新人王筆頭候補の大谷翔平

投手としての力を分析

 前回のコラムでは、米専門家の予想をはるかに上回る活躍を続ける打者大谷翔平について書いた。右ひじ靱帯(じんたい)に新たな損傷が見つかってピッチングは中断せざるをえなくなったものの、指名打者として復帰してからの躍進によって、アメリカン・リーグの新人王争いが盛り上がってきた。

 選考を分ける決め手となりそうなのは、大谷のシーズン序盤の投手としての成績だ。そこで今回は、エース級と期待されていた投手としての大谷がどう評価されているのか、コーチや専門家へのインタビューと数値分析を交えて解説していこう。【志村朋哉/在米ジャーナリスト】

 ◇数値で見る投手大谷

 バッティングと同じように、ピッチングでもオープン戦では成績を残せなかった大谷。マイナーリーグで経験を積ませるべきとの声さえ上がった。

 だが、シーズンが始まったとたん、別人のような活躍を見せる。

 4月1日、オークランドで初登板を初勝利で飾ると、本拠地初登板では7回途中まで完全試合のペースで2勝目を挙げた。

 打撃では開幕直前にノーステップ打法を取り入れて成功した大谷だが、ピッチングではキャンプ中と技術的に変えたことはないと、エンゼルスのチャールズ・ナギー投手コーチは話す。ナギー氏は投手としてインディアンズとパドレスで1990年から2003年までプレーし、129勝を挙げた。

 「春季キャンプはあくまで準備期間にすぎません。みんながオープン戦でいい数字を残せるわけではない。大谷自身はキャンプでの仕上がりに満足していたし、自信も持っていました。それを開幕で見せただけです」

 大谷は今シーズン10試合で51回2/3を投げて、防御率3.31、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数)1.16。ダルビッシュ有が新人王投票で3位を獲得したメジャー1年目に防御率3.90、WHIP1.28だったのと比べても、そん色ない成績だと分かる。

 リーグや球場の違いを考慮に入れて投手の防御率を測るERA+という指標では、リーグ平均100を上回る128を記録している。ダルビッシュと田中将大の1年目はそれぞれ112と138だった。

 球速や奪三振率といった味方の守備に左右されない数値でも大谷は群を抜いている。

 先発投手で球速101マイル(162.5キロ)以上を今シーズン記録しているのは、大谷とアストロズのジョシュ・ジェームズだけだ。大谷はただ一人それを3度記録している。

 9回あたりの平均奪三振数は11.0で、今年50イニング以上投げている先発投手の中では11位。ダルビッシュのメジャー通算成績と並ぶ数字である。

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