本当に生きててねっていう気持ちで歌える
──4曲目に収録されている “087478” ですが、この数字は東京都の命のホットラインの番号なんですよね。
梶原 : アルバムのなかで最後にできたのがこの曲です。僕、歌詞はいつもは時間かけて書くんですけど、この曲は夜中の2時ぐらいから6時ぐらいまで寝られなくて、本当にこの歌詞に書かれているような気持ちになって、バーッと書きあげました。そういう気持ちになった人がこの曲を聴いてくれて、この数字ってなんなんだろうってなったときに、この電話番号にかけたら落ち着くかなと思って。このタイトルにしました。
──なるほど。
梶原 : この曲に関しては、誰かを救いたいというより、そういう日ってあるよって伝えたい部分が大きいかもしれないですね。一時期、寿命がくるのが怖くなったときがあって。自分たちは、死ぬ前提で生まれてきたんだって考えてしまって。こういうときに死にたいって気持ちになることはあると思うんですけど、この曲は逆に「死にたくない」って思ってできたものなんですよ。そういう悩んでいる人に向けて、結果的に救いになればいいかなとは思っています。
──この曲は、本当にすごく優しい歌詞だなと思います。
梶原 : 寄り添っているような感じがありますよね。歌詞って自分の思想だから、想いを込めようとすると、どうしても説教臭くなるじゃないですか。そのラインって結構難しくて。だから、なるべく押しつけがましくならないようにしています。
──こういう曲が押しつけがましく聴こえないのも、メロディや未來さんの声の力だと思うんですよね。それがNaNoMoRaLの良さだと思います。
雨宮 : 歌っていると、“087478” は、やっぱり気持ちが入ってしまうんですよ。昨日のライヴでも歌いながら泣いていたんですけど。
梶原 : 3回も「もう死にたい もう死にたい もう死にたい」って気持ちを持ってくるからね。
雨宮 : でも、「生きてるのが正解だろうな」っていう歌詞が本当に救いというか。みんなに本当に生きててねっていう気持ちで歌えるので、そこが好きです。
梶原 : NaNoMoRaLの曲って割と前向きなんですよね。
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──今作は、未来を見ている歌詞が多いなと思いました。
梶原 : 死にたくないから。
雨宮 : 生きたいですよね。
梶原 : それがすごく歌詞に出ているかもしれないです。人間は100年ぐらいで死ぬわけですから。僕はもう一回修学旅行に行きたいってずっと思っていて。でも、中学時代には戻れないし、それが残念でしょうがなくて。ずっと若くいたいし、僕が死ぬ前ぐらいに、不老不死の薬とかでないかなと思っています(笑)。
──なるほど。NaNoMoRaLは、おふたりとも明るい印象があります。
梶原 : 未來さんの方が、実はネガティヴなんですよ。僕が本当は根が明るくて、未來さんはどっちかというと人見知りだし、暗い方かもしれないですね。
──未來さんは最近のステージ上では、すごく自信に溢れているように見えるんですが、なにか変化はありましたか?
雨宮 : ステージに出たときは自信がないように見えちゃいけないので、とにかく自信があるように見せています。(忌野)清志郎さんとかKING BROTHERSのマーヤさんの動画を見たりするんですけど、毎回「すごいな」って思うんです。だから、「清志郎さんやマーヤさんだったらこうするよな」と思ってステージに立っています。
梶原 : マーヤさんとは何度か共演させてもらったんですけど、マーヤさんに出会ってから結構変わったんですよ。
雨宮 : ステージングがとにかく変わりました。
梶原 : 未來さんは、吸収力がすごいんですよ。刺激を与えてくれる人、かっこいい人と、もっと共演したいです。
雨宮 : クリトリック・リスのスギムさんもすごくかっこいいです。
梶原 : 生き様がしっかりしている人と共演して、吸収して伸びていってほしいですね。
──2021年は、梶原さんのヒーローでもある、たまの知久(寿焼)さんとも共演されました。
梶原 : しかも2マンでした。僕は、本当にたまが好きすぎて、第二のたまになりたくて愛媛から上京してきたんですよ。知久さんが出ていた吉祥寺の曼荼羅っていうライヴハウスに「出してください」って頼み込んで、ひとりで弾き語りをさせていただいたこともありました。それぐらい好きだった方と共演できたのは嬉しかったです。しかも、同じステージに立って、知久さんのコーラスをやって、一緒にギターを弾かせてもらいました。過去の自分に自慢したいです。
雨宮 : パセリさん、ずっと緊張してましたよね。しかも、知久さんは私のことも褒めてくれて。ある時期、フライヤーをいろんなライヴハウスに私が配っていたんですよ。それを知久さんが見ていてくれたらしくて、共演したときのMCで、さらっとそのことについて話してくれたんですよ。そんなところを見られてると思わないじゃないですか。
梶原 : すごく良いMCだったんだよな。「自分らがたまをやりはじめたときに、ライヴハウスにチラシを持って行ったときのことを思い出す」みたいな話をしてくれたんです。良い経験でした。
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──今後のお話ですけど、よく「50年続けたい」って言っているじゃないですか。どういう50年にしたいとか、そういうイメージはありますか?
梶原 : 僕個人の夢でもあるんですけど、本当に世間一般に言われる名盤を作りたいんです。たとえば、音楽誌に載っている「名盤50選」とかに残るアルバムを死ぬまでに1枚作りたいっていうのがあって。はっぴいえんどの『風街ろまん』だったり、ブルーハーツだったり。ああいうアルバムを50年かけてでも作りたい。はじめたからには、ずっと音楽をやりたくて。辞めてしまったら、なにを楽しみに生きていけばいいかわからないので。なるべく続けたいという気持ちだけですね。
雨宮 : 私も続けたいです。逆に辞められたら困りますよ。それは解散でしかないので。
梶原 : 僕らはどっちかが辞めたら解散でしかない。もちろん辞めるつもりがないっていう意味で言っているのもあります。
雨宮 : いまファンでいてくれる人は、アイドルを応援されている方が多いんですよね。でも、アイドルを応援している方は、「やっぱり辞めちゃうんだろうな」っていう気持ちがあるお客さんもいらっしゃると思うんです。だから、「私たちにそういう心配は大丈夫だよ」っていうのを伝えたくて。「今日仕事休んできた」とか無理しなくていいよって。
梶原 : アイドルって短命なことが多いから、「いま追いかけておかないと! 」って観てくださる人っていると思うんですけど、僕らはそんな見られ方にあまりしたくなくて。常にあるものとして見られたい。ずっとやってるから大丈夫だよっていう気持ちもあります。いつかは辞めるのかもしれないですけど、そのときがピークではありたいと思います。
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編集補助 : 平石結香莉
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NaNoMoRaL ディスコグラフィー
PROFILE:NaNoMoRaL
雨宮未來(Vo.)と梶原パセリちゃん(Vo., Cho., Manipulator)からなる男女2人組ユニット。2018年結成。
■公式ツイッター : https://twitter.com/NaNoMoRaL_info
■公式YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCi2Pv3tH5nlYv4A3ci4F68w
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