ニコニコ大百科 : 医学記事 ※ご自身の血液型症状に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
概要
血球の抗原で区別されるのであるが、実に様々な分類が存在する。その分類パターンが膨大であるという事実は、日本において医療従事者以外にはあまり知られていない。
日本では一般的に、ABO型(赤血球に基づく分類)が広く浸透しており(例:工事用ヘルメットや、作業服のタグなどに明示欄があるなど)、大きく4つに分かれる。よく「性格診断」などの引き合いに出されるが、科学的な根拠(エビデンス)はない(後述)。例えば、白血球の病気である「白血病」の治療などで骨髄移植をした場合、提供された人の血液型(ABO型)は、提供した人の血液型(ABO型)に変わる。
日本では高度成長期あたりから「血液型と性格の相関がある」という迷信(から派生し、特定のABO式血液型を持つ人が「区別」を超越した、謂れ無き「差別」を受ける事例)が広まった。BPO(放送倫理・番組向上機構)が重い腰を上げ、これら問題解消への取り組み、番組の検証、およびテレビ局各局へ番組のいわゆる「題材」・「ネタ」にしないように要望(という名の勧告)を行った[1]。その結果、近年のバラエティーテレビ番組など(少なくとも、公共の電波に乗せて放送する内容)においては、血液型ネタを自粛する傾向にある。「2ちゃんねる」などでも「えせ科学」などと批判的な声が多い。また、海外でも韓国(および中国・台湾の一部)を除き、そういった診断は全くといっていいほど支持されていない。というか、たかが血液型の型式で人間を差別している…なんて知れたら間違いなく国際的な人間性を疑われる(しかも、血液型性格診断の発案者は、よりによってナチス・ドイツである)ので、国際社会で活躍を志している人、もうすでに日本(と特定アジア数か国)を除いた世界の架け橋になっている人はもちろん、医療人でない一般人も、できるだけ口に出すのを控え、話題として振られてもスルーするようにするのが望ましい。
しかし、下世話な話においては相変わらず血液型性格分類が話題に出やすいことは確かであり、「血液型と性格には関連性がない」と発言したところで「それを言ったら会話が弾まなくなるよ」と、信じているのか信じていないのかよくわからない返事をされた上に「関連性がない」と言った方がKY扱いされかねない恐れもあるので、日常会話においては依然として扱いの難しい話題となっているとも言える。
「輸血のときに困る」という説を唱える人を避けることも、一度出会ってしまうとなかなか難しい。これについての反証は後述。
と言うか、いつからか血液型による性格分類を話題に出す人が増え、幼少時からそんなことばかりうっとうしいほど聞いて、「自分もそうでなければならない」と無意識に自覚してしまうからと言う説が有力である。もしくは「誰にでも当てはまるようなことを適当に振り分けている」場合もある(人間は基本的に「合っていること」を重要視するため)。この他に「自分の欠点を自分のせいにしたくない」ために、意識的・無意識的にかかわらず「自分の至らないところを血液型のせいにしたがる」という心理が働くことも考えられる(人間は元来、自分で自分のことを否定したくない、習慣を改めたくないという心理が強く働く性質があるため)。
近年、「自分の説明書」と題する血液型の本が売れた(らしい)。
また、近年出版・放映などされた日本のアニメ、マンガ、ライトノベルなどを見ていても、身長・体重・スリーサイズなどはともかく、ABO式血液型まで設定がなされている場合がほとんどであり(これを、日本のサブカルを学ぶために英訳されたコミックを読んだりする、母国語が日本語でない読者は、故国の作品では稀なキャラクターのABO式血液型設定について「何、これ?」と思慮しているだろうことが想像できる)、更に、特定の血液型を持つキャラクターの扱いが優遇されたり、また冷遇を受けたり、嫌な役回りをされる場合が多い(酷い場合は登場すらしないことも。この記事本文中での具体例は避けておくが、ABO式血液型の属性を持つキャラクターを前面に押し出した作品も広く出回っている)。これは、作者もしくは担当編集者・制作サイドスタッフなどの取り巻きが、自覚なしに自分と同じ(ABO式)血液型のキャラを少しでも優位な立場におこうとし、嫌いなそれを間接的に蔑もうとする本能が働いている、と推察される。我々も知らず知らずのうちに人を傷つけようとすることがあるので、注意が必要である。
上述のとおり、BPOをはじめ放送業界全体が自省した結果、テレビ・ラジオの本放送で血液型が題材になる場面は減ってはいるものの、一部映像作品の市販製品版付属副音声(いわゆる「コメンタリー」)におけるフリートークなどでは、制作サイド(出演声優・スタッフなど)側から、キャラクターと関連付ける、ともすれば制作スタッフの自己満足的な根強い話のネタにされ続けていることも実状として存在する(例:「あの子【ABO式血液型の】設定、■型だよねぇ~?」「うん、■型!」)。
ABO型血液型
ABO型血液型を決定するのは、赤血球の表面にある「血液型抗原」という抗原に付加された糖鎖の違いである。
前駆物質に「Se酵素」や「H酵素」が作用して「フコース」が付加されて「H抗原」が出来、これに「A酵素」が作用して「GalNAc」が付加されると「A抗原」、「B酵素」が作用して「Gal」が付加されると「B抗原」となる。
A抗原が存在すれば「A型」、B抗原が存在すれば「B型」、両方存在すれば「AB型」、両方存在しなければ「O型」となるように、A酵素やB酵素をコードする遺伝子は「複対立遺伝子」である。
両親と子供の血液型
両親とその子供のABO式血液型は、概ね以下のような表になる。両親の血液型を縦と横からたどり、合致したところが子供の血液型となる。ただし、この表も絶対ではなく、O型とB型の両親からA型の子供が生まれた実例もある。
両親 | O | A | B | AB | ||||||
Oあり* | Oなし | |||||||||
O | O | O | A | O | B | O | AB | A | B | |
A | O | O | A | O | B | O | AB | A | B | |
A | A | A | A | AB | A | AB | A | AB | ||
B | O | O | A | O | B | O | AB | A | B | |
B | B | AB | B | B | B | AB | AB | B | ||
AB | Oあり* | O | O | A | O | B | O | AB | A | B |
AB | AB | AB | AB | AB | AB | AB | AB | AB | ||
Oなし | A | A | A | A | AB | A | AB | A | AB | |
B | B | AB | B | B | B | AB | AB | B |
*:cisAB型と呼ばれる稀な血液型(後述)の時に発生しうる。
ルイス式血液型
血液型抗原と同じ抗原に「Le酵素」が作用して、糖鎖付加された抗原によって判定する血液型。
Le(a+b+)、Le(a-b+)、Le(a+b-)、Le(a-b-)の4通り存在する。
ここで使われる抗原は、「Lea抗原」と「Leb抗原」の2種類。
LeaはABO血液型の抗原の前駆物質にLe酵素が作用して「フコース」が付加された抗原。Leb抗原はH抗原にLe酵素が作用して、フコースが付加された抗原。
Le(a-b+)は、赤血球表面以外の場所でもH抗原が出来ていて分泌型(唾液などにH抗原が分泌される)、Le(a+b-)はH抗原が出来ない非分泌型(唾液などにH抗原が分泌されない)となる。
Le(a-b-)の人は、そもそもLe酵素が働いていないため、それらの判定が出来ない。そのため分泌型・非分泌型の両方が紛れている。
Le(a+b+)は本来存在しないように思われるが、Se酵素の働きが弱いとこの状態になり得る。
ABO血液型に関連するH酵素とこのSe酵素は発現する場所が違い、H酵素は赤血球を含め様々な場所で発現し、Se抗原は消化管などでしか発現しない。
Rh血液型
Rh抗原にはC(⇔c)、D(⇔d)、E(⇔e)などの対立遺伝子が存在する。
この3つは、特に免疫原性があるため(免疫が反応しやすい)、調べられる。その強さはD>E>Cの順である。
この中で特に免疫が強く働くD因子について優性ホモ(DD)・ヘテロ(Dd)をRh(+)、劣性ホモ(dd)をRh(-)とする。
このRh(-)は200人に1人程度のそこまで稀ではない特殊な血液型である。
他の多くの形質と違い(dd)の人でもD因子に対する抗原を生まれつきに持つことはないので、1回目の接触で問題になることはほとんどない。
妊娠時にも影響が起き、対処を誤ると胎児に影響が出る結果を生む。
妊娠後期には母体と胎児間の直接的な血液の行き来がわずかながら起きるため、Rh不適合の妊娠であるとこの時に母体がD抗体を形成するが、その子には問題ない。
しかしRh不適合の次の子の妊娠時に母親の抗D抗体が胎児に移行し、胎児死亡や新生児溶血性黄疸の原因となる。
母親の抗D抗体の有無を検査する間接クームステストを行い、陰性であれば抗ヒトIg抗体を注射してD因子への免疫の形成を防止する。
ただし間接クームステスト陽性である場合は現状手の打ちようがない。
ABO血液型には胎児への影響がなくRh血液型が胎児に影響があるのは、抗A抗体や抗B抗体は胎盤を通過しないIgMであるのに対し、抗D抗体がIgGなので胎盤を通過してしまうことに由来する。
このほかD抗原陽性でも変異があるDu型は変異部位に関して抗体ができるためRh(-)血を輸血しなければならない。
一方Rh(-)型にDu型血を輸血するべきではない。変異があれどもD因子は存在するため免疫反応が起こるためである。
特殊な血液型
血液型に関連する遺伝子に変異が入ると、特殊な血液型となることがある。
こういう血液型の中にはもちろんそう頻度の高いものではないが、その頻度も200人に1人程度のものから100万人に1人以下のものまで様々である。
100万人に1人程度以上に特に稀なものを稀血といい、「ボンベイ型」や「Rh null」などが有名。
また往々にして、輸血に問題が起きやすい。そのため稀血の血液が献血された場合は超低温で冷凍保存され、10年程度保管される他、事前登録を要請し緊急時に輸血の協力を願うこともある。
Rh欠失型(-D-)
D因子以外をすべて欠損している血液型。
CとEがない(-)ため(-D-)と書き、「バーディーバー」と読む。
通常の検査ではD因子しか調べないためRh(+)になるが、普通のRh(+)の血液だと問題が起きる。
これはC因子やE因子のせいで抗Rh17抗体が作られるからである。
これも稀血の一つ。ちなみに「医龍2」でも取り上げられたことがある。
Rh null
Rh抗原を全く持たない血液型。
口唇状赤血球を呈し、膜抵抗も弱く溶血性貧血を呈するなどのRh陰性症候群を併発する。
cisAB型
ほとんどのAB型は「transAB型」といって、片方のゲノムにA型遺伝子、もう片方にB型遺伝子を持つものである。
よって、たとえばAB型とO型の子供は必ずA型かB型となるのだが、まれに両親の実子なのにAB型やO型の子供がでることがある。
一方この「cisAB型」はA型遺伝子に変異が入ってA酵素がB酵素のようにGalをも付加できるようになっている、「AB型遺伝子」とでもいうべきものになっているパターンである。
これは一つのゲノムでAB型を表しているのでAとBがセットで遺伝し、O型相手でもAB型が生まれる。
AB型であるが、「Galもつけられる」程度で働きとしては弱いのでB型のほうとしての働きは弱い。
無論片方がこの変異A型遺伝子でもう片方がB型のトランスAB型の場合もあり、この場合O型相手でABとBが生まれることになる。
ボンベイ型
O型はA抗原やB抗原が存在しないことによって確かめられ、普通はH抗原の存在は調べない。
一方、たとえA型遺伝子やB型遺伝子が存在しようとH酵素が活性を持っていなければ元となるH抗原が出来ないのでA抗原もB抗原も出来ない。
これを「ボンベイ型」という。インドのボンベイ(ムンバイ)でこの形質を持つ人が見つかったことに由来する。
この形質は劣性遺伝であり、Se酵素の活性のある人との間の子供にはH抗原を作ることが出来る。
そのため、ボンベイ型の隠れAB型と普通のO型の夫婦間にはO型同士に見えるのにA型かB型が生まれる。
一般的に言われる血液型による性格
「血液型占い」は、近年の医学(医学会)では「全く根拠の無いデタラメ」と言われています。日本人以外の人間には当てはまらないそうですよ… |
日本では「〇型の人の性格は〇〇な人が多い」という話が、マスコミや雑誌で多く取り上げられてきたという事実がある。
注記:根拠もなく、科学的統計(エビデンス)がとられたわけではありません。「あくまでそのように言われることが多い」と言うだけです。また、他人からむやみに血液型を聞き出したり、決め付けたりすることも控えましょう。
傷病者の命を救う最終手段(のひとつ)として医師が取るのが「輸血」ですが、我が国において輸血する際には、必ず事前・手術中など、タイミングを見計らったうえで傷病者からの採血・検査をするなど、様々なマニュアルが定められています。また、輸血過誤(ミス)を防ぐための様々な取り組みも行われています。
したがって、他人のABO式血液型を予め聞き出すこと、体外に明示をすること、各種参加名簿・社員録・住所録への転記、はたまた携帯機器のアドレス帳機能(現実、たいていの機種のそれに「血液型」欄が設けられてもいたりしますが)で管理しておくことなどは、あまり意味の無い行為です。
A型(糖鎖の先端がN-アセチルガラクトサミン)
B型(糖鎖の先端がガラクトース)
良く言えば個性的。悪く言えば変わった人?
O型(糖鎖の先端がない)
良く言えばおおらか。悪く言えばいいかげん?
AB型(糖鎖の先端に、N-アセチルガラクトサミンとガラクトースの両方を持つ)
良く言えばA型とB型のいいところを兼ね備えた人。悪く言えば二面性がある?
血液型と病気との関係
時折ニュースになるが、血液型によってなりやすい病気やガンなどが決まっており、予防が大事なのだという。で、これも性格診断と同じくデタラメだと思う人がいるかもしれない。
でもこれは紛れも無く真実なのである。以下が医学的に証明された関連性。
・十二指腸潰瘍はO型のほうが他の血液型より1.43倍かかりやすい。
・冠動脈疾患(心筋梗塞など)はO型のほうがかかりにくい。※示唆する論文のみ
他にも色々とあるが、少なくとも気にしないといけないほどの差はなく、生活習慣などを気をつけたほうが遥かに有意義ということだろう。
一部の医者によって過激な発言、ウソ発言も散見されるが冷静にソースを辿って確認することをおすすめする。
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参考文献・サイト
関連項目
脚注
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