保険ラボ

国際情勢は不安定ながらも、国内経済は堅調で金利ある世界が到来した。生命保険業界にとっては歓迎すべき環境となり、円建ての貯蓄性商品にも魅力が出始めた。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、「週刊ダイヤモンド」2024年12月28日・25年1月4日新年合併特大号に掲載した、明治安田生命保険の永島英器社長のインタビュー拡大版をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 藤田章夫 ※インタビューは2024年12月中旬に実施)

国内金利のさらなる上昇で
貯蓄性商品の選択肢が拡充

──2024年を振り返っていかがですか。

 米大統領選挙や長引くロシア・ウクライナ戦争、中東情勢の不安定化など政治や国際情勢が目まぐるしく変わりました。一方、国内経済は比較的順調ですので、生命保険各社の決算も悪くありませんでした。経済の好循環が徐々に浸透しつつあると感じています。

――ドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に就任することで、金融を取り巻く環境がやや不安定になるのではないでしょうか。

 25年春の円の対ドル相場は、日米の金利差がどんどん縮小するために135円と見ていましたが、大統領選挙の結果を受けて145円に見通しを修正しました。基本的に日米金利差は縮小するでしょうし、円高方向に向かうと思いますが、トランプ氏の政策によって、そのスピードはだいぶ影響を受けると思われるからです。

 米国が関税を上げることによって物価が上がったり、減税によって資金がだぶついたりして、インフレに向かう可能性が高いですよね。ゆえに米国金利が思ったほどには下がらず、円高に向かうスピードが緩くなると見ています。

──金利のある世界がようやく到来しました。

 金利が上がることは、生保にとって歓迎すべきことです。国内金利が上昇したことで、今後買い入れる超長期国債について、中長期的に収支の上振れが期待できますし、資産運用の選択肢が増えます。

 何より、金融は社会の血液のような機能を果たしていますので、金利のない世界は正常な状態とはいえません。お金が循環してこそ経済の活力が生まれますし、成長と分配の好循環も生まれます。資金が個人からわれわれのような機関投資家に流れてくれば、それがリスクマネーとして経済成長に向かうことになります。

──商品面でも選択肢が増えていきますね。