9回 作業の終了条件を意識してタスクを切り出す
- 第10回 タスクのサインアップでモチベーションを高める
- 第11回 タスクかんばんで作業の進ちょくを見える化する
- 第12回 バーンダウン・チャートで「終わるかどうか」を見える化する
- 第13回 バーンダウン・チャートによるプロジェクト管理の進め方
- 第14回 ペア作業で効率の全体最適化を図る
- 第15回 ペア作業による品質向上は目的ではなく結果である
- 第16回 ニコニコ・カレンダでチームの士気を見える化する
- 第17回 ニコニコ・カレンダからチームの状態を読み取るコツ
- 第18回 “ふりかえり”でチーム全員の成長を図る
- 第19回 TRICHORDの開発現場に見るふりかえりの進め方
- 第20回 レゴブロックでバグを見える化する
- 第21回 付せんとスチレン・ボードを使って課題をチームで共有する
- 第22回 “時間割”を作り,タイムボックスを意識して作業する
- 第23回 机の配置などを工夫して開発生産性をアップ---ワークスペース・メイキング
- 第24回 変化を前提にプロジェクトを進める(最終回)
平鍋 健児
株式会社チェンジビジョン代表。オブジェクト指向分析設計とプロジェクトの「見える化」を実践・推進する舞踏派コンサルタント。UMLとマインドマップを融合させたモデリング・ツールJUDEを開発中。
懸田 剛
チェンジビジョンでプロジェクトの見える化ツール「TRICHORD(トライコード)」の開発を担当。最近,ハックという言葉よりも“工夫”という素晴らしい日本語があることを再認識した。工夫の積み重ねが“功夫”になる。個人サイトはhttp://giantech.jp/blog。