緊急地震速報とは、大きな地震が予測される時に、強い揺れの到達に可能な限り先んじて気象庁から伝えられる地震動予報・警報である。
英語では「Earthquake Early Warning」。EEWと省略されることもある。
感知した揺れを元に発せられる速報で、地震予報・地震予知といったものとは無関係である。
概要
原理については、下記の「原理」の項目参照。
緊急地震速報は一般向け(警報)・高度利用者向け(予報)の2種類が発表される。
緊急地震速報を見聞きした場合の正しい対処法については、「気象庁:緊急地震速報を見聞きしたときは」を参照しパニックに陥らぬよう、各自であらかじめ心構えをしておくことが望ましい。
新幹線に関しては緊急地震速報とは別の独自システムを採用している。詳しくは記事「ユレダス」を参照。
一般向け(警報)
一般に目に(耳に)するのは「一般向け(警報)」と呼ばれるものであり、最大震度が5弱以上と予測された場合に、予測震度4以上の地域が発表され、テレビのテロップやラジオの速報音声、携帯電話などで伝えられる。
放送局や通知の設定などにより、伝えられる条件が異なる場合もある。
高度利用者向け(予報)
最大震度が3以上、もしくはマグニチュード3.5以上と予測された場合に発表され、第一報、第二報といったように新しい揺れの情報を追加し、随時情報をより正確なものにしていく。
基本的に一般向けより多少早く、しかし誤差が多い。
落雷・工事の振動を感知してしまったときなど、誤りの場合はキャンセル報が発せられる場合もある。
この情報を元に、走行中の列車やエレベーターを停止させるといったシステムも徐々に整備されている。こういった利用には高度利用者向けの情報が使用されることが多いようだ。
原理
あなたは、夜寝ていると突然目が覚めてその数秒後に地震が来た経験はないだろうか。地震の来る前に目が覚めたことから、『俺って地震の予知能力でもあるんじゃね?』と思ったことがある人もいるだろう。
残念ながらそれは間違いである。地震の揺れには、速く伝わる弱いP波、伝わるのが遅く強いS波という2種類がある。あなたは、早くて弱い揺れP波を感じたので目が覚めたのだ。あるいはP波を感じる前に起きたかもしれないが。
緊急地震速報はこれと同じ原理で、日本各地無数に設置された地震計で検知したP波の情報から、震源の位置、後に来るS波がどれだけの規模かを瞬時に把握、S波が到達する前の各地域に通知する仕組みである。
原理上P波とS波がほぼ同時に到達するタイプの地震、例えば震源が近い場合、都市直下型地震では間に合わず、ある程度離れた地域の揺れを警告するのがシステム上の限界である。
こういった仕組みのため、揺れ始めてから通知され、役立たず呼ばわりされることもある。
地震予想ではないので原理上やむを得ないケースもあるが、精度と速報性の向上が課題である。
「高度利用者向け」の情報受信の様子
ウェザーニューズ社のテレビ「SOLiVE24」における、高度利用者向けの情報受信の様子を保存した動画がYouTubeに公式にアップロードされている(動画リンク、東北地方太平洋沖地震/東日本大震災発生時)。
なお、ニコニコにもその時のSOLiVE24の映像を抜粋した動画がある(リンク)。
高度利用者向けは速度を重視するため、震源地不明・最大震度不明といった情報が届いたり、第一報以降の更新で規模や震源、震度が更新されることがよくある。また最終的なデータも実際の数値とは異なることがあり、速報性を極めて優先させていることがうかがえる。
東北地方太平洋沖地震に関連して
東北地方太平洋沖地震の被害により、観測所が破損、あるいは津波で機能しなくなる、データを送る通信網が寸断される、などの問題が発生した。
このため2011年3月11日以降、残った観測所を頼りに緊急地震速報を出すことになり、他にも地震が頻発したために複数の別の地震を1つの地震として計算してしまうといった問題により誤差が拡大した。
5か月後の8月11日にソフトウェアの更新が行われ、問題は概ね解決した。
しかし身を守る事は安全につながるため、緊急地震速報が出たときは注意すべきである、とされている。
この件に関する気象庁の見解(2011年3月29日、気象庁報道発表)
通知方法
テレビ
テレビ放送では緊急地震速報をテロップや音を使って通知している。
デジタル放送における緊急地震速報のうち、映像信号および音声信号によって伝送されるものは送出局と中継局の処理(MPEG2エンコードなど)およびテレビの内部処理(MPEG2デコードなど)の関係でアナログ放送より遅れることが確認されている。このため、2010年8月23日以降の地上デジタル放送は一部の地域および局において遅延がほとんどない字幕放送信号による伝送を併用している。
衛星放送(BSなど)ではアナログ時代から、人工衛星を経由するため遅延が大きかったがデジタル化でさらに遅延が大きくなっている。
この信号(主に地上波テレビ)を受信すると、対応機器では
放送に先んじてこのような表示が出る。
NHK
NHKでは、国際放送を除き全波で発生地域に関わらず全ての一般向け緊急地震速報を放送している。これは、気象業務法第15条によって
気象庁は、第十三条第一項、第十四条第一項又は前条第一項から第三項までの規定により、気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水の警報をしたときは、政令の定めるところにより、直ちにその警報事項を警察庁、国土交通省、海上保安庁、都道府県、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)又は日本放送協会(NHK)の機関に通知しなければならない。地震動の警報以外の警報をした場合において、警戒の必要がなくなつたときも同様とする。
2-5 (略)
6 第一項の通知を受けた日本放送協会の機関は、直ちにその通知された事項の放送をしなければならない。
※原文に一部補足
と規定されているからである。
チャイムはNHKの依頼によって東京大学先端科学技術研究センターの伊福部達教授(作曲家・伊福部昭の甥でポアロの伊福部崇のおじでもある)が作曲したもの。そのネタ元は伊福部昭作曲の「ゴジラ」からとも「シンフォニア・タプカーラ 第3楽章」ともいわれている。また、チャイムのあとに入る「緊急地震速報です。強い揺れに警戒して下さい。」などの自動音声は末田正雄アナウンサーが担当している。
NHKのテレビではテロップ(該当地域と震央の表示)と同時にチャイムと「緊急地震速報です。強い揺れに警戒して下さい。」の自動音声が流れ、NHKのラジオではチャイムと「緊急地震速報です。○○(震央)で地震、次の地域では強い揺れに警戒して下さい。××、△△(地域名)。」という自動音声が流れ、そのあと「該当する地域の方々は~」と地震発生時の対応方法についての自動音声が流れる。
NHKで使用しているチャイムはテレビ・ラジオ問わず民放でも広く使われている。
民放
民放の放送エリアは原則として都道府県ごと(県域放送)であるため、放送エリア内で発生した速報、かつエリア内で震度5以上の地震が発生すると予測された場合について放送をするという姿勢を取っている放送局が多い。
当初は各社それぞれのチャイム音(ニュース速報と同じ場合が多い)を利用していたが、近年は気象庁が統一を強く推奨していることもあってNHK使用のチャイムがほとんどである。
ラジオ
AM/FMラジオ局でも対応が進んでおり、緊急地震速報を放送している局がある。
アナログで放送されているAM/FMなどのラジオでは技術的な遅延はほぼ無い。
NHKではテレビと同じ基準で放送する。全国放送であるため、関係のない地域の速報も流れる。
民放では局によって対応が異なる。
例えば在京・中京・関西・福岡圏の民放ラジオでは、気象庁が発表する予測最大震度5弱ではなく、震度5強以上の揺れが予測された場合のみ放送する(これらの地域では震度5弱では人的・建物被害はほとんどなく、却ってドライバーなどがパニックに陥るなどの危険が見込まれるため)。一方、北海道・東北・新潟の民放ラジオでは(対応している場合は)福島を除いて気象庁の基準である震度5弱が採用されている。(福島は震度5強以上)
特にFMは対応・非対応が局により異なるので緊急地震速報の対応状態を確認しておく必要があるだろう。(参考:緊急地震速報FM局実施エリア(アイリスオーヤマ))
遅延の無さや受信の容易さなどから、ラジオの緊急地震速報を感知しその内容を大音量で流し警告する機器が開発され、他の速報システムと比べると比較的低価格で販売されている。これらを利用すれば、常にラジオを付けっぱなしにしなくとも、緊急地震速報をラジオから知ることができる。
ラジオを使用するメリットとして、ラジオが受信できる場所ならどこにでも設置できること、地震で停電しても電池で動作を続けられること、電池がテレビやパソコンと比較し長持ちすることなどが挙げられる。
ただし、radikoやNHKラジオらじる★らじるなどのストリーミング配信の場合、数分ほどのタイムラグが発生するためにほとんどの局は速報音がカットされている(民放を例にすると、地上波では速報音が流れるが、radikoで流れない)。このため、radikoではタイムラグが発生するため「正確ではありません」とFAQに記載されている。
携帯電話
携帯電話を利用した緊急地震速報の通知サービスが一部で提供されている。
これは既存の通信網、あるいはそれを拡張した物を利用し、エリアメール・緊急速報メールとして通知地域の端末に緊急の情報を伝えるものである。
メリットとしては、一般的に皆が常に持ち歩く可能性が高い端末で、警告を聞き逃しにくいこと、電池で単独動作するため停電しても受信が可能であり、通知システムの一部である基地局も停電後数時間はバッテリーで動作できるため、完全では無いにしろ有力な受信手段になっている。
NTTドコモ、au、ソフトバンクの対応端末で提供されている。対応端末でも、デフォルトが「通知しない」となっている場合もある。周りの人のが受信しているのに自分の機種では受信しなかったという人は一度設定を確認してみよう。
基本的な仕組みは、気象庁発表の揺れると予想されたエリアにある基地局から、その電波を受信している端末へ一斉に情報を送信し、即座に受信・警告する。通信網混雑時の遅延など、通常のパケット通信の制限は受けない仕組みになっている。
ただし、通話中や通信中、受信状態の悪いときなど緊急地震速報の情報を受信できないときは、通知されないケースもある。
ドコモの対応端末は、エリアメールとして受信し、強制的に本文がディスプレイに表示される。iモードメールの受信トレイでも受信した内容を確認することが出来る。auの対応端末は、Cメールとして受信する。
スマートフォンは非対応の機種が多かったが、2011年ごろからauのIS03をはじめとして対応端末が発売されている。
なお、非対応の端末でも使用できる、通常の通信網を使って緊急地震速報を通知するソフトウェアも開発されている(例:特務機関NERV防災アプリ(リンク)、ゆれくるコール(リンク
))。このようなソフトは通信網の混雑時には通知されない可能性がある。
iPhoneの場合、iOS5以上を使用したiPhone4より新しい端末であれば緊急地震速報を受信できる。これはETWSなどの通信規格が日本独自の物ではないため。
NTTドコモ
エリアメールは通信規格3GPPのCBSを使用して情報を受信。2010年冬モデル以降はより高速なETWSを採用している。
2007年11月以降発売のすべての端末で対応しており、かなり早期に環境が整えられた。
au
通信規格3GPP2のブロードキャストSMSで情報を受信する。 現在はより高速なETWSを採用している。
2008年1月に発売されたW61xシリーズ以降のほぼ全ての機種が対応している。
auはETWSで広告などの情報配信を行っているが、同じ規格に対応したソフトバンクで緊急としてこの内容が伝えられる事例が2012年に発生した[1]。現在では対処されているとみられる。
ソフトバンク
通信規格3GPPのCBSで情報を受信する。現在はより高速なETWSを採用している。
3社の中では対応が遅く2011年春頃までは対応端末が831N 1機種のみで基地局も一部のみ対応となっていた。さらに、緊急地震速報を受信する設定にすると電池の消耗が約2倍になるというクソ仕様だった。
やっと2011年度上期から発売の一部の機種で緊急地震速報対応し始めたが、今でも受信できる機種は少ない。
パソコン
パソコンとインターネット回線を利用し緊急地震速報を受信することができるシステムやソフトウェアがある。ここでは比較的容易に利用できるソフトウェアを紹介する。
パソコンを使うメリットとして、新しいハードウェアの購入無く高度利用者向けの情報が利用できる気軽さがある。(※全てのソフトが高度利用者向けの情報を受信できるとは限らない)
しかしデメリットとして、停電すると受信できないケースがある事、これはノートパソコンなどでパソコンの動作が維持できても、モデムやルーター、ネット回線の物理的な切断などが考えられるためで、他にもインターネットやサーバーの混雑による受信困難・遅延も考えられる。
画面の電源が切れている、スピーカーの電源が切れている、ミュートしている、といった状態では受信できなかったり通知できないケースがある。
つくるウェブ EarthquakeNotifier
Twitterの地震速報(@eew_jp)に投稿される緊急地震速報を画面にポップアップするフリーソフト。Twitterの利用が必要。
住んでいる場所などの指定はできないため、日本中の情報が表示される。
ストラテジー SignalNow Express
緊急地震速報を扱う機器などを販売する同社が一般向けに SignalNowExpress という無料ソフトウェアを提供。ダウンロードにメールアドレスの登録が必要。
緊急地震速報の高度利用者向けの情報を提供する。
指定した条件に一致する地震が発生すると、音と画面で知らせる。画面では予想最大震度や現在のS波の推定位置がリアルタイムに示される。
無料のためか一部機能(現在地点を経度で指定する機能など)が使用できない。
サービス開始時は東北地方太平洋沖地震の影響で利用者が急増しサーバーが一時利用できなくなるといった事態があったが、現在は安定して運用されている模様。
アイコンの絵柄から「カエル」と呼ばれる事がある。
有料版の「SignalNow Express Professional」(リンク)もあり、こちらは多くの機能が実装されている。
ウェザーニューズ The Last 10-Second
同社の有料気象情報サービス(315円/月)への加入、または315円/月の支払いで利用できる緊急地震速報の高度利用者向け情報提供サービスである。
指定した条件に一致する地震が発生すると、音と画面で通知する。
画面では予想最大震度や現在のS波の推定位置がリアルタイムに示される。
詳細は個別記事を参照:The last10-second
鉄道
新幹線には独自システム(ユレダス)があるため利用されていないが、鉄道各社では、緊急地震速報を利用し列車を安全に停止させるシステムを随時導入している。
導入していない鉄道会社もあるようだが、対応・非対応の情報ははっきり公開されていない。
導入例
その他
大型ショッピングモールなどの施設が独自に緊急地震速報を館内アナウンスするシステムを導入するといったケースがあり、その他にも多数の手段で、迅速に通知するシステムが広がっている。
通知音・映像
音が怖くてトラウマになる人も多い。(携帯用の地震速報メール音も)
説明 | 音 | 画像・文章 | 備考 |
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緊急地震速報 (テレビ・ラジオなど) (声はNHKテレビ使用のもの) |
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この様式はNHKで使われているものであり、民放局では通知方法が異なります。 |
緊急地震速報 (地デジ字幕放送) | ![]() |
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動画版はこちら![]() この様式はNHKで使われているものであり、民放局では表示が異なることがあります。また、ワンセグ、BS、一部のチューナー・レコーダーでは表示されません。 |
緊急地震速報 (携帯電話) | ![]() |
動画版はこちら![]() 対応機種については、携帯電話各社のHPを参照してください。 (各社リンク・ドコモ ![]() ![]() ![]() |
関連動画
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関連項目
脚注
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