プリンテッド・エレクトロニクス関連のスタートアップであるエレファンテック(東京・中央)が、プリント回路基板(PCB)製造に革新をもたらす技術を開発した。リジッド基板で一般的なFR-4(ガラスエポキシ基材)の基板に対して、インクジェット印刷で銅による回路を形成できる技術を2024年12月17日に発表した(図1)。2025年前半には試作提供を開始する予定だという。
同社はこれまで片面フレキシブル基板に対して、インクジェット印刷技術を使った基板を提供してきた。ただ、片面フレキシブル基板は市場規模が全体の2%程度しかなかった。今回の技術によって、面積ベースで市場の約8割(2023年、富⼠キメラ総研調べ)を占める一般的な多層のPCBにも、インクジェット印刷技術が広く普及する可能性が開けた。インクジェット技術を使うことで、従来法と比べて銅の使用量を約70%低減でき、銅使用量削減を主として業界全体で製造コストを年間1兆円以上減らせる可能性があるとする。
これまでのリジッド基板では主に銅張積層基板を使っていた。これはFR-4基板の両面に銅板が張られたものだ。回路は、銅張積層基板から不要な部分の銅をエッチングで取り除いて形成する。
今回の技術では、開発したプライマー(下地材料)と銅ナノ粒子インクを用いて、FR-4基板の上に銅の層をインクジェット印刷で形成できる(図2)。しかも、層間を結ぶビア(穴)の形成も同じ印刷工程でできるという。耐久性も確認済みだ。
同社ではこの技術を適用して4層や8層の基板を製造し、多層基板が作製可能なことも確認した。配線の幅と隣り合う配線同士の間隔を表すL/S(ライン・アンド・スペース)は50/50μmを達成した。
さらに、今回の技術によって、回路に100μm級の厚い銅膜を形成できる可能性がある。試作では100μm程度のものを作製できた(図3)。厚みを持たせることで、抵抗を低減し、流せる電流量の制限を改善できる。