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管理職になりたくない人の割合は、8割に迫る勢いだ。知識や経験がないと管理職になれないと考えている人も多いようだが、それは間違っている。知識や経験がなくても、むしろない方が、リーダーシップを発揮できるのだ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

7割超が「管理職になりたくない」
リーダーに知識や経験は必要?

 管理職になりたくない人の割合が、数年前から、圧倒的な高さに至っている。

 2018年の調査では72.8%、23年は77.3%に上った。23年の調査では、管理職になりたくなかった理由として、管理職に向いていない(46.6%)、負荷と報酬が釣り合わない(32.1%)、負荷が高い(23.6%)という点が挙がった。
※出所:日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査」

 私は管理職候補者向けの能力開発プログラムを実施する中で、参加者から次のような悩みを聞くことがよくある。

・十分な知識を備えているわけではないが、管理職として務まるだろうか
・自分より経験豊富なメンバーを統率しなければならないが、どうすればよいか
・チーム全体の業務を把握できていないので、管理職としてやっていく自信がない

 管理職たるもの、他のメンバー以上に、知識も、経験も豊富でなければならず、細部にわたって業務の把握をしていかなければならないと考えている人は多い。それでは、管理職になりたくない人が8割近くに上るのは、当たり前だ。

 20年来、さまざまな企業の役員、管理職を対象に、能力開発プログラムを実施しているが、メンバー以上に、知識も、経験も有し、業務把握もできている役員や管理職は皆無だと断言できる。そんなことができるスーパーマンはいないし、できるわけがない。

 思い浮かべればすぐわかることだ。皆さんの所属する組織にも、役員より、専門的な知識を持っているメンバーがいるだろう。部長より、特定分野の経験が豊富なメンバーがいるはずだ。課長が全ての係の細部の業務を熟知しているわけがない。

 知識量が少なく、経験年数が浅く、全ての業務を細部にわたるまで把握できていない「普通の人」でも、リーダーシップスキルは発揮できる。もっと言えば、知識や経験や業務知識の先入観などない人のほうが、高いレベルでスキルを発揮できる。

 凡人がリーダーとなって、組織を巻き込むために必要なスキルを紹介しよう。