石破茂首相の就任後初の本格論戦の舞台となった臨時国会が閉幕した。衆院選で少数与党の状況に陥った首相は野党に譲歩を重ね、2024年度補正予算と政治改革関連法の成立に何とかこぎ着けた。しかし、野党との「部分連合」は不安定で、来年1月召集の通常国会の行方には不透明感が漂う。自民党派閥裏金事件の幕引きも遠く、参院選を来夏に控え、政権立て直しの道筋は見えない。
「103万円の壁」決着越年 命脈保った「自公国連合」―2月下旬にも火種再燃
◇「熟議の国会」
「まさに熟議の国会」。首相は24日夕、首相官邸で記者会見し、30年ぶりの少数与党の国会を乗り切ったと安堵(あんど)の表情を見せた。
今国会では首相が自分の言葉で語ろうとする場面が目立った。与党は衆院で過半数を大きく割り込み、野党の協力なしでは議案の成立は見込めない。省庁が用意した答弁原稿の棒読みでは野党の協力は望めないとの焦りがのぞく。
一方、自説を延々と語りつつ結論を曖昧にする説明には「石破構文」との批判も上がった。首相自身、「最初から結論を言わないといけない」と反省の弁を述べたが、24日の会見でも選択的夫婦別姓制度導入に関する結論を出す時期を問われ、「議論の頻度を上げたい」と語っただけだった。
考えを貫くことで期待を集めてきた首相は今国会で持論を封印。日米地位協定改定を諦めたのかと問われた首相は「自民は専制独裁国家ではない」と逃げの説明に終始した。野党内では「まるで別人だ」などと失望が強まる。
◇「一歩でも前へ」
今国会で注目されたのは「ハングパーラメント(宙づり議会)」での合意形成をいかに図るかだった。試金石となったのが24年度補正予算だ。
与党がまず目指したのは国民民主党との部分連合。衆院選で国民民主躍進の原動力となった「年収103万円の壁」見直しに協力すると約束し、国民民主から補正予算への賛成を取り付けた。さらに日本維新の会が求める教育無償化に関する協議開始に応じ、維新の賛成をたぐり寄せた。
協議を拒否する立憲民主党にも譲歩し、28年ぶりの予算修正を受け入れた。政治改革関連法の審議では「公開方法工夫支出」新設を断念し、野党7党提出の政策活動費全廃法を丸のみした。
「一歩でも前に進むことが大事だ」。首相は24日の会見で自分に言い聞かせるように語った。
◇不満充満
もっとも、首相の苦境は続く。「103万円の壁」を巡る国民民主との協議は越年し、維新との協議も緒に就いたばかり。両党からは「結果に納得できなければ25年度予算案には賛成できない」(国民民主幹部)とけん制する声が上がる。
自民は昨年12月から引きずる裏金事件の年内幕引きを狙ったが、政治改革論議で最大の焦点だった企業・団体献金禁止を巡る議論は年明けに持ち越した。自民、立民両党は来年3月末までに結論を得ることで合意しており、予算審議と並行して議論が再燃するのは確実だ。
裏金事件の全容解明に向けた野党の攻勢も強まる。与党は関係議員全員の政治倫理審査会での弁明を年内に終えたい考えだったが、一部が来年にずれ込む見通しとなった。旧安倍派の会計責任者(事件当時)の国会招致もくすぶる。
こうした中、自民内には「戦略なき妥協」(中堅)と不満が充満しつつある。自民は24日、国民民主との協議再開を先送り。自民幹部は日程の都合と説明したが、国民民主からは「自民がごたついている」(関係者)との見方が漏れる。
野党は勢いづいている。「来年の通常国会では30年来の改革を次々と実行し、立民の存在感を示していきたい。その結果が参院選につながる」。立民の野田佳彦代表は24日の参院議員総会でこう檄(げき)を飛ばした。