「ドナドナ」とは、
原曲は1940年から’41年に公演されたミュージカル『エステルケ』(Esterke)においてイディッシュ語(東欧のユダヤ人が使用する高地ドイツ語の一方言で、ドイツ語の従姉妹にあたる)で歌われた一曲で、「ダナダナ」(דאַנאַ דאַנאַ, Dana Dana)または仔牛を意味する「ドス・ケルブル」(דאָס קעלבל, Dos Kelbl, 英語の The calf に相当)と呼ばれていた。
日本での「ドナドナ」という表記は英訳版の Donna Donnna/Dona Dona によるもので、アメリカ英語ならばこの綴りの方がイディッシュ語の「ダナダナ」により近い響きになるためであるが、日本語版ではこれを文字通りに「ドナドナ」としてしまっている。まあ「ダナダナ」にされても単に頷いているようにしか聴こえないので、これはこれで良かったのかもしれない。
なお、ドナドナあるいはダナダナの意味するところは教科書等では「牛を追うときの掛け声」などと解説されていたり、あるいはユダヤ教の神の敬称であるヘブライ語アドナイ(Adonai)もしくはイディッシュ語ドナイ(Donaj)を略したものとされていたりするが、いずれも根拠に乏しく、実際のところはよく判っていない。
日本で親しまれるようになったのは、NHK「みんなのうた」で岸洋子さんが歌ったものが発表されてから。その後、学校音楽の教科書にも採用されたため、広く知られるようになった。また、冒頭に箇条書きにされているように様々な場面で比喩的に用いられることもしばしばである。
世界各地でも多くの言語に翻訳されて、現在に至るまで多くの歌手によってうたわれている。特に「勝利への讃歌」(Here's To You)などで有名なジョーン・バイエズによるフォーク風の英語版は世界中でヒットした。
主に安井かずみさんの訳詞が有名。詞の内容としては、仔牛が売られていく様子を歌っている。がこれには裏があり、ドイツのアウシュビッツ収容所でのユダヤ人虐殺の事件を上手に比喩したものであるという説が有力になっています。また、訳詞は現在のものと昔のものでは多少の違いがあり、分けて記載してみました。(新・左、旧・右)
ある晴れた昼下がり 市場へ続く道 | ある晴れた昼下がり 市場へ続く道 |
荷馬車がゴトゴト 仔牛を乗せて行く | 荷馬車がゴトゴト 仔牛を乗せて行く |
可愛い仔牛 売られて行くよ | 何も知らない 仔牛さえ |
悲しそうな瞳で 見ているよ | 売られて行くのが解るのだろうか |
ドナ ドナ ドナ ドナ | ドナ ドナ ドナ ドナ |
仔牛を乗せて | 悲しみをたたえ |
ドナ ドナ ドナ ドナ | ドナ ドナ ドナ ドナ |
荷馬車が揺れる | 儚い命 |
青い空 そよぐ風 燕が飛び交う | 青い空 そよぐ風 明るく飛び交う |
荷馬車が市場へ 仔牛を乗せて行く | 燕よそれを見て お前は何思う |
もしも翼が あったならば | もしも翼が あったならば |
楽しい牧場に 帰れるものを | 楽しい牧場に 帰れるものを |
ドナ ドナ ドナ ドナ | ドナ ドナ ドナ ドナ |
仔牛を乗せて | 悲しみをたたえ |
ドナ ドナ ドナ ドナ | ドナ ドナ ドナ ドナ |
荷馬車が揺れる | 儚い命 |
※歌詞に著作権が残っているという情報もあり削除の可能性もありますが、その際は御了承下さい。
作詞のアアロン・ツァイトリン(Aaron Zeitlin)は高名なイディッシュ作家ヒレル・ツァイトリン(Hillel Zeitlin)の息子で、’39年3月にウクライナ系ユダヤ移民(当時ロシア帝国領)でニューヨーク在住のイディッシュ劇作家モーリス・シュウォーツ(Maurice Schwartz, イディッシュ名アヴラム・モイシェ・シュヴァルツ Avram Moishe Schwartz)の招きでワルシャワから移住したため、同年9月のナチスドイツによるポーランド侵攻とホロコーストを免れた。だが他のツァイトリン一族は尽くゲットーへと送られ、父ヒレルと同じくイディッシュ作家の弟エルハナン(Elchanan Zeitlin)は’42年に死亡している。
作曲のシャローム・セカンダ(Sholom Secunda 1894-1974)の一家は、苛烈なポグロム(ユダヤ人迫害)で知られたウクライナから1907年にニューヨークへと移住している。幼いころはシナゴーグの先唱者(ハッザーン)を務めるほどの美声の持ち主で、変声期を迎えてからはピアノ演奏を習いイディッシュ語劇の作曲家としてキャリアを重ねた。特に喜歌劇『I Would If I Could』の一曲「素敵なあなた」(Bei Mir Bistu Shein)はサミー・カーン(Sammy Cahn, 日本ではディズニー映画『ピーター・パン』の作詞などで有名。彼自身はガリシア系ユダヤ移民2世)がセクンダから30ドルで曲を買い取り、英詩をつけてアンドリュー・シスターズ(Andrew Sisters)に歌わせたところ世界中で300万ドルの大ヒットとなり、以後はジャズのスタンダードナンバーとして様々な歌手に歌われている。
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/22(日) 16:00
最終更新:2024/12/22(日) 16:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。