親ガチャとは、次の2つの意味を持つ言葉である。
- 子が自室で何かしらの作業をしている時に、親が「ガチャッ」と扉を開けて子と対面してしまうこと。
- 子の観点から「自らが生まれる境遇を選べない」ことを、ランダムに排出され当たり外れのあるガチャになぞらえた語。
本記事では両方について触れる。
1.の概要
Twitterで検索したところ、上記1の用法は2010年の年末ごろから見受けられる。
自室で紳士向けのゲームをプレイしていたり、ソロプレイでハッスルしていたり、オタ芸の練習をしていたり、または単に下着姿などみっともない恰好でくつろぐなどしているときに親が部屋に入ってきて恥をかくという流れのことを指す。2番の意味で広く使われるようになるまではこちらが主流だったようである。
2.の概要
こちらの意味で使われている最古のツイートは現在確認できる限りでは2013年10月30日。ただし、月一以上の頻度で出てくるようになるのは2015年で、2017年ごろにはほぼ毎日この用法が確認できる。
この「親ガチャ」は、だいたいの場合はあたり/はずれ(または成功/失敗)を伴って議論されることが多い。おおむね「親の愛情をじゅうぶんに享受できる」「親が裕福である」といった状況があたり、「毒親である」「経済的に困窮している」といった状況がはずれとみなされる。
2021年9月7日に現代ビジネスが『格差拡大、貧困増大…それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由』と題した記事を出し、このころからこの語に関しての議論が白熱した。当該記事筆者である筑波大学教授で社会学者の土井隆義氏は、記事中で
いまの日本には「努力しても報われない」と諦観を抱く若者たちが増えている。統計数理研究所が実施している「日本人の国民性調査」で、1980年代と2010年代のデータを比較すると、この傾向は若年層の男性でとくに著しい。
人生はなかなか思うようにいかない。生まれたときから定められている宿命のようなものだ。自分の努力で変えることなど出来ようもない。そんな思いを抱えた学生たちが増えていてもおかしくはない。親ガチャはこのような時代精神が投影された言葉といえる。
といった説明をしている。
2.に対する著名人の反響
この語が急速に広まり、それに対してTwitter上では「納得できる」「それだけ格差が深刻になってる、貧困層が増えてるって事」と賛意や共感を示す声、「最悪な言葉だ」「生命をガチャと表現するのは倫理観に欠けている」と否定や拒絶を表す声もあった。
また、各分野の著名人もこの言葉に対して意見を表明している人がいる。以下に発言の概略を示す。
(※特記ない限り、発言の日付は2021年9月のもの。また、発言の原文を記載しているとは限らない。)
肯定的な意見
- 松本人志
- 若者たちが軽やかに遊んでいた言葉だと思うんですよ。大人たちがシリアスに取り上げて面白くなくなった。むしろポジティブな言葉だったんじゃないか。全てがガチャで、子供ガチャもあるし、ペットの飼い主ガチャもある。(19日 ワイドナショー)[1]
- ひろゆき
- (親ガチャと)言われないような子どもの育て方をすればいいんだと思う。『親に虐待されてます』と言えない子どももいる。親ガチャっていう緩い言葉ですら禁止されるのであれば、周りにそういうことを言ってはいけないんだと思ってしまう。(19日 サンデー・ジャポン)[2]
- 鈴木紗理奈
- 私この言葉全然気にならなくて。何か、何なら環境で『この親が良かった』って現実の中で、『親ガチャ』ってギャグにすることで、すごいたくましさを感じる。[3]
否定的な意見
- テリー伊藤
- 『上級国民』という本来ない言葉があったが、このような言葉が出てくると、『あっ、あるのか』っていうふうに、自分の中でどんどんどんどんなってしまう。親ガチャで思い込みすぎて、(子供が)親を殺しに行く可能性だってある。(19日 サンデー・ジャポン)[4]
中立的・どちらともいえない、もしくは別観点の意見
- 夏野剛
- “親”と“ガチャ”という言葉を繋げるとは思わなかったが、格差の問題にすごくハマってしまったということだろう。大切なのは、これで浮き彫りになった問題をどう是正していくかの議論につなげることだ。(15日 アベマプライム)[5]
関連項目
脚注
- *松本人志、“親ガチャ”は「大人がシリアスに取り上げて面白くなくなった」(日刊スポーツ)
- *ひろゆき氏が私見、“親ガチャ”と「言われないような子どもの育て方を」(日刊スポーツ)
- *鈴木紗里奈、話題の”親ガチャ”に共感 テリー伊藤は「親を殺しに…」と悲観(しらべぇ)
- *鈴木紗里奈、話題の”親ガチャ”に共感 テリー伊藤は「親を殺しに…」と悲観(しらべぇ)
- *「親ガチャ」めぐる論争に夏野氏「所得以上に資産の格差の是正を考えなければならない時期が来た」(アベマタイムズ)
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