カウンタックは、イタリアから登場したランボルギーニ製のスーパーカーにして、1970年代に少年少女だった世代から羨望の眼差しを一身に浴びたマシンである。車名は現地語で「驚いた!」という意味で、正しくはクゥンタッシ(クゥンタッツィ)。日本においてはスーパーカーの代名詞ともなった。
もしかして:カウンタック(漫画) - 梅澤春人が週刊ヤングジャンプに連載していた漫画。タイトル通り、主人公があることから夢のカウンタックを手に入れることで起こるエピソードを描く。
概要
1971年に登場したそのマシンは、1メートル少々の極限ともいえるローフォルムと、今見てもどこの車にも似つかぬ鋭利なウェッジシェイプでまさに世間を驚かせた。 エンジンは4~5リッターV12をミッドシップに縦置きで搭載され、最高馬力は353~455psを発生させた。そして、運動性を重視した短い全長に収めるために、ギアボックスをエンジンの前におき、コクピット内にせり出させるレイアウトを採用している。
そのフォルムから「最高で300kmいける」とランボ社は自慢していたが、実際の所は300kmに届かず、後付けされたウィングで安定性を確保しないと、まともに250kmも出せなかった。
フェラーリがカウンタックの300km/hに対抗して「じゃあうちは302km/h」という小学生の喧嘩みたいな謳い文句で365GT4BBをデビューさせたことはあまりにも有名。もちろんこちらも市販された車両でそんな速度は出せない。
LP400として販売開始後、様々なモデルチェンジを繰り返し、バリエーションも多くなった。カウンタック自体の人気と、ランボ社の掲げるハイパフォーマンスマシンの追求の象徴を担っていることから製造期間が歴代ランボルギーニ社の中でもっとも長く、1990年まで製造されていた。
歴代モデル
LP500(プロトタイプ)
このマシンのプロジェクトは社内コード「LP112」の名で進められた。デザインはマルチェロ・ガンディーニ。当初ショーで発表されたイエローのボディーカラーに染められたプロトタイプは、まさに流麗かつ未来的なフォルムを誇っていた。ランボルギーニのプロダクションモデルとしてではなく、ガンディーニの当時属していたカロッツェリア・ベルトーネの作品としてブースに展示された。公表されたスペックは排気量4971cc、最高出力440PS、最高速度300km/hとなっていた。
なお、このプロトタイプは衝突実験のために使われて潰されてしまい、もうこの世に残っていないとのこと。モッタイナイ
ところが、2021年になってランボルギーニ自らがオリジナルのモノコックボディを再現し、寸分たがわぬレプリカを製作。LP500プロトタイプの姿を現代に蘇らせたのだ。もちろんランボルギーニ・エスパーダの4000ccエンジンを積んでいて実際に走行可能である。
LP400(初期量産型)
プロトタイプのLP500は市販に向けての開発車両としてテストを重ねたが、その結果冷却面に不安があることがわかった。量産化するために対策として箱型のダクトやドアハンドルを兼ねたNACAダクトを追加した。また、プロトタイプはモノコックボディだったが、剛性などの問題がやはり生じたため、量産型はマルチチューブラーの鋼管スペースフレームとなっている。これらの改良は、ランボ社のチーフエンジニアであるパオロ・スタンツァーニの手によって行われた。
1974年に量産型のLP400として発売。排気量3929cc、最高出力375PSとして最高速度はやはり「公称」300km/hとなっていた。
漫画「サーキットの狼」では「ハマの黒ヒョウ」が乗るLP400が幾度も登場し、印象的な活躍をしている。上記「カウンタック(漫画)」での主人公、空山舜が乗るのもこのLP400である。
LP400S
しかし、フェラーリ365GT4/BBやポルシェ930ターボなどのライバルが登場してくると、やや旧態化が目立つようになった。これに対応するため、1978年に当時としては超扁平なタイヤと大径ホイールを履かせ、フロントスポイラーとオーバーフェンダーを装着したLP400Sとなった。このスタイルは、下記のスペシャルモデル、「ウルフ・カウンタック」を元にしている。
ウルフ・カウンタックとLP500R
カナダの大富豪ウォルター・ウルフ氏は、LP400を購入したものの、どんなクルマでもサーキットでガンガン走らせる趣味人の彼には全く不満だらけのものだった。そこで彼が特別注文して極太タイヤを履かせ、オーバーフェンダーやスポイラー、リアウィングを付けたばかりかボディ各所も補強したスペシャルモデルが「ウルフ・カウンタック」である。
すでに経営が火の車になっていてフェルッチオ・ランボルギーニやパオロ・スタンツァーニはランボ社を去っていたが、ウルフ氏はエンジニアのジャンパオロ・ダラーラ(後のレーシングコンストラクター、ダラーラの創業者)に命じて空力とボディの改善をした。しかも、ピレリ社に掛け合って当時としては驚異的な扁平タイヤを装着させた。こうして赤色の「ウルフ・カウンタック」1号車が完成する。だが、それでも満足できなかったウルフ氏はダラーラにエンジンを5000ccまで拡大してのチューンをさせ、これを搭載したスカイブルーの2号車を作る。これに一旦は満足したウルフ氏であったが、更に欲が湧いたのかさらなる進化モデルを要求。ボディ補強やブレーキ・ステアリング周りのシステムを強化し、2号車の5000ccエンジンを移植してダークブルーの3号車を作った。
当時のスーパーカーファンの間ではこのウルフ・カウンタックをプロトタイプの番号であった「LP500S」の名で呼んで特別扱いしていた。本来の経緯からすれば「LP400Sプロトタイプ」と呼ぶべきものなのだが。
漫画「サーキットの狼」では「ハマの黒ヒョウ」とは別にモブの走り屋が乗るカウンタックがこのウルフ・カウンタックを元にしたフロントスポイラー・リアウィング・オーバーフェンダー付きのスタイルになっており、劇中でも「LP500S」と呼ばれていた。
また、別の個体として「LP500R」と呼ばれた黒に白ストライプ入のマシンも存在した。こちらは出自不明の「謎のマシン」としてファンの間で取り沙汰されたが、一説にはドイツでカスタマイズされたもので、リアウィングとやや控えめなオーバーフェンダーがついていたものの、中身はノーマルの4000ccのままでチューンドカーと言うよりはドレスアップカーという要素が強かった。
さて、これらのスペシャルモデルたちは2021年現在、いずれも日本で所有されており、ひょっとすると読者も目にする機会があるかも知れない。
5000S(LP500S)
ライバルであるフェラーリ365GT4/BBが改良版の512BBを経て、フューエルインジェクションを導入した512BBiへと進化していたのに対抗し、カウンタックも1982年に排気量を4754ccに拡大。最高出力も375PS/最大トルク41.7Kgmとなった。呼び名は5000SとなったがLP500Sと呼ばれることもある。もちろん、上記のLP500Sことウルフ・カウンタックとは別のものである。
5000QV
フェラーリは今度はBBシリーズの後釜としてテスタロッサをデビューさせた。これに呼応してカウンタックは1985年、エンジンヘッドを4バルブ化して排気量5167ccにまで拡げた5000QV(クアトロバルボーレ)を発売。最大出力は455PS/最大トルク51.0Kgmとなった。
25thアニバーサリー
1980年代後半になると、ランボルギーニ社は経営の不安定からクライスラーの傘下に入ることになった。そんな中で1988年に発売されたのは、ランボ社の創立25周年を記念してカウンタックの最終型とした「アニバーサリー」だった。外観に大きく手が加えられる事になり、米国への輸出対応もあってリアバンパーが標準で設けられた。このリファインを手掛けたのは、後にパガーニ・ゾンダなどを作るパガーニ・アウトモビリを創業することになるホラチオ・パガーニである。
このアニバーサリーは1990年をもって生産終了となり、後継車種のランボルギーニ・ディアブロにバトンタッチした。
L150
実は、ランボ社のクライスラーによる買収前から、25周年記念モデルは計画が動き出していた。5000QVをベースにエンジニアのジュリオ・アルフィエーリが改良を担当。
リアフェンダーをブリスター化し、右側に増設燃料タンク、左側に増設ラジエターを設置。自動開閉式ルーバーで冷却効率もアップ。なによりも最大の特徴が、一部しか開かなかったサイドウィンドウが1枚ガラスに変更となり、パワーウィンドウも装備されたことである。
しかし、このモデルは結局クライスラーの経営陣がより北米輸出に適したものを要求したことからあえなく没となり、「L150」と名付けられた1台の試作車が現存するにとどまっている。なお、この個体も2021年現在日本に所有されている。
ドアについて
カウンタックに限らず、スーパーカーの魅力ともいえるガルウィングドアだが、ヒンジの形状上ガルウィングドアとしては成立していない。正確な名称は無いが、一般的に「シザーズドア」「ポップアップドア」などと呼ばれる。ちなみにランボルギーニが製造する全車種がガルウィングを装備していない。
アメリカでの事情
カウンタックは、当初はアメリカには正規輸入されていなかったが、一部並行輸入業者によって販売されていた。だが、アメリカでは5マイルバンパーと呼ばれるフロントバンパーの取り付けが義務付けられており、当然カウンタックの超低いノーズはそれに合致しなかった。
そこで、苦肉の策としてフロントにウィングを取り付け、これをバンパーだと言い張って通した。映画「キャノンボール」に出演している黒いカウンタック(LP400S)には、このウィングが取り付けられているのが確認できる。ちなみに、この個体はレストアされて2021年現在もアメリカに存在しているとのこと。
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1985年からついにアメリカにもカウンタックは正規輸入されることになった。だが、そのときに取り付けられたバンパーはお世辞にも格好いいものではなかった。まさに取ってつけたような、とはこのことである。
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21世紀に復活
2020年代に入り、いまやVWグループの傘下に入ったランボ社は、カウンタックをデビュー50周年を記念して現代に蘇らせると発表。
そして、2021年8月にランボ社からの公式発表を前にして、ツイッターにリーク画像がアップされた。
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初代のプロトタイプのイメージを現代的に落とし込んだようなデザインが目を引く。もっとも、ヘッドライトの位置はより印象的になるように画像ではいじってあり、実車ではもう少し上の位置にある。
メカニズム的には、同社のシアンFKP37のものを流用すると見られ、6.5リッターV12エンジンとスーパーキャパシタを組み合わせたハイブリッドになるとのこと。システム出力は814PSに達する。
このカウンタックLPI800-4は生産台数112台の限定生産になるとのこと。この数は、上記の最初のプロジェクト社内コードにちなんだものである。
関連動画
関連項目
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