医療機器 21兆円への挑戦#6Photo:Digital Art/gettyimages

あらゆる分野でAI(人工知能)の活用が進む中、世界的に医療機器へのAI搭載も急速に進んでいる。AI医療機器は、病変の検知や医療従事者の負担軽減に貢献できるのだ。だが、業界関係者は「日本ではAI医療機器を盛り上げる機運が乏しく、世界に取り残されつつある」と嘆く。特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#6では、日本でAI医療機器の普及が進まない真因を究明する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

医療現場を効率化するAI医療機器の普及に
スタートアップは積極的だが…

 2010年代以降、AI(人工知能)は私たちの生活に急速に浸透した。今ではあらゆる産業がAI抜きには語れなくなっている。

 医療も例外ではない。膨大な臨床データを学習させたAIを診断機器に搭載すれば、専門医ですら見逃しかねない小さな病変を検知できる。これにより、経験豊富な医師が不足する途上国でも、今まで救えなかった患者の病気を治すことが可能になる。

 AIの活用は、カルテ作成をはじめ日々膨大な業務に追われる医師の負担軽減にもつながる。他産業と同じく、業務効率化や働き方改革への貢献が期待できるのだ。

 日本でも各社がAIを活用した機器を開発しているが、普及が進んでいるとは到底いえない。詳細は後述するが、日本は他国に後れを取っており、「AI医療機器後進国」の地位に甘んじている。日本でAI医療機器を手掛ける企業の関係者は「日本ではAI医療機器を盛り上げる機運が乏しく、世界に取り残されかねない」と悲嘆に暮れる。

 幅広い産業でAIが盛り上がりを見せる中、なぜ医療機器では普及が進まないのか。取材を進めると、医療業界ならではの難しさが明らかになった。

 次ページでは、日本でAI医療機器の普及が進まない真因を究明し、米中との“圧倒的な差”を埋める方策を明らかにする。