2024-12-08

2024年12月3日大韓民国において宣告された非常戒厳(以下「本件戒厳」)の法的な問題点について(私的メモ

 

1 非常戒厳の実施国会に遅滞なく通告していない。(憲法77条4項、戒厳法4条)

 

2 本件戒厳を宣告するに先立ち、国務会議の審議を経ていないおそれがある。(憲法89条4号、戒厳法2条5項)

  ※宣告に先立って閣僚に反対者多数との報道あり。

   また、宣告・解除に係る国務会議議事録作成されていない(議事録作成担当者会議に入っていない)との報道あり。

 

3 本件戒厳の内容及び本件戒厳を実行した政府・軍の行動が、憲法及び戒厳法による授権の範囲を超えている。(憲法77条3項、戒厳法9条

 具体的には国会政党活動を含む政治活動禁止(戒厳布告令第1号(1)に規定)や国会閉鎖。

 「国会地方議会政党活動政治的結社集会デモなど一切の政治活動禁止する。」(戒厳布告令第1号(1)。徐台教の翻訳による)

 

 憲法及び戒厳法は、戒厳時に、国会政党活動をも制約できると規定していない。

 つまり大統領に対して、憲法法律が、国会政党活動の制約に関して、何らかの授権をしたという根拠がない。

 

 また、行政作用法律違反してはならず、

 国民権利制限したり、義務を課したりする場合その他の国民生活に重大な影響を及ぼす場合法律に基づかなければならないが、

 本件戒厳は、それらに違反している。(行政基本法8条)

 

 

4 抑々本件非常戒厳の理由が適切ではなく、根拠が不足している。

 具体的には、国会審議等が停滞した程度では宣告できるものではない。(憲法77条1項、戒厳法2条2項)

 

5 目的手段が見合っていない。(憲法37条2項、行政基本法10条、憲法原理の一つとしての「比例原則」又は「過剰禁止原則」)

 

 尹錫悦は、

 

 「親愛なる国民の皆さん、私は北韓(編注:朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、

 韓国国民自由幸福を略奪している破廉恥従北反国家勢力を一挙に剔抉(訳注:撲滅)し、

 自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布します。」(尹錫悦大統領『非常戒厳宣布』会見(2024-12-03)。徐台教の翻訳による)

 

 と言い、本件戒厳の理由目的を示すが、

 現に、大韓民国に対する北朝鮮侵略が発生しておらず、

 また、特定組織集団勢力人物等を、「韓国国民自由幸福を略奪している破廉恥従北反国家勢力」とするだけの根拠

 何ら示されないのだから、非常戒厳を宣布する理由にはならない。

 

6 また、以上のような点から、「憲法守護する義務」や就任時の宣誓に違反しているおそれがある。(憲法66条2項、憲法69条

 

 

 

 

あくまでもこのメモ問題整理用の私的な試みに過ぎず、何らかの問題に対する法的な見地からの助言等ではない。

 

  • 大韓民国憲法(第六共和国憲法)(韓国語) https://www.law.go.kr/LSW/lsEfInfoP.do?lsiSeq=61603 大韓民国憲法(第六共和国憲法)(日本語訳) https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD%E6%86%...

  • 過剰禁止の原則(韓国語) https://ko.wikipedia.org/wiki/%EA%B3%BC%EC%9E%89%EA%B8%88%EC%A7%80%EC%9D%98_%EC%9B%90%EC%B9%99 「尹錫悦大統領『非常戒厳宣布』会見」全テクスト(日本語訳) https://news.yahoo.co.jp/expert...

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