ファーディナンド(Ferdinand)とは、1983年生まれの米国の競走馬・種牡馬である。
概要
父Nijinsky、母Banja Luka、母父Double Jayという血統。父は無論のこと、母父も4度のリーディングブルードメアサイアーに輝いた活躍馬。母系は近いところこそパッとしないが曾祖母は超名牝Vagrancyで、さらにさかのぼると巨大牝系を築き上げたFrizetteにたどり着く。
デビュー後しばらくはパッとせず、4戦目で初勝利。3歳になってからもステークス競走で1つ勝ち星を増やしたがそれ以外は善戦こそするが勝ち切れないままケンタッキーダービーを迎えた。1番人気はGI3勝を含む5連勝中と絶好調のSnow Chief。ファーディナンドは9番人気だった。
本番、ファーディナンドは最内枠を活かしインの最後方で待機。すると、ハイペースでSnow Chief含む先行馬が潰れたこともあって後方有利な展開に。鞍上の腕利きウィリー・シューメーカーの好騎乗もあって、直線で最内から先行馬を切って捨て、2馬身半差の完勝。波乱を巻き起こした。その後プリークネスSはSnow Chiefの逆襲を受け2着、ベルモントSは上がり馬Danzig Connectionの3着と敗れ、年末のGIIマリブSを勝って3歳を終える。
4歳時は好走しながらSnow Chiefや前年ダービー3着だったBroad Brushに阻まれ、芝に転機を求めたがこちらも結果が出ず、年始から6月までGI6連敗を喫してしまう。しかし6月にGIハリウッドゴールドカップを勝つとそのまま連勝を3に伸ばし、堂々1番人気でBCクラシックに挑む。Snow ChiefとBroad Brushは既に引退しており、この年の目玉はファーディナンドと当年の二冠馬Alyshebaのダービー馬対決であった。
中団から直線で脚を溜めた両馬。3角で先にファーディナンドが動くとAlyshebaも追いかけるように進出。直線ではファーディナンドが抜けだしたところにAlyshebaが襲い掛かり並んで入線したが、ハナ差でファーディナンドが勝利。この勝利が決め手となり、ファーディナンドはAlyshebaを破って年度代表馬に選ばれた。翌年は勝利を挙げられず、5歳秋を以て引退した。
引退後は多くの期待を集め名門クレイボーンファームで種牡馬入りしたが案外な結果になり、1994年に売却されて来日。しかし日本でも地方重賞馬が散発的に出る程度の成績しか出せず、2002年に種牡馬登録を抹消。その後ファーディナンドは行方不明になってしまう。
衝撃の最期
最後のファーディナンド産駒が誕生した2003年、馬主家族の依頼を受け、日本在住の米国人記者バーバラ・バイヤー女史がファーディナンドの行方を探し始めた。最後にファーディナンドを所有していた人物(ファーディナンドは当初アロースタッドが繋養していたが、成績不振で2001年に個人に譲渡されていた)に直接話を聞いたところ、思わぬ答えが返ってきた。
この場合の「廃用」がすなわち「屠殺」を意味することに気づいていたバイヤー記者は調査結果をまとめ、「ファーディナンドは屠殺された」と米競馬誌に寄稿した。この報告は世界中に広まり大きな衝撃を与えた。米国内では日本への馬の輸出を禁じようとする運動が起こり、さらには動物愛護団体を中心に、馬の屠殺を禁じる法律を作ろうという動きも勃発。本当に連邦議会に法案が提出されるまでになった(当然否決されたが)。また、別の功労馬保護団体は日本に種牡馬として輸入されたが活躍しなかった米国馬を探し出しては買い戻し本国に連れ帰るという活動を開始。*サンシャインフォーエヴァー(*ブライアンズタイムの従兄)、*オジジアン(エイシンワシントンの父)らが実際に米国に帰った。さらに、この一件から引退馬余生を守るために競馬関係者が「ファーディナンド基金」を創設。米国から日本に輸出された種牡馬が引退した際には、この基金から資金を拠出し米国に買い戻すという条項が契約書に加えられるようになった。
屠殺の是非まで問題が飛躍したのは動物愛護団体が機に乗じただけかもしれない。また1997年にスウェーデンで屠殺された名馬エクセラーの分まで必要以上に日本がバッシングされた側面もあるかもしれない。それでも、少なくともこの一件で日本競馬の信頼が一時期大きく損なわれたのは間違いない。近年こそだいぶ減ったものの、今なおダイタクヤマトやスーパーホーネットなどGI馬や重賞馬ながら消息不明になる競走馬がいる。そして、その大半は何らかの形で処分されてしまっている。馬の福祉のあり方について、日本に重い問題を提示した一件となった。
余談だが、ファーディナンドの牝系の祖先Frizetteも最期は屠殺場送りにされている。同馬の最後の所有者マルセル・ブサックも馬を商品としか見ない一面があったので、今後の馬産で同じ悲劇が起きないことを願う。
血統表
Nijinsky II 1967 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Flaming Page 1959 鹿毛 |
Bull Page | Bull Lea | |
Our Page | |||
Flaring Top | Menow | ||
Flaming Top | |||
Banja Luka 1968 鹿毛 FNo.13-c |
Double Jay 1944 黒鹿毛 |
Balladier | Black Toney |
Blue Warbler | |||
Broomshot | Whisk Broom | ||
Centre Shot | |||
Legato 1956 黒鹿毛 |
Dark Star | Royal Gem | |
Isolde | |||
Vulcania | Some Chance | ||
Vagrancy | |||
競走馬の4代血統表 |
主な産駒
関連動画
ニコ動にはない模様。YoutubeにはケンタッキーダービーとBCの動画が残ってるのでぜひそちらに。
関連コミュニティ
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- フリゼット - 当馬の牝系の祖。同じく屠殺送りにされた。
- エクセラー - ファーディナンドの少し前に屠殺送りにされ、アメリカにおいて引退馬保護運動が活発化するきっかけとなった。
- ハマノパレード - 屠殺送り疑惑で論議を呼んだ。
- ハードバージ - 屠殺送りではないが、引退後の扱いについて論議を呼んだ。
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